犬の皮膚が赤い場合に考えられる原因と対処法を獣医師が解説

犬の皮膚が赤い場合に考えられる原因と対処法を獣医師が解説

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犬の皮膚が赤い場合、痒くないこともありますが多くは痒みを伴う「皮膚病」や「アレルギー」が原因と考えられ、ストレスや内出血、腫瘍の可能性もあります。毛が抜けたり、フケやかさぶた、できもの・イボがある場合は皮膚病の可能性が高いでしょう。今回は犬の皮膚が赤い場合に考えられる原因やシャンプー療法、薬などを使った治療法について、獣医師の佐藤が解説します。

犬の皮膚が赤い場合に考えられる原因と病気

脱毛している犬

犬の皮膚が赤い場合に考えられる原因として、大きく「皮膚病」「アレルギー」「その他」にわけて解説します。

原因
皮膚の赤み以外の症状
1. 皮膚病(感染症) 細菌感染 赤いできもの、湿疹、かさぶた、フケ、臭い、脱毛、痒み
真菌(カビ)感染 脱毛、フケ、まれに痒み
寄生虫感染 痒み、脱毛、フケ
2. アレルギー 食物アレルギー 痒み、脱毛、フケ
アトピー性皮膚炎 痒み、脱毛、フケ
ノミアレルギー 痒み。背中の中央からしっぽの付け根にかけて症状が出ることが多い。脱毛、フケ
3. その他 心因性(ストレス) 被毛が茶色に変色、脱毛、フケ
内出血 貧血
腫瘍 腫れ、イボ、かさぶた、脱毛、フケ
免疫疾患(天疱瘡) 痒み、脱毛、フケ

1. 皮膚病(感染症)

健康な皮膚にはもともと常在細菌がいますが、何らかの原因で増えてしまうと「細菌感染症」になります。原因としてアレルギーや不適切なシャンプー、免疫力低下による皮膚のバリア機能低下、不衛生な環境などが考えられます。細菌が増殖している状態ですので臭いがいつもよりきついと感じることもあります。

マラセチアなどのカビが増えると「真菌感染症」になり、症状は円形脱毛やフケが多く、また臭いもキツイです。痒みはまれです。


2. アレルギー

食事の変更によって改善するアレルギー症状を「食物アレルギー」、ノミに噛まれることで起こるアレルギーを「ノミアレルギー」、疥癬(かいせん)の寄生による「疥癬によるアレルギー」、ハウスダストや花粉など以下のような特徴があっても原因が特定されないアレルギー症状を「アトピー性皮膚炎」と呼びます。

  • アトピー性皮膚炎:特定の時期に症状が悪化する、外だと症状が出やすい。
  • 食物アレルギー:食後突如症状が出るケースと、後に出るケースがある
  • ノミアレルギー:腰あたりに症状が強く出る
  • 疥癬によるアレルギー:痒みの中では最も激しい症状
食物アレルギーの症状は顔や耳、股関節、肛門周辺に出やすく、アトピー性皮膚炎では顔や耳、足の先(指の間)、脇の下、お腹周り、足や尾っぽの付け根などに出やすい傾向があります。ノミアレルギーは背中、後ろ足に限局する傾向があります。疥癬は耳の外側、お腹、肘や膝、また足先にも見られる傾向があります。

血液検査によるアレルギーチェックは2〜3万円ほどでできますので、皮膚症状がある場合は動物病院で検査してもらいましょう。食物アレルギーの検査精度は高くないため、原因食材の特定は除去食試験によって行います。


3. その他

感染症やアレルギー以外でも、「ストレス」で足先などを過剰に舐めてしまって赤く炎症になることがあります。ストレスは運動不足から起こることも多く、散歩や遊ぶ時間、おでかけの頻度を増やしてあげましょう。

どこかにぶつけたアザ程度の「内出血」は自然に回復しますが、止血異常では命に関わる場合があります。血液を止める機能は血小板による一次止血と凝固因子による二次止血があり、そのどこかに異常があると皮膚にどす黒い大小さまざまの斑点のようなものが見られます。痒みはありませんので本人はほとんど気にしませんが、重度の場合は貧血などが認められます。

免疫疾患「天疱瘡」は免疫機能が自分自身を攻撃してしまう原因不明の自己免疫疾患で、皮膚疾患の中ではまれな病気です。顔や耳、お腹などに赤みや痒み、膿疱、かさぶたなどが現れます。免疫抑制剤を使って症状をコントロールしますが、治療は生涯にわたります。


犬の皮膚が赤い場合の対処法

犬

緊急性が高い可能性もあります。どこかにぶつけた様子もなく、本人も気にしていないのに斑点る(紫斑)が複数見られ場合は止血異常による内出血の可能性があります。腫れている場合は肥満細胞腫が疑われますし、急に赤くなった場合はアナフィラキシー(アレルギー)の可能性があります。様子見はせず、なるべく早く動物病院で診てもらうようにしてください。

舐めるのをやめさせる

赤くなった皮膚を舐めている場合、口腔内細菌が皮膚に付着し、蒸れてしまうことによって細菌がさらに繁殖する二次感染を起こすことが少なくありません。舐め続けることでどんどん悪化しますので、舐めさせないようエリザベスカラーもしくは洋服などを着させましょう。

皮膚を清潔に保つ

皮膚を清潔にしましょう。犬用のシャンプーで洗うのが一番ですが、ご自宅にない場合は水道水で洗うのも効果的です。洗った後はしっかり乾かしましょう。ただ、皮膚の状態によりシャンプー剤や頻度も重要ですので、かかりつけ医に相談してから対処を行うようにしましょう。


ストレスを排除する

特定のタイミングで皮膚を舐めたり噛んだりする場合はストレスを感じている可能性があります。散歩の量や多頭飼いしている動物との相性、来客(過去に嫌なことをされた経験がある)などストレスの原因を探り、軽減する努力をしましょう。


食事を見直す

ごはんにアレルギー物質が含まれていることが原因で皮膚が赤くなっている可能性もあります。ドイツの研究チームによると、犬のアレルゲン食品として最も報告が多いのは牛肉で、乳製品、鶏肉、小麦と続いたそうです。



症状が出ている場合や予防したい場合はアレルギー検査をお勧めしますが、検査で陽性が出たからといってあれもこれも食べさせないというのは食の選択肢を狭めることになりますのでやめましょう。原因食材の特定は「除去食試験」で行われます。

除去食試験は時間と労力がかかりますので、症状が軽ければ疑わしい食材が含まれないごはんに変えて様子を見てみるのもいいでしょう。タンパク質がアレルゲンになりますので、原因となるタンパク源をあげない方法や「加水分解」といってタンパク質の分子量を小さくしてアレルゲンにしない方法があります。

最近ではアレルゲンがタンパク源に限らないこともわかってきています。除去食試験で全ての食材を試せるわけではないため原因を特定することは難しく、まずは症状が軽減できる食事を探すことが目標になります。


まとめ

チワワ
皮膚が赤い場合はなるべく早く病院へ
感染症やアレルギーの可能性がある
ストレスや腫瘍が原因の場合も
舐め続ける場合はカラーをつけるか洋服などで防御する
皮膚の赤みは何かしらの問題があって起きており、緊急性が高い可能性もあります。強い痒みを伴う場合は愛犬の生活の質を著しく下げ、何度も舐めたりかいたりすることで悪化してしまいます。早期治療が早期回復につながりますので、「いつもと違うな」と感じたら早めに病院へ連れて行きましょう。


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