犬の断耳は本当に必要? 目的、現在の実施状況を紹介

犬の断耳は必ず行わなければいけないものではなく、古くから一部の犬種で断耳が行われています。皆さんはドーベルマンやボクサーといった犬種を思い浮かべたとき、耳が立っているイメージがないでしょうか。実はそれらの犬種は耳が垂れている姿が本来の状態です。歴史的に必要性があって人為的に耳の一部を切断する「断耳」が行われていましたが、その必要性がなくなった現在も、スタンダード(犬種標準)として断耳が行われている犬種が存在します。今回は犬の断耳について、目的やデメリット、日本を含めた現状などを解説します。

犬の断耳をする理由

笑顔のドーベルマン

使役犬の怪我防止

断耳はかつて、狩猟犬や牧羊犬が外敵の攻撃による耳の損傷を防ぐために行われてきました。現在は、狩猟犬や牧羊犬が少なくなってきたため、本来の目的で断耳を行うことはまれになっています。

外見上の理由

古くから断耳が行われてきた狩猟犬や牧羊犬は、断耳をされた外見が定着したため、現在も外見上の理由で断耳が行われています。

一部の犬種では、畜犬団体がスタンダード(犬種標準)として「断耳が行われていること」が条件とされている品種もあります。

断耳をする代表的な犬種

断耳しているドーベルマン

ドーベルマンピンシャー

黒い短毛、大きな体で凛々しい顔立ちのドーベルマンの多くは耳がピンと立っています。耳の立っているドーベルマンは、断耳が行われているのです。

断耳をしていないドーベルマンは垂れ耳となります。耳が垂れているドーベルマンは、少し優しそうな表情に見えるのではないでしょうか。

かつて軍用犬として活躍していたドーベルマンはたくましい外見を保つために、一部で断耳が行われているのです。

シュナウザー

シュナウザー犬種は、ミニチュアシュナウザーの他にも、ジャイアントシュナウザー、スタンダードシュナウザーがいます。

ジャイアントシュナウザーやスタンダードシュナウザーはその体格の大きさから、昔は牧場を外敵から守るガードドッグ、軍用犬、警察犬など人のために活躍をしてきました。シュナウザー犬種では、これらの歴史的背景から断耳が行われきたことと思われます。

断耳がされているシュナウザーの耳はピンと立っていますが、愛玩犬として飼われている国内のミニチュアシュナウザーで断耳がされている犬は少なくなりました。断耳がされていないシュナウザーの耳は、半分に折れている外見となります。

ボクサー

欧米を中心とする海外では人気犬種です。ボクサーは、第一次世界大戦より、主に軍用犬として活躍してきました。

ボクサーの勇敢さから、一部で警察犬やガードドッグとして現在も活躍しているボクサーはいます。愛玩犬として飼われているボクサーは断耳がされていないため、耳が半分に折れているボクサーが多くなりました。

しかし、北米でショードッグとして飼われているボクサーは断耳がされています。

犬の断耳をする時期・方法

浜辺で遊ぶ犬

断耳を行う時期

断耳は、生後6〜12週間の間に行うことが一般的です。断耳をする際は麻酔をする必要があるため、ある程度子犬が成長してから「手術」として断耳が行われます。

断耳の方法

動物福祉の観点から、もし断耳を行う場合は麻酔下にて獣医師により行われることが原則となっています。

耳をピンと立たせる状態にて固定し、包帯などで保護しますが、耳の状態が安定するまでは、1カ月から数カ月かかるといわれています。

断耳のデメリット

断耳されていない犬

感染のリスク

犬が傷口を舐めないようにエリザベスカラーをする場合もありますが、傷口を舐めてしまったり、汚い環境で生活していると傷口からの細菌感染がみられたりする場合もあります。

感染が認められた場合は、動物病院で抗生物質などを処方してもらう必要があり、術後も注意深く傷口をケアする必要があります。

痛み

多くの場合は麻酔下で断耳が行われますが、まれに無麻酔で行うブリーダーなども存在します。

断耳の処置に伴う痛みだけでなく、麻酔下で行う場合でも鎮静剤の投与や血液検査など注射をする必要がありますし、断耳後の痛みも大きいことは想像できるかと思います。傷口が安定するまでの間、犬は痛みに耐える必要があります。

断耳後の行動制限

断耳後は耳を立たせた状態で固定する必要があります。耳の固定は、1カ月から数カ月間かかります。

去勢や避妊手術の傷は約1週間から数週間の間で融合されますが、断耳後の固定には長い時間が必要です。断耳した耳が折れ曲がらないように固定するため、耳が固定されている状態でしばらく生活をする必要があります。

元気で活発に動き回りたい子犬に対して、行動制限がかかることは、犬のストレスになります。

断耳の実施状況

断耳しているドーベルマンなど3匹の犬

北アメリカ

アメリカ合衆国、カナダでは、犬の断耳に関する法的制限がありません。アメリカンケネルクラブでは一部の犬種に対して断耳を行うことを犬種標準としています。

一部の州では、断耳を禁止しようとしたこともありますが、犬種のスタンダードである伝統を守る傾向が強い現状があります。

ヨーロッパ

ヨーロッパは、動物福祉先進国と言われるように、断耳を禁止している国が多いです。イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、ポーランド、スイス、ベルギーなど多くの国が犬の断耳を禁止しています。

アジア

日本を含むアジア地域では、断耳を法的に制限している国はほとんどありません。インドネシア、マレーシア、フィリピン、台湾など多くの国で断耳は行われています。

まとめ

ドーベルマンの子犬

断耳は外見上の理由で行われていることが多い
もともとは外傷を防ぐ目的で断耳が行われていた
断耳は感染症のリスクやストレスがかかる可能性がある

犬の断耳は、実施する犬種が日本に多くないため見かけることが少ないと思います。現時点で日本に断耳に関する法規制はありませんが、なぜ行われてきたのか、それは今も必要のあることなのか、本稿が犬の断耳について考えるきっかけになれば幸いです。

参考文献

  • Mills KE, Robbins J, von Keyserlingk MA. Tail Docking and Ear Cropping Dogs: Public Awareness and Perceptions. PLoS One. 2016 Jun 27;11(6):e0158131.
  • DOG EAR CROPPING/TAIL DOCKING/DEWCLAW REMOVAL』(AKC)
  • Cagri Caglar Sinmez, Ali Yigit & Gokhan Aslim. Tail docking and ear cropping in dogs: a short review of laws and welfare aspects in the Europe and Turkey. Italian Journal of Animal Science, 16:3, 431-437



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