犬にも味覚がある? 犬と人で「美味しい」と感じるものの違いとは

犬にも味覚がある? 犬と人で「美味しい」と感じるものの違いとは

いつも食べていたフードを急に食べなくなることありますよね。「うちの子ってグルメだから……」とおっしゃる方も多いと思います。しかし犬たちは本当に「グルメ」なのでしょうか? 犬にも味覚はあって「美味しい」と感じることもあるかと思いますが、人より味覚が発達しておらずグルメとは言えないかもしれません。犬は甘味に苦味、塩味などを感じることができるのでしょうか? 今回は犬の味覚について、獣医師の井上が解説します。

犬の食性

二匹のバーニーズマウンテンドッグ

愛犬がごはんを食べる姿をじっくり観察したことありますか? 「噛まずに飲んでしまう」「あっというまに飲み込むように食べる」など、「よく噛まない」ことが多いのではないでしょうか。

これは、犬本来の食べ物を食べる行動(採食行動)のパターンです。

犬の先祖は、「オオカミ」や「コヨーテ」です。野生のオオカミやコヨーテは、集団でエサとなる獲物を探し、狩りをする。そして、エサとなる獲物は常にいるわけではなく、取れたとき=食事の時間となるのです。

そのため、「食べられるときにたくさん食べる」という方法をとっていたわけです。また、周りには危険がいっぱいの環境のなか、常に自分たちも他の獲物から狙われることもあるため、安心して落ち着いて食べられない場合は、一度飲み込んで、安全な場所に行ってから食べるという行動をとるので、「飲み込む習性」を獲得したのです。

この「飲み込む習性」は歯の形も関係しています。犬の前臼歯は食べ物を「引き裂く」ためのものなので、人間のようにすりつぶす役割の歯がないというのも特徴的です。

そのため、もともとかむのも苦手だし、飲み込む習性なので飲み込みがメインになってしまうのです。

そして、犬は動物性と植物性の両方を食べる「雑食性」の性質をもつ、食肉目に属する肉食動物です。長い歴史のなかで人と一緒に生活するようになり、人から食べ物をわけてもらっている間に、何でも食べるようになっています。

でも、もともと肉食動物ですので、人と犬にとって必要な栄養がまったく同じなわけではないのでこれは注意が必要です。


犬の味覚

こちらを見る犬

犬が感じることのできる味は、「甘味」「苦味」「酸味」「塩味」「旨味」の5種類です。ご飯を丸呑みする愛犬の姿を見て、「味覚がないから?」と感じる飼い主さんもいらっしゃるかもしれませんが、人との食性の違いですので、犬にも味覚はちゃんとあります。

ただ、犬は人間と比べて味を感じることができる「味蕾」の数が少ないので、「甘味」や「酸味」は感じるものの、「塩辛さ」をあまり感じられないのではと考えられています。

【参考】味蕾の数

人(成人)の場合:5000~7000個くらい
犬:2000個以下

甘味

好む犬が多数、人工甘味料には苦味成分が含まれているため、拒否反応を示す犬もいるようです。

苦味

哺乳類のほとんどが苦手。苦いものは毒と認識しているかもという諸説もあります。

酸味

甘味ほどではないけれど、実は酸味を好みます。理由としては、犬が「腐肉食者」だから。食べきれないものを土の中に入れて保存して、あとで食べる行動も犬の特徴のようです。

塩味

しょっぱいものは好まないようです。犬のみではなく、食肉目に共通のようです。

旨味

これまで犬は旨味を感じられないとされてきましたが、近年の研究で犬も旨味を感じていることがわかってきました。旨味とはアミノ酸のことで、アミノ酸の中にもグルタミン酸やアスパラギン酸など多くの有機酸から構成されています。

中でも犬はアラニン、プロリン、リジン、ヒスチジン、ロイシンといった「甘いアミノ酸」を好み、「苦いアミノ酸」の中でもトリプトファンだけを犬は阻害するといわれています。

参照:栗原堅三「味覚生理学研究の現状」化学と生物、36巻(1998)12号

犬の嗜好性

首を傾げる黒い犬

食べ物をおいしいと感じる「嗜好性」はその動物によって異なります。味というよりは、匂いが大きく関与しています。

犬の場合、味覚よりも嗅覚のほうが優れているので、まずはにおいをかいでそれを口にしてもよいものなのかを判断します。犬の嗅覚は、年齢や健康状態など、いろいろなことに影響を受けます。

嗅覚は、大型犬のほうが、するどい、また、マズルの形状によって空気の通り方がかわるので、短頭種は、ほかの犬種に比べると嗅覚が劣るという話があります。

特に、小型犬はほかのサイズの犬に比べると嗅覚が劣るため、食欲にムラが出ることがあります。そこで、おいしく食べてもらうために、食事の匂いを強くしたり、食感を調整したりするなどの工夫も必要です。

犬がフードを食べる時は、まず匂いを嗅ぎ、その後にフードを口に入れ、食感や形、硬さを確認し、最後に味を感じます。

重要なのは、人と犬では食事に対する感覚が異なるという点です。犬にとっての良い食事とは、必要とする栄養バランスを満たしている食事であることはもちろんですが、どれほど優れた内容の食事であったとしても、犬が食べてくれないと意味がありません。

よく食べるように匂いや形状などが調整されていることも、犬にとっての本当に「良い」食事の条件のひとつなのです。


犬にも味覚の変化がある?

基本的に犬の味覚に変化は起こりません。もし、加齢に伴い、愛犬の味覚が変化したように感じたのであれば、嗅覚の衰えとともに味覚も低下した可能性が考えられます。

もともと味覚に優れている動物ではないので、その味覚をカバーする嗅覚が衰え、変化を起こしているのか、または何か内臓疾患がありその影響で味覚が変わることがあるかもしれません。

犬ならではの習性があります

ゴールデンレトリバー

気に入っていたフードを急にたべなくなったときに、うちの子は「グルメ」だからといって、ついつい他のものを与えたり、別のおやつを与えてみたりする方も多いと思います。

犬ならではの習性もあるので、人目線で考えるのではなく、きちんとその習性を知って食事も与えるように心がけるとよいと思います。飲み込んで食べるとはいってもむせてしまうほどの早食いであれば、食器など工夫をしてあげましょう。


参考文献

  • 小野憲一郎著「イラストでみる犬の病気」講談社,1996/6/20
  • 共立製薬株式会社著「犬の家庭医学 最新版」幻冬舎,2015/7/31
  • 今泉 忠明監修「イヌ なぜ?の図鑑」学研プラス,2018/5/29
  • 島田真美著「基本からよくわかる犬と猫の栄養管理」インターズー,2009/03

第3稿:2020年3月25日 公開
第2稿:2017年12月22日 公開
初稿:2016年4月8日 公開

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