犬の指間炎|症状や原因、治療法を獣医師が解説

犬の指間炎|症状や原因、治療法を獣医師が解説

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犬の指や肉球の間に炎症が起きる指間炎は、細菌感染やマラセチアなどの真菌感染やアレルギー、心因性、外傷などさまざまな原因で起こります。複数の原因が重なっている場合もあり、慢性化させないためにも適切な治療が大切です。指間炎の症状・原因・治療法から、市販薬の注意点や靴下・サプリなどご家庭でできるケアについて、獣医師の佐藤が解説します。

犬の指間炎とは

指間炎の犬

指間炎(指間皮膚炎)は、犬の指や肉球の間に炎症が起き、赤くなったり腫れたりする病気です。悪化すると血や膿が溜まってコブ状になる場合もあります。

指間炎が起こる原因は細菌や真菌感染、アレルギー、外傷、心因性などさまざまで、犬が舐めたり噛んだりすると悪化して治りにくくなります。複数の原因が重なって起きることも多く、一時的に治ったとしても再発して慢性化するケースもあります。

指間炎の症状

初期は赤みが出る程度で気づきにくく、飼い主さんが見逃しがちです。トリミングサロンでトリマーが気づくことが少なくありません。放置して犬が舐めたり噛んだりすると、悪化して腫れてしまいます。

早期発見・早期治療が重要ですので、日頃から足や肉球に異常がないかチェックするようにしてください。足を頻繁に舐めたり噛んだりしている場合は、炎症が起きている可能性がありますので注意が必要です。


指間炎になりやすい犬種

指間炎はどの犬種でも起こる可能性があります。ただ、柴犬やシーズー、フレンチブルドッグ、ブルドッグ、ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリーバーなど皮膚病が多い犬種や​​短毛種、大型犬は指間炎になりやすい傾向にあります。

犬の指間炎の原因と治療法

柴犬

指間炎の主な原因として「細菌感染」「真菌感染」「アトピー性皮膚炎」「食物アレルギー」「外傷」「免疫性疾患」「歩き方」「心因性」などが挙げられます。対症療法として炎症を抑えるための抗炎症剤を使用することもありますが、基本的には原因の治療が優先されます。

細菌感染・真菌感染による指間炎

膿皮症などの細菌感染、マラセチア皮膚炎や皮膚糸状菌症などの真菌(カビ)感染によって指の間に炎症が起きる場合があります。

治療はシャンプー療法やゲンタシンなどの抗菌剤によって行います。抗菌剤の不適切な使用は抗菌剤が効かない薬剤耐性菌が増える原因になります。抗菌剤を処方された場合は飼い主さんの判断で使用を止めたり量や回数を減らしたりせず、指示された量や期間を守るようにしてください。赤みがひどい場合には、抗生剤と合わせてステロイドの内服薬や外用薬を使用する場合もあります。


アトピー性皮膚炎による指間炎

アトピー性皮膚炎は、遺伝的にアトピー体質の犬がダニやハウスダスト、花粉などの環境アレルゲンにさらされることで発症します。足が痒くなりやすく、舐めたり噛んだりすることで炎症が悪化します。

こまめな掃除でアレルゲンを避け、シャンプー療法や保湿剤で皮膚の状態を良くし、痒みを抑えるために​​ステロイド剤、抗ヒスタミン剤、免疫抑制剤などの薬を使いながら症状の改善を目指しますが、慢性化して再発するケースが少なくありません。アレルゲンを少しずつ投与して体を慣らしていく減感作療法だけが根本的な治療法になります。


食物アレルギーによる指間炎

ある特定の食べ物に含まれるタンパク質が体内で異物と判断されると、痒みや嘔吐、下痢などの症状が出ます。痒みが最も多く、足を舐めたり噛んだりすることで炎症を起こしてしまいます。食物アレルギーの場合は原因となる食材を除去することで症状が改善します。

アレルギー検査は食物アレルギーでは参考程度にしかならず、原因を特定するためには除去食試験を行う必要があります。飼い主さんの判断で原因となる食材を決めつけてしまうと、不必要に食の選択肢を狭めてしまうことになります。必ず獣医師に相談して治療を進めてください。


外傷による指間炎

フレンチブルドッグ

お散歩をしているときにトゲが刺さったり、小石や小枝が挟まったりして怪我をすると炎症がひどくなって指間炎の原因になる場合があります。特にメリケンソキソウやイネ科のノギは刺さると化膿してしまいますので、犬が茂みに入ってしまった場合は帰宅してから被毛に付いていないか、足に刺さっていないかを確認するようにしてください。数日たってから症状が出ることもありますので、注意深く見てあげてください。

夏は高温になったアスファルトでのヤケドに注意が必要です。冬は乾燥による肉球のひび割れに注意が必要です。ひび割れは悪くなる前にワセリンなどの肉球クリームを塗ってケアしてあげるといいでしょう。


免疫性疾患による指間炎

天疱瘡(てんぽうそう)や全身性エリテマトーデスなど、免疫機能に異常が起きて正常な組織を自ら攻撃してしまう自己免疫性皮膚疾患によって指間炎が起きる場合があります。生涯にわたっての治療が必要となり、ブレドニゾロンなどの免疫抑制剤を使用して状態をコントロールしていきます。

歩き方による指間炎

肥満や関節炎、股関節形成不全など歩き方に異常がある場合、足への偏った負担が指間炎の原因になる場合があります。肥満の子はダイエットをして適正体重にするなど、それぞれ原因を治療することが指間炎の改善につながります。


心因性による指間炎

犬はストレスを感じると自分を落ち着かせるために体を舐めることがあり、継続して舐め続けると炎症が起こってしまいます。引っ越しや飼い主さんの環境の変化などがあるとストレスになってしまいます。

一方で、飼い主さんが散歩をサボったり遊んでくれなかったり、留守番が長かったり、暇であることがストレスになる場合もあります。飼い主さんだけで対処するのが難しい場合は、ドッグトレーナーや行動診療科の獣医師などに相談するといいでしょう。


犬の指間炎のケア

指間炎で靴下をはく犬

指間炎は犬が気にして舐めてしまうため薬が効かなかったり、炎症が悪化したりして治療が長期にわたることが少なくありません。お散歩の後は汚れをふいて水気もしっかりを取るなど清潔な状態を保つようにしてください。

薬を舐めてしまう場合

せっかく薬を塗っても犬が舐めてしまうと薬の効果が出ません。気をそらす工夫として、薬を塗るタイミングを食事や散歩の前にするといいでしょう。エリザベスカラーを使って舐められないようすると確実に効果を出すことができます。嫌がらない子であれば犬用の靴や靴下も有効です。


被毛のカット

足の間や肉球の周辺に生える被毛を短くカットすることで清潔さを保つことができます。短くするためハサミではなくバリカンを使用しますが、慣れていないと小さな傷を作って炎症を悪化させてしまう可能性があります。指間炎の子はトリミングサロンや動物病院でカットしてもらうとよいでしょう。

オロナインなどの市販薬はNG

皮膚の炎症に対して、飼い主さんの判断でオロナインなど抗菌作用のある市販薬を使用するのはやめましょう。一時的な処置として使うこと自体に問題はありませんが、別の原因を見落としてしまったり、抗菌剤の不適切な使用が耐性菌を増やす原因になったります。

必ず獣医師に相談して、適切な薬をもらって指示通りに与えてください。飼い主さんの判断で投薬を中止したり量を減らしたりすると、悪化してしまったり治療期間が長引いてしまったりする可能性があります。

食事療法やサプリメント

アトピー性皮膚炎などアレルギーが原因で指間炎が起きている場合は除去食による食事療法で改善する可能性があります。「オメガ3脂肪酸」(特に魚油に含まれるEPA)には消炎効果があるため、含まれるフードやサプリメントで炎症の改善効果が期待できます。

指間炎が再発する場合

指間炎は体質によって慢性的に再発する場合があります。シャンプーで清潔に保つことが予防につながりますが、指間炎の原因や状態によって最適なシャンプー剤を使う必要があります。まずはシャンプー療法を行っている動物病院やトリミングサロンで相談するようにしてください。


まとめ

犬のお尻
日頃からチェックして早く気づくことが大切
複数の原因が重なって起きる場合がある
薬は獣医が処方したものを指示通りに使用する
慢性化させないためにも自宅でのケアが重要
指間炎は犬が足を舐めたり噛んだりして炎症が悪化するケースが多く、舐めたり噛んだりする理由を探して解決しないと治りも悪くなってしまいます。足を清潔に保ったり、部屋を掃除したり、適度な運動をさせたり、飼い主さんがご自宅でできるケアもたくさんありますので、獣医師に相談して慢性化させないよう適切に治療していきましょう。