「生き物じゃん。ビジネスの話をする前に、命に対する思いやりを持ったほうがいいよね」GO代表 三浦崇宏氏インタビュー

メルカリの新聞折り込みチラシやONE OK ROCKのアルバムプロモーションなど、話題を集める数々のクリエイティブを手掛けてきた広告会社「The Breakthrough Company GO」。代表を務める三浦崇宏氏は、子どもの頃から犬と暮らしてきた愛犬家でもあります。今回、連載「変革するペット産業」の第3回として、三浦氏とシロップ代表の大久保が、「ペットライフの未来」をテーマに対談します。

大久保:今や広告業界で知らない人はいないと言っても過言ではない三浦さんですが、愛犬家というのはあまり知られてないですよね。

三浦:俺に愛犬がいるっていうイメージないでしょ? ないのよ。福本(※)、俺に愛犬いるイメージ出していいんだっけ?(「あったほうがいいよ」という返事) そうか。まだ世に出してなかったけど、子どもの頃からずっと飼ってるんですよ。この子は2代目で、西麻布の実家にいるから今は一緒に暮らしてないけどね。

※GO共同代表でビジネスプロデューサーの福本龍馬氏

大久保:今回の記事が貴重な発表の場になって光栄です(笑)。三浦さんをはじめ、GOさんにはシロップのPRでアドバイスも頂いていて、その理由や、三浦さんが考える「ペットライフの未来」について、お聞きしていきます。

ペットは「かわいい」だけで描き切れない存在になった

ミニチュアシュナウザーの毛波子(もなこ)ちゃん
ミニチュアシュナウザーの毛波子(もなこ)ちゃん

大久保:最初に、広告業界から見た「ペット」についてですが、よく「動物と子どもは鉄板ネタ」という話を聞きます。どちらも「かわいさ」があるからこそだと思いますが、「ペットの家族化」が進む中で広告に変化はありますか?

三浦:今の広告ビジネスって、「かわいい」のアイコンとして動物を使えばいいというほど簡単ではなくて。描き方はすごくデリケート。愛玩動物としての存在というよりは、「新しい家族のあり方」として動物を見たほうがいいなと思ってる。広告がどうこうより、社会そのものの「ダイバーシティー」(多様性)だと思うんですよ。

ダイバーシティーって、女性の社会進出とか人種差別とか宗教とかって話になりがちなんだけど、家族のダイバーシティーもあるじゃない。例えば同性の夫婦とか、子どもを作らない夫婦とか、昔と家族の捉え方が変わってるよね。

いろいろな家族のあり方があって、「ペットも家族」と捉える人も増えている。単にかわいい存在として描くっていうより、新しい家族、新しいパートナーシップっていう捉え方の中で描かれるべきものになったというところかな。

大久保:動物の中でも、犬や猫を中心としたペットは、ただ「かわいい」では描き切れない存在になってるということですね。

大久保と社員犬コルク

三浦:一方で、「ペットと人間は家族じゃないといけない」みたいな押し付けも俺はちょっと違うと思うわけ。そこは関係性の多様さを一個一個丁寧に捉えてあげることが大事かなと思う。

ペットにアクセサリーとか服とかごちゃごちゃ付ける飼い主もいるじゃない。俺はあれを良いと思わないし、あれがダサいって思わない感覚とか謎なわけ。だけど、それを否定することもできないじゃない。アクセサリーみたいに捉える人もいれば、パートナーとして捉える人もいるっていう、いろんな関係性を認めていかないといけない。

大久保:ペットに服を着せたり、着ぐるみをさせたり、本当に喜んでるのかと思うことはあります(笑)。

三浦:そう、大前提になるのは彼らが本当に幸福でいるかって想像すること。それはすごく大事だと思うんだよね。

広告でペットを描くときは、「かわいいでしょ。数字取れるでしょ」じゃなくて、家族なのかパートナーなのか、どういう関係性を描くために動物に出演してもらうのかを作り手は考えないといけないよね。

何でもかんでも社会問題の解決に結びつける必要はない

GOオフィスの風景

大久保:最近は殺処分問題に関連した広告も増えてきた印象がありますね。

三浦:殺処分問題ってものすごく大きい問題で、うかつにマーケティングに利用すればいいとも思わないんだけど、今の時代、共感を生むためにわかりやすいマーケティングの手法として社会問題にアプローチするってことはあるんだよね。

今ってあらゆるものがコモディティー化(均一化)してて、例えば水だとボルヴィックとかエビアンとかサントリー天然水って、どれも良い商品だから、どれを選んでもいいわけじゃん。服はユニクロで、ご飯は吉野家があればみんなハッピーに生きていける時代。世の中のものってどれも良いから。そんな中で、どうやって生活者に選んでもらうかとなると、やっぱ共感を生むしかない。

この社会問題にこの企業がアプローチしてるのってのが適切に伝われば共感を生むし、結果としてマーケティングにもなる。でも利益のためにやってることには変わらないから、中途半端だったり嘘が見えたりすると、逆効果になる。問題が複雑で深刻であるだけに、うかつなアプローチはできない。本当に真剣に、自社が取り組む意味を考えてやらないと。

大久保:ちょっと良いことしてる感を出そうレベルで取り組んじゃうと、真剣に取り組んでる人には通用しないし、問題を悪化させることになったら最悪ですよね。GOでは社会問題に関する広告も手掛けてますか?

三浦:例えばプラン・インターナショナルっていうNGOの広告で「女の子の未来に、投資を。」っていうキャンペーンとか、「COGY(コギー)」っていう足こぎ車椅子のマーケティングをやってるね。

ただ、何でもかんでも社会問題の解決に結びつける必要はないと思う。COGYは、あれが広がること自体が足の不自由な方に意味のあることだから、本業を頑張ることが結果として一番の社会問題の解決っていう場合もある。

「性善説で企画して、性悪説で実行する」

シロップの社員犬コルク

大久保:最近はネットで広告が炎上することがよくありますが、社会問題は特にセンシティブなものだと思います。受け手側の反応はどう考えていますか?

三浦:いや、正直、反応はどうでもいいわけ。別に炎上しようが、批判されようが、そこに信念と真実があれば問題ないじゃん。俺は「やらない善よりやる偽善」だと思ってるし、炎上って言葉自体がまず良くないと思ってて。議論のきっかけになったって考えればいいと思うんですよ。行動がないと議論って生まれないから。

だから反応は別に怖くない。それよりも怖いのは、「嘘があること」と「勉強が足りないこと」だよね。「ある村を救いましょう」みたいなプロジェクトをやるとして、実は隣の村のほうがもっと苦しんでたとか、救おうとした村がかつて隣の村を破壊していた歴史があるとか。知った上でこの村を救いましょうならいいんだけど、知らないと議論できないじゃん。これが炎上なわけよ。

だから受け手がどう思うかよりも、「我々が無知であること」「我々がちょっとした悪意に負けて嘘をついてしまうこと」のほうがよっぽど怖い。問題はだいたい自分たちの中にあるから。

GO代表三浦氏

大久保:ネットがあることで判断するための知識も増えてるし、嘘もすぐ暴かれる。確かに炎上と呼ばれるものの多くは中途半端さが原因になってるように思えますね。

三浦:俺がよく言ってるのは、「性善説で企画して、性悪説で実行しろ」ってこと。良いことしようって思ったきっかけは誰だって性善説なわけよ。だけど、社会問題の解決って大変だから、手を抜いたり、嘘をついたり、楽をしたり、ごまかしたりし始めるわけ。そこは人間って弱いよねということを認識して、性悪説で「俺自身がサボるかも」「部下が手を抜くかも」「クライアントが俺たちの知らないところで悪いことしてるかも」って考えなくちゃいけない。そこは意識しておくといいと思う。

あらゆる人間のあらゆる愛情を認めてあげる社会へ

GOオフィスの風景

大久保:僕たちは人もペットも幸せな未来を目指して会社をやっているんですが、三浦さんはペットライフの未来をどのように考えていますか?

三浦:なんかさ。世の中って「ペットがいる人」か「ペットがいない人」かみたいに分割されがちじゃない。でも、そういうことでもないと思うわけ。家族とか暮らしの多様性を許容する社会を作ることをが一番大事なんじゃないかって。

最近足を怪我しちゃって、ずっと松葉杖だったんだけど、世の中ってまあまあバリアフリーではない。松葉杖だと両手がふさがってドアって開けられないから、痛えなあと思って脇に挟んで開けたりするの。大変じゃん。でもだいたいの人は気付いて「大丈夫ですか?」って開けてくれる。

これすごい綺麗ごとっぽく言うけど、バリアフリーってテクノロジーとか資本で解決することじゃなくて、やっぱり「思いやり」なわけ。すげー当たり前のことなんだけど。それが同じように動物にも向けられている。人間と比べて優先順位が同じかはそれぞれ考え方が違うと思うけど、生き物じゃん。スタートアップとかテクノロジーとかデザインとかビジネスとかの話をする前に、命に対する思いやりっていうか。みんな持ったほうがいいよね。

ミニチュアシュナウザーの毛波子(もなこ)ちゃん

大久保:それってどうやったら身につくと思いますか?

三浦:もしかしたら若いうちに動物と触れ合うことかもしれないし。大久保社長はいつから犬と暮らしてるの?

大久保:僕は二十歳すぎてからですね。

三浦:実家では飼ってないの?

大久保:はい。小さい頃に「飼いたい」って親に言ったことはあったんですけど、そのときは飼うことができず、それから噛まれたわけでもないけど苦手でしたね。縁あって一緒に暮らすようになってから好きになりました。三浦さんはいつからですか?

三浦:俺は子どものときにヨーキーがいて、この子は2代目。家族ぐるみで仲良い家があってそこも犬好きだったから、よく2家族で5、6匹くらい集まってバーベキューとかしたことはあったね。

大久保:犬と暮らしてたから得られたことって何かありました?

三浦:人間性にどれだけ影響を与えたかはわからないけど、優しい気持ちになってるんじゃないかな。ちょっと前に登戸で通り魔殺人があったじゃない。西村博之さん(※)が「ああいう身寄りのない何するかわからない人にはペットとしてウサギを与えればいい」って話をしていて。何か理屈じゃないんだけどわかる。

「誰にも必要とされてないし社会からも認められていない、自分の命なんて」と思ってる人が「命は大切だ」って気持ちになるわけないじゃない。だから「ウサギを飼えばいい」っていうのはなんか論理的じゃないが納得性はあるなって思ったの。

アニマルセラピーってのもあるけど、動物と一緒にいることで気持ちが豊かになるとか、人間としての大事なものをちゃんと取り戻せるみたいなのは、俺はあると思ってる。ペットという自分を頼っている存在がいて、それと暮らしていくことによって得られることは確実にあると思う。

※2ちゃんねる開設者

大久保:あとは社会の中で、電車に乗れなかったり、入れないお店があったり、環境面ではまだまだペットフレンドリーじゃないですね。

三浦:そうだね。ペットフレンドリーっていうかファミリーフレンドリーっていうか。多様性がもっともっと認められる社会になっていかなくちゃいけない。あらゆる人間のあらゆる愛情を認めてあげる社会にならないと。ちょっとずつ進歩していかないといけないって思ってるよ。

喜ぶ犬の顔が見たいって思うのは人間の根本的な感情

GO代表三浦氏とシロップ代表の大久保

大久保:これが「PETOKOTO FOODS」で、自社開発してるドッグフードです。

三浦:食べさせていいの? ありがとう。

大久保:ちゃんと食べてくれてますね(笑)。「犬のためにより良いものを」と考えていわゆるプレミアムフードを作ってるんですけど、その分やはり金額が上がるので、飼い主さんたちが受け入れてくれるかが課題です。

三浦:ちゃんと恋愛した人だったら分かると思うんだけど、自分が嬉しいことよりも好きな人が嬉しいことのほうが嬉しいじゃない。自分は吉野家でいいけど、彼女と行くときは高級なフレンチを頼みたいとか。俺なんか自分がメディアに取材を受けるより社員に取材を申し込まれることの方が嬉しいし。

人間って基本的に愛する人が喜ぶことを喜ぶ習性があるから、買う自分が満足するフードより、喜ぶ犬の顔が見られるフードがいいって思うのは人間の本当に根本的な感情。そういうことがようやくペットの世界、ペットビジネスの世界でも当たり前のこととして広がってきてるんじゃないかな。

PETOKOTO FOODSを食べるGO三浦氏の愛犬

大久保:実際に食べさせたモニターさんの中には、偏食だった愛犬が久しぶりにがっついて食べてくれたと満足してくれてる人もいます。愛犬のためになることが飼い主さんの幸せにもなるっていう好循環を生み出していきたいですね。


ペット市場は100%、絶対に伸びる

大久保:GOさんにはシロップのPRについてアドバイスを頂いてます。名だたる企業の案件を手掛けるGOさんが駆け出しの僕らに関わっていただけたのってどういう理由があったのでしょうか?

三浦:三つあって、一つはうちの会社が重要視していることに「社会の変化とか挑戦をもたらすようなビジネスに対して関わっていきたい」という想いがあって。今までないがしろにされてきた、見られてこなかった市場に光を当てようっていうシロップのビジネスが素晴らしいと思ったんだよね。

もう一つは、ペット市場って絶対に伸びるから。それはさっき言ったダイバーシティーの文脈でもあるし、少子高齢化の文脈でもある。100%、絶対に市場が伸びる場所だから否定する理由がない。相当ダメじゃないと失敗しないっていうのが二つ目。

三つ目は大久保社長が丁寧で誠実だったこと。俺ってこういう人間だから絡みづらいというか話しにくいと思ったかもしれないんだけど、すごく丁寧に何度も通ってくれてさ。やっぱり誠実で嘘がない人だなと思ったから一緒にやりたいと思ったんだよね。

GO三浦氏と愛犬

大久保:恐縮です。GOさんとして、シロップを通じてこういうことができたらっていうのはありますか?

三浦:GOっていうのは社会の変化と挑戦を応援する場所だから、シロップを通じて家族の多様性とか人間の生き方の多様性に光が当たるような社会を作っていけたらいいなと思ってる。

大久保:ありがとうございます。ぜひ今後もご一緒させていただいて、人も動物も幸せな社会を実現していければと思っています。