
犬にも味覚がある?犬と人間で「美味しい」と感じるものの違いを解説
犬はごはんを丸呑みする子が多いため「味覚がない?」と思われがちですが、そんなことはありません。犬は味蕾(みらい)の数が人間より少ないため、感じ取りやすい・取りにくい味もありますが、甘味や苦味、酸味などを感じられると考えられています。今回は、犬の味覚や美味しいと感じるものなどを獣医師ライターの井上が解説します。
犬の味覚

犬が感じることのできる味は「甘味」「苦味」「酸味」「塩味」「旨味」の5種類です。
犬は人間と比べて味を感じることができる「味蕾」の数が少ないため「甘味」や「酸味」は感じるものの「塩辛さ」をあまり感じられないのではと考えられています。
甘味
多くの犬は甘味を好みます。人工甘味料には苦味成分が含まれているため、拒否反応を示す犬もいるようです。苦味
哺乳類のほとんどが苦手といえます。苦いものは「毒と認識している」という説もあります。酸味
甘味ほどではありませんが、犬は「腐肉食者」だったため、実は酸味を好みます。野生動物時代、食べきれないものを土の中に入れて保存して、あとで食べていた背景から、腐った匂いのするものも「食べられる」と判断しています。
塩味
しょっぱいものは好まないようです。犬だけではなく、食肉目に共通のようです。旨味
これまで犬は旨味を感じられないとされていましたが、近年の研究で犬も旨味を感じていることがわかってきました。旨味とはアミノ酸のことで、アミノ酸の中にもグルタミン酸やアスパラギン酸など多くの有機酸から構成されています。
犬が美味しいと感じるもの

食べ物をおいしいと感じる「嗜好性」はその動物によって異なります。味というよりは、匂いが大きく関与しています。
犬がごはんを食べるとき、まず匂いを嗅ぎ、その後にごはんを口に入れ、食感や形、硬さを確認し、最後に味を感じます。
重要なのは、人と犬では食事に対する感覚が異なるという点です。
犬にとっての良い食事とは、必要とする栄養バランスを満たしている食事であることはもちろんですが、どれほど優れた内容の食事であったとしても、犬が食べてくれないと意味がありません。
よく食べるように匂いや形状などが調整されていることも、犬にとっての本当に「美味しい」「良い」食事の条件のひとつです。
犬にも味覚の変化がある?

基本的に犬の味覚に変化は起こりません。もし、加齢に伴い、愛犬の味覚が変化したように感じたのであれば、嗅覚の衰えとともに味覚も低下した可能性が考えられます。
もともと味覚に優れている動物ではないため、その味覚をカバーする嗅覚が衰え、変化を起こしているのか、または何か内臓疾患があり、その影響で味覚が変わることがあるかもしれません。
まとめ

犬は「甘味」「苦味」「酸味」「塩味」「旨味」を感じることができます
犬は味よりも匂いで美味しいものと判断します
基本的に犬の味覚は変化しません
犬の味覚が変化した場合は「加齢による嗅覚の衰え」か「内臓疾患の可能性」が考えられます
愛犬のために手作りごはんを作ろうと思っている場合、愛犬の味覚を考慮し、甘味や酸味を添加する必要はありません。大事なのは愛犬が食べてくれるよう「良い匂い」があって「栄養バランスがとれている」ことです。
愛犬の嗜好性を理解し、楽しいペットライフをお過ごしください。
参考文献
- 小野憲一郎著「イラストでみる犬の病気」講談社,1996/6/20
- 共立製薬株式会社著「犬の家庭医学 最新版」幻冬舎,2015/7/31
- 今泉 忠明監修「イヌ なぜ?の図鑑」学研プラス,2018/5/29
- 島田真美著「基本からよくわかる犬と猫の栄養管理」インターズー,2009/03