
犬がごはんを食べない場合の対処法を獣医師が解説
犬がごはんを食べない理由は、病気だけでなくストレスやわがままなど、さまざま考えられます。飼い主さんとしても、「水は飲む」「元気がない」「おやつは食べる」など状況ごとに悩みがあると思います。犬が食欲不振になった場合に考えられる原因や対処法について、獣医師の佐藤が解説します。#犬の食育
犬がごはんを食べない場合の対処法

犬がごはんを食べない場合の対処法として、まずは病気を疑い、食べさせ方に問題がないか確認し、わがままが原因になっている場合は獣医師やドッグトレーナーに相談しながら接し方を見直しましょう。
1. 病気の可能性を考える
病気が原因でごはんを食べない場合は緊急度が高い可能性があり、放置すると危険です。下痢や嘔吐などの症状が出ていないか、元気はあるか、全身を触って嫌がる場所がないかなどを確認してみてください。若齢の場合は、感染症や異物などが主な原因ですが、高齢の場合は内臓疾患や腫瘍などの病気が原因のことが多いため、少しでも変化がある場合は早期に対応するようにしましょう。
2. 食べさせ方を工夫する

病気が原因ではない場合、部屋の環境や食事台の位置、食事の時間や回数、量、形状(ドライかウェットか)、飼い主さんの接し方など、何か不満やストレスがあって食べない可能性もあります。愛犬のことをよく見て、原因を探って解決してあげてください。
ワンちゃんによっては「飼い主さんに褒められること」や「狩猟本能」が食欲につながる場合もあります。ごはんを食べたら褒めてあげたり、コングなどの知育トイを使ってごはんをあげたりするのもいいでしょう。以下のYouTube動画で偏食のワンちゃんへの対処法について解説していますので、参考にしていただければと思います。
3. わがままには応えない
原因を探るのは根気がいる作業になりますし、飼い主さん自身の行動が原因になっている場合もあります。原因をそのままにして「ごはんを頻繁に変える」「おやつを与える」といった対応をしても、その先に解決はありません。飼い主さんが一人で背負うのは大変ですし、時間がたてばたつほど問題を解決するのが難しくなっていきます。早めに獣医師やドッグトレーナーを頼るようにしてください。
犬がごはんを食べないときに考えられる理由

犬にとって食欲はとても大切なものです。特に子犬や老犬が急に食欲不振になった場合は病気の可能性があります。食欲不振を軽視せず、まずは病気を疑いましょう。
何日までなら様子見しても大丈夫?
食事の量は飼い主さんにとってわかりやすい健康のバロメーターとなりますが、「下痢や嘔吐もなく元気」「量が減ったけど食べてはいる」「ごはんは食べないけど水は飲む」といった程度であれば、丸1日は様子を見て大丈夫です。2日目に突入した場合は、病気の初期段階の可能性が高くなります。そして、「いつもと様子が違う」「まったく食べない」「水も飲まない」「元気がない」「震える」といった場合は緊急性が高い可能性があります。様子見をせずに動物病院へ行くようにしてください。犬がごはんを食べない場合、以下のような理由が考えられます。
病気で起こる犬の食欲不振

急に食べなくなった場合、病気が原因で食欲不振が起こっている可能性があります。
全身性の異常
腎不全や癌、リンパ腫、感染症といった病気の場合に食欲が落ちることがあります。消化管の腫瘍や機能低下も考えられます。ごはんを食べない以外に、下痢や嘔吐などの症状がないか確認しましょう。夏は夏バテや熱中症で食欲不振になる場合もあります。屋内で起こる熱中症は発見が遅れて重症化し、死に至ることもあります。夏になる前から冷房を入れたり、水分補給ができているか確認したり、飼い主さんが気を配るようにしてあげてください。
口腔内や喉の異常
歯周病や口内炎、喉の炎症など口腔内や喉に異常で食欲が落ちる場合があります。慢性的な痛みで食欲が落ちたり、食べるときの痛みで食べられなくなっていたりします。誤飲で起こる犬の食欲不振
おもちゃやティッシュなどの誤飲で食道や腸が詰まっている可能性があります。放置すると腸閉塞になる恐れがあるため、誤飲の可能性が考えられたり、頻回の嘔吐が見られたりしたら、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。ストレスで起こる犬の食欲不振

環境の変化による「緊張」や「不安」「運動不足」「お留守番が多い」などのストレスで食べないということもあります。ストレスの原因が環境の変化なのか、不満的ストレスなのかを見極め、適切な対応が必要です。
環境の変化によるストレス
環境の変化に弱い犬の場合、旅行やペットホテルの利用、入院によってごはんを食べなくなることがあります。ホテルが苦手な子には愛犬が信頼している友達や親戚に預けるなど、その子が安心して過ごせる環境を整えてあげるようにしてください。不満によるストレス
散歩に行けなかったり、遊んでもらえなかったり、飼い主さんが子どもや他の動物をかわいがっていたり、運動不足や愛情不足がストレスになって食欲不振につながっている可能性があります。何が足りないのか、愛犬との関わりを見直してみましょう。好き嫌いやわがままで起こる犬の食欲不振

単純に飽きてしまったり、嫌いな食べ物だから食べなかったりする場合があります。ごはんを変えて食べるようになればいいのですが、要求に応えすぎてしまうとわがままになってしまう可能性があります。
おやつは食べる
ごはん代わりにおやつを与えてしまうのは特にNGです。人と同じでおやつのほうが嗜好性が高いため、「おやつのほうが美味しい」「ごはんを食べずに待っていると美味しいおやつがもらえる」と認識してしまう可能性があります。おやつだけでは栄養不足になりますし、肥満や糖尿病につながり愛犬の寿命を縮めることになってしまいます。健康的な食生活を送るためにも、必ず適正な量の総合栄養食を食べさせるようにしてください。
なお、「わがまま」になった原因が飼い主さんにあるかもしれません。お互いストレスのない生活を送るためにも、飼い方に不安がある場合は獣医師やドッグトレーナーに相談するようにしてください。
運動量不足による少食
犬も運動すればお腹が空きますので、逆に運動しなければ食欲もわかずに食べる量は減ります。PETOKOTOのアンケート調査では、偏食や少食とされる犬の6割以上に運動不足の疑いがありました。健康面での心配がない一方で運動不足に心当たりがある場合は、以下の散歩量を目標にしてみてください。散歩量目標
- 小型犬:30〜60分の散歩を1日2回
- 中〜大型犬:60分以上の散歩を1日2回
シニア犬(老犬)で起こる食欲不振

人と同じく、犬も年を取れば食欲が落ちていきます。少しずつ落ちているのであれば心配する必要はありませんが、食欲はあっても「ごはんがあるところまで体を動かすのが大変」「口を動かすのが大変」といった理由で食べられなくなっている可能性もあります。
食べる量が減ったことで体が弱り、ますます食べる量が減ってしまう悪循環につながるかもしれません。フードボウルや水飲みの数を多くしたり、ドライフードからウェットフードに変えたり、食べやすくなる工夫をしてあげてください。
ただし、シニア期でも食べ過ぎれば肥満や糖尿病になってしまいますので、適正量は超えないようにしてください。1日の最適カロリー量はPETOKOTO FOODSの「フード診断」を使うと無料で教えてもらえますので、参考にするといいでしょう。
獣医師がオススメするごはんとは

愛犬のごはん探しで苦労されている飼い主さんはたくさんいると思います。獣医師だからといって「この商品だけ食べていればいい」と言えるものはありませんが、「栄養バランスの良いもの」「良い食材が使われているもの」は重要なポイントです。
総合栄養食であれば最低限の栄養バランスは保証されていますが、原材料の冒頭が「とうもろこし」や「小麦粉」など肉類になっていないものは避けたほうがいいでしょう。値段が安すぎるものも、良い食材が使われているか疑問があります。
ドライフードの場合は、着色料や香料(フレーバー)といった余計な添加物が使われていないものを選んでください。嗜好性を高めるため動物性油脂がコーティングされているものは、時間がたつと油でベトベトしてきますので飼い主さんも気付きやすいと思います。
手作り食なら食材の品質に心配はありませんが、栄養バランスに心配があります。しっかり勉強をされてから取り組むといいでしょう。
まとめ

病気の可能性がある場合はすぐ病院へ
獣医師やドッグトレーナーに相談する
安易におやつを与えないようにする
愛犬をよく見てよく触り、変化にすぐ気付く
食欲不振は病気が原因の場合、緊急度の高い状態です。気になることがあればすぐ病院に行くようにしてください。ごはん選びで困っている場合は、一人で悩まず、獣医師やドッグトレーナーなど専門家を頼っていただけると幸いです。
