猫の点滴|種類や自宅でのやり方などを獣医師が解説

「脱水症状に気をつけて!」という言葉、特に夏の間によく見かけますよね。暑さだけでなく、病気によっても脱水症状は引き起こされます。そのような時、病院では点滴治療が行われます。猫は高齢になると、脱水症状を伴う病気の代表である、腎臓病や糖尿病にかかりやすくなるため、点滴を行う機会が多くなります。愛猫に点滴治療が必要になったとき戸惑わないように、点滴治療がどんなものなのか知っておくといいですね。今回は猫の点滴について獣医師の飯塚が解説します。

猫の点滴について

長毛種の猫

点滴はどのようなときに必要になるのでしょうか。一般的な治療において、点滴は体の水分量や血液量が減っているときや、塩分やカリウムなどのミネラル分が不足しているときに必要になります。

上記の状態はさまざまな病気で引き起こされ、代表的なものとしては「下痢」や「嘔吐」「腎臓病」「糖尿病」「ホルモン性の病気」などが挙げられます。

このうち、下痢や嘔吐は一時的な治療で点滴が行われますが、腎臓病や糖尿病などは長期的な治療の一環として点滴が行われることが多く、数日~数週間おきに、定期的に点滴が必要なこともあります。


猫の点滴の種類

猫の横顔

大きな違いとして、「通院または自宅で行うことができる点滴」と、入院して「院内で行う必要がある点滴」の2種類に分けられます。

皮下点滴(自宅で行うことができる点滴)

皮膚と筋肉の間の、皮下という組織の空間に点滴の液(輸液)を注入して、少しずつ体内にしみこませていく方法です。5~10分程度で必要量を入れることができます。輸液量は体調や体重により変わり、おおむね50ml~200mlほどの量で行われます。

猫本人のペースで水分が吸収されるため、体への負担が少ないです。また、投与に必要な技術が比較的易しいため、腎不全などで頻繁に点滴が必要な場合は、自宅で飼い主さんに行ってもらうこともあります。

一方で、水分は皮下組織を通って血管に吸収されるという、ワンクッションがあるため、水分補給の効率はやや下がります。また投与できる薬剤が限られます。

静脈点滴

血管に輸液を直接流す方法です。手足などの末梢の血管から入れる場合と、首などの中心の血管から入れる場合があります。輸液を流すために、血管に細いプラスチックの管を入れる必要があります。

直接血管に水分を流すので、水分補給の効率が高く、さまざまな薬も同時に投与できます。一方で、心臓に負担がかかることがあるため、少量ずつしか体内に入れられず、必要量を体に入れるには、数時間かかります。

また点滴の管が繋がるため動きを制限する必要があり、入院でしか行えません。

自宅での猫の皮下点滴の仕方

見上げる猫

上記でも触れたように、腎臓病や糖尿病になった場合、状態によっては脱水がひどく、2、3日おきなどかなり頻繁に点滴が必要になることもあります。

もともと家から連れ出されるだけでストレスになることが多い猫では、このようなとき、飼い主さんによる、自宅での皮下点滴をお願いする場合があります。

手順には少しコツが必要です。ここでは、点滴の輸液バッグから直接行う方法をご紹介いたします。動物病院によっては、大きな注射器に輸液を吸って行うなど、方法が変わることがあります。実際に行う場合は、かかりつけの動物病院の指導に従ってください。

猫の皮下点滴に必要なもの

  • 点滴の液(輸液バック:必要量にあらかじめ印をつけましょう)
  • 輸液バックと針をつなぐ管
  • 翼状針
  • クリップ(ダブルクリップか目玉クリップ)
  • 輸液バックをひっかけるS字フック
  • 消毒用のアルコール綿花

猫の皮下点滴の手順

  1. 針を刺す場所は、肩甲骨をランドマークに、肩の真ん中のあたりがよいでしょう。場所が決まったら、皮膚を、三角テントを作るイメージで、親指~中指の三本の指でつまみます。
  2. アルコール綿花で消毒をします。
  3. 三角テントの真ん中に、針を斜め45度で刺します。
  4. 多少動いても外れないように、翼状針の翼部分と愛猫の毛を、クリップに挟んで留めます。

皮下点滴方法1 皮下点滴方法2
皮下点滴方法4

皮下点滴は、高低差による重力で点滴の液が入っていきます。したがって、輸液バックをなるべく高いところにフックでひっかけて吊るしましょう。

針を刺した後、十分に高低差があるのに点滴の液が落ちない場合は、針が上手に皮下組織に入っていないことが考えられます。その場合は、針を刺しなおしましょう。

注意事項

自宅で皮下点滴を行う場合は、必ずかかりつけの動物病院でレクチャーを受けてから行いましょう。皮下点滴は医療行為にあたります。自宅での皮下点滴は、あくまでも飼い主と猫の負担を減らすために、動物病院と飼い主の相互の同意の下で行われる処置です。

処置としては比較的易しいものですが、誤った方法で行えば愛猫の負担になることもあります。また、点滴量が多すぎて過水和になってしまった場合、肺水腫など深刻な状態を引き起こす可能性もあります。皮下点滴量は体調に合わせて、必ず獣医師と相談して決めましょう。

この他、処置に使った針などの道具は、医療廃棄物にあたり、家庭でごみに出すことはできません。必ず使った後は保管して、動物病院に持って行って捨ててもらいましょう。


暴れてしまう場合

病院では、いつもと違う環境に緊張して大人しくしていてくれても「家では暴れて点滴ができない」という場合もあります。

可能であれば、針を刺す人と、刺す間に愛猫を押さえてくれる人の、2人で点滴が行えると良いでしょう。どうしても1人でやらねばならない場合、体が収まるような小さな空間の中で点滴を行うと上手くいくかもしれません。

猫は狭いところを好みます。お気に入りの猫鍋のような体が収まるベッドの中や、蓋が開くタイプのキャリーに入れて行ってみてください。また、洗濯ネットに入れるだけでも、覆われている感覚により大人しくさせてくれるかもしれません。

猫の皮下点滴は病院で必ずレクチャーを受けましょう

長毛の猫

自宅での皮下点滴は、最初は針を使うこと自体が、非常に緊張を強いられると思います。かかりつけの病院で十分にレクチャーを受けましょう。

自宅での皮下点滴で、病気の愛猫が少しでも快適な毎日を送れるようになるといいですね。

参考文献

  • 第10回 日本臨床獣医学フォーラム記念大会 よくわかるクリティカルケア-輸液管理 岡野昇三


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