
室内で過ごす猫でも、熱中症になる可能性があります。呼吸が早くなったり、歩けなくなったりと症状はさまざまですが、最悪の場合は死亡してしまうことも。猫は暑いとき、まめに水分補給をしたり、場所を変えたりして、自分にとって1番過ごしやすい場所を探します。一見しただけでは暑がっていることが分かりづらいため、普段からの予防が大切です。今回は、猫の熱中症について獣医師の佐藤が解説します。
この記事のまとめ
- 猫の熱中症は体温調節がうまくできず全身機能が低下する状態とされる
- 室内飼育でも発症し、呼吸が荒くなることが見分けるポイントとされる
- 保険データでは診療件数は6月から激増し、7月がピークとされる
- 短頭種、肥満、子猫・老猫、心臓や呼吸器の病気を持つ猫でリスクが高いとされる
- 体温40〜43℃では非常に危険で、意識がない場合はすぐに動物病院を受診する
- 室温25〜28℃、湿度45〜65%の管理と水飲み場の複数設置が予防として重要
猫の熱中症とは
熱中症とは体温をうまく下げることができず、全身の働きが低下している状態のことをいいます。基本的に猫は室内飼いのため外の影響を受けにくいですが、猫も熱中症にかかることがあります。
アニコム損害保険の保険金請求データによると、2025年の熱中症による診療件数は猫で191件。診療件数は6月から激増し、ピークは7月です。猫は犬に比べると屋内で過ごすことが多いものの、エアコンの付け忘れや直射日光による室温上昇で熱中症になることがあります。
アイペット損害保険の2024年調査では、暑い時期に愛猫の体調変化を感じた飼い主さんは45.0%。「熱中症と診断されたことがある」は5.8%、「暑さによる不調と診断された」は10.2%にのぼります。2025年の夏は日本の平均気温が統計開始(1898年)以来もっとも高い記録を更新しており、「室内だから大丈夫」と思わず、対策をしましょう。
猫の熱中症の症状

猫の熱中症は、非常に症状の見分けがつきにくいことが特徴です。しかし、呼吸が荒くなることは、唯一の見分けるポイントかもしれません。
軽度〜中程度の症状
- 発熱する(大半が39.5℃以上)
- 呼吸が荒くなる
- 立ちすくみ、ボーッとしている
- ふらつく
- ぐったりして元気がない
重度の症状
- 嘔吐
- 下痢
- 痙攣
- 失神・昏睡状態
重度の症状を呈すると、死亡に至る可能性があります。体温が40〜43℃になると非常に危険な状態です。
アイペット損害保険の調査でも、飼い主さんが愛猫の体調変化を感じ取ったサインは「いつもより呼吸が荒くなっている」が45.8%でもっとも多く、「いつもより体温が上がっている」が29.3%で続きます。普段あまり口を開けて呼吸しない猫が激しくハァハァと呼吸(パンティングのような呼吸)をしていたら、危険なサインです。
猫の熱中症の応急処置

コーネル大学の猫医療センターは、熱中症は非常に急速に命に関わる状態になりうるとして、サインに気づいたらすぐに涼しい場所へ移し、冷たすぎない水で被毛を濡らして冷やしながら、ただちに動物病院へ連絡するよう勧めています。
猫の意識がある場合
体温が39℃になるまで流水をかけてください。氷水を飲ませる飼い主の方がいますが、氷水は逆効果になるため、与えないようにしてください。
猫の意識がない場合
できるだけ早く動物病院に行きましょう。その際、できれば気道をふさがないように舌を外に出した状態で運んであげてください。
そして首、脇の下、股などの太い血管がある部位にタオルなどで包んだ保冷剤を当て、冷やすようにしてください。このとき、冷やしすぎると逆効果になりますので注意しましょう。
動物病院に連れていく前に、動物病院へ連絡を入れると、救命率がさらに上がります。
熱中症になりやすい猫の特性

以下の条件が重なるほど、熱中症になりやすくなります。
- 短頭猫種
- 肥満猫
- 病気を患っている(主に心臓病・呼吸器疾患)
- 子猫・老猫
- 毛量の多い猫
英国王立獣医大学(RVC)も、短頭種(ペルシャなど)、太り気味、厚い被毛、老齢・幼齢、気道・肺・心臓の持病を、熱中症になりやすい要因として挙げています。
短頭猫種
ペルシャ猫などの鼻が潰れているような猫種は呼吸の通り道が細いため、熱中症になりやすいといわれています。
肥満猫
太り気味の猫も注意が必要です。脂肪は熱を閉じ込めるため、体内に熱がこもりやすい傾向があります。さらに、肥満は心臓や呼吸の機能に悪影響を及ぼします。体にとって悪い影響になることは多いため、ダイエットをおすすめしています。
病気を患っている猫
特に、呼吸数が上がる疾患(心臓病、呼吸器系、脱水)は注意が必要です。心臓病は具体的に、「僧帽弁閉鎖不全症」「肥大型心筋症」「フィラリア症」などが挙げられます。
呼吸器系は「猫喘息」「ウィルス性鼻気管・気管支炎」などが挙げられます。
脱水系は利尿剤を投与していたり、「腎臓病」「糖尿病」が挙げられます。
子猫・老猫
子猫や老猫の場合、肺の機能が成猫よりも弱く、体温調節も上手にできないため、特に注意しましょう。
猫の熱中症対策・予防法

今までのことを踏まえた上で、愛猫が熱中症にならない環境をつくるために以下を心がけましょう。
- 室内の温度は25〜28℃を保つ
- 湿度は45〜65%を目安に
- 水飲み場を数カ所設け、いつでも飲めるようにする
- 水をあまり飲まない猫にはウェットフードか水でふやかしたドライフードを与える
万が一のことを考え、室温が見れる場所に見守りカメラの設置をしているとなお安心です。
アイペット損害保険の調査では、飼い主さんが実施している暑さ対策は「室温を調整する」が84.6%でもっとも多く、「給水できる場所を増やす」44.0%、「風通しのいい環境を用意する」37.8%が続きます。環境省も、高温の室内での留守番や冷房のない車内を「わずかな時間でも非常に危険」として注意を呼びかけています。
愛猫の熱中症は室温湿度に気をつけて!

熱中症というと屋外で起こるものと思いがちですが、室内での熱中症も少なくありません。猫は「暑い」と言うことができませんので、普段からの予防が重要です。
参考文献
- アニコム損害保険株式会社「犬と猫の『熱中症週間予報』、4月23日から配信開始 今年も厳しい暑さに備え、早めの対策を」 2026年4月24日
- アニコム損害保険株式会社「犬と猫の『熱中症週間予報』を4月27日から配信開始 4~5月から注意、早めの対策を」 2023年4月27日
- アイペット損害保険株式会社「<猫編>ペットの暑さ対策に関する調査」 2024年10月10日
- 環境省「『防ごう!ペットの熱中症』ペットの熱中症予防に関するポスターの作成について」 2025年6月20日
- 気象庁「2025年の梅雨入り・明け及び夏(6~8月)の記録的高温について」 2025年9月1日
- The Royal Veterinary College「Heatstroke in dogs and cats(Fact File)」
- Cornell Feline Health Center「Feline Heat Safety」コーネル大学獣医学部