猫の食物過敏症(食物アレルギー)を皮膚科認定医が解説 症状や原因、治療法など

猫の食物過敏症(食物アレルギー)を皮膚科認定医が解説 症状や原因、治療法など

猫の食物過敏症(食物アレルギー)とは、痒みを伴う皮膚の病気です。原因となる食材を特定し、適切な食餌を用いて上手く付き合っていけば良好な経過が望めますが、原因となる食材を除いた食事を続けなければならないので、家族や周りの人の協力が必要です。今回は、猫の食物過敏症の症状や原因、治療法などについて皮膚科認定医の春日が解説します。

猫の食物過敏症とは

猫の食物過敏症(別名:食物アレルギー、食物不耐症)とは、非季節性の痒みを伴う皮膚疾患です(※1)。この病気は、ほとんどの症例で病理発生(変化が起こるメカニズム)について分かっておらず、「食餌と、痒みや皮膚炎の関係が示されているだけ」というのが実際のところです(※1)

猫の食物過敏症の発生率は不明であり、まれな皮膚疾患と考えられていたり、猫の過敏症で3番目に多いものと考えられていたりします(※1)。このことについて、アメリカの大学病院の皮膚科に訪れた猫の統計では、猫の食物過敏症は皮膚疾患の3.4%を占めており、またアレルギー性皮膚疾患で3番目に多いものであったとの報告があります(※2)

猫の食物過敏症が出やすい猫種・年代

シャム猫

猫の食物過敏症が出やすい猫種については、シャム猫に好発するという報告(※1)バーミーズヒマラヤンおよびメインクーンに好発するという報告(※2)があります。好発年齢は明確にされておらず、平均4〜5歳で発症するとする報告や、半数の症例が2歳までに発症するとする報告があります(※1)。また、性差は無いとされています(※1、2)

症状

猫の食物過敏症の主な症状として、典型的には非季節性の重度の痒みが挙げられます。また、痒みは顔、耳および首にでやすい傾向がありますが、全身性に見られることや、脱毛だけが症状としてみられることもあります。また、併発疾患としてアトピー性皮膚炎やノミアレルギー性皮膚炎の報告があります(※1)

そして、二次的な感染症はまれですが、細菌性毛包炎やごくまれにマラセチア皮膚炎が見られることがあります(※1)。猫の食物過敏症での胃腸障害(嘔吐下痢)は、まれに発生(およそ10〜15%程度)するとされ、最近の研究での発生率は2.1%であったと報告されています(※2)

原因

猫の食物過敏症は、ほとんどの症例で病理発生については分かっておらず、実際には痒みや皮膚炎と食餌との関係が示されているだけです(※1)。過去に猫の食物過敏症の原因として報告されたものには牛肉鶏肉、卵、市販食(ドライもしくは缶)、豚肉、ラム肉とマトン、馬肉、鯨肉、ウサギ、二枚貝、肝油、安息香酸、グルテン、トウモロコシなどがあります(※2)

検査・診断方法

猫の食物過敏症の症状に似た病気として、痒みを伴う皮膚疾患(アトピー性皮膚炎、ノミアレルギー性皮膚炎、皮膚糸状菌症、耳ダニ、ツメダニ、疥癬)や精神因による脱毛や皮膚炎があります。これを除外するために皮膚科検査(皮膚掻爬検査、細胞診、真菌培養、毛検査など)を行います。

また、除去食試験により、痒みなどの臨床症状が大幅に軽減される事を確認し、元の食餌に戻すことによって症状が再発すること(負荷試験)で確定診断とします(※1)。除去食とは、原因となることが予想されている食材を除去した食餌であり、過去に摂取したことがない食材を用いた家庭食が推奨されます。除去食試験については、4〜6週間で症状の改善が見られ、6〜10週で最大の改善がみられたとの報告があります(※2)

なお、アレルギー検査(血液および皮内反応試験)の有用性は証明されていないので、現段階では勧められていないとされています(※1)

治療

猫の食物過敏症の治療は、原因となる食材を特定して、それを除去した食餌を用いることです。アレルゲン回避ができない場合は、全身性の痒み止めの投与を行いますが、痒み止めが効かない猫も存在するとされ(※1)、ある報告では60.9%の猫で全身性のグルココルチコイドの投与に反応が無かったとされています(※2)


予後

猫の食物過敏症は、原因となる食材が特定でき、適切な食餌を用いれば良好に経過します。各メーカーの療法食を用いると、長期的にも良好な栄養バランスが期待できますが、療法食では再発してしまう猫は家庭食を長期に用いることもあります(※1)

また、除去食を用いて良好に経過しているにも関わらず、除去食中の食材が原因となり再発する例も報告されています(※3)。さらにこの病気は、おやつや人の食物を与えないように、周りの人にも協力してもらう必要があります。

原因食材を特定して与えないように

前足で目を覆う猫

猫の食物過敏症は、非季節性の痒みを伴う皮膚疾患です。この病気は、原因となる食材が特定でき、適切な食事を行えば良好に経過します。しかし、家庭食を長期に用いる場合や、おやつや人の食物を与えないようにしなければなりませんので、ご家族や周りの人にも協力してもらう必要があります。

引用文献

  1. Miller, W.H. Jr., Griffin, C. E. and Campbell, K.L. 2013. pp. 404-405. Muller and Kirk’s Small animal Dermatology 7th ed, Elsevier, St Louis.
  2. Scott, D.W., and Miller, W.H. Jr. 2013. Cutaneous food allergy in cats: A retrospective study of 48 cases (1988-2003). 獣医臨床皮膚科19:203-210.
  3. Reedy, L.M. 1994. Food hypersensitivity to lamb in a cat. J. Am. Vet. Med. Assoc. 204: 1039–1040.

第2稿:2017年7月12日 公開
初稿:2017年1月1日 公開
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