【獣医師監修】犬の関節リウマチの症状や原因は?治療法を獣医師が解説

【獣医師監修】犬の関節リウマチの症状や原因は?治療法を獣医師が解説

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犬の関節リウマチは自己免疫の異常で起こる免疫介在性多発性関節炎の一種です。痛みや関節の変形を伴うことで散歩を嫌がる、足を引きずる、発熱するといった症状が見られます。早期に投薬治療を行うことで炎症を抑え、状態を良くすることができます。リウマチの原因や治療法から食事やサプリメント、サポーターを使ったケア方法まで、獣医師の佐藤が解説します。

この記事を執筆している専門家

佐藤貴紀獣医師

獣医循環器学会認定医・PETOKOTO取締役獣医師

佐藤貴紀獣医師

獣医師(東京都獣医師会理事・南麻布動物病院・VETICAL動物病院)。獣医循環器学会認定医。株式会社PETOKOTO取締役CVO(Chief veterinary officer)兼 獣医師。麻布大学獣医学部卒業後、2007年dogdays東京ミッドタウンクリニック副院長に就任。2008年FORPETS 代表取締役 兼 白金高輪動物病院院長に就任。2010年獣医循環器学会認定医取得。2011年中央アニマルクリニックを附属病院として設立し、総院長に就任。2017年JVCCに参画し、取締役に就任。子会社JVCC動物病院グループ株式会社代表取締役を兼任。2019年WOLVES Hand 取締役 兼 目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC院長に就任。「一生のかかりつけの医師」を推奨するとともに、専門分野治療、予防医療に力をいれている。

犬の関節リウマチ(免疫介在性多発性関節炎)とは

ヨークシャーテリア

関節リウマチとは、関節に炎症が起こって足を引きずったり(跛行)、関節が曲げられなくなったりする病気です。炎症は体の自分自身を攻撃してしまう自己免疫の異常によって起こることから、「免疫介在性多発性関節炎」とも呼ばれます。

免疫介在性多発性関節炎は軟骨や骨が破壊される「びらん性」と、破壊がほとんど見られない「非びらん性」に分けられます。関節リウマチはびらん性の免疫介在性多発性関節炎で、非びらん性では全身性エリテマトーデス(全身性紅斑性狼瘡、SLE)や特発性多発性関節炎、多発性関節炎・筋炎症候群などがあります。

びらん性多発性関節炎 関節リウマチ
多発性関節炎
非びらん性多発性関節炎 全身性エリテマトーデス(全身性紅斑性狼瘡、SLE)
特発性多発性関節炎
多発性関節炎・筋炎症候群

いずれも継続的な痛みや発熱を伴うため犬の生活の質が低下しますが、抗炎症薬を用いた治療が適切に行えれば予後は悪くありません。関節リウマチ(免疫介在性多発性関節炎)は犬でまれな病気とされていますが、小型犬が多く発症することから日本ではよく見られる病気になっています。

関節リウマチ(免疫介在性多発性関節炎)の好発犬種

トイプードルやダックスフンド、マルチーズ、ポメラニアン、シーズーなどの小型犬でよく見られ、シェルティーやグレーハウンドも発症しやすい犬種です。特定の犬種に多く見られることから、遺伝性が疑われています。

年齢は4〜6歳の若〜中齢犬で多く見られます。人間の場合は男性より女性が多く発症する病気とされ、犬でもメスの症例が多く見られる傾向はありますが明確なエビデンスはありません。

犬の関節リウマチ(免疫介在性多発性関節炎)の症状

散歩をするウェスティ

関節リウマチの主な症状として、「動くのを嫌がる・散歩に行きたがらない(運動不耐)」「足を引きずる(跛行)」「足を痛がる」「発熱」が挙げられます。その他に「食欲不振」「貧血」「元気がなくなる」「関節の腫れ、変形」「リンパ節の腫れ」なども見られます。

なお、人間では関節リウマチでリウマチ性心疾患を伴うことが多くありますが、犬ではまれです(※)


犬の関節リウマチ(免疫介在性多発性関節炎)の原因

関節リウマチは免疫機能の異常で起こりますが、なぜ異常になるのかは人間と同様、明らかになっていません。「遺伝」や「消化器疾患」「腫瘍」「ジステンパーウイルス」などが要因になっていると考えられています。


犬の関節リウマチ(免疫介在性多発性関節炎)の治療

診察を受けるジャックラッセルテリア

関節リウマチは、以下のような検査結果を総合的に見て診断します。CRPはC反応性タンパクのことで、炎症があるとこのタンパクの血中濃度が急上昇します。

  • 血液検査(貧血やCRP上昇、クームス試験、抗核抗体(ANA)、RA因子(リウマチ因子)の総合評価)
  • 関節液検査(好中球増加の有無)
  • レントゲン検査(骨や関節の破壊の有無)

関節リウマチの治療・予後

関節リウマチは原因不明であり、明確な治療法はありません。しかし、免疫抑制剤(ステロイドやシクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチルなど)を長期間服用することによって症状を軽減し、犬の負担を軽くすることが可能です。痛みや関節の変形で動けない場合は、サポーターを使うことで楽になります。

適切な投薬治療が行われれば予後は良好で、状態を見ながら投薬量を減らすこともできますが、痛みや関節の変形が酷く改善が見込めない程度に重症化している場合は断脚手術の検討が必要になります。


関節リウマチの食事療法

抗炎症作用のある栄養素として、オメガ3脂肪酸の一種である「EPA」やポリフェノールの一種「リコピン」などが挙げられます。EPAは魚油、リコピンはトマトに多く含まれます。投薬治療を前提として、サプリメントや、魚油やトマトを含むドッグフード、おやつを与えるのは有効です。


関節リウマチのマッサージ療法

関節リウマチで痛みを感じている犬にマッサージを行うことは推奨しません。犬も触られることを嫌がるはずです。痛みが落ち着いていれば筋肉をほぐすマッサージが有効な場合もありますが、間違ったマッサージは状態を悪化させるリスクがあります。飼い主さんの判断では行わず、ドッグマッサージに知見のある獣医師に任せることをお薦めします。


まとめ

散歩をするビションフリーゼ
リウマチは自己免疫の異常によって起こる関節炎の一種
小型犬に多いため日本ではよく見られる病気
重症化していなければ免疫抑制剤を用いた治療が有効
抗炎症作用のあるサプリや食材も一定の効果が見込める
犬の関節リウマチは自己免疫の異常によって起こる免疫介在性多発性関節炎の一種です。小型犬で多く見られ、痛みや関節の変形が起こり、犬が動けなくなったり発熱したりします。重症化すると切断も選択肢になりますが、早期に投薬治療を始めることができれば予後は良好です。定期検診を欠かさず、日頃から愛犬をよく観察するようにしましょう。