猫の肺水腫 | 症状や原因、治療法は?【循環器認定医が解説】

猫の肺水腫 | 症状や原因、治療法は?【循環器認定医が解説】

猫の肺水腫は肺に水が貯まる病態で、呼吸促迫や呼吸困難などの症状が認められます。今回は、猫の肺水腫で多く問題になる心原性肺水腫を中心に、ライオン動物病院、苅谷動物病院(循環器科)で勤務医をしている循環器認定医の深井が説明します。

肺水腫とは

肺水腫は、心原性と非心原性があります。
※心原性:心臓に原因があって生じる疾患

心原性肺水腫

心原性肺水腫は、猫では心筋症など左心不全を起こす疾患が原因になり、肺静脈圧、肺毛細血管圧が上昇することによって、血液の液体成分が血管から浸み出して発症します。肺の間質液が過剰になり代償的な除去が不可能になると間質性の肺水腫、さらに間質圧が肺胞内圧を上回ると肺胞性の肺水腫へと進行します。

非心原性肺水腫

非心原性肺水腫は、肺炎・腫瘍・急性呼吸窮迫症候群・炎症性肺疾患そして神経疾患(発作)など原因は多岐にわたり、肺毛細血管壁の変化によって血管透過性が亢進し、血液の液体成分が血管から浸み出して発症するとされています。

肺水腫にかかりやすい猫腫・年代

肺水腫にかかりやすい猫腫・年代は、心原性肺水腫と非心原性肺水腫で異なります。

心原性肺水腫

心原性肺水腫は心筋症などの心疾患に罹患(りかん)している猫の発症が多いため、心原性肺水腫にかかりやすい猫種は、雑種や心筋症好発猫種といわれているメインクーンラグドールブリティッシュショートヘアノルウェージャンフォレストキャットアメリカンショートヘアスコティッシュフォールドペルシャなどが挙げられます。

また、心筋症のかかりやすい年代が1歳未満から老齢期の広範囲であるので、心原性肺水腫も同様に広範囲の年代に罹患する可能性があります。

非心原性肺水腫

原因疾患によって異なります。

肺水腫の症状

肺水腫の代表的な症状は、呼吸促迫や呼吸困難です。

そのほか体重減少、元気消失、食欲低下などの症状が認められます。

肺水腫の原因

肺水腫の原因は、心原性肺水腫と非心原性肺水腫で異なります。

心原性肺水腫

心原性肺水腫の原因として、左心不全を引き起こす心筋症などの心疾患に罹患していることが考えられます。

また、輸液・全身麻酔・ステロイドの投与などが引き金になることもあります。

非心原性肺水腫

非心原性肺水腫の原因は、肺炎・腫瘍・急性呼吸窮迫症候群・炎症性肺疾患そして神経疾患(発作)など多岐にわたります。

肺水腫の検査・診断方法

胸部レントゲン検査を行います。
また、心原性か非心原性かの鑑別、胸水や心嚢水また心疾患の重症度を判定するために、以下の検査を実施します。
  • 心臓の超音波検査
  • 心電図検査 
  • 血圧検査
  • 血液検査
  • 血液バイオマーカー

非心原性の疑いが強い場合は、疑われる原因疾患に応じて検査を実施します。

肺水腫の治療

肺水腫は緊急性があり、酸素吸入や利尿薬の投与を行います。

そのほか、心原性の場合は強心剤や血管拡張薬など、原因となった心疾患(心筋症など)の治療を行います。重度の心筋症では動脈血栓塞栓症を合併していることもありますので、その場合は抗血栓薬を使用します。

治療・手術費用の目安

各病院の規定によります。

肺水腫の予後

肺水腫の予後は、心原性肺水腫と非心原性肺水腫で異なります。

心原性肺水腫

心原性肺水腫の予後は、病態によって大きく異なります。原因疾患が拘束型心筋症・拡張型心筋症・不整脈源性右室心筋症の場合の予後は短く、数週間から数カ月以内の場合が多いです。原因疾患が肥大型心筋症の場合の予後は、さまざまです。

非心原性肺水腫

非心原性肺水腫の予後は、各原因によって異なります。

肺水腫の治療期間・入院期間の目安

肺水腫の治療期間は、重症度によって異なります。

通常、酸素室(酸素ケージ)での入院治療が行われます。重篤な場合、入院中に呼吸停止に至る場合も少なくありません。肺水腫が改善し、呼吸状態が回復したら、一般ケージでの入院治療になり、状態の悪化がなければ退院となります。

治療は、肺水腫が再発しないように原因疾患の治療と併せて退院後も継続して必要です。

入院期間は、改善具合によって異なります。入院期間の目安は、平均すると3日から1週間程度のことが多いです。

肺水腫の予防法

肺水腫の予防法は、心原性肺水腫と非心原性肺水腫で異なります。

心原性肺水腫

心筋症に罹患している場合は、定期検査を実施し、適切な治療を行います。無症状の場合、心疾患に罹患していても気付きにくいことが多いです。したがって心筋症のリスクが高い猫種などで麻酔や点滴などをしなければいけない場合は、事前に検査をお奨めします。

非心原性肺水腫

原因疾患によって異なります。疑われる疾患がある場合は、その治療を行うことが予防となります。

定期検診で心疾患を早期発見

猫の肺水腫の多くは心原性で、主に心筋症など左心不全を引き起こす疾患が原因になります。肺水腫にかかると呼吸促迫や呼吸困難などの症状が認められ、重篤な場合、入院中に呼吸停止に至る場合も少なくありません。定期検診を忘れずに行うようにしてください。

引用文献

  • Etienne Côté, Kristin A. MacDonald, Kathryn M. Meurs, Meg M. Sleeper, FELINE CARDIOLOGY, 2011; WILEY-BLACKWELL
Share!