安いドッグフードを買う前に考えるべきことを栄養管理士が解説

安いドッグフードを買う前に考えるべきことを栄養管理士が解説

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ドッグフードは毎日消費されるものですから、安いに越したことはありません。しかし、本当に価格だけで選んで問題ないでしょうか?大切な家族と1秒でも長く一緒に過ごしたいと思うなら、値段以外にも見るべきポイントがあります。フード選びの基本について、ペット栄養管理士が解説します。#犬の食育

安いドッグフードを買う前に考えるべき3つのこと

ドッグフードは愛犬が毎日食べる大切な栄養源です。口から入り、消化され、栄養となって血や肉をつくり、生きる力となります。食事の時間は当たり前のように過ぎていきますが、その当たり前が少しずつ愛犬の体を良いほうに、もしくは悪いほうに動かし、最終的に寿命の差となって現れます。

ですから最初に、安いドッグフードを買う前に考えてほしい3つのことを解説します。

1. 何を食べるかで寿命が3年も変わる

ベルギーの研究チームが「長生きする犬とそうでない犬の違い」について調査したところ、市販フードを食べている犬よりと手作りごはんを食べている犬のほうが3年近く長生きしていたことがわかりました(※)。研究チームは手作りのほうが添加物が少なく、食材が新鮮で栄養の吸収率が高いためではないかと考察しています。

もちろん、市販フードを食べて長生きする犬もいますし、手作りごはんを食べて短命な犬もいるでしょう。調査結果が教えてくれるのは、新鮮なごはんを食べている犬のほうが長生きする確率が高いということです。それを知った上で、「大切な家族の寿命」と「ドッグフードの安さ」のどちらを優先すべきでしょうか?



2. ◯◯フリーと書いておけば売れる

安いドッグフードでもおなじみになった「グレインフリー」ですが、犬の健康には何の価値もありません(アレルギー症状のある犬には有効です)。グレインフリーだから体に良いという科学的な根拠は一切ないのです(グレインフリーだから体に悪いということもありませんが)

それでもグレインフリーのドッグフードが数多く売られているのは、そう書いておけば売れるからです。飼い主さんをわざと誤解させる宣伝文句で売られているドッグフードがあるとしたら、大切な家族のために選ぶでしょうか?


3. 医療費が余計にかかっていないか

安いドッグフードを買っていても、そのせいで病気になって医療費が余計にかかったとしたら本末転倒です。獣医師は病気の体を治すことができても、病気にならない体をつくることはできません。「医食同源」という言葉があるように、病気にならない体をつくるのは、飼い主さんが選んだドッグフードです。

病気によってはたった1回の手術で一生の食費をはるかに上回る費用がかかってしまうこともあります。ですから、安いドッグフードは本当に最良なのか、愛犬の一生を考えた上で選択していただきたいのです。

安いドッグフードの注意点

ドッグフード

ドッグフードの良し悪しは価格で決まるわけではありません。安いからといって悪いとは限りませんし、逆に高ければ良いというわけでもありません。しかし、安いには安いなりの理由があり、その中でも注意すべき点は大きく三つあります。

  1. 栄養バランスに偏りがある
  2. 使われている食材の質が悪い
  3. 不必要な添加物が含まれている

それぞれ詳しく解説していきましょう。

1. 栄養バランスに偏りがある

PETOKOTOFOODS

ドッグフードには「総合栄養食」やおやつなどの「間食」、治療を目的とした「療法食」など、いくつかの種類があります。一般的に、AAFCO(全米飼料検査官協会)という団体の栄養基準を満たしたものが「総合栄養食」と謳われています。

「栄養基準を満たしているなら安心」と思われがちですが、ここに注意点があります。「基準」というのは成分が多すぎないか、少なすぎないかという話で、良いか悪いかの基準ではありません。最低限の基準を満たしたら、残りはかさ増しの原料だけということもできてしまうのです。

手元にドッグフードがあれば、原材料を確認してみてください。小麦粉やトウモロコシなどの穀類が最初に書かれていませんか? 穀類も貴重なエネルギー源になりますので入っているから悪いということではありませんが、安いドッグフードでは必要最低限の栄養しか摂れていなかったり、必要のない栄養を摂り過ぎていたりする可能性があるということに注意が必要です。


2. 使われている食材の質が悪い

牛肉パック

先ほど総合栄養食の「基準」は成分が多すぎないか、少なすぎないかと話しました。量の話ですので、その成分が何に由来しているかは問われていません。良質な肉を使っても粗悪な肉を使ってもタンパク質の量は同じなのです。

みなさんは「4Dミート」という言葉をご存じでしょうか。以下のような肉のことを指しています。

  1. Dead:死んだ動物の肉
  2. Dying:死にかけの動物の肉
  3. Diseased:病気の動物の肉
  4. Disabled:障害のある動物の肉

それらは人間用の食肉加工で廃棄された骨や内臓と一緒になり、工業用や畜産飼料、そしてペットフードとして利用されています。いくら合法で安全性に問題が無いとしても、家族である愛犬にそういった肉を食べさせたいとは思わないですよね。

確認していただきたいのは、原材料に書かれた「チキンミール」「ポークミール」「ミートミール」といった「◯◯ミール」という表記です。「ミール」というのは肉骨粉と訳されるもので、一般的には食肉にならないクズ肉や内蔵、骨、皮、頭などを乾燥して粉にしたものとされています。鳥の場合は羽やくちばし、トサカなどが利用されることもあります。

そういった「チキンミール」が含まれるドッグフードは少なくありません。ただし、「◯◯ミール」は製品によって定義が異なりますので、4Dミートが含まれるもの、含まれないもの、肉や骨だけしか使われてないものなどさまざまです。

ですから「ミールだからダメ」というより、どんな肉のどの部位がどのように利用されているかわからないことがミールの問題と言えるでしょう。

※参照:「ペットフード用肉骨粉等の取扱いの見直し」(農林水産省)

3. 不必要な添加物が含まれている

瓶に入った粉末

添加物とは、一般的に保存料(防腐剤)、酸化防止剤、着色料、保湿剤、香料などを指すものです。

日本ではペットフード安全法によって賞味期限の表記が義務付けられています。賞味期限が長いほうが売れますし、メーカーとしては廃棄も減らせて一石二鳥です。そうすると保存料が多くなり、日がたつと酸化が進みますので酸化防止剤も増えていきます。

着色料は何のために入れるのでしょうか? 特に意味はありません。飼い主さんの目を楽しませるためだけに配合されています。売れるから入れる。売れるから安くできる。安いドッグフードの中には、犬のことを考えていないものもあるのです。

※参照:「ペットフードの安全関係」(農林水産省)


安いドッグフードのリスク

ドッグフードを前に座る女性の飼い主さんとチワワ

日本には「ペットフード安全法」という法律があり、ペットの健康に悪影響を及ぼすペットフードの製造や輸入、販売は禁止されています。そのため、一般に流通しているものであれば安いドッグフードであろうと直ちに問題になるようなことはありません。

しかし、「愛犬に良いごはんを食べさせてあげたい」「健康的な食生活を送ることで長生きしてもらいたい」という観点で考えると、安いドッグフードはオススメできない点があります。

  1. 良質なタンパク質が摂取できない
  2. 栄養の消化吸収量が低い
  3. どんな材料が使われているか不明
  4. 不必要なものが多く含まれている

栄養の消化吸収量が低くなる理由については別記事でも詳しく紹介していますので、以下の関連記事をご覧ください。



ドッグフードの選び方

AとBのドッグフードを見つめるコーギー

ドッグフードの良し悪しは値段で決まるものではありませんので、高いものを買えば安心というわけではありません。特にドッグフードを選ぶ際に注目していただきたいのは、以下の4点です。

  1. 原材料を確認する
  2. 食いつきに騙されない
  3. 製造過程が見える化されている
  4. プレミアムフードを選ぶ

それぞれ詳しく解説していきましょう。

1. 原材料を確認する

黒毛和牛

パッケージに騙されないようにしましょう。見るべきは原材料の欄で、含まれる順に書かれています。最も多い原材料が小麦粉やトウモロコシなどの穀類になっているものはオススメしません。しっかりタンパク質が摂れるように、肉類から記載されているものを選ぶようにしましょう。

添加物などは知らない成分もあると思うので難しいとは思いますが、保存料や着色料などが含まれていないか、含まれているとしたらどんなものかも確認してみましょう。


2. 食いつきに騙されない

PETOKOTO FOODSを食べる犬たち

「高いドッグフードにしたけど食べてくれなかったので元に戻した」というのはよく聞く話です。ドッグフードを選ぶ際に「食いつき」を重視する飼い主さんは少なくないと思いますが、「食いつき」と「健康的な食事」は必ずしも一致するわけではありません。

私たちも、ジャンクフードを健康的な食事だと思って食べることはありませんよね。空になったポテトチップスの袋を見て、罪悪感を持った経験がある方は少なくないと思います。


3. 製造過程が見える化されている

ドッグフードをつくる様子

愛犬に食べさせるものですから、飼い主さんがどんなものを食べさせているか理解していなければいけません。原材料がどうやって作られ、それがどのように運ばれ、加工され、製品化されているのか。きちんと見える化されているドッグフードを選びましょう。

最低限の表示しかされていないものは、飼い主さんへの責任がしっかり果たせているとは言えません。自ら情報を見せるという姿勢は、「良いものをつくっている」「犬のことを真剣に考えている」という意思表明と言えるでしょう。


4. プレミアムフードを選ぶ

PETOKOTO FOODS

最近は量販店で売られているドッグフードよりも高価格な「プレミアムフード」と呼ばれるものが増えてきています。それらはレシピから材料、製造過程にこだわった「健康的な食事」を提供しようとしています。

ただ、「量販店で売られているドッグフードよりも高いから高いドッグフード」なのか。「家族の食事だと考えれば安いドッグフード」なのか。「高い」「安い」を決めるのは飼い主さん自身です。情報を鵜呑みにせず、飼い主さんが情報を確認した上で、良いと思うものを選んであげてください。


まとめ

安いからダメとは言えないが、安さには理由がある
栄養バランスや食材の質、添加物に注意が必要
食いつきに騙されず、原材料や製造過程を理解して選ぶ
プレミアムフードは健康的な食事である可能性が高い
犬を家族と考える人はとても多くなりましたが、家族であっても犬は犬。犬の栄養学はまだまだわからないことが多くあります。しかし、研究が進む中でわかってきた「犬の健康的な食事」は、犬の寿命を着実に伸ばしてきました。

ちょっとした違いであっても何年も積み重なっていけば大きな差を生み出します。いつまでも一緒にいたいと思う愛犬のため、飼い主さんが本当に食べてほしいと思えるドッグフードを選んであげてください。

【動画解説】ドッグフードの選び方

YouTubeのPETOKOTOチャンネルでは、獣医師の佐藤先生がドッグフードの選び方について解説した動画を公開しています。あわせてご覧ください。




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