犬の社会化とは? 失敗しないトレーニングの方法や考え方を解説

子犬を迎える方に向けて、よく「社会化が大切」というアドバイスがおこなわれることがあります。犬の社会化は、犬のその後の性格や行動を大きく左右する、とても重要なことです。犬の社会化期はいつまでなのか、その間にどんなことをすれば良いのか、音の聞かせ方、気をつけるべきポイントなど、今回は「犬の社会化」について、ドッグトレーナーの小野が解説します。

「犬を飼う」ということ

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犬の飼い主さんの中には、「犬を飼うこと」が「世話をすること」だと考えている方も少なくありません。しかし大切なのは、「世話をする」ではなく「面倒を見る」という考え方です。「世話をする」という考えを持っている方は、しつけやトレーニングが「言うことを聞かせること」だと考えがちです。

犬にも個性があり、それぞれの一生があります。そうしたことを無視して飼い主さんの思い通りに成長させようとすると、「言うことを聞かない」「世話してやってるのに」となってしまいます。大切なのは、犬の心や体が健康的に育つために「面倒を見る」ことです。

人の子どもは親元を離れて社会でいろいろ経験し、成長していきます。一方でほとんどの犬は、社会を経験する場が少ないまま大人になっていきます。出不精な飼い主さんもいるとは思いますが、社会化期は二度と帰ってこない大切な時期です。犬の将来を考えて、頑張って外に出る「面倒」を見てあげてください。

それでは、次項で「犬の社会化」とは何かについて説明します。

「犬の社会化」とは何か

高原にいる女性と犬

最近は犬のことを「可愛がる存在」ではなく「家族」だと考えることが当たり前になってきました。それ自体は良いことなのですが、本当に家族だと思うのなら、犬のことをもっと知ってください。

たとえば、お散歩に出たとき、最初から楽しそうに歩きだす子と、全く歩かない子に分かれます。このとき歩かないからといって、「この子はお散歩が嫌いなんだ」と決め付けないようにしてください。大切なのは、楽しく歩き出せるように飼い主さんも一緒に努力することです。それが社会に出る一歩になります。

「社会化期」とは

よく「社会化」を「しつけ」の一種だと勘違いされている方がいるのですが、社会化はどんな犬にも訪れる時期を指すのであって、飼い主さんが犬を社会化させたり、大人になった犬を社会化させたりするものではありません。

社会化の時期は、犬種や大きさ、個体によって差がありますが、一般的に生後3〜12週齢くらいまでが社会化期だと考えられています。この時期に決まった「刺激に対してどんな反応をするか」が将来の行動に大きな影響を及ぼします。ただ、社会化期を過ぎてからも新しい刺激はあるため、広義の社会化は続いていきます。

社会化の誤解

よくあるのが、「犬の社会化=他の犬や人に会わせること」という誤解です。犬の社会化はただ適当に犬や人に会わせれば良いということではありませんし、1度や2度そういった状況を作ったからどうこうなるものでもありません。

犬の社会化とは、犬の将来を考えて、その将来をより良くするためにすることです。よく「人見知りだから」「臆病だから」「吠えるから」といった、いま問題だと思っていることを解決する手段として社会化を考える方がいますが、社会化で、そういった問題が、「今」良くなることはありません(そもそも犬に問題があるわけではありませんので、問題だと思っている飼い主さんに問題があります)。

社会化不足の影響

人が弱い存在を守ろうとするのは習性かもしれませんが、人の場合に親離れ・子離れが大切なように、守られてばかりで育った犬はとても弱い犬になってしまいます。社会化の時期はストレスのない生活を送るのではなく、「どんな刺激にもストレスを感じない犬に育てよう」くらいのスタンスで過ごしてあげてください。

社会化の時期にストレスのない生活を送った犬は、新しい刺激に対してすぐ拒否反応を示したり、否定(ネガティブな反応)から入る成犬になってしまいます。すぐ噛んだりすぐ吠えたりといった反応の原因が、実は子どもの頃にあるかもしれないのです。社会化不足の影響は計り知れず、犬自身のストレスにもつながりますし、幸せになるチャンスを逃してしまうことにもなります。

子犬の社会化の方法と訓練

しつけ訓練を受ける子犬

では、子犬を迎えた飼い主さんはどんなことをすればいいのでしょうか。

ドッグランに連れて行くのはリスク大

最初は、ドッグトレーナーが開催しているしつけ・トレーニング教室を受講してみることをオススメします。他の犬が大丈夫な犬や先輩犬、同じ月齢くらいの犬など、社会化にベストな条件・環境を飼い主さん個人で作ることは非常に難しいからです。

よくある間違いは、「社会化のためにドッグランに連れて行くこと」です。社会化は環境が大切なのに、ドッグランにはどんな犬がいるかわかりません。飼い主さんの犬の見極めもあやふやです。もともとの素質がタフな子であれば平気かもしれませんが、たった1回の「ガブ!」「ガウ!」で犬が苦手になってしまう場合もります。社会化期の月齢でドッグランに行くのはリスクが大きすぎるのです。

もちろん「ガブ!」「ガウ!」といったことが起きても、その後のフォローがきちんとできれば問題ありません。しかし、だいたいの飼い主さんが一緒に怖くなってフォローすることなく帰ってきてしまいます。怖いイメージを持ったまま帰ってくれば、次に行ってもドッグランは怖い場所のままです。しかも、次は身体的にも成長していますから、反応はより攻撃的になり、「怖いから襲う→襲うから襲われる→怖い思いをして帰る」という悪循環になってしまいます。

まずはしつけ・トレーニング教室に行き、犬が楽しそうにしているかを見て、楽しそうにしていない時にトレーナーがフォローをしているかを見たり、その子へのトレーニング方針など聞いたりしてください。

若いうちに外に連れて行くこと

犬に慣らすことだけが社会化ではありません。「とにかく外に出る」というのも飼い主さんが一人でできる社会化の方法です。大人しかいなくて静かなおうちや、飼い主さんが出不精で極端に社交性が低いと、特に社会化が進みません。自分に向かってくる刺激が全くない状態で長時間過ごすようでは、慣れるも何もありません。

極端なことを言えば、家の中にはほとんど居なくてもかまいません。外が楽しい場所で、外の刺激がポジティブに捉えられるようになるためには、「数」と「時間」がとても大切だからです。飼い主さんは、外が楽しく、良い刺激になるように気を付けてあげないといけませんが、万が一間違っても、犬が若くて取り返す時間があればどうってことありません。いくらでも取り返せますので、どんどん外に出してあげてください。

ワクチンが終わるまで外に出さないほうがいい?

獣医師に「最後のワクチンが終わるまでなるべく外に出さないようにしてください」と言われた方もいると思います。確かに病気も怖いですから、これはよくある悩ましい問題です。しかし、社会化期は一生に1度しかない特別で大切な時期です。最終的にはそれぞれの飼い主さんの考えで選択してもらうしかありませんが、私ならワクチンプログラムが終わってなくても社会化に力を注ぎます。もちろん病原体に触れている可能性は否めませんので、注意深く犬を観察します。寝不足になるのも覚悟で見てあげます。

また、トレーニング施設が衛生的かどうか、獣医師との連携が取れているかどうかを確かめたり、感染症予防の知識を得ることも大切です。ただ「病気のリスクがある」と怖がるのではなく、「何の病気になるのか」「なった場合どんな症状なのか」「致死率はどれくらいなのか」を知った上で判断してください。この問題に答えはありませんが、1つ確かなのは、社会化の時期がとても大事だということです。

「社会化CD」に効果はあるのか

社会化CDとは、犬にさまざまな音を慣れさせるためのCDです。社会化CDを聞かせることに意味が無いとは言いません。ただ、人に置き換えてもわかると思いますが、実際の音の大きさ、振動、聞こえる周波数などとスピーカーから出てくる音とでは、雲泥の差があります。1つのきっかけとしては意味があるかもしれませんが、私は薦めていません。

それよりも、いろいろな大きな音に慣れさせて、1種大丈夫なら2種、3種と期待したほうが良いかと思います。どんな音でもかまいませんので「実際の大きな音」を経験させることが大切です。

成犬の社会化の方法と訓練

飼い主に呼ばれる犬

社会化は生後3〜12週齢の時期が目安です。しかし、成犬になってからも新しい刺激はありますので、広義の社会化は続きます。子犬の頃の社会化期と同じように、ポジティブな反応ができるよう飼い主がサポートしてあげてください。

大人になってからでも社会化し直せる?

繰り返しになりますが、社会化は時期が決まっていますので、やり直しということはありません。よくある社会化の誤解です。

大雑把なたとえになってしまいますが、社会化期の刺激への反応は「慣れ」で、大人になってからは「学習」と考えてください。1つ「学習」しても、それが別の学習につながることには限界があります。しかし、「慣れ」であれば刺激に対する大きな捉え方ですので、別の刺激にも応用させていくことが期待できます。

社会化時期を逃した犬と適切な社会化ができた犬では、ストレスのない反応ができるまでに要する時間に大きな差があります。その差は大きいですが、大人になってからも好転させることは可能です。

保護犬でも社会化できる?

保護犬はさまざまな事情を抱えて保護された子たちですので、中には人に慣れていない子もいるかもしれません。ただ「社会化」に限って言えば、時期の話ですので、保護犬かどうかは関係ありません。

「いい子」ではなく「その子らしく」育てる

海辺を散歩する飼い主と犬

犬の社会化は、どんな刺激にもストレスを感じない犬に育てるためにとても重要
犬の社会化期は一般的に、生後3〜12週齢頃
成犬になってからでも、「学習」というかたちで刺激に対応させることは可能

言うことを聞かせるためにしつけやトレーニングはしないでください。思い通りにいかないからといって怒鳴らないでください。子どもが自分の思い通りにいかないからと言って声を荒げたり、暴力をふるったりする親はどうでしょうか? 相手が犬だから許させるわけではありませんし、犬だから納得しているわけでもありません。

犬を飼っていて「なんでこんなに頑張らなきゃいけないんだ」と思う時もあるでしょう。でも人が勝手に選んで勝手に連れてきたのです。10年以上ある犬の時間(犬生)を、散々楽しませてあげください。それは飼い主としての最低限の責任だと思います。

なんて書くと、真面目にやり過ぎて楽しくなくなってしまう方もいると思います。でも、犬に関する何事も、基本は「犬」も「人」も楽しんですることです。もしそうでなくなったら、思い込みすぎか思い詰めすぎです。「いい子に育てる」のではなくて「その子らしく育てる」のです。それには、犬も人も、広い視野といろいろな経験が必要です。

ぜひ飼い主としてたくさんのことを勉強して、愛犬に幸せな犬生を送らせてあげてください。

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