【獣医師監修】犬のぶどう膜炎の症状や原因は?治療法を獣医師が解説

【獣医師監修】犬のぶどう膜炎の症状や原因は?治療法を獣医師が解説

Share!

ぶどう膜炎は犬の目のぶどう膜(虹彩、毛様体、脈絡膜)に起きた炎症の総称で、原因は自己免疫疾患や感染症など多岐にわたり、全身の病気に伴って起こる可能性があります。放置すると白内障や緑内障を併発して視力低下・失明につながる恐れがあります。症状や治療法について、獣医師の佐藤が解説します。

この記事を執筆している専門家

佐藤貴紀獣医師

獣医循環器学会認定医・PETOKOTO取締役獣医師

佐藤貴紀獣医師

獣医師(東京都獣医師会理事・南麻布動物病院・VETICAL動物病院)。獣医循環器学会認定医。株式会社PETOKOTO取締役CVO(Chief veterinary officer)兼 獣医師。麻布大学獣医学部卒業後、2007年dogdays東京ミッドタウンクリニック副院長に就任。2008年FORPETS 代表取締役 兼 白金高輪動物病院院長に就任。2010年獣医循環器学会認定医取得。2011年中央アニマルクリニックを附属病院として設立し、総院長に就任。2017年JVCCに参画し、取締役に就任。子会社JVCC動物病院グループ株式会社代表取締役を兼任。2019年WOLVES Hand 取締役 兼 目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC院長に就任。「一生のかかりつけの医師」を推奨するとともに、専門分野治療、予防医療に力をいれている。

犬のぶどう膜炎とは

チワワ

ぶどう膜とは「虹彩(こうさい)」「毛様体(もうようたい)」「脈絡膜(みゃくらくまく)」という目の3つの組織をまとめて呼ぶ総称で、何らかの理由でそれらに起きた炎症を「ぶどう膜炎」と呼びます。それぞれの主な役割は以下の通りです。

  • 虹彩︰瞳孔の大きさを変化させ、目に入る光の量を調節する
  • 毛様体︰房水(ぼうすい)の産生と排出に関わり眼圧を調整する
  • 脈絡膜︰光を感じる網膜に栄養を届ける

ぶどう膜炎は、炎症が虹彩と毛様体で起きると「前部ぶどう膜」、脈絡膜で起きると「後部ぶどう膜」、すべての組織で起きると「汎ぶどう膜炎」に分かれます。ちなみに「ぶどう」という名称は果物のぶどうと色が似ていることから付けられたそうです。

ぶどう膜炎は病気ではなく、「体のどこかで起きた問題がぶどう膜に炎症を引き起こした」という状態を指します。ぶどう膜には血管が多くあることから、他の組織から影響を受けて炎症を起こしやすいのです。


炎症が起こる原因は全身でさまざま考えられ、ぶどう膜炎が原因になって他の目の病気が起こる場合もあります。特に脈絡膜で起きた後部ぶどう膜炎は適切に治療をしないと網膜剥離を起こして視力低下や失明につながる可能性があります。

ぶどう膜炎になりやすい犬種

ぶどう膜炎はどの年齢、犬種でも起こる可能性があります。遺伝性ではゴールデンレトリバーやグレートデーンが「色素性ぶどう膜炎」、秋田犬、サモエド、シベリアンハスキー、シェルティ(シェットランドシープドッグ)が「ぶどう膜皮膚症候群」を起こしやすいとされています。

犬のぶどう膜炎の症状

犬

ぶどう膜炎は片目でも両目でも起こり、以下のような症状が見られます。

  • 瞳が小さくなる(縮瞳)
  • 目の濁り
  • 白目が赤くなる(充血)
  • 目の痛み
  • まぶたの痙攣
  • 目をしょぼしょぼさせている
  • 目を細める、まぶしがる
  • 涙、目やにの増加

また、原因となる全身の病気によって食欲不振や発熱、多飲多尿、体重減少、神経症状などが見られる場合もあります。

ぶどう膜炎を放置してしまうと「白内障」や「緑内障」「網膜剥離」などの病気を併発してしまう可能性があるため、異変を感じたら早めに動物病院へ行くようにしてください。


犬のぶどう膜炎の原因



ぶどう膜炎は全身の影響を受けて起こるため、免疫性、感染性、代謝性、腫瘍性、外傷性など考えられる原因は多岐にわたります。しかし、全身を調べても原因がわからないことが多く、半数以上は特発性もしくは免疫性と診断されます。

感染性では細菌(レプトスピラ、ブルセラなど)や真菌(カビ︰クリプトコッカスなど)、ウイルス(アデノウイルス、ジステンパーウイルスなど)、寄生虫(ハエ幼虫、住血線虫、フィラリア、鉤虫、回虫など)などが挙げられます。レプトスピラ症は犬から人にうつる人獣共通感染症で、人のぶどう膜炎の原因にもなります。

代謝性では糖尿病や高脂血症が挙げられ、高脂血症はミニチュアシュナウザーやトイプードルに多いとされます。腫瘍性はメラノーマ(黒色腫)などの眼内腫瘍のほか、リンパ腫や血管腫、骨肉腫などの転移性が挙げられます。


犬のぶどう膜炎の治療法



目の炎症は「白内障」や「緑内障」「角膜炎」でも起こるため、ぶどう膜炎であることを確かめるため「スリットランプ(細隙灯顕微鏡)検査」「眼圧検査」「眼底検査」「眼超音波検査」などを行います。

例えば緑内障では眼圧が上がりますが、ぶどう膜炎では下がります。ぶどう膜炎と診断された場合、原因となる病気が隠れていないか全身を検査するため、血液検査や尿検査、X線(レントゲン)検査などを行います。ただ、多くは原因不明です。

ぶどう膜炎を治療する際は以下の3つに分けて考えます。

  1. 原因になっている病気の治療
  2. 炎症の抑制
  3. 合併症の治療

炎症を抑える薬(ステロイド・非ステロイド)や抗生剤、免疫抑制剤を点眼薬、内服薬として使用します。原因によっては外科手術が必要になる場合もあります。ぶどう膜炎は放置すると視力低下につながるため、早期治療が重要です。

まとめ

寝るトイプードル
ぶどう膜炎はぶどう膜で起きた炎症の総称
原因は自己免疫疾患や感染症などさまざま
放置すると視力低下・失明につながる可能性
ぶどう膜炎は虹彩や毛様体、脈絡膜に起きた炎症の総称で、原因は自己免疫疾患や感染症など多岐にわたります。放置すると白内障や緑内障を併発して視力低下・失明につながる恐れがありますので、早期発見・早期治療が大切です。異変を感じたら早めに動物病院へ行くようにしてください。

参考文献