犬にも漢方という選択肢を。効果的な病気や副作用について東洋医療科担当獣医が解説

犬にも漢方という選択肢を。効果的な病気や副作用について東洋医療科担当獣医が解説

日本において人の医療は西洋医療が中心ですが、最近では医療機関で漢方薬を処方することも珍しくなくなりました。有効性が科学的に証明されているものもあり、比較的身近になってきた漢方ですが、実は犬にも治療や養生として使用されています。とはいえ、まだまだ一般に広く知られているとは言えません。今回は、動物医療、特に犬における漢方に関して、ますだ動物クリニック院長で東洋医療科担当の増田が解説します。

犬と漢方について

ドッグランで走る2匹のチワワ

漢方とは

広い意味での漢方とは、古来中国から伝来した医術のことを指します。

5~6世紀ごろ日本に導入されて以降、日本の風土や気候に合わせて独自の発展をしていったものを「漢方」もしくは「日本漢方」と呼び、現代まで中国を中心に発展したものを「中医学」「中薬」と呼び分けることがあります。

いずれもルーツは同じものです。本稿では、これらを便宜上「漢方」あるいは「漢方薬」と呼びますが、いずれも西洋薬とは異なる視点で処方します。

漢方の使用目的

一般的に、西洋薬は病気を診断した上で、その治療を行う目的で使用します。

一方、漢方薬は、同じ病気であっても体質や体の不調の出方によって処方を変更することがあります。さらに、病気を治す治療というよりも、体を不調でない状態に導くことに重きを置いているという点が異なります。

つまり、しっかりとした病気の診断がついていない場合や、病気まで至っていないものの何となく調子がすぐれない「未病」といった状態にも適用できる点が漢方の特徴です。

漢方の処方方法

漢方医学では体の変化や異変をつぶさに観察するため、脈や舌の状態、皮膚の具合などの様子を観察することを重要視しています。

犬についても同様で、飼い主から話を伺い、生活習慣や性格、体質なども考慮します。これにより、犬の体の状態を示す「証」というものを決めていきます。

その「証」に合わせて漢方を選択して処方します。犬は人間に比べ、漢方に対する「先入観」が少ないので、極めて素直に反応を示します。場合によっては人間以上の反応を確認することもあり、犬と漢方の相性は良いと言えます。

漢方薬の副作用リスク

甘草

漢方薬は安全性が高く、副作用が出にくいといわれますが、ごくまれに「甘草」という生薬に由来する「偽アルドステロン症」や「発疹」などがみられることがあります。

服用し、体調に異変があった際は、必ず獣医師に相談しましょう。

犬に漢方を与える方法

漢方の材料

漢方外来の探し方

獣医師の中でも獣医漢方に精通している人はかなり少数派であり、獣医療の東洋医学は、人間ほど深く解明されていない部分もあるため、その効果に懐疑的な見方をしている先生がいるのも事実です。

そのため漢方外来を受けられる場合は、かかりつけの獣医師に相談、あるいは自身で調べることになります。

「犬 漢方 動物病院」といったキーワードで検索するか、「日本ペット中医学研究会」では実際に中医学を導入している動物病院を検索することができます。

漢方の金額目安

漢方は高額というイメージを持たれる方もいると思います。

薬(方剤)によって、また、動物病院によって金額が異なるため、一概には言えませんが、目安として1日あたり100円未満のものから数百円を超える場合までさまざまです。

不明なことは事前に相談することをおすすめします。

漢方の飲ませ方

漢方薬は「生薬」という自然由来の動植物が主原料であるため、その味がかなり強調されます。そのため、それぞれに味の特徴があり、なかには非常に強い苦みを持つものもあります。

飲ませやすさはその方剤によってさまざまといえます。飲ませにくいものは、投薬補助用のおやつや、缶詰に混ぜるといった方法がよくとられます。


犬の病気と漢方の使用例

漢方薬

犬に生じる病気のうち、どのような薬(方剤)を使用する例が多いかを紹介します。

ただし、同じ病気であっても、体調や体質によって、必ずしも同じ方剤を使用しない場合があります。これは、東洋医学でいう「同病異治」という考え方で「証」といわれる体の状態を総合的に判断したものを治療の指標とするためです。

従って、以下についてはあくまで参考程度にご覧ください。そのほか、紹介した以外にも処方の方法はたくさんあるので、漢方に精通した獣医師に相談しましょう。

異常 方剤の使用例
化膿性皮膚炎 十味敗毒湯など
アレルギー性皮膚炎 黄連解毒湯、荊芥連翹湯、イスクラ002清肌など
胃炎、腸炎 半夏瀉心湯、小建中湯、六君子湯、イスクラ006三仙など
ストレスに由来する問題行動 抑肝散、イスクラ011静心など
ひきつけなどの神経症状 桂枝加竜骨牡蠣湯、柴胡加竜骨牡蠣湯、イスクラ013熄風など
泌尿器に関連する疾患 猪苓湯、五苓散、イスクラ010通淋など
虚弱 補中益気湯、イスクラ001源気など
腰痛など運動器に関連するもの 疎経活血湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、イスクラ003通楽など

これらを漢方のみ、あるいは西洋薬との併用を行うほか、鍼灸をはじめとした東洋医学療法と組み合わせる場合もあります。

まとめ

草原を走るジャックラッセルテリア

漢方とは、古来中国から伝来した医術のことをいいます
漢方薬は、体を不調でない状態に導くことに重きを置いています
漢方に先入観のない犬にとって、漢方との相性は良いといえます
漢方薬は、副作用が出にくいですが、服用して異常があれば獣医師に相談をしましょう

漢方とは非常に広い意味を持つ言葉であり、長い歴史の間に地域性や風土に合わせて伝承された医学です。

人間のみならず、犬にも幅広く応用することができ、漢方ならではの長所を生かした治療や養生が可能です。西洋医療の併用が可能な場合もあり、これからさらに注目される分野と言えるかもしれません。

味や飲ませ方など一部で工夫が必要な部分がありますが、健康で長生きするための「健康寿命」を維持するためにも、生活の一部に漢方を取り入れてみてはいかがでしょうか?



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