【獣医師執筆】犬に必要な食事量・カロリーはどれくらい?計算方法と自動計算を紹介
カロリー計算ができると愛犬の1日に必要な食事量がわかるようになります。しかし、「RER」「DER」「係数」など聞き慣れない計算式に戸惑う飼い主さんも少なくないはず。そこで子犬からシニア犬(老犬)まで年齢別の必要カロリーや、簡易的な自動計算アプリなど、犬のカロリー計算のやり方を獣医師の佐藤が解説します。
カロリーとは?
そもそもカロリー(calorie)とはラテン語で熱を意味する「calor」から名付けられたエネルギーの単位で、「1gの水の温度を1℃上げるのに必要なエネルギー(熱量)が1cal」で、1kgの水の温度を1℃上げるのに必要なエネルギーが1kcalとされています。
エネルギーは動物が生きるために欠かせないもので、犬も食事から三大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)を摂ることでエネルギーを生み出し、余りを脂肪として体内に蓄えます。食べすぎると太るのは、この体の仕組みによるものです。
カロリーが不足するとどうなる?
カロリーが不足すると、体重減少がみられます。病気や薬の副作用、加齢などにより食欲が長期間低下すると、低栄養状態に陥ります。低栄養状態になると、運動機能や免疫機能の低下、傷の治癒の遅延、薬の代謝異常などが起こるため、重度の食欲不振や絶食が続く場合には、シリンジによる強制給餌や胃ろうチューブなどの積極的な栄養補給を行う必要があります。摂取しているカロリーが減少しているのに体重が増加する場合、甲状腺機能低下症などの病気が隠れている可能性があります。カロリーが過剰になるとどうなる?
カロリーが過剰になると、体重が増加します。理想体重よりも15~20%以上増加すると肥満と呼ばれる状態になります。肥満になると、膵炎や関節疾患、呼吸器疾患などになりやすかったり、手術時に麻酔が効きにくかったりするなど、様々なデメリットがあります。カロリーが過剰なのに体重が減少する場合には、たんぱく漏出性疾患や糖尿病などが隠れているかもしれないため、注意が必要です。犬に必要なカロリーの目安は?
手作りごはんを与えたい方やおやつの適量を知りたい方、ダイエットで与えるフード量を正確に計りたい方など、愛犬の最適カロリー量を知りたい方にオススメなのがペトコトフーズの「カロリー計算機」(無料)です。
愛犬のカロリー計算をする
ステージごとに最適カロリーは異なる
犬の最適カロリーは性別、不妊去勢手術の有無や活動量によって変わってきますが、どの犬にも大きく関係してくるのがライフステージの変化です。犬種によってカロリー量を変える必要はありません。
子犬期は体の発育のために成犬期と比べて2〜3倍のエネルギーが必要です。小型犬から大型犬までサイズによっても異なり、成長が早い小型犬はより多くのエネルギーが必要となります。逆に大型犬は摂りすぎにも注意が必要で、過剰なカルシウム摂取は骨の異常につながる場合があります(※詳しくは関連記事をご覧ください)。
小型犬だと6〜7歳、中・大型犬だと5〜7歳くらいでシニア期(老犬)に入り、基礎代謝や活動量が低下することで肥満になりがちです。その後、小型犬だと11歳、中・大型犬だと8歳くらいで老齢期(高齢期)となり、食べる量が減ることで痩せていきます。
犬のカロリー計算式
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自分で計算したい方向けに、犬のカロリー計算式について解説します。
犬の最適カロリーを知るためには、まず「安静時エネルギー量」を計算します。
安静時エネルギー要求量(RER)の計算方法
安静時エネルギー要求量はRER(Resting Energy Requirement)とも呼ばれ、「正常な犬が常温環境で食事はするが動かない状態」で必要な1日のエネルギー量を意味します。RERは以下の計算式で求めることができます。電卓を使う場合は以下の手順で計算してください。
- 体重を3回かける(体重 ✕ 体重 ✕ 体重)
- √(ルート)を2回押す
- 70をかける
iPhoneの電卓アプリを使う場合は、画面を横向きにするとルート計算のボタンが出てきます。
Androidの場合は、画面右端の緑の帯を左にスライドするとルート計算のボタンが出てきます。
例えば3kgの犬のRERを求める場合は、以下のようになります。
- 体重を3回かける→3 ✕ 3 ✕ 3=27
- √(ルート)を2回押す→2.2795...
- 70をかける→159.5654...
これで3kgの犬のRERは約160kcalだということがわかりました。これはあくまで安静時のエネルギー要求量で、実際は動きますのでもっと多くのエネルギーを必要とします。そのため犬ごとに不妊去勢手術の有無や年齢などの違いを加味し、活動量に応じたエネルギーを足したものが「1日のエネルギー要求量」です。
1日のエネルギー要求量(DER)の計算方法
1日のエネルギー要求量はDER(Daily Energy Requirement)とも呼ばれ、以下の計算式で求めることができます。係数は以下の表を参照してください。
成長期 | 4カ月未満 | 3.0 |
---|---|---|
4〜9カ月 | 2.5 | |
10〜12カ月 | 2.0 | |
不妊去勢している成犬 | 1.6 | |
不妊去勢していない成犬 | 1.8 | |
高齢 | 1.4 | |
肥満傾向 | 1.4 | |
ダイエット中 | 1.0 | |
重篤・安静時 | 1.0 |
例えば3kgの去勢している成犬の場合、160 ✕ 1.6=256となり、1日に摂るべき最適カロリー量は256kcalであることがわかります。
パッケージの給餌量は目安
よく「パッケージに書かれている通りに与えたのに太ってしまった」という話を聞きますが、パッケージに書かれた「体重が◯◯kgの子には1日◯◯gを与えてください」という説明は、あくまで目安です。RERに犬ごとの係数を掛ける必要があったように、犬ごとに最適な食事量は異なりますのでご注意ください。理想体重を知るためのBCS
理想体重がわからないと、いつまでダイエット用の給餌量を続ければいいのか迷ってしまうと思います。そんな場合は、「ボディコンディションスコア」(BCS:Body Condition Score)を利用しましょう。以下の表を参考に、3の理想体型を目指してください。その時の体重が理想体重の目安になります。ダイエットの方法について詳しく知りたい方は、関連記事も参考にしてください。
参照:『飼い主のためのペットフード・ガイドライン』(環境省)
BCS1 | 痩せ | 助骨、腰椎、骨盤が容易に見え、触っても脂肪がわからない状態。腰のくびれと横から見た際の腹部の吊り上がりが顕著です。背骨がゴツゴツと見える場合もあります。 |
---|---|---|
BCS2 | やや痩せ | 助骨が容易に触れます。上から見て腰のくびれが顕著、横から見て腹部の吊り上がりも明瞭な状態です。 |
BCS3 | 理想体型 | 過剰な脂肪の沈着がなく助骨を触れます。上から見て肋骨の後ろに腰のくびれが見られ、横から見た際は腹部の釣り上がりも見られます。 |
BCS4 | やや肥満 | 脂肪の沈着はやや多いものの、肋骨は触れます。上から見て腰のくびれはありますが顕著ではなく、腹部の釣り上がりはやや見られる程度の状態です。 |
BCS5 | 肥満 | 助骨は厚い脂肪に覆われて容易に触れません。腰椎や尾根部にも脂肪が沈着しています。腰のくびれはないか、ほとんど見られません。横から見て腹部の吊り上がりはないか、むしろ垂れ下がっている状態です。 |
体重の測り方やボディコンディションスコアの確認方法は、YouTubeの「PETOKOTOチャンネル」でも解説しています。以下の動画を参考にしてください。
愛犬のカロリー管理をサポートするおすすめごはん
犬の食べ物は「エサ」と呼ばれていた時代から、家族の「ごはん」と呼ぶ時代へ変わりました。私たちと同じように、犬も栄養バランスの良いごはんを食べることで健康を維持することができます。ごはん選びをする際は、以下の2点を気を付けていただくといいでしょう。
1. 総合栄養食を適量与える
犬が必要とする栄養は人間と同じではありません。そこで生まれたのが「総合栄養食」と呼ばれるごはんです。おやつなど「一般食」や「副食」と呼ばれるごはんだけ食べていると体を壊してしまいますので、「総合栄養食」のごはんを選ぶようにしましょう。総合栄養食を食べていても与える量が少なければ痩せてしまいますし、多ければ太ってしまいます。パッケージに書かれた食事量は目安ですので、ボディ・コンディション・スコアで「3」の「理想体型」を維持できる量を与えるようにしてください。
2. 添加物の少ない新鮮なごはんを選ぶ
犬のごはんと聞いて「カリカリ」と呼ばれる茶色い豆粒を想像される方も多いと思いますが、正しくは「ドライフード」と呼ばれる加工食品です。保存しやすく食いつきも良いことから犬のごはんとして一般的になりましたが、高温加熱によって食材本来の栄養が失われ、添加物も多く含まれることから見直しが進んでいます。新鮮な野菜を犬や猫に与え続けることで、様々ながんに罹るリスクを軽減することが研究で判明していたり、市販のドライフードを製造する工程の1つである高温加熱処理が、タンパク質の品質劣化を招き、熱に弱いビタミンを破壊し、さらには発がん性物質を生成してしまうことが、研究により判明しています。そこで生まれたのが素材本来の旨味や香りが楽しめ、余計な添加物も入っていない「フレッシュフード」と呼ばれる新鮮なごはんです。ペトコトフーズもその一つで、子犬からシニア犬(老犬)まで毎日のごはんにすることができます。もちろん総合栄養食で、主食としても、トッピングとしてもご利用いただけます。
実際に従来のドライタイプのドッグフードよりも、水分がより多く含まれた手作り品質のごはんを食べている犬の方が寿命が3年も長くなることが研究により明らかになっています。新鮮で美味しく、健康なごはんを選ぶことが長生きできる秘訣です。
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