【獣医師解説】犬のワクチン接種は毎年必要?種類・時期・頻度・副作用などを解説
子犬を家族に迎えてまず動物病院で行うことは、ワクチン接種になるかと思います。今回は、バンブーペットクリニック院長の藤間が、狂犬病ワクチンや混合ワクチンなどの犬のワクチン接種の種類や必要性、副作用について説明します。ワクチン接種についてはいろいろな考え方がありますが、本稿では日本で行われている一般的な方法をお話します。
犬のワクチンの種類
ワクチンの種類は、大きく分けて2つに分類されます。
法律で年に1回の接種が定められている「狂犬病ワクチン」と、任意で接種する「混合ワクチン」です。
狂犬病ワクチンとは
狂犬病を予防するためのワクチンです。狂犬病は、発症すると致死率がほぼ100%で、人にも感染することのある恐ろしい病気です。
日本では年に1度、飼い犬に狂犬病ワクチンを接種することが法律で義務付けられています。
混合ワクチンとは
混合ワクチンは狂犬病ワクチンと違って任意です。接種が推奨されているコアワクチンと、飼育環境に合わせて接種するノンコアワクチンの組み合わせで構成されており「5種」「6種」「8種」「9種」「10種」などがあります。
コアワクチンとは、「死に至る怖い病気である」「広く流行している」「人獣共通感染症であり、人の健康を脅かす」などの理由からすべてのペットに接種するよう推奨されているワクチンです。
ワクチンの予防対象ウイルス
狂犬病ウイルス | ||
---|---|---|
ジステンパーウイルス | ||
アデノウイルス1型・2型 | ||
パルボウイルス2型 | ||
パラインフルエンザウイルス | ||
コロナウイルス | ||
レプトスピラ |
関連記事
犬のワクチンの種類を決めるポイント
犬の場合、人獣共通感染症であるレプトスピラを含ませるかどうかがポイントになります。
レプトスピラはネズミの尿から感染し、人にうつることもある恐ろしい病気です。
大雨の日、ネズミの尿が土壌にまぎれ、それを犬が触れた・舐めたことで感染することがあります。
混合ワクチンにレプトスピラを含ませることで、ワクチンアレルギーの可能性も高まるため、獣医師と相談の上、生活環境に合わせて、接種する種類を選択しましょう。
犬のワクチン接種の時期・方法
一般的に子犬で初めてワクチン接種する場合、以下のように行われます。
- 8週齢前後で1回目の混合ワクチン(ペットショップ、ブリーダーが行う場合が多い)
- 3〜4週間後、2回目の混合ワクチン
- 3〜4週間後、3回目の混合ワクチン
- 1カ月後、狂犬病ワクチン
分かりやすく「1カ月ごとにワクチンを打ちに来てください」と説明をする病院が多いかと思います。
また、1回目の接種が9週齢以上だった場合や、成犬で初めて接種する場合は2回接種して終了とする場合もあります。
ワクチン接種の当日は安静させ、それ以降の散歩やトリミングは様子を見ながら始めましょう。
幼齢期に犬にワクチン接種を複数回する理由
ブースター効果といって、しっかりと抗体(免疫力)を獲得させるためです。
通常8〜12週齢までは母親から譲り受けた移行抗体という免疫力で守られています。その効果が切れる頃に自分で免疫力をつける力が備わります。
したがって、免疫力を獲得できるようになる8週齢頃に1回目のワクチンを接種しますが、この時期には個体差があり、1回目のワクチンでしっかりと抗体が作られない場合もあるので、確実に免疫力を獲得できるようになった頃に2回目、ブースター効果を狙って3回目を接種するという流れになっています。
犬のワクチン接種を毎年する必要性
狂犬病ワクチン
法律で毎年の接種が義務付けられているからといって、大切な愛犬に余計な注射は打ちたくないと考える方もいるでしょう。しかし、愛犬を恐ろしい病気にさせないために、狂犬病ワクチンは必ず接種しましょう。狂犬病は、世界で毎年5万人以上が亡くなっているウイルス性の人獣共通感染症(ズーノーシス)です。
幸い、日本は狂犬病清浄国で、1957年以降狂犬病に感染した動物は発見されていません。しかし、台湾では2013年、シナイタチアナグマに狂犬病の感染が認められ、清浄国から外されました。他にも、2000年以降清浄国を外されている国は多数あります。
いつどこから狂犬病の侵入があってもおかしくない状況といっても過言ではありません。
接種が法律で義務付けられている背景には、こうした理由があります。
混合ワクチン
人間のインフルエンザワクチンと同じで、接種しても100%感染を防げるわけではありませんが、万が一感染した場合、症状が軽く済みます。完全室内飼いだとしても、人の衣服などに付着して感染する場合がありますので、接種をおすすめします。
ワクチンの持続期間は3年以上持つものもあれば、1年未満で消失するものもあり、個体差はありますが、最近では、WSAVA(世界小動物獣医師会:World Small Animal Veterinary Association)のガイドラインで3年に1回のワクチン接種を推奨しています。
犬猫ともに14週齢以降を0歳時の最終ワクチンとし、1歳時に接種以降は3年おきのワクチン接種が推奨されます(犬 5-6種、猫3種)。
犬のワクチン接種のリスク
ワクチンアレルギーの可能性
ワクチンは100%安全とは言えません。ワクチンアレルギーと言われ、アナフィラキシーショックや過敏症などがごくまれに起こる場合があります。
一番怖いのは、アナフィラキシーショックです。ワクチン接種によってショックを起こし、急に具合が悪くなって最悪死に至るケースもあります。
これは接種から数分で起こるので、接種後に話している間や会計を待っている間に起こることが多いです。適切な処置をしてあげれば最悪の事態は免れることができます。
ワクチンアレルギーの症状
初めてのワクチン、特に2回目のワクチンを接種した後は注意が必要です。帰宅後、以下の症状が現れたら、慌てずに動物病院へ連絡しましょう。
- 元気がない
- 顔が腫れる
- 嘔吐
- 下痢
- 食欲不振
こういった症状が夜中に出ることのないよう、ワクチン接種は午前中に行うことをおすすめします。
1度そういった症状が出たら、翌年からは獣医師とよく相談の上、接種を検討してください。
犬のワクチン接種はアレルギーに注意
年に1度、飼い犬に狂犬病ワクチンを接種することが義務付けられています
混合ワクチンは任意での接種になります
ワクチン接種は午前中に行いましょう
ワクチンは100%安全とは言えず、ワクチンアレルギーが出る場合があります
ワクチンアレルギーが出たら、早急に動物病院へ
愛犬を守れるのは飼い主さんだけですので、ワクチンで予防できるものは予防しましょう。