【獣医師執筆】犬はえんどう豆を食べても大丈夫!栄養成分や与える際の注意点を解説

【獣医師執筆】犬はえんどう豆を食べても大丈夫!栄養成分や与える際の注意点を解説

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春先から初夏にかけて食卓に登場するえんどう豆。犬が食べても大丈夫な食材ですが、生のえんどう豆が持つ毒性やアレルギーなど、与える際に気をつけたいポイントがいくつかあります。今回はスナップエンドウを含む正しい与え方に加えて、えんどう豆を含むグレインフリーのフードが心臓病の原因になるという報告についても紹介します。

犬が食べて良いえんどう豆の栄養成分

えんどう豆

エンドウ豆とは、マメ科エンドウ属の豆です。食べ方や見た目がちょっと違うのですが、実はさやえんどうやグリーンピースと同じ植物です。早採りしたものがさやえんどう、少し成長したものがグリーンピース、成熟したものがえんどう豆といわれます(※3)

たんぱく質

ほかの多くの豆類と同じように、えんどう豆にはたんぱく質が含まれています。たんぱく質は、人間だけでなく犬にとっても、丈夫な体作りに必要な栄養です。しかしたんぱく質は体内では生成されませんので、食品などから摂取する必要があります。

βカロテン

えんどう豆に多く含まれるβカロテンは、抗酸化作用がある栄養素です。免疫力を高めてくれるので、ガンや心臓病の予防などにも効果的といわれています。これは、人間だけでなく犬にも同様のことです。また摂取することで、βカロテンがビタミンAに変換されます。ビタミンAは、皮膚のターンオーバーを調整するなどの役割を持っています。


カリウム

カリウムは、利尿作用があるほか、疲労回復にも良い効果を与えてくれます。欠乏すると「低カリウム血症」を発症し、子犬の中には、情緒不安や筋麻痺などの症状がみられたという報告もされています。とても大事な成分であることに間違いはないのですが、過剰に摂取することで今度は「高カリウム血症」の原因になってしまうため、注意が必要です。

カルシウム

別名「天然の精神安定剤」とも呼ばれているカルシウムは骨や歯を丈夫にするだけではなく、神経や筋肉の活動を円滑に進むようにサポートをする役割をします。

マグネシウム

マグネシウムは体内にある300以上の酵素を助ける働きを持つミネラルです。子犬と成犬共に、100gあたり0.04%〜0.3%のマグネシウムを摂取することが理想的とされています。

食物繊維

食物繊維には、便質を改善し便通を促す不溶性繊維と、腸内の不要なものを排出する水溶性繊維があります。えんどう豆には、特に不溶性繊維が多く含まれていて、これは私たち人間と同様に、犬にとっても腸内環境を整えてくれる大切な成分の一つになります。しかし、本来犬は食物繊維の消化が苦手です。そのため、えんどう豆のように食物繊維が豊富な食品は消化不良の原因になることがあるので与え過ぎには注意しましょう。

ナイアシン

ビタミンB群の仲間で、全身の酵素を助ける役割をしています。例として、皮膚や粘膜の炎症、神経症状を防ぐことが挙げられます。

パントテン酸

パントテン酸は糖質や脂質、たんぱく質の産生に必要な酵素を助ける働きがあります。

犬にえんどう豆を与える際の注意点

犬

01【犬にえんどう豆を与える際の注意点】与え過ぎ

前提として、犬は総合栄養食のごはんを食べていれば、それ以外は与える必要はありません。与え過ぎは肥満の原因になりますし、タンパク質のため、過剰摂取は腎臓病のリスクもあります。

おやつとして与える場合は、1日の最適カロリー量の10%以内にしてください。毎日の最適カロリー量はペトコトフーズの「カロリー計算」(無料)で簡単に計算することができます。

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02【犬にえんどう豆を与える際の注意点】レクチン

レクチンは、植物自身が草食動物や昆虫から食べられることを防ぐ作用があるのですが、腸内の壁にくっつきやすいという性質があります。過度に摂取すると、栄養の吸収を阻害したり下痢や嘔吐の原因になったりします。

03【犬にえんどう豆を与える際の注意点】アレルギー

食物アレルギーには、生まれつきの体質による先天性アレルギーと、長い期間同じ食材を食べることで発症する後天性アレルギーがあります。

初めて食べる食材を与える際は少量からスタートさせてあげましょう。アレルギーには以下の症状になる可能性が挙げられます。

  • 下痢
  • 嘔吐
  • 皮膚の痒み
  • 元気がない
  • 目の充血

上記のような症状があれば、すぐにかかりつけの獣医師に相談しましょう。一方で、アレルギーテストで陽性が出たから食べられないと思う飼い主さんも多いですが、それは間違いです。症状が出ていなければ食べさせても問題ありませんので、特定の食材を食べさせてアレルギー反応が出るか確認してみてください。




04【犬にえんどう豆を与える際の注意点】生はNG

生のえんどう豆には、トリプシン・インヒビターという犬にとって毒性の高い物質が入っています。トリプシン・イヒビターを摂取すると膵臓のタンパク質の分解酵素であるトリプシンの働きを阻害する恐れがあります(※1)。そのため、犬に生のえんどう豆を食べさせてはいけません。間違って食べてしまった場合は、かかりつけの獣医師に相談して指示に従いましょう。

05【犬にえんどう豆を与える際の注意点】腎臓疾患

人でも同様ですが、えんどう豆に含まれるプリン体は腎臓を通って尿酸になります。この尿酸が多すぎると腎臓病を引き起こす原因となります。結石になったことがある犬や腎臓に不安がある犬は、えんどう豆を多く食べすぎないように注意してください(※2)

犬へのえんどう豆の与え方

犬

犬はえんどう豆を食べることができますが、十分に湯がくことが大切です。また湯がいたものをそのまま与えると消化しきれない場合がありますので、細かくカットしたりすり潰したりしてから犬に与えるようにしてください。

初めて犬にえんどう豆を食べさせるときは少量からはじめ、アレルギー反応が出ないか、食べたあともしばらくは様子を見るようにしてください。

犬はスナップえんどうを食べても大丈夫?

エンドウ

「えんどう」と付く豆といえば「スナップえんどう」です。スナップえんどうもえんどう豆の一種で、アメリカから導入された品種です。犬が食べても大丈夫ですが、通常のえんどう豆と同じく、茹でるなどしてしっかり火を通し、細かく切ってから与えるようにしましょう。

えんどう豆が犬の心臓病の原因になる?

犬

アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration)は、2018年7月に発表した「FDA investigates cases of canine heart disease potentially linked to diet」において、えんどう豆やレンズ豆、他のマメ科植物またはジャガイモを主成分とする、いわゆるグレインフリーのペットフードを食べた犬と心臓病の関連性に疑いがあると報告しています。

えんどう豆を食べさせると心臓病になってしまうのではないかと心配する方もいると思いますが、えんどう豆と心臓病の関連性が疑われているわけではありません。あくまでグレインフリーのドッグフードを長期間食べている犬と心臓病の関連性が疑われているという話です。


まとめ

犬

抗酸化作用や整腸作用、疲労回復効果などが期待できる
生のえんどう豆はNG
十分に湯がき、細かくカットしたりすり潰したりして与える
えんどう豆は、犬が食べても大丈夫な食べ物です。手作りごはんの材料やトッピングなどに取り入れてみてはいかがでしょうか。栄養豊富なので、ついついたくさん食べさせたくなりますが、過剰摂取は禁物です。また犬の体質に合う・合わないも個体差があるので、相性を見ながら与えるようにしましょう。

参照


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