犬が口呼吸できない理由や苦しそうな場合の対処法を獣医師が解説

犬が口呼吸できない理由や苦しそうな場合の対処法を獣医師が解説

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犬は基本的に口呼吸ができませんが、体温調節のためにパンティングと呼ばれる呼吸をすることはあります。しかし、それが止まらなかったり、鼻水などで鼻呼吸ができずフガフガ苦しそうにしたり、寝ている時にいびきをかいて口呼吸をしたりする場合は注意が必要です。なぜ犬は口呼吸があまりできないのか、その理由や口呼吸をしている際の対処法について、獣医師の佐藤が解説します。

犬の正常な呼吸とは

トイプードル

私たち人間は鼻だけでなく口を使った呼吸もできますが、実は人間以外の哺乳類は口呼吸があまりできません。犬もハァハァと浅く速い口呼吸「パンティング」をすることはありますが、ほとんどの空気は肺に達していません。パンティングは「熱性多呼吸」と呼び、汗をほとんどかかない犬が体温調節のために行う行動です。

特にパグやフレブルのようにマズルが短い犬種(短頭種)は鼻をフガフガ鳴らしながらパンティングする様子がよく見られますが、それは体温調節だけでなく鼻呼吸がうまくできない苦しさも一因になっています。短頭種は先天的に外鼻孔狭窄(がいびこうきょうさく)などの呼吸不全(短頭種気道症候群)を抱えていることが少なくありません。

なぜ犬は口呼吸があまりできないの?

人間は言葉を発する進化の過程で口呼吸もできるようになったと考えられています。実際、生まれたばかりの赤ちゃんは口呼吸ができず、言葉を発するのと同じタイミングで口呼吸もできるようになるそうです。しかし口呼吸では鼻の浄化機能を通さずに空気を取り込むわけですから、感染症や呼吸器疾患のリスクを高めます。

犬を含む人間以外の動物は口呼吸が「できない」のではなく、「口は食事」「鼻は呼吸」と機能を分けたほうが合理的だから「していない」のです。ですから、犬が体温調節のために一時的なパンティングをしているのは問題ありませんが、しなくていいはずの口呼吸をしている時は注意が必要です。

呼吸は飼い主さんが愛犬の異変を知るバロメーターになりますので、普段からどんな呼吸をしているか観察しておきましょう。

呼吸数の計測方法

呼吸数は1分間を基準にしますが、1分間ずっと数えるのは大変ですので15秒あたりの呼吸数を数えて4倍します。胸の動きを見ると数えやすいでしょう。安静時もしくは睡眠時に数えておくことで、「呼吸が早い」と思ったとき客観的に確かめる目安になります。


犬が口呼吸をしている時に考えられる理由

フレブル

犬が口呼吸をしている時に考えられる理由を以下の表にまとめました。

目的
考えられる理由
緊急度
体温調節 運動による体温上昇
気温・室温の上昇
熱中症
リラックス 興奮
不安・ストレス
呼吸 鼻づまり
痛み
病気

1. 体温調節のための口呼吸

犬は人間のように全身で汗をかいて体温調節をすることができませんので、パンティングで体温調節をします。運動した後や気温・室温が上がった際にするパンティングは正常な行動ですが、気温や室温が上がりすぎればパンティングでは体温上昇が抑えられなくなり、人間と同じように熱中症になってしまいます

熱中症は室内で起こるほうが多く、死亡事故につながることも少なくありません。梅雨の時期でも起こりますし、飼い主さんが涼しくしているつもりでも直射日光に当たって体温が上がりすぎることもあります。人の感覚ではなく、犬にとって暑くないかで判断するようにしましょう。


2. リラックスのための口呼吸

私たちは「喜怒哀楽など感情の変化」や「痛み、吐き気、発熱など体調の悪化」によって呼吸が速くなったり荒くなったりするように、犬もパンティングをして自分をリラックスさせようとします。同時に「吠える」「活発に動く」「震える」「あくびをする」といった行動も見られるかもしれません。

犬にとって原因が嬉しいこと、楽しいことなら問題ありませんが、原因が嫌なこと、不安・恐怖、体の不調によるものなら飼い主さんが対処してあげなければいけません。犬のストレスサインについて、以下の記事も参考にしていただくといいでしょう。


3. 呼吸のための口呼吸

鼻づまりによる口呼吸は短頭種でよく見られ、寝ている時にいびきをかいたり口が半開きになったりします。短頭種以外でも感染症による鼻水や腫瘍、異物混入などの理由で鼻づまりを起こすことがあり、完全に鼻が詰まって口呼吸をしている場合は、緊急性が高いと言えます。シニア犬(老犬)では老化による鼻づまりも見られます。

呼吸器や循環器の病気になると酸素が不足して呼吸が荒くなります。貧血や発熱など体の状態が悪くなり、鼻呼吸で十分な酸素を得ることができない場合も苦しさから口呼吸が見られるようになります。しかし、犬は口呼吸をしても十分な酸素を得ることはできませんので、早急に酸素室に入れて血液中の酸素濃度(血中酸素飽和度)を高めなければいけません。


犬が口呼吸をしている場合の対処法

診察を受けるジャックラッセルテリア

運動した後、一時的に体温調節のためのパンティングをしている場合は問題ありませんが、気温や室温の上昇でパンティングをしている場合は熱中症に注意が必要です。すぐ涼しい場所に移動して冷たい水を飲ませるようにしてください。

犬が酸素を取り入れるために口呼吸をするのは正常ではありませんので、以下のような変化が見られる場合は緊急性が高いと考えられます。できるだけ早く動物病院へ行くようにしてください。

  • 完全に鼻がつまっている
  • ぐったりして動かない
  • よだれを垂らしている
  • 鼻血が出ている
  • 呼吸数が多い
  • 嘔吐する


まとめ

黒柴
犬は基本的に口呼吸ができない
体温調節のパンティングは正常
ストレスで口呼吸をする場合もある
緊急性が高い病気もあるため注意
正常な呼吸数を知っておくことが大切
口呼吸ができるのは人間だけで、犬は基本的に口呼吸をしません。体温調節の一時的なパンティングであれば問題ありませんが、本来しないはずの口呼吸をしている場合は注意が必要です。緊急性を判断するためにも、正常な状態で愛犬の呼吸数を知っておくことが大切です。