【トレーナー・獣医師監修】ポインター犬ってどんな種族?鳥猟犬の歴史・性格・特徴・育て方・里親の迎え方
猟犬の中には「ポインター」と分類される犬種がいます。ポインターは「鳥猟犬」として活躍し、獲物を見つけるとその位置をハンターに知らせます。今回はポインター犬の種類や性格、歴史などを紹介します。
この記事を監修している専門家
佐藤貴紀獣医師
獣医循環器学会認定医・PETOKOTO取締役獣医師獣医師(目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC、隅田川動物病院、VETICAL動物病院)。獣医循環器学会認定医。株式会社PETOKOTO取締役CVO(Chief veterinary officer)兼 獣医師。麻布大学獣医学部卒業後、2007年dogdays東京ミッドタウンクリニック副院長に就任。2008年FORPETS 代表取締役 兼 白金高輪動物病院院長に就任。2010年獣医循環器学会認定医取得。2011年中央アニマルクリニックを附属病院として設立し、総院長に就任。2017年JVCCに参画し、取締役に就任。子会社JVCC動物病院グループ株式会社代表取締役を兼任。2019年WOLVES Hand 取締役 兼 目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC院長に就任。「一生のかかりつけの医師」を推奨するとともに、専門分野治療、予防医療に力をいれている。
ポインター犬とは
ポインターとは、猟犬の中でも鳥猟犬として活躍してきた犬のことをいいます。
獲物を見つけると立ち止まって身をかがめて鼻先を前方に突き出し、前足を片方上げてハンターに知らせるという役割を担っていました。
この動作のことを「ポイント」または「ポインティング」ということから、ポインターと呼ばれています。
HRP犬種とは
鳥猟犬の中でもポインターやセッターのように獲物の場所を知らせる役割やスパニエルのように鳥を飛び立たせてハンターをサポートする役割、レトリーバーのように撃ち落とした獲物を回収する役割など仕事は細分化されていたため、狩りには複数頭の犬を同伴させる必要がありました。しかし役割ごとに別の犬を用意するというのは貴族だからこそ出来ること。そこで、庶民の猟で一人二役も三役も担える犬が必要とされた結果生まれたのが「HRP犬種」と呼ばれる犬たちです。
HRPとは「Hunt、Point、Retrieve」の頭文字で、追跡して仕留める行動、獲物を見つけてハンターに知らせるポイントの動作、獲物を回収する作業、その3つの役割を1匹で完結させることができます。
ポインター犬とセッター犬との違い
獲物を見つけてハンターにその場所を教える、という点でポインターとセッターの役割は同じですが、セッターは獲物を見つけた際にフセの姿勢をとって獲物の居場所を教えます。この状態を「セットする」と言うことからセッターの名前が付きました。
セッターにもポインターと同じようにスパニエルの血が入っています。もともとスパニエルも鳥猟犬で「フラッシング」というハンターが撃ちやすいように獲物を飛び立たせる仕事をしていました。
フラッシングをしている中で獲物を見つけてフセをする個体を発見したことから、他犬種と交配させてこの「セット」の能力を引き継がせたのがセッターの始まりといわれています。
また、初期のポインターは獰猛なところがありましたが、セッターを掛け合わせることで現在のような友好的な性格になっていきました。
ポインター犬の歴史
もともと猟犬たちは、獲物を発見するところから仕留めるところまですべてを担っていました。しかし15世紀に火縄銃が発明されると、ヨーロッパの貴族の間でスポーツや娯楽としての狩猟が流行します。
すると狩猟のスタイルも変わり、仕留めるのは銃を持ったハンターで、犬はそのサポートを行うようになります。
やがて匂いで追跡するセントハウンドや人間が入れない巣穴の中まで追い立てるテリア、仕留めた獲物を回収するレトリーバーなど、役割が細分化され、専門分野に特化した犬種たちが作られ始めました。
その中で、獲物である鳥を発見したら静かにその場所を知らせるという仕事をさせるべく改良されたのが「ポインター」や「セッター」といった鳥猟犬です。
ポインターは改良の過程でグレーハウンドやスパニエル系の血が入っており、片足を上げる動作はもともとスパニエル系の犬によく見られるのだそうです。
ポインター犬の性格
ポインターの仕事は静止して獲物の存在を知らせることであり、仕留めるために牙を剥いて果敢に向かっていくことはありません。そのため、猟犬とはいっても血気盛んな気質はなく、むしろ人の手伝いや共同作業が大好きです。
ハンターと意思の疎通がしっかりできることが求められていたことから、人の気持ちを汲み取ることにも長けています。
ポインターに分類される犬種
ポインターもセッターもHPR犬種も全部、ジャパンケネルクラブでは7Gである「ポインター・セター」に分類されています。イングリッシュポインター
Photo by miki_crazyuさん Thanks!
16~17世紀頃に南ヨーロッパの土着犬であったスパニッシュポインターがイギリスに持ち込まれ、ハウンドやスパニエルと交配することで、猟犬としての能力を高めていったのがイングリッシュポインターの始まりといわれています。
しかし、20世紀に入ると動物愛護の観点からスポーツとしての狩りが下火になっていきます。すると、しっぽをピンとたててポイントの動作をする毅然とした佇まいに注目され、ドッグショーで活躍するようになります。
長い足で馬のように軽やかに小走りしている姿はとても優雅で、それでいて楽しそうにボールやフリスビーで遊んでいる無邪気な様子のギャップがとても魅力的です。
ジャーマンポインター
ジャーマンポインター種の中にも「ジャーマン・ショートヘアード・ポインター」や「ジャーマン・ロングヘアード・ポインター」「ジャーマン・ラフヘアード・ポインター」などさまざまな種類がいます。
大きな違いは毛質や毛の長さで、犬種名にも被毛の特徴が入っています。
ジャーマンポインターたちの多くはHPR犬種で、1頭で獲物の追跡から回収まで行います。
彼らは「ジャーマン」とついていることからも分かるように全てドイツ原産の犬です。
ドイツ原産のポインターの多くがHPR犬種であることは、イギリスをはじめとするヨーロッパとドイツとの狩猟を行う層の違いに起因します。
イギリスでは狩猟は王侯貴族の遊びで庶民には縁がありませんでしたが、ドイツでは狩猟に対する貴族の独占が排除され、庶民の身近なものになりました。
その結果、ドイツの庶民が狩りに行く際に複数頭の犬を連れて行かなくても済むようにHPR犬種であるジャーマンポインター種を生み出していったのです。
ワイマラナー
ワイマラナーもドイツ原産のHPR犬種です。
ジャーマンポインターたちが庶民によって作出されたのに対し、ワイマラナーは狩猟能力の他にも外見の高貴さに注力して宮廷で繁殖されていました。
ハウンド種やジャーマンポインターの血が入っていると考えられていますが、20世紀までは上流階級の人々のみが飼育できる犬として厳重な管理下に置かれており、交配も秘密裏に行われたため、はっきりしたことは分かっていません。
光沢のある美しいグレーの被毛が特徴的で、これが森林の中で狩猟する際に保護色となって獲物から見つかりにくいことから「グレーゴースト(灰色の影)」という異名がつきました。
(スモール/ラージ)ミュンスターレンダー
ドイツのミュンスターという都市で作出されたポインター種です。
ドイツでは王侯貴族の狩猟の独立排除が行われたことから、庶民も狩猟に参入するようになり、さまざまなHPR犬種が作出されました。
その種類が増えすぎたため、18~19世紀にかけてポインター種を統一していこうという動きが盛んになります。
その中で生まれた犬種の一つが「ジャーマン・ロングヘアード・ポインター」です。
しかしミュンスター市に住むブリーダーがジャーマン・ロングヘアード・ポインターのスタンダードとして定められた毛色以外の、本来処分対象となる個体も分け隔てなくブリーディングを続けました。その結果、別の犬種として成立したのが「ラージミュンスターレンダー」です。
ラージミュンスターレンダーも正式に犬種として独立した当初は、ジャーマン・ロングヘアード・ポインター同様「ホワイトアンドブラック」と「ホワイトアンドレバー」いう2種類の毛色がいましたが、その後「ホワイトアンドブラック」のみがスタンダードとして指定されました。
そこで今度は「ホワイトアンドレバー」のカラーで生まれた個体が処分されるのを防ぐため、新たに体を小さくする改良を加えて別の犬種として成立させました。
これが「スモールミュンスターレンダー」になります。
ショートヘアードハンガリアンビズラ
「ビズラ」とはハンガリー語で鳥猟犬の意味で、ポイントもレトリーブも行えるマルチな犬です。同じ役割で性格や特徴も酷似しているワイヤーヘアード・ビズラという犬種もいますが、こちらは被毛が防寒性に優れています。
ショートヘアード・ハンガリアン・ビズラは寒さに弱いため、冬はワイヤーヘアード・ビズラにバトンタッチして狩猟は休業し、家庭犬として過ごすことが多いそうです。
ポインター犬との暮らし方
HPR犬種含めポインターたちは皆鳥猟犬であり、もともと人と協力して作業することが大好きで、家庭犬として人と生活することにも向いている犬たちです。
特にHRP犬種ではレトリーブ(回収)の作業も担っていたことからボールやフリスビーでの「取ってこい遊び」が好きな子も多いでしょう。
鳥や小動物を見ると追いかけたくなる本能があるため、小型犬や小動物との多頭飼育をする際はじゃれ合いが激しくなっていないか、冷静さを欠いていないか注意して見てあげる必要がありそうです。
また、ポインター種の多くはたれ耳であるため、耳のトラブルにも気を配らなければなりません。
泳ぎが好きな犬たちなので、たれ耳とはいえ耳の中に水や砂が入ってしまうこともあります。泳いだあとは軽く耳の中をチェックしてあげるとよいでしょう。
ポインター犬におすすめのドッグフード
犬の食べ物は「エサ」と呼ばれていた時代から、家族の「ごはん」と呼ぶ時代へ変わりました。私たちと同じように、犬も栄養バランスの良いごはんを食べることで健康を維持することができます。ごはん選びをする際は、以下の2点を気を付けていただくといいでしょう。
1. 総合栄養食を適量与える
犬が必要とする栄養は人間と同じではありません。そこで生まれたのが「総合栄養食」と呼ばれるごはんです。おやつなど「一般食」や「副食」と呼ばれるごはんだけ食べていると体を壊してしまいますので、「総合栄養食」のごはんを選ぶようにしましょう。総合栄養食を食べていても与える量が少なければ痩せてしまいますし、多ければ太ってしまいます。パッケージに書かれた食事量は目安ですので、ボディ・コンディション・スコアで「3」の「理想体型」を維持できる量を与えるようにしてください。
2. 添加物の少ない新鮮なごはんを選ぶ
犬のごはんと聞いて「カリカリ」と呼ばれる茶色い豆粒を想像される方も多いと思いますが、正しくは「ドライフード」と呼ばれる加工食品です。保存しやすく食いつきも良いことから犬のごはんとして一般的になりましたが、高温加熱によって食材本来の栄養が失われ、添加物も多く含まれることから見直しが進んでいます。新鮮な野菜を犬や猫に与え続けることで、様々ながんに罹るリスクを軽減することが研究で判明していたり、市販のドライフードを製造する工程の1つである高温加熱処理が、タンパク質の品質劣化を招き、熱に弱いビタミンを破壊し、さらには発がん性物質を生成してしまうことが、研究により判明しています。そこで生まれたのが素材本来の旨味や香りが楽しめ、余計な添加物も入っていない「フレッシュフード」と呼ばれる新鮮なごはんです。ペトコトフーズもその一つで、子犬からシニア犬(老犬)まで毎日のごはんにすることができます。もちろん総合栄養食で、主食としても、トッピングとしてもご利用いただけます。
実際に従来のドライタイプのドッグフードよりも、水分がより多く含まれた手作り品質のごはんを食べている犬の方が寿命が3年も長くなることが研究により明らかになっています。新鮮で美味しく、健康なごはんを選ぶことが長生きできる秘訣です。
ペトコトフーズの公式HPを見る
ポインター犬の迎え方
一度家族に迎えたら、子犬から老犬になっても大切に、命に責任を持ちましょう。
白髪も生えれば、病気にもかかるかもしれません。お金がかかるのは家族に迎える時だけではないことを踏まえ、もう一度考えた上で迎えることを検討してください。
保護犬から迎える
保護され、里親を探している犬は雑種だけでなく、血統書のある犬も多くいます。PETOKOTO代表・大久保の愛犬コルクも、もともと足が内股という理由でペットショップの競り市で捨てられていた元保護犬でした。
ペトコトの姉妹サイトである保護犬・保護猫マッチングサイト「OMUSUBI(お結び)」も、ぜひ覗いてみてください。
OMUSUBIで保護犬猫を探す
ブリーダーから迎える
好きな犬種や、血統など気にするのであれば、信頼できるブリーダーから迎えるという方法もあります。実際に見学に行き、どんな環境で飼育されているのかを確認することも必要ですが、飼う上でのアドバイスも直接聞くことができます。
ペットショップから迎える
家庭犬のタイプで20万円前後、海外からの輸入になると50万円ほどになることもあります。ペットショップで見かけることは少ないため、事前に問い合わせてみましょう。
ポインター犬を迎える前にきちんと理解しましょう!
運動が大好きで、ボールやフリスビー、泳ぎ、走りなど「何でも来い」のアクティブなポインターたち。
HPR犬種のようにマルチな役割をこなせたのも、根底にはポインター特有の「人との共同作業が好き」という性格があるからこそ。
そんなポインターたちと、ともに行動することでより親密になれるでしょう。
獣医師相談のインスタライブ開催中!
ペトコトフーズのInstagramアカウント(@petokotofoods)では、獣医師やペット栄養管理士が出演する「食のお悩み相談会」を定期開催しています。愛猫 のごはんについて気になることがある方は、ぜひご参加ください。
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