プラズマクラスター技術がペットの皮膚病原因菌を99%抑制 実用性の検証はこれから

プラズマクラスター技術がペットの皮膚病原因菌を99%抑制 実用性の検証はこれから

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シャープは9月20日(木)、プラズマクラスター技術が犬や猫の皮膚病原因菌を99%以上抑制することを実証したと発表しました。犬の細菌性膿皮症原因菌、犬猫の外耳炎病原菌、ヒトへの感染もある犬猫の皮膚糸状菌原因菌などに対する抑制効果の検証が行われたもので、アジア獣医皮膚科専門医の岩崎利郎氏が監修しました。今回は小空間で高濃度のイオンを長時間照射する形での検証となり、同社は今後、実使用空間においての効果検証を行っていくとしています。発表に先立ち、岩崎氏が登壇した報道関係者向け発表会が開催されましたので、その内容を一部抜粋して紹介します。


IoT HE事業本部 空調・PCI事業部 古川猛PCI企画開発部長

IoT HE事業本部 空調・PCI事業部 古川猛PCI企画開発部長

まずプラズマクラスター技術の特徴についてお話しさせていただきます。従来の空気浄化技術では空気を製品に吸い込み、ホコリや菌をフィルターで除去してきれいな空気にして外に出すというものでした。それだと吸い込まれなかった空気、また壁や家具に付着した菌や臭いに対しての効果は非常に薄いものでした。一方、プラズマクラスター技術では、プラズマクラスターイオンを外に飛ばすことによって、壁や家具に付着した臭いや菌に対しても効果を得ることができるというのが特徴となります。

プラズマクラスター技術

自然界には水素のプラスイオンと酸素のマイナスイオンが混在していることが知られています。我々の調査では、これらのイオンは空気のきれいな森林などでは高い濃度で存在していますが、都市部では非常に少ないことがわかりました。これは都市部では排気ガスやPM2.5などで空気が汚れ、多くのイオンがそれを浄化するために使われているからだと考えられます。プラズマクラスター技術は自然の浄化力をお手本とし、プラスとマイナスのイオンを電気的に作ることで、森林のように綺麗な空気環境を作っていく当社独自の技術です。

プラズマクラスター技術

製品から放出されたプラズマクラスターイオンは空気中に送り出され、カビや浮遊菌の表面に付着します。そして非常に酸化力の強いOHラジカルに変化し、微生物表面のタンパク質から瞬時に水素を抜き取ります。そしてタンパク質が分解されることでカビや菌の作用を抑制します。抜き取った水素とOHラジカルは結合し、水になって空気中に戻ります。

プラズマクラスター技術

このような製品メカニズムにより除菌消臭の効果が得られます。壁など静電気が発生するとホコリがつきますが、プラスとマイナスのイオンが静電気を除去することでホコリを付きにくくするといった効果も得られます。水分子によって肌の保湿もプラズマクラスターの効果となっています。

プラズマクラスター技術

プラズマクラスター技術の「高い安全性」として、製品では実現できない高濃度イオンでの試験を第三者機関で行っています。イオン濃度は製品で7000から5万という数字ですが、それよりも非常に高い100万から1300万という濃度の中で安全性を実証しています。

プラズマクラスター技術

次に「確かな効果」として、効果効能検証の三つのステップがあります。まずは非常に小さな試験空間で効果検証を行います。そこである程度の効果を認められたものについて、実際に製品として搭載して実空間での効果検証を行います。最後に臨床試験というステップで効果検証を行なっています。

プラズマクラスター技術

プラズマクラスター技術は2000年に開発がスタートしたんですがそれ以降、国内外のさまざまな第三者機関を18年間ずっと通過させてまいりました。イオン発生デバイスの技術においても2000年の第1世代からスタートし、高濃度化、デバイスの小型化、低消費電力化などの進化を遂げてまいりました。今後もイオン発生デバイスの性能向上と用途拡大に取り組んでいきます。

プラズマクラスター技術

皮膚病の原因菌についてプラズマクラスターの効果を検証

今回の技術発表に至った背景について説明させていただきます。弊社はこれまでもペット向けの実証実験を実施し、その効果を確認してきました。2004年に猫の嘔吐下痢などの原因となる猫コロナウイルスに対する抑制効果、2010年に心不全・敗血症となる犬パルボウイルスに対する抑制効果、同じく2010年にはマウスのアトピー性皮膚炎に対する有効性の確認をしております。

プラズマクラスター技術

日本国内では1800万頭の犬と猫が飼育されております。これは15歳未満の子供の数を大きく上回る数字となっています。また8割以上の犬と猫は室内での飼育という形になっています。ペットが家族同然の存在となっている中、プラズマクラスターでさらなる貢献ができないかと検討を重ねてまいりました。その結果ペットの病気の多くを占め、耐性菌などにより治りにくい状況となっている皮膚病の原因菌についてプラズマクラスターの効果を検証することにしました。

プラズマクラスター技術

その検証していくにあたりまして獣医皮膚科専門医である東京農工大学岩崎名誉教授に監修いただきプラズマクラスター技術がペットの皮膚病の原因菌に対して抑制効果を発揮することを今回実証いたしました。その結果プラズマクラスター技術が人だけでなくペットに対しても健康的かつ衛生的で快適な空気環境を実現することがわかりました。

プラズマクラスター技術

今回の実証内容について岩崎名誉教授から詳細に説明していただきます。先生お願いします。

アジア獣医皮膚科専門医 岩崎利郎東京農工大学名誉教授

アジア獣医皮膚科専門医 岩崎利郎東京農工大学名誉教授

私は40年くらい獣医の皮膚科の世界に足を踏み入れています。皆さま方の中には獣医の世界に皮膚科の専門がいると聞いたことがない方もいらっしゃるかもしれません。40年くらい前というのは、「皮膚科なんて」という感じだったんですね。それが今はどうかと言うと、これは動物病院から保険の請求が上がってきた疾患の割合をアニコムさんがまとめたものですけど、皮膚病はざっくり24%で、耳が17%。あわせて40%くらいですね。重複があるとしても35%ぐらいはあるだろうと思います。

犬にも皮膚の疾患、耳の疾患があり、とても多い

人では皮膚科の需要というのは(他の科と比べて)それほど多くないのですが、動物ではとても多いのです。耳鼻科もそうですね。耳と皮膚というのはほぼ同じ問題だと考えていただいていいと思います。なぜかというと、耳というのは外耳炎が多い。ここで皆さんに認識してほしいのは、動物では皮膚病がとても多いということです。

なぜこんなに皮膚病が多いのかというと、40年くらい前は、犬は家の庭で放し飼いかせいぜいロープをつけて飼っているという状態ですよね。今は外で飼うということはすごく少なくなりました。小型犬を家の中で飼うということが多い。病気に関する違いはどこにあるかというと、外で飼っていると少々フケが出ようと毛が抜けようが皮膚が赤くなろうが、そんなものわからない。下痢をしていればわかりますが、皮膚病なんかは分からない。

ところが今みたいに家族と一緒に住むことがほとんどの場合ですと、ちょっとフケが出るとか毛が抜けるとか、赤くなるとか痒がるとかそういうことが容易にわかるようになりました。動物の病気の中で皮膚病が多いのは、飼い主さんにとって認識できる病気だからです。目に見えるからなんですね。皮膚病が増えてきたというより、認識されるようになった。飼い主さんにとって皮膚病というのはとても重要なことなんだというのがお分かりになると思います。

動物とヒトとの距離が変わった

その中でいろいろな病気があり、人と同じですがアトピーもあり食物アレルギーもあります。アトピーは治らない病気です。この頃、新しい薬が出ているんです。IL31(インターロイキン31)というものがあって、それがアトピーの痒みの原因だというのを見つけた会社があります。それを抑えるような薬を作ってしまえということで作ったら、何とアトピーの7割くらいは効いてしまったのです。

私は二次診療というのをやっているんですが、動物病院で治らないような病気がこちらに来るんですが、(新しい薬が出たことで)ほとんど一次診療で治ってしまうのです。我々のところにはそういう簡単な病気は来なくなった。昔は難しかったんですけどね。そういう薬だけで治ってしまう。治るというより、コントロールできると言ったほうが正しいですね。それでも、他の獣医さんがコントロールできない病気がある。それが細菌性膿皮症なんです。

犬の細菌性膿皮症はとても多い

菌が原因なんだから抗生物質を使えばいいじゃないかということなんですけど、抗生物質が効かないことがしばしばあるんです。困ったもんです。人でもよくMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)というのを聞いたことがあると思います。それと同じように、動物の細菌性の膿皮症の原因に耐性菌というのがあってとても困っているわけです。これはスタフィロコッカス・シュードインターメディウス(Staphylococcus pseudintermedius)というややこしい名前で、ブドウ球菌の一種だとお考えください。M今のところ人と動物で感染しあうということはほとんど報告されていません。

犬の細菌性膿皮症はとても多い

この写真は膿皮症の病変部のところをスライドガラスに当てて顕微鏡で見たものです。白血球は菌を食べて消化して殺してしまいます。そしてかわいそうに自分も死んでしまいます。そうやっていつも細菌と白血球の戦いがあるんですけど、我々はこの戦いを抗生物質という形で援護してやるんです。その抗生物質がなかなか効かないというのは困ったものです。

抗生物質が効かないとどうするんだと思いませんか? はっきり言ってどうしようもない場合もあります。何とか解決策がないかということを我々は常に考えています。我々だけじゃなくて世界中の皮膚病をやっている獣医師が考えています。消毒薬を使うとか、サプリを飲むとか、みんな努力をして何とかエビデンスのある治療法がないかと考えています。

耐性菌に効くものがあれば、抗生物質を減らすことができます。減らすことができれば他の耐性菌を作ることも少なくなるでしょうし、副作用の心配からも少しは離れられます。もちろん抗生物質は必要ですよ。必要ですけど、どんな薬にも副作用はつきものなので、使わないに越したことはありません。プラズマクラスターが他のものにも効くんだったら、これにも効かないだろうかと考えるのは当然ということで、今回の実験をするに至ったわけです。

犬の緑膿菌

もう一つは耳です。耳はこうやって外耳炎が起きます。外耳炎というのは、アトピーとかそういうものに付随して起きていることがほとんどです。こうなるととても大変で、緑膿菌もとても厄介なものです。緑膿菌は常在菌叢(きんそう)・正常細菌叢の一つなんですけど、正常細菌叢って聞いたことありますか? 我々の皮膚の上、あるいは耳の中には菌がいっぱいいます。それは常に一定の割合でいます。昔は培養でこういう菌がいますっていうのがわかっていたのですが、今では遺伝子検査でわかるようになってきました。皮膚の正常細菌叢も、こんなものがいるんだというのがわかってきています。緑膿菌もその代表的な一つです。

スタフィロコッカス・シュードインターメディウスによる膿皮症、それから耳緑膿菌による外耳炎、そしてもう一つ大事なことがありまして、猫の耳のミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)というカビによるものです。このカビは紫外線を当ててやると光ります。毛が光ってるのが分かりますよね。だから簡単に診断することができるんですけど、一つ問題があります。このカビは人にうつるんです。ミクロスポルム・カニスは猫の代表的な病気の一つなんですけど、常に気をつけてやらないと抱いているうちにうつってしまうということがしばしばあります。

カビはヒトにもうつる皮膚病

これは長毛の猫の方がかかりやすくて、短毛の猫はかかりにくいです。なぜだと思いますか? 猫がグルーミングをしますよね。カビは毛についてから感染するまで時間がかかります。毛の中に入れるかが勝負なんですね。毛が短ければ全部の毛を簡単に舐められて、長毛だと十分にグルーミングが行き届かないから長毛の方が多いといわれています。

試験の概要

以上の三つの事例に関して、プラズマクラスターは実際に菌を殺してしまうという実証をしようということで、三つの試験を始めています。この円筒形の装置の中にシャーレを入れて、上からプラズマクラスターを照射して、その後で菌の数を数えます。

試験の概要

スタフィロコッカス・シュードインターメディウスはプラズマクラスターイオンを照射しなかった方はすごい菌が生えてますよね。一目でわかると思います。でも照射してやるとこうやって全く生えてこないということが分かると思います。

試験1の結果

次に緑膿菌です。こうやって緑になるんです。これが(プラズマクラスターイオンを照射したほうでは)全く生えてきてないですね。緑膿菌にも恐らく効いていると考えて妥当だと思います。

試験2の結果

次にミクロスポルム・カニスとミクロスポルム・ジプセウム(Microsporum gypseum)ですが、後者はちょっとだけ生えてきたということがわかりましたが、ほとんど菌が生えてきませんでした。

試験3の結果

以上の三つの試験をやりまして、スタフィロコッカス・シュードインターメディウス、それから緑膿菌そしてカビ2種類の結果から、この三つに対して、「プラズマクラスターが99%抑制するだろう」「ほとんど成長・増殖を抑制してしまう」ということがわかりました。「こんな皮膚病ができてしまった」「痒いのを見るのが嫌だ」ということがあり、なかなか薬ではうまくないいかないこともあるという時に、ひょっとしたらプラズマクラスターイオンを部屋の中で、どれくらいかまだ分かりませんけど出しておくと、こうやって(抑制することが)できるようになるじゃないのかなと、この実験結果から思っています。以上です。

試験結果の総括


今後は実製品での効果検証へ

今後の展開について、古川PCI企画開発部長からは、「今回は効果効能検証の最初のステップとなり今後、次のステップとして実製品での効果検証を行うような開発を進めていきたいと考えています」と話しました。

今後の展開について

なお、シャープは6月にペット事業への参入を発表し、犬用ウェアラブルデバイスの開発のほか、7月から猫用トイレ「ペットケアモニター」の販売を開始しています。