犬の不妊(避妊)去勢|必要性・時期・メリット・デメリット・手術の流れを獣医師が解説

犬の不妊(避妊)去勢|必要性・時期・メリット・デメリット・手術の流れを獣医師が解説

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犬の去勢・避妊手術について悩まれる方が多いかと思います。病気でもないのに全身麻酔をかけ体にメスを入れることに抵抗があるのはしょうがないことかと思います。飼い主さんから「室内飼いだし子どもができる心配はない」「かわいそう」「病気になりやすくなると聞いた」「太りやすくなる」などよく耳にします。今回は犬の避妊・去勢手術の方法やメリット・デメリットなどをバンブーペットクリニック院長の藤間が説明します。

犬の去勢・避妊について

犬

みなさんご存じの通り、犬の去勢・避妊手術は生殖能力を無くす手術です。男の子は精巣を、女の子は卵巣と子宮(もしくは卵巣のみ)を摘出します。

犬の去勢・避妊の時期

生後5カ月から遅くても1歳までに行うことをオススメしています。初回発情の前に行うことで、将来起こりうる「乳腺腫瘍」や「子宮蓄膿症」「会陰ヘルニア」といった病気を予防できる可能性が高まるためです。

お迎えした時点で1歳以上の場合は、なるべく早く手術を行うことを推奨しますが、その子の年齢によっては推奨されない場合もあるので、動物病院にてご相談ください。

犬の去勢・避妊のメリット

犬

性行動がなくなる

100%予防効果があるとはいえませんが、早い時期に行えばマーキングやマウンティングなどの問題行動がなくなることを期待できます。

処置が遅くなるほど、それらの行動が「楽しいこと」と学習してしまう可能性があるので、効果は期待しづらくなります。また女の子は、偽妊娠によるストレスや体調不良を回避することができます。


将来起こりうる生殖器系疾患の予防

女の子の場合

避妊手術をしなかった子の25%(4匹に1匹)は乳腺腫瘍ができるという統計があります。犬ではそのうち半分が悪性です。

1回目の発情が起こる前(6カ月齢程度)に避妊手術をしておけば、ほとんどの子に乳腺腫瘍ができません。また、2回目まで(1歳程度)でも8割以上が大丈夫というデータがあります。

また、子宮に膿が溜まる子宮蓄膿症という病気になることも珍しくありません。

大抵の場合、愛犬がぐったりしてから気づくので、状態が悪く、しかも高齢の子に麻酔をかけてメスを入れなければなりません。費用も普通に避妊手術をするよりも高くなってしまいますし、夜間救急だった場合なおさらです。

そして何よりもちゃんと知識を持っていれば回避できた病気にさせてしまったという後悔が残ります。


男の子の場合

性行動の予防の要素が強いですが、やはり高齢になった際に「睾丸の腫瘍」や「前立腺のトラブル」「会陰ヘルニア」など難しい手術が必要になるケースも少なくはありません。

犬の平均年齢が上がってきた結果、人間と同じように腫瘍、いわゆるガンができる子が増えてきました。その結果、一昔前よりも避妊・去勢の有効性が上がっています。


犬の去勢・避妊のデメリット

犬

子どもを作ることができなくなる

生殖能力が無くなることが挙げられます。子どもを作る予定がなければ問題はないかと思います。

太りやすくなる

性行動が減ることで運動量が減ったり、代謝に変化が起こることに起因します。飼い主さんがフードの量をちゃんと管理することで防げます。


犬の去勢・避妊手術の流れ

犬

※病院によって避妊・去勢手術の方針は異なり、手術を受ける犬が子犬か成犬かでも変わることがあります。


手術前日

一般的には、手術の前日夜から食事も水も摂らないようにして絶食していただきます。子犬の場合は絶食時間を短くする傾向にありますが、病院の指示に従ってください。

手術当日

当院の場合、午前中にお預かりし、血液検査等に手術することに問題がなければ昼の休診時間に手術を行って1泊入院としています。

手術時間は、去勢(男の子)で10分程度、避妊(女の子)でも30分もあれば終わります。準備や麻酔からの覚醒の時間を入れても1時間程度です。

日帰りも可能ですが、当日は麻酔をかけたこともあり、いつもと様子が違う場合が多いです。その様子を初めて見る飼い主さんが不安になり、夜間救急に電話することもあるようなので、念のため1泊病院で様子を診ることにしています。

手術翌日

血液検査、心電図、血圧、レントゲンを診て、手術に問題がないかを確認します。

当院では縫った糸が外に出ない「皮内縫合」という手法をとっていますので、ほとんどの場合エリザベスカラーを必要としません。したがって、退院当日からそれまでと同じ生活をしていただけます。

去勢・避妊の術後

当院のようにエリザべスカラーを付けない場合もありますが、傷口を舐めてしまうのを防ぐため、一般的に術後1週間ほどエリザベスカラーを付けます。

また、手術当日から数日間、抗生剤を1日1〜2回ほど飲みます。1週間後に抜糸をして、通常通り暮らしていただけます。抜糸をしない場合もありますが、抜糸をするまでは傷口に触れない・触れさせないようにしましょう。

犬の去勢・避妊のよくある質問

犬

マーキングをしなくなる?

男の子の場合、去勢をすることでマーキング行動の防止に期待される飼い主さんは多くいますが「その子による」としか言えません。

もともとマーキングが多い子であれば、去勢手術後でも引き続き、その行動をする可能性が高いですが、減少する子もいます。

性格に変化が出る?

「避妊・去勢手術をすることで、おとなしくなるなどの性格の変化があるか?」とよく聞かれます。しかし、手術した場合としなかった場合を比べることはできないので、正直何とも言えません。

これまで多くの避妊・去勢手術をした犬を見てきましたが、性格はそれほど変わらないというのが個人的な印象です。


犬の去勢・避妊は遅くても1歳までに!

ソファで伏せる犬

避妊・去勢手術は生殖系疾患の予防につながります
手術は生後5カ月から遅くても1歳までに行うことが理想です
術後の体重管理は飼い主さん次第です

「手術はかわいそう」「自然のままがいい」という気持ちから、つい「やらなくてもいい」「やらない方がいい」という情報を信じてしまいたくなります。

飛び交う情報に踊らされず、まずは専門家に相談していただければと思います。