犬の歯が抜ける? 原因や生え替わり時の問題を歯科担当獣医師が解説

犬の歯が抜ける? 原因や生え替わり時の問題を歯科担当獣医師が解説

犬を含む動物は、口で食べ物を咀嚼して、嚥下して生命を維持しています。咀嚼に必要な永久歯が、何らかの原因によって抜け落ちても、人のようにその部位に入れ歯やインプラント措置を行うことはできません。今回は、犬の乳歯から永久歯への生え変わりや、永久歯が抜ける原因など「犬の歯が抜ける」をテーマに、フジタ動物病院院長の藤田が解説していきます。

歯の生え替わりについて

犬の口内写真

乳歯と永久歯が混在する時期がある

犬は歯の生え替えの時期(生後約5カ月)を迎えると、永久歯が生えはじめても、わずかに乳歯と永久歯が一緒に生えている時期があり、その期間は犬歯は1~2週間程度その他の歯はわずか0〜3日程度です。

乳歯が抜ける前兆

歯が抜け落ちるときには歯の根っこの歯根が溶けて、歯肉が赤くなり、歯がぐらついてきます。

この時に、食欲が低下することはありませんが、この部位に触れると痛がります。この時は無理やり抜くことはせず、自然に抜けるまで待ちましょう。

生え替わり順

生後約5カ月から「下あごの切歯」→「上あごの切歯」→「下あごの臼歯」→「上あごの臼歯」→「下あごの犬歯」→「上あごの犬歯」の順に生えてきて、約7カ月ですべて永久歯に生え替わります。


生え替わり時期の問題

布団から見る犬

問題なく愛犬の歯が生え替われば1番ですが、中には生え替わりの時期に起こる「乳歯遺残」「永久歯がない・生えない」といった問題も起こります。

乳歯遺残(2枚歯)

乳歯遺残の犬の口内写真
※乳歯遺残の写真:永久歯は上あごでは乳歯の前に下あごでは乳歯の内側に生えています

小型犬では、7カ月齢以後も乳歯が残ることが少なくありません。

そのときは原則として、動物病院で乳歯を抜歯しないと乳歯と永久歯が隣り合っているために、かみ合わせに問題が出たり、歯垢・歯石が付きやすくなる結果、歯周病になる恐れがあったりすることがあります。


永久歯がない・生えない

成犬になっても永久歯がない犬がいたり、次第に歯が少なくなったりする場合もあります。

考えられる状態としては以下の7つがあります。

  • 埋伏歯(まいふくし)
  • 欠如歯(けつじょし)
  • 重度の歯周病
  • 吸収病巣
  • 腫瘍
  • 嚢胞
  • 外傷

<埋伏歯>

生後7カ月齢を過ぎたのに永久歯が生えていない場合、まだ、永久歯があごの中に存在していて生えていないか、もともと存在していないこともあります。

あごの中にとどまっている場合を「埋伏歯」といいます。この場合に生後1年未満であれば、永久歯の先端を出してあげる手術をすれば生えてくることがあります。

<欠如歯>

もともと存在してない場合は「欠如歯」、あるいは「欠歯(けっし)」といいます。

その場合、特に乳歯が抜けていなければ、乳歯を永久歯として働いてくれるように残すことがあります。

<重度の歯周病>

中年齢や高齢になって、歯が次第になくなってきた場合、最も多い原因は、重度の歯周病によって歯を支えているあごの骨が溶けて歯が抜け落ちた可能性が高いです。

このような場合は、ほかの歯の表面が茶色や黄土色の歯垢・歯石で被われていて、歯肉が赤く、腫れていて、口臭も強いです。

<吸収病巣>

歯の吸収病巣写真
※歯の吸収病巣:下あごの第1後臼歯より前の前臼歯がない

歯の吸収病巣のレントゲン写真
※歯の吸収病巣のレントゲン写真:すべての歯が吸収病巣で第1後臼歯も薄くなってきて溶けてきていますが、その前の歯がすでに吸収病巣でなくなり、わすかに下あごの中の歯根が見えます

歯の「吸収病巣」といって、見えている歯が溶けていって、次第になくなることもあります。

なお、人では虫歯は多くみられますが、犬ではもともと虫歯は非常に少なく、上あごの臼歯にたまに見られる程度で、歯がなくなるほどにはなりません。


<腫瘍・嚢胞>

ガンなどの腫瘍や嚢胞(あごの骨や歯が溶かされてします病気)によって歯が溶かされたり、歯の周りの組織が壊されたりして歯がなくなることもあります。

<外傷>

交通事故や落下事故によって、見えている部分の歯が脱臼して抜け落ちたり、折れたり(破折といいます)して、歯が見えなくなることもあります。

歯の破折は、硬いものを咬むことが原因の場合が多いです。

予防方法

本を読む犬

愛犬の口腔内チェックを行う

口の中を見る機会は少ないと思いますが、普段から口の中をのぞいて歯の形や歯の表面の色、歯肉や口腔粘膜の状態を観察する癖をつけてもらいたいと思います。

歯磨きを行う

犬の口の病気で最も多い歯周病は、歯ブラシを用いた歯磨きを行うことで予防できます。

硬いデンタルケアグッズを与えない

また、歯周病予防と称して非常に硬いケアグッズが販売されていますが、あまりに硬い物は、破折の原因になりますので与えないように注意してください。


まとめ

見上げる二匹の犬

歯肉が赤くなり、歯がぐらついてきたら乳歯が抜ける前兆です
永久歯がなくなる原因はさまざまあります
歯ブラシを用いた歯磨きは、歯周病予防につながります
硬いデンタルケアグッズは与えないで
犬の歯がなくなったときは、抜けているのではなく、口の中の病気によって歯がなくなっていることが多いです。

したがって、普段と違う口の中の状態を発見したら、早めに動物病院で診てもらいましょう。

参考文献

  • 藤田桂一『臨床ための小動物歯科』2008年11月(インターズー)
  • 藤田桂一『基礎から学ぶ小動物の歯科診療 Vol.1』2017年9月(インターズー)
基礎から学ぶ小動物の歯科診療 Vol.1
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