猫の正常・異常な耳垢とは?耳掃除の必要性など獣医師が解説
猫の耳は、人とは違って、耳の奥にホコリや異物が入らないような構造になっています。耳の分泌物が固まると耳垢になります。自然に排出されるため、健康な猫さんであれば基本的に耳は汚れません。しかし、臭いと感じたり、耳垢の色がいつもと異なったり、耳垢自体が多いと感じたら病気が潜んでいる可能性があります。今回は獣医師の井上が猫さんの耳垢について解説します。
正常な耳垢 | 色 | やや茶色 |
---|---|---|
質感 | 少し湿っている | |
匂い | ほぼ無臭 | |
異常な耳垢 | 色 | 黒っぽい |
質感 | べったりとしている | |
匂い | 異臭を放っている | |
耳掃除の必要性 | 低。耳掃除に慣れていない猫の場合は病院での処置をおすすめします。 |
猫の正常・異常な耳垢ととは
耳垢とは、耳の中のアポクリン汗腺から分泌されたタンパク質、皮脂腺から出た脂肪が混ざり、さらにそれが古くなってはがれた皮脂と混ざったものです。
猫さんの正常な耳垢は、やや茶色で少し湿り気があり、匂いはありません。ただ、個体や季節によっては、耳垢の量や匂いは異なります。
そのため、その子にとっての「普段の状態」を把握することが重要です。耳垢は普段通りに生活しているうちに、自然に外に出ています。
耳に汚れがなければ、頻繁に猫の耳掃除をしなくても大丈夫です。そうはいっても、耳掃除をしないといけないほどたくさん耳垢が出てくるのは、何らかの病気や不調のサインかもしれません。
猫の異常な耳垢と考えられる病気
耳垢がベタベタしていたり、匂いが強いときは何か原因があるので動物病院での診察をおすすめします。耳垢がそのような状態だったときに、考えられる病気は以下の2つです。
- 耳ダニ感染症
- 外耳炎
1.耳ダニ感染症
耳ダニが、猫の耳や外耳道に寄生します。真っ黒なべったりした耳垢が見られます。多頭飼いの場合は、みんなにうつってしまうことがありますので早急な対処が必要です。2.外耳炎
耳に痛みや痒み、外耳道や周りが赤く腫れ、耳垢が出ていたり、耳をかく、頭をよく振る、耳をこすりつけたりしているときなどは外耳炎が疑われます。猫の耳垢対策として耳掃除の必要性
人間でも猫さんでも耳掃除は、現在では、あまりしないほうがいいという話になっています。というのも、耳垢を掃除しているつもりで、耳道を傷つけたり、耳垢をどんどん奥に押し込んでしまったり、力を入れすぎて、耳介の皮膚を傷つけてしまったりするためです。
また、耳に触られるのが慣れていないと、耳掃除自体が猫さんにとってストレスになってしまうこともありますので注意が必要です。
スコティッシュフォールドなどのたれ耳の猫さんはムレやすく、雑菌が繁殖しやすい環境ではありますが、本人が気にしたときに、周りを軽く拭くだけでよいと思います。
基本的には掃除をしなくてはいけないものではないので、気になるときは、動物病院で診てもらいましょう。もしくは頭を振ったり、耳が匂うようなら、動物病院で見てもらうとよいと思います。
猫の耳垢対策の耳掃除について
猫さんが耳掃除に慣れていない場合、慣れるまでは、コットンやガーゼをぬるま湯などで湿らせて、指の届く範囲だけ拭くだけでもよいと思います。
耳洗浄液(イヤークリーナー)など市販されていますが、直接耳に洗浄液を垂らすのは、慣れていないと嫌がったり、耳の中に傷があるときは、クリーナーを使うことで、染みてしまったり、余計に悪化させたりすることもあるので、使用の前にまずは動物病院で耳の中を見てもらいましょう。
ここで気をつけたいのは、綿棒は絶対に使ってはいけません。綿棒は、汚れを奥に押し込んだり、耳の中を傷つける恐れがあります。
また、暴れる場合は無理に掃除はしないこと。ストレスを与えてしまうと、「耳掃除=嫌なもの」とインプットされてしまいます。なので、嫌がったら「もう掃除はしない」。これが一番です。
猫の耳垢がないように耳のチェックしましょう
耳掃除は、あまり頻繁にしなくてもよいでしょう。耳洗浄液(イヤークリーナー)をつかうときは、耳掃除が慣れている子だけにしたほうがよいです。
猫さんの耳掃除は必要なときだけ、またはやらなくてもいいものです。嫌がっているのに無理に耳掃除をすると、猫さんにストレスを与えるだけではなく、怪我などトラブルを招く原因にもなります。
普段から耳をチェックして、「いつもと違うな」と思ったら、早めに動物病院に相談することをおすすめします。
参考文献
- 渡辺 英一郎著『猫の医学百科』双葉社,2002/11
- 赤塚 正明著『症状別 猫の健康がひと目でわかる本』ドリームクエスト社,2002/7
- 矢沢オフィス編集『もっともくわしいネコの病気百科―ネコの病気・ケガの知識と治療』学習研究社,2002/4
- 小暮 則夫監修『猫の病気がよくわかる本』実業之日本社,2008/8/29
- 小方 宗次編『くわしい猫の病気大図典』誠文堂新光社,2009/11/1
- 小野憲一郎、今井壮一、多川政弘、安川明男、若尾義人、土井邦雄『イラストでみる猫の病気』講談社,1998/5/19
- 山村 穂積監修『動物看護の実践』ファームプレス社,2005/3/1
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