【獣医師監修】犬にアロマを使っても大丈夫?種類別に大丈夫なもの、禁忌のものを紹介

【獣医師監修】犬にアロマを使っても大丈夫?種類別に大丈夫なもの、禁忌のものを紹介

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アロマテラピーとは、精油を用いて行う自然療法です。アロマテラピーを愛犬との日常生活に取り入れることは「一緒の暮らし」をより豊かな気持ちにさせてくれます。今回は愛犬とアロマテラピーを楽しむ方法や注意点、おすすめのラベンダー精油やユーカリを使った虫除けスプレーの作り方について、日本ドッグセラピスト協会代表理事で「Seventh Heaven」代表の水野が解説します。

この記事を監修している専門家

佐藤貴紀獣医師

獣医循環器学会認定医・PETOKOTO取締役獣医師

佐藤貴紀獣医師

獣医師(目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC、隅田川動物病院、VETICAL動物病院)。獣医循環器学会認定医。株式会社PETOKOTO取締役CVO(Chief veterinary officer)兼 獣医師。麻布大学獣医学部卒業後、2007年dogdays東京ミッドタウンクリニック副院長に就任。2008年FORPETS 代表取締役 兼 白金高輪動物病院院長に就任。2010年獣医循環器学会認定医取得。2011年中央アニマルクリニックを附属病院として設立し、総院長に就任。2017年JVCCに参画し、取締役に就任。子会社JVCC動物病院グループ株式会社代表取締役を兼任。2019年WOLVES Hand 取締役 兼 目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC院長に就任。「一生のかかりつけの医師」を推奨するとともに、専門分野治療、予防医療に力をいれている。

犬のアロマテラピーとは

アロマテラピー
アロマテラピーとは「アロマ(芳香)」と「テラピー(療法)」から成る言葉で「植物から抽出した芳香成分である精油(エッセンシャルオイル)を使って、心身のリラクゼーションやリフレッシュや、健康・美容に役立てていく自然療法」と定義されています。

良い香り、好きな香り、落ち着く香りと感じリラックスすると副交感神経が優位になり、副交感神経は自己治癒力や免疫力を活性し、美と健康を促進します。

日本語では「芳香療法」と訳され「植物(香草、薬草)の花」「葉」「茎」「根」「樹皮」「樹脂」「種子」「全草」などから抽出された芳香成分を用いて行う方法が一般的です。

参照:公益社団法人「日本アロマ環境協会」(AEAJ)

アロマテラピーの歴史

アロマテラピーの歴史は日本ではまだ新しい感じがしますが、世界的にはその歴史はとても古く、紀元前3000年前から始まったとされる古代エジプト時代の壁画には、香油の壺などが描かれています。

人類は長い間、植物が持つ香り(芳香成分)を心身の癒やしや毎日の暮らし、生活に役立てようと重宝してきたことがうかがえます。

アロマテラピーを難しく考えずに広くとらえてみると、日常生活では毎朝のコーヒーの香りで自然に気持ち良く目覚めたり、ショウガやニンニクの香りで食欲が湧いたりすることも含まれます。

現代アロマの流れ的には、有効成分(=芳香成分)の摂取による作用、効果を目的としたフランス式(メディカルアロマ)もありますが、今回は一般的な、香による癒やしを中心としたイギリス式(アロマテラピー)について話していきます。

アロマテラピーとアロマセラピーの違い

アロマテラピーとアロマセラピーの違いは「Aromatherapy」をフランス語読みしたものがアロマテラピーで、英語読みしたものがアロマセラピーとなっています。

どちらも「芳香療法」と訳され、内容に違いはありません

前述した通り、読み方の違いではなくアロマの種類、使い方の違いから「イギリス式アロマ」(香りが中心)と「フランス式アロマ」(成分が中心)にわかれます。

犬のアロマテラピーの注意点

アロマオイルの保管方法

遮光率が高い瓶の色は茶色

精油の原液はプラスチックを変形させたり、長時間になると溶かしたりする可能性もあるため、必ずガラスの遮光瓶で保管します(※)

「茶色」や「ブルー」「グリーン」の遮光瓶がありますが、遮光率が高いのは「茶色」です。

立てて保管する

保管時にガラス容器は横にせず、立てて保管します。この理由を「精油が漏れるから」と認識し「しっかり蓋を閉めていれば横にしてもいい」と思っている方が意外と多いのですが、実はそれは間違いです。

精油は一滴の量が決まっているドロッパータイプのガラスの遮光瓶に保存されていますが、ドロッパーの部分がプラスチックでできています。

瓶を横にすると、ドロッパーの栓部分に精油が触れてしまい、長時間その状態になるとプラスチックの部分が変形したり、溶けだしたりします。長時間の保管時は横にせず、立てて保管しましょう。

火の近くでは保管しない

精油は引火性があり揮発性がありますので、火の立つ場所の近くでは保管しないように注意しましょう。

子どもや動物が精油を誤飲しない冷暗冷所で、しっかり蓋をして保管してください。

愛犬の皮膚に原液塗布しない

精油の原液塗布は行ってはいけません。厳密にいうと、ごく一部では原液塗布が可能な精油もありますが、きちんと勉強した上での上級者の使い方です。

皮膚に塗布する場合は、肌を刺激する可能性があるため、必ず希釈して使用します。

皮膚トラブルの件に共通することは「初めて使ったときに大丈夫だったので、そのまま続けていた」という点です。

1回目から荒れる場合もありますが、優しめの精油だったので初回は出なかったようですが、原液塗布を続けているとやはり炎症やかぶれ等が起こっています。

特に犬の皮膚は被毛に被われ守られている分、皮膚自体は人間より薄く弱いです。精油を使用する際には、十分に注意してください。

犬のアロマテラピーのやり方

アロマテラピーを愛犬との暮らしの中で日常生活に取り入れていただくことは、「一緒の暮らし」をより豊かな気持ちにさせてくれます。

ディフューザーの種類


アロマディフューザー:楽天で見る

アロマテラピーには奥深さもありますが、まずは気軽に楽しめる「芳香浴」がおすすめです。

「芳香浴」ではアロマのディフューザーを用いるのが一般的ですが、ディーフューザーは大きく分けると以下の4つのタイプに分かれます。

  1. 原液加熱式
  2. 原液ネブライザ式
  3. 希釈超音波式
  4. 希釈加熱式

アクティブな犬がいることと価格帯を考えると、一般的にもよく使われている3の希釈超音波式が使いやすいでしょう(4の希釈加熱式は、蒸気が出るので火傷の恐れがあります)。

希釈超音波タイプは、水の中に精油を3~5滴(各取扱説明書を確認ください)ほどの少量を入れて使用します。水に希釈して(薄めて)超音波の振動でアロマを水と一緒に拡散するので、少しですが効果もあります。

アロマは水で希釈されているため、使う時間はほとんどのディフューザーに設置されているタイマー機能に沿った時間で大丈夫です。その香が「濃厚に香る」のではなく「ほんのり香る」のがポイントです。

加湿器で使用する際の注意点

冬になるとよく使用される加湿器にアロマを使用する場合、その加湿器専用の「水溶性アロマ」「水溶性エッセンシャルオイル」などが付属していますが、精油は「親油性」しかなく、精油単体では水には溶けません。

時間をおくと分離して上に浮きます(一部柑橘系は本当に少しだけは溶けます)。

水溶性のアロマ、水溶性のエッセンシャルオイルとは、精油に乳化剤(水に乳化させるもの)を混ぜたものであったり、ものによっては精油ではなく香料で香り付けをしたオイルだったりします。

そのため、アロマテラピーで使用する精油(エッセンシャルオイル)とは区別して、その加湿器のみで使用するようにしてください。

加熱方法の注意点

電気式の場合はコンセントをつなぐので、愛犬が引っかかって倒したり、コンセントをかじったりしないように設置場所に注意してください。

ろうそくを使うタイプのポットは火を使うため、目を離したすきの火傷や火事の可能性があり、おすすめしません。

犬にも好みのアロマがある?

フレンチブルドッグ

犬の嗅覚の特徴

猫は聴覚の動物といわれているのに対し、犬は嗅覚の動物といわれます。犬は優れた嗅覚を持ち、さまざまな分野に生かされ、私たち人間の役に立ってくれています。

犬の嗅覚は、人の1000倍から、訓練を積むと1億倍にもなるといわれています。

私たちが感じる匂いを1000倍強く感じると思われがちですが、実はそうではありません。例えば匂いの強さを数字で表すと、人が1と感じる匂いを犬は1000と感じるのではなく、人の1は犬も1で、人の100は犬も100です。犬は私たち人間が嗅げない0.001の匂いを嗅げると考えていただけるとかりやすいかと思います。

また、犬の嗅覚の特徴として「嗅ぎ分ける=匂いの階層化ができる」ということも挙げられます。犬は私たち以上に香りの分析をしているのかもしれません。

愛犬好みのアロマの選び方

アロマの力を最大限に発揮するため、愛犬との大切なスキンシップとしてもおすすめなのが「愛犬と香りのテイスティング(試香)~香り選び~」です。

実は犬も香りを選びます。ずっと同じ香りを選ぶ子もいれば、毎回変わる子もいます。季節によって選ぶ香りの傾向もあります。

例えば夏場はすっきりと清涼感のあるペパーミントやグレープフルーツを選ぶ子が多いです。飼い主さんが好きな香を選ぶ犬も多いです。

テイスティングにはいつくかの注意点がありますので、やり方を紹介します。

テイスティングのやり方

飼い主さん自身は精油の瓶から直接でかまいませんが、犬には蓋のほうを、鼻先から15~20cm離して嗅がせます。

飼い主さんが手に何かを持っていると、おやつをもらえると勘違いする子が多いです。何かはわからず舐めにくるので注意してください。

精油の匂いを嗅ぐ犬

精油の瓶を持っていると、注ぎ口に精油が多く残っている場合にそれを舐めてしまいます。蓋には精油は残っていないので蓋のほうが安全です。愛犬は蓋でテイスティングしましょう。

鼻先には近づけ過ぎず、必ず15~20cm離してください。

<良い反応>

興味を示します。蓋を開ける前から匂いをキャッチしようとします。

近づいてきたり、鼻をひくつかせて匂いをしっかりキャッチししたりしようとします。中には舐めようとする子もいますので、近づいてきたら離してください。

<苦手、嫌いそうな反応>

2~3回鼻を引くつかせた後にすぐそっぽを向いたり、顔を背けて避けたり、香から離れようとしたりします。

その香が嫌いだったり、その日は苦手だったりするのかもしれません。

飼い主さんと愛犬と、言葉は通じなくてもアロマのテイスティングを通して、愛犬をよく見て、サインをキャッチして、一緒にアロマの香りを楽しんで「五感で楽しむ愛犬との交流」としてリラックス&スキンシップしていただければと思います。

嫌いそうな反応が見られたら

嗅覚からの刺激は感情や本能に伝わるため、「香が不快=ストレス」→「体がストレス反応」となります。

アロマを使用して、愛犬が急にソワソワしだしたり、香りを遠ざけるためにその部屋を出たがったりした場合には、すぐに使用をやめ、窓を開けるなどして部屋の換気をして空気中のアロマの香りを薄めてください。

芳香浴は部屋にアロマを香らせているだけなので、中毒が起こったりはしません。換気をするだけで大丈夫です。

犬のアロマスプレーを手作りする方法

愛犬とのお出掛けが増える季節に重宝いただける、「アロマ虫よけスプレー」の作り方をお伝えします。

準備する物

  • 100ccスプレー容器
  • 精油:ユーカリレモン(学術名:ユーカリシドリオドラ)5滴(シトロネラでもOK)
  • 乳化剤(※1):いろいろな乳化剤がありますが、できる限り植物系よりでソフトな乳化剤を選択してください。(※2)


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※1 乳化(乳化剤)とは:油と水は本来は混ざり合わず、時間を置くと上に油が浮いて分離します。それを混ぜてくれる役割のものを乳化剤といいます。水と油が混ざると乳白色になるのでそう呼ばれています。
※2 参考商品:健草医学舎 バスオイル」

アロマのアイテム作成では無水エタノールが一般的ですが、アルコール系なのでアロマの香りが少し変わりますのでご注意ください。

アロマ虫よけスプレーの作り方

  1. スプレー容器に乳化剤を入れる(乳化剤ごとの容量をお守りください)
  2. 虫の嫌がる精油「ユーカリレモン」を5滴入れる(シトロネラの場合は5~8滴)
  3. 水を100cc入れて軽く振って混ぜて乳化させれば完成

使用する乳化剤の注意事項を確認いただいて問題なければ、ワンちゃんはもちろん、人や子どもさんなどご家族みんなで使えます。

虫除けスプレーのより効果的な使い方

香りが薄くなってきた場合は塗り直してください。目安としては、1時間に1回ぐらいかと思います。

体への塗布以外に、カートや洋服、立ちどまったときにはその周りに振ってもいいです。お家の場合は、網戸などに塗布すればよい香りがして、虫除けにもなります。今年の愛犬とのお散歩&お出掛けにお役立てくださいね。

シーン別の活用方法とオススメのアロマ

ヒーリング:リラックスさせたいとき

ラベンダーやローズウッドがおすすめです。


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ヒーリング:興奮を抑えたいとき

マージョラム(マジョラム)やユズがおすすめです。


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咳止め

ユーカリ・ラディアタがおすすめです。


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まとめ

犬
アロマテラピーとは精油を用いて行う自然療法
自己治癒力や免疫力を活性し、美と健康を促進する
精油の原液塗布は皮膚トラブルを起こす可能性があるのでNG
テイスティングで愛犬好みの香りを見つけましょう
自然の恵み「植物の力」を豊かな暮らしに取り入れるアロマテラピーは、愛犬と飼い主さんの心と生活を豊かにするだけでなく、心身のバランスを取り戻すホリスティックケアーとなります。

まずは気軽に「香り=芳香療法」から取り入れていただけたらと思います。