【獣医師執筆】猫の食物アレルギーが起こるのはなぜ?症状や原因、検査方法、おすすめフードを紹介
猫の食物過敏症(食物アレルギー)とは、痒みを伴う皮膚の病気です。原因となる食材を特定し、適切な食餌を用いて上手く付き合っていけば良好な経過が望めますが、原因となる食材を除いた食事を続けなければならないので、家族や周りの人の協力が必要です。今回は、猫の食物過敏症の症状や原因、治療法などについて皮膚科認定医の春日が解説します。
この記事を監修している専門家
佐藤貴紀獣医師
獣医循環器学会認定医・PETOKOTO取締役獣医師獣医師(目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC、隅田川動物病院、VETICAL動物病院)。獣医循環器学会認定医。株式会社PETOKOTO取締役CVO(Chief veterinary officer)兼 獣医師。麻布大学獣医学部卒業後、2007年dogdays東京ミッドタウンクリニック副院長に就任。2008年FORPETS 代表取締役 兼 白金高輪動物病院院長に就任。2010年獣医循環器学会認定医取得。2011年中央アニマルクリニックを附属病院として設立し、総院長に就任。2017年JVCCに参画し、取締役に就任。子会社JVCC動物病院グループ株式会社代表取締役を兼任。2019年WOLVES Hand 取締役 兼 目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC院長に就任。「一生のかかりつけの医師」を推奨するとともに、専門分野治療、予防医療に力をいれている。
猫の食物アレルギーとは
猫の食物アレルギーは、正式には食物過敏症、食物不耐症と言います。非季節性の痒みを伴う皮膚疾患です(※1)。この病気は、ほとんどの症例で変化が起こるメカニズムについて分かっておらず、「キャットフード・ご飯と痒みや皮膚炎の関係が示されているだけ」というのが実際のところです(※1)。猫の食物アレルギーの発生率は不明であり、まれな皮膚疾患と考えられていたり、猫の過敏症で3番目に多いものと考えられていたりします(※1)。このことについて、アメリカの大学病院の皮膚科に訪れた猫の統計では、猫の食物アレルギーは皮膚疾患の3.4%を占めており、またアレルギー性皮膚疾患で3番目に多いものであったとの報告があります(※2)。
猫の食物アレルギーのよくある誤解
猫に食物アレルギーがないか、アレルギー検査を動物病院で行うことができます。そこで陽性反応、陰性反応が出ます。よく陽性反応が出た場合、すべての食材が食べれず、どのキャットフードもおやつも食べさせられないと悩む飼い主さんがいますが、それは間違いです。私たち人間もアレルギー検査を行うと陽性反応が出る食材がありますが、食べてもアレルギー反応が出ないことがほとんどです。そのため、アレルギー反応が出る食材のみを特定し、それ以外は陽性反応でも食べさせて大丈夫です。
猫の食物アレルギーが出やすい猫種・年代
猫の食物アレルギーが出やすい猫種については、シャム猫に好発するという報告(※1)やバーミーズ、ヒマラヤンおよびメインクーンに好発するという報告(※2)があります。
食物アレルギーが起こりやすい年齢は明確にされておらず、平均4〜5歳で発症するとする報告や、半数の症例が2歳までに発症するとする報告があります(※1)。また、オスやメスなど性別による差は無いとされています(※1、2)。
猫の食物アレルギーの症状
猫の食物アレルギーの主な症状として、典型的には非季節性の重度の痒みが挙げられます。食材を摂取することで急になることもあります。また、痒みは顔、耳および首にでやすい傾向がありますが、全身性に見られることや、くしゃみ、脱毛だけが症状としてみられることもあります。また、併発疾患としてアトピー性皮膚炎やノミアレルギー性皮膚炎の報告があります(※1)。そして、二次的な感染症はまれですが、細菌性毛包炎やごくまれにマラセチア皮膚炎が見られることがあります(※1)。猫の食物過敏症での胃腸障害(嘔吐や下痢・血便)は、まれに発生(およそ10〜15%程度)するとされ、最近の研究での発生率は2.1%であったと報告されています(※2)。
猫の食物アレルギーの原因
猫の食物アレルギーは、ほとんどの症例で病理発生については分かっておらず、実際には痒みや皮膚炎とキャットフード・ご飯との関係が示されているだけです(※1)。過去に猫の食物アレルギーの原因として報告されたものには魚、牛肉、鶏肉、卵、市販食(ドライもしくは缶)、豚肉、ラム肉とマトン、馬肉、鯨肉、ウサギ、二枚貝、肝油、安息香酸、グルテン、トウモロコシなどがあります(※2)。基本的にはタンパク質の食材が原因となります。一方で、痒みが出たから全てが食物アレルギーということではありません。住宅環境やストレス環境でも起こります。
猫の食物アレルギーの検査・診断方法
猫の食物アレルギーの症状に似た病気として、痒みを伴う皮膚疾患(アトピー性皮膚炎、ノミアレルギー性皮膚炎、皮膚糸状菌症、耳ダニ、ツメダニ、疥癬)や精神因による脱毛や皮膚炎があります。これを除外するために皮膚科検査(皮膚掻爬検査、細胞診、真菌培養、毛検査など)を行います。また、食物アレルギーの場合、どの食材が原因かを特定するために除去食試験を行います。痒みなどの臨床症状が大幅に軽減される事を確認し、元のキャットフード・ご飯に戻すことによって症状が再発すること(負荷試験)で確定診断とします(※1)。除去食とは、原因となることが予想されている食材を除去したキャットフード・ご飯であり、過去に摂取したことがない食材を用いた家庭食が推奨されます。除去食試験については、4〜6週間で症状の改善が見られ、6〜10週で最大の改善がみられたとの報告があります(※2)。
なお、アレルギー検査(血液および皮内反応試験)の有用性は証明されていないので、現段階では勧められていないとされています(※1)。
猫の食物アレルギーの治療法
猫の食物アレルギーの治療は、原因となる食材を特定して、それを除去したキャットフード・ご飯を用いることです。アレルゲン回避ができない場合は、全身性の痒み止めの投与を行いますが、痒み止めが効かない猫も存在するとされ(※1)、ある報告では60.9%の猫で全身性のグルココルチコイドの投与に反応が無かったとされています(※2)。猫の食物アレルギーは改善する?
猫の食物過敏症は、原因となる食材が特定でき、適切なキャットフード・ご飯を用いれば良好に経過します。各メーカーの療法食を用いると、長期的にも良好な栄養バランスが期待できますが、療法食では再発してしまう猫は家庭食を長期に用いることもあります(※1)。また、除去食を用いて良好に経過しているにも関わらず、除去食中の食材が原因となり再発する例も報告されています(※3)。さらにこの病気は、おやつや人の食物を与えないように、周りの人にも協力してもらう必要があります。
猫の食物アレルギー時におすすめしたいフード
1. 総合栄養食を適量与える
総合栄養食を食べていても与える量が少なければ痩せてしまいますし、多ければ太ってしまいます。パッケージに書かれた食事量は目安ですので、ボディ・コンディション・スコアで「3」の「理想体型」を維持できる量を与えるようにしてください。
※参照:「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」(環境省)
2. 添加物の少ない新鮮なごはんを選ぶ
実際に、市販のドライフードを製造する工程の1つである高温加熱処理が、タンパク質の品質劣化を招き、熱に弱いビタミンを破壊し、さらには発がん性物質を生成してしまうことが、研究により判明しています。
そこで生まれたのが素材本来の旨味や香りが楽しめ、余計な添加物も入っていない「フレッシュフード」と呼ばれる新鮮なごはんです。ペトコトフーズもその一つで、子猫からシニア猫(老猫)まで毎日のごはんにすることができます。もちろん総合栄養食で、主食としてもOKですし、トッピングとしてもご利用いただけます。タンパク質が1種類のみのため、食物アレルギーの除去食も行いやすいレシピにしています。
また、水分量が70%ほどあるので、尿の活性化で腎臓病予防としても機能します。実際に従来のドライタイプのキャットフードよりも、水分がより多く含まれたフレッシュフード等を食べている猫の方が尿路結石になるリスクが約50%下がることが研究により明らかになっています。新鮮で美味しく、健康なごはんを選ぶことが長生きできる秘訣です。
ペトコトフーズの公式HPを見る
猫の食物アレルギーは原因食材が大切!
猫の食物アレルギーは、非季節性の痒みを伴う皮膚疾患です。この病気は、原因となる食材が特定でき、適切な食事を行えば良好に経過します。しかし、家庭食を長期に用いる場合や、おやつや人の食物を与えないようにしなければなりませんので、ご家族や周りの人にも協力してもらう必要があります。
引用文献
- Miller, W.H. Jr., Griffin, C. E. and Campbell, K.L. 2013. pp. 404-405. Muller and Kirk’s Small animal Dermatology 7th ed, Elsevier, St Louis.
- Scott, D.W., and Miller, W.H. Jr. 2013. Cutaneous food allergy in cats: A retrospective study of 48 cases (1988-2003). 獣医臨床皮膚科19:203-210.
- Reedy, L.M. 1994. Food hypersensitivity to lamb in a cat. J. Am. Vet. Med. Assoc. 204: 1039–1040.
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