犬の正しい叱り方とは? 「怒る」とは違う理由や大切なポイントについてトレーナーが解説

犬の正しい叱り方とは? 「怒る」とは違う理由や大切なポイントについてトレーナーが解説

犬のしつけ、正しくできていますか? 犬に「イケナイ」と教えるときに大切なことは、「怒る」ことではなく、「叱る」ことです。叱り方にもさまざまな方法があり、犬種や性格、状況によっても異なります。マズルや首を掴んだり、大声で怒鳴り散らしたりすることは絶対にやってはいけません。方法を間違えると、逆上した犬に噛まれたり、恐怖でお漏らししてしまうこともあります。今回は、ドッグトレーナーの酒匂が、犬の叱り方について解説します。

愛犬を叱ってもいいの?

靴を噛む犬

「愛犬の叱り方がわからない」、もしくは「叱ってはいけないのではないか?」という悩みを持った飼い主さんが最近増えています。実際にご相談を受けることもありますし、インターネット上の投稿などでも感じる事が多々あります。

まず大前提として、私は叱ることは必要だと考えています。なぜなら「叱ること」は「愛情」だからです。私はいつもオーナーさんにお話させて頂くこととして、「叱ることは必要です、しかし絶対に怒らないでください」とお伝えしています。

「怒る」と「叱る」の違い

飼い主さんの「良い」としない行動をとったわんちゃんに対して、「それはいけないことだと叱る」、そして「正しい行動がなんなのか教える」。ここまでが1セットだと考えてください。

それには飼い主さんがイライラしていては成り立ちません。もちろん、大切にしているものを壊されたり、疲れて帰ってきたら部屋が粗相まみれにされていたりすれば、冷静でいることは難しいでしょう。

しかし、怒りという感情をわんちゃんにぶつけることでは状況は何も変わらず、むしろ逆効果になります。わんちゃんは必ず、「ママ(もしくはパパ)が自分にイライラをぶつけている!」と感じ取ります。


犬を叱る方法

足元にいる犬

感情的になってしまっている時に最も有効な方法は何かというと、無視です。しかし、叱り方には無視以外にもありますのでご紹介します。

「無視」で叱る方法

イタズラや飼い主さんが嫌がることをするのは、「構って欲しい」という気持ちの現れでもあります。場が荒らされていた場合には、イライラをぶつけて怒鳴ることよりも、淡々と片付けましょう。

ポイント

  • 一切目を合わせない
  • 声をかけない
  • 触らない(撫でるといった愛情表現として)
  • 片付けのためなどでどいて欲しい時は黙って押す(これは優位な立場にいる犬が下位の犬に対しておこなう仕草です)
  • 家族みんなで無視を統一する(大概のご家族ではパパの場合が多いですが、無視を守れそうにない方には別の部屋に避難してもらいましょう)

15分〜30分は完全に無視です。もし、「時間的にどうしてもご飯をあげたい」というような場合でも、目を合わせないでただ置きましょう。わんちゃんは異変にすぐに気付き、構ってもらおうとおどけてみたり甘えてきたりするでしょうが、無視です。決めた時間が来たら何かコマンドを出し、言うことを聞いたら無視は終わりです。


言葉で叱る方法

飼い主さんが冷静を保てている場合には、言葉で叱ることも有効です。しかしこれにもポイントがあります。「伝わりやすいように短い単語で叱る」「少し大きめの低い声で叱る」ということ。お手本は、犬の唸り声の高さです。立ったまま見下ろして叱りましょう。そうすることで、わんちゃんにプレッシャーをかけることができます。その時のわんちゃんの仕草に注意してください。

背中が丸まり、耳が後ろのほうに垂れて、上目遣いや目を合わせようとしない場合は、叱られていることを理解しています。注意点として、手を振り上げるなどの叩くフリをするようなことはやめましょう。人間の子どもを叱るように低い声で叱りましょう。


やってはいけない叱り方と注意点

机の下にいる犬

やってはいけない叱り方としては、わんちゃんに「感情をぶつけて怒ること」の一言につきますが、それ以外にも、わんちゃんの「名前を連呼すること」「マズルを掴むこと」も避けましょう。

名前を連呼して叱らない

名前を連呼して叱るのはやめましょう。なぜなら、呼び戻しなどのトレーニングにおいて、名前は「呼ばれたら楽しいことや良いことが起こる単語」であって欲しいからです。


マズルを掴むしつけはもう古い?

「マズルを掴む」というのは、昔は推奨されていた方法ですが、現在は推奨されていません。マズルを握られる恐怖心や、舌を挟んでしまった状態で掴んでしまうなど、痛みのあまりわんちゃんが自己防衛のために飼い主さんを噛んでしまうこともあります。

家族の一員であるわんちゃんに噛まれるとショックを受けますよね。飼い主さんの恐怖心やショックをわんちゃんが敏感に感じ取り、そのことをきっかけに、飼い主さんを噛むことで自己の欲求を通すようになってしまったという相談例もありました。とても危険な行為ですのでやめましょう。

体罰は必要ないことがほとんど

体罰に関しても、一般の飼い主さんやわんちゃんには必要がない場合がほとんどですのでやめましょう。

必要以上に叱りすぎない

犬によっては、叱られることで精神的に追い込まれ、心身に影響を及ぼす可能性もありますし、飼い主さんとの関係性を悪化させてしまう要因になることもあります。

どうしても改善しない場合や疑問点がある場合には、そのまま叱り続けずに、「家庭犬をメインに扱っているドッグトレーナーさん」に相談することをおすすめします。警察犬などの使役犬を扱っている訓練師さんはトレーニング方法が異なるためおすすめしません)。

犬の気質やサイズにあった叱り方

大型犬と小型犬

叱る場合のレベルとして必要な判断基準は、犬のサイズや犬種特性によっても変わってきます。一般にテリア系の子たちは、叱られても叱られていると理解せずにあっけらかんとしている子が多いです。このような場合には、少し強めの言葉、もしくは長めに無視をして叱ることが必要です。

また、チワワトイプードルなどは、叱られたことがストレスで下痢などの体調不良を起こす場合もあります。

叱る内容や度合いは、犬の体のサイズにも影響されます。たとえば、「人が大好きで嬉しくて飛びつくこと」について考えてみましょう。小型犬ならば膝下あたりでピョンピョンとかわいらしく見えますが、中型犬大型犬になると、人に怪我をさせてしまう場合もあります。その場合には小型犬よりも厳しく、「イケナイ」と叱って教える必要があるでしょう。

しかし、中には繊細なテリア犬種や大型犬もいますので、100匹いれば100通りの叱り方があるということになります。パピートレーニングで性格を把握することや、カウンセリングなどでトレーナーに相談しアドバイスをもらうことが一番望ましいでしょう。

グッズを使った叱り方

グッズを使って叱ることは、一般の飼い主さんにはあまりおすすめはしていません。なぜなら、チョークチェーンやリードショックなどは高度な技術を必要とするからです。

電流首輪に関しても私自身は使用したことはありませんが、吠えにお悩みの飼い主さんの相談を受けた時には、「電流首輪をしているときは吠えない。しかし外した途端吠えが前よりもひどくなった」という話を伺っています。

この場合は、わんちゃんの吠えの原因は運動不足からくるストレス日中ひとりでお留守番をしていることによる分離不安子犬時期からトレーニングを一切していないことでした。

余談になりますが、私は飼い主さんに、「トレーニングは人間でいうところの義務教育だ」と説明しています。人間も小中学校で勉強することで、仲間との付き合い方や我慢、そしてストレスの発散方法を学びます。わんちゃんの場合も、トレーニングをおこない、学ぶことで、問題行動は改善できるのです。

叱る上で一番重要なのは、方法論ではなくその行動を「なぜしたのか?」、もしくは「なぜしているのか?」と考えることです。


叱ることと罰の違い

見つめる犬

これは人に置き換えるとわかりやすいと思いますが、叱ることには「愛情」「分かって欲しい」という期待が込められています。しかし罰には、気持ちを感じることは難しいでしょう。人間に置き換えると、学校で先生に叱られることと、叱られることなく「謹慎や停学を言い渡される」ことと同じです。

たとえば、罰として「クレートに閉じこめる」といったようなことをおこなった場合、残るのは「クレートは嫌い」という気持ちのみで、本質の改善には至りません。あくまで叱ることは、「やって欲しくないこと」と「こうして欲しいこと」を同時に伝えるコミュニケーションなのです。

叱るよりも褒めるほうがいい理由

頭をなでられる犬

誤解されたくないのが、「褒めるだけで一切叱らない」ということはおすすめしていないということです。好ましくない行動をとった場合、「違うよ」と低い声で叱り、こちらのして欲しいことに誘導します。


失敗で終わらせず、ちゃんとできたら褒める!

叱っても、最後には褒めて終わりにすることが、飼い主さんもわんちゃんも1番楽しくトレーニングをして頂けるでしょう。

私はいつも、「全てゲームだと思ってください」とお話しています。ゲームにはルールがあり、それにのっとって進められます。トイレにしても、シートの上にできれば褒めてあげる。違う場所にしてしまったらルール違反だから何もなし。しかしこのトイレゲームも、わんちゃんのレベルに応じて、最初はトイレの数を増やすことや、広いトイレにしてルールを守って成功しやすいようにしてあげましょう。

そしてだんだん難易度を上げていくのです。こうすることで、褒めることを大前提にしつけることができますので、飼い主さんも叱るストレスから解放されやすいでしょう。

まとめ

まどろむ犬

しつけをする上で「叱る」ことは必要だが、「怒る」こととは意味が全く違う
罰を与える叱り方では、本質の改善にはならない
叱った後は、何事も「褒める」ことで終わらせられるようなトレーニングを

叱るということは、わんちゃんを育てていくために必要不可欠ではありますが、「なぜそのような行動に出たのか」ということを考えてみてください。そして、「叱らなくても良い環境」を人間側の工夫で作ることはできないかどうかについても、よく考えてみましょう。

犬は、わんちゃんは人間の社会に合わせて生きていかなければいけません。その場合には、どうしても伝えきれない気持ちや消化できないストレスがあるでしょう。そういったストレスを少しでも溜めなくて良い環境作りをすることは、飼い主さんとわんちゃんのより良い関係性を築くことに繋がると思います。

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