犬の飲水量|1日に飲むべき量の計算方法や多い・少ない場合の対処法を獣医師が解説

犬の飲水量|1日に飲むべき量の計算方法や多い・少ない場合の対処法を獣医師が解説

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犬が1日に飲むべき水の量は体重1kgあたり50〜60mlが目安です。より正確な飲水量を知るためには季節(夏か冬か)や年齢(子犬か老犬か)などを考慮する必要があり、正常値から多い・少ないといった変化がある場合は病気の可能性を疑います。飲水量の計算方法や注意点・対処法について、獣医師の佐藤が解説します。

犬は1日にどれくらいの水を飲めばいいか

水を飲む犬

犬が1日に飲むべき水の量は、体重1kgあたり50〜60mlが目安とされています。体重3kgの犬であれば150〜180ml、5kgでは250〜300mlとなります。幅があるのは、同じ体重の犬でも活動量や心身の健康状態、年齢などによって飲むべき量が違うためです。

より正確な量を知りたい場合は、「1日の最適カロリー量=1日の最適飲水量」と考えていただけるといいでしょう。単位を「kcal」から「ml」にしたものが、1日の最適飲水量です。例えば1日の最適カロリー量が250kcalの犬は、1日に250mlの水を飲むのが最適ということになります。1日の最適カロリー量は、こちらの記事で計算方法が解説されています。


飲水量が多い・少ない場合の注意点

水を飲む犬

水は五大栄養素「タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル」に加えて六大栄養素に数えられることもあり、体から20%失われただけで死に直結するほど欠かせない栄養素です。しかし、飲みすぎれば中毒になることもあり(通常は起こりません)、多すぎず少なすぎず、適量を飲むことが大切です。

もし愛犬に「いつもより水を多く飲んでいる・飲まなくなった」といった変化が現れたら、病気に起因している、もしくは病気の原因になる可能性を疑ってください。

急に水を飲むようになった場合

気温上昇や乾燥、食事、おやつ、ストレスの影響を受けた「生理的な多飲」と「病的な多飲」が考えられます。まずは環境や食事を見直して、生理的な多飲が疑われる場合は考えられる原因を取り除きましょう。気温上昇の場合は熱中症の可能性もありますので、できるだけ早く原因を見つけて対処することが大切です。

万が一、1日に体重1kgあたり100ml以上飲むような場合は病的と言えます。原因として誤飲や腎臓病、ホルモン疾患、子宮蓄膿症などが考えられます。他にも、下痢や嘔吐を繰り返すと体が一時的に脱水状態に陥り飲水量が増加しますので、多飲になる病気は少なくありません。少しでも気になる様子がある場合は、動物病院で診てもらうことをお勧めします。


急に水を飲まなくなった場合

実は十分に飲んでいたり(飼い主さんの勘違いや食事から摂取できているなど)、環境の変化によるストレスで飲まなくなったり、病気が原因で「飲む気が無くなった」、もしくは口や体の痛みで「飲みたいけど飲めない」といった可能性が考えられます。

脱水症状が続けば腎臓や心臓、脳がダメージを受け、緊急性が高い状態に陥る可能性もあります。明らかに水を飲んでいなかったり、他に気になる様子が見られる場合は、動物病院で診てもらうことをお勧めします。

シニア犬(老犬)など水を飲むのが苦手な犬の対処法

老犬

年を取ると体を動かすのがおっくうになって飲まなくなったり、若くて結石や腎臓病の心配があるのにあまり飲んでくれなかったり、水を飲むのが苦手な愛犬に悩む飼い主さんは少なくありません。

前提として、口や体に強い痛みがあったり何らかの病気が考えられたりする場合は、すぐに動物病院で診てもらう必要があります。しかし日常的に水を飲むのが苦手という場合は、生活環境や食事を見直すといいでしょう。

生活環境を見直して水分摂取を促す

水を飲まない理由は一つとは限りませんので、以下のような工夫を組み合わせて試してみてください。

  • 新鮮な水を用意する(こまめに交換しましょう)
  • 食器台を利用する(肩の高さが飲みやすい位置)
  • 自動給水器を使う(流水が好きな子もいます)
  • 部屋ごとに水を置く(よくいる場所に置きましょう)
  • 静かな部屋に置く(騒音がストレスになっている場合も)
  • クレートの中に置く(安心できる場所で飲みたいかも)
  • 飲んだら褒める(楽しい記憶と紐付けましょう)

うまくいかない場合は一人で悩みすぎず、ドッグトレーナーや行動診療科の獣医師など専門家に相談することをお勧めします。飼い主さんが見逃していた意外な原因に気づけるかもしれません。

食事を見直して水分摂取を促す

普段ドライフードを食べている場合は、水を混ぜてふやかすことで水分摂取につながります。ただ、それならウェットフードに変えることも検討されるといいでしょう。ドライフードは超高温加熱によって水分をほとんど含みませんが(10%以下)、ウェットフードなら70%以上の水分を含みます。

また、飲水よりも食材の水分を摂取したほうが水分の吸収量が高いこともわかっています。1日の最適カロリー量の10%以内であればトッピングやおやつを与えても問題ありませんので、水分量の多い野菜や果物を与えるのもいいでしょう。カロリーが気になる場合は、おやつ代わりに氷をあげるのもお勧めです。

まとめ

水を飲む犬
飲水量の目安は体重1kgあたり50〜60ml
1日の最適カロリー量と同等量がより正確
急に水を飲む・飲まない場合は注意
飲まない犬は生活や食事を見直す
水は六大栄養素に数えられるほど重要な栄養素ですから、多すぎず少なすぎず、最適な量を飲まなければいけません。飲むのが苦手な犬には、生活や食事に原因があるかもしれません。病気の可能性には注意しながら、飲んでもらう工夫をしてみてください。難しい場合は、専門家に相談することでうまく解決するかもしれません。


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