【獣医師執筆】犬にかさぶたができる原因は?病院に連れていくべき症状や対処法を解説

【獣医師執筆】犬にかさぶたができる原因は?病院に連れていくべき症状や対処法を解説

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愛犬の背中やお腹などをよく見ると「いつの間にかかさぶたができている」という経験はありませんか? カサカサとしたかさぶたもあれば膿も伴うかさぶたもあります。かさぶたは出血を防ぐ役割を持っており、犬の体にかさぶたができる原因は二つあります。一つは「皮膚炎」、もう一つは「外傷(怪我)」です。今回は特に皮膚炎にクローズアップして、犬のかさぶたの原因、犬がかさぶたを取ろうとするときの対処法などについて解説します。

犬のかさぶたとは

犬

かさぶたは漢字で「瘡蓋」と書くように、何らかの原因でできた出血部を止血するためにできる蓋のようなもの分です。医学的には「痂皮」(かひ)とも呼ばれます。犬にかさぶたができる理由として、主に以下の3点が考えられます。

  • 皮膚炎
  • 痒くて引っかいたり、噛んだりして傷ができ出血した。
  • 虫に刺されて傷ができた。
  • 何らかの原因で怪我をして出血した。

痒みが起きる皮膚病には、「膿皮症」「疥癬」「細菌感染を伴う真菌症」「アレルギー・アトピー」「マラセチア性皮膚炎」「自己免疫性疾患」などが考えられます。

犬のかさぶたの原因として考えられる病気

犬のかさぶた

犬のかさぶたができる原因について、特徴別に解説します。

  1. 黒いかさぶた
  2. フケのようなかさぶた
  3. ブツブツしたかさぶた
  4. 分厚くゴワゴワしたかさぶた
  5. 脱毛を伴うかさぶた

1. 黒いかさぶた

黒いかさぶたは、「痒みがある部位を掻いた・かんだ」「怪我をした」などで起きた出血を止めるためにできたものです。原因になりやすい病気として、以下のような痒みの強い皮膚病が考えられます。

  1. 膿皮症
  2. アレルギー・アトピー
  3. 疥癬(センコウヒゼンダニ)

1-1. 膿皮症

膿皮症はブドウ球菌や連鎖球菌の感染症で、初期は赤い発疹ができ、次第に発疹の中心部に膿を持って白っぽくなります。この膿が破裂し、周囲に感染を広げていきます。破裂した後は中心部が黒っぽいかさぶたになり、その周辺が少し皮膚がめくれたような状態になります。

このような状態を表皮小環(ひょうひしょうかん)といって、最終的に黒く小さなシミができてしまいます。膿皮症は再発したり、一箇所が治ってもまた別の場所にできたりすることが多く、頭を悩ませることが多い皮膚疾患です。痒みを伴いますので、掻くことでさらに感染を広げる結果になります。

1-2. アレルギー、アトピー

アレルギーもアトピーも痒みが激しく、「掻く」「噛む」「こすりつける」ことで出血が起こり、黒いかさぶたができることがあります。アレルギーやアトピーはアレルゲンに対して反応し、皮膚の痒みや下痢など消化器症状が起こることもあります。


1-3. 疥癬(センコウヒゼンダニ)

疥癬はダニの一種で、皮膚にトンネルを掘って生活します。トンネル内で産卵し、それがトンネル内で孵化します。痒みが非常に強く、噛んだり引っかいたりすることで出血し、黒いかさぶたができます。治療に時間がかかり、感染力が非常に強く人にもうつることもあります。赤い発疹が出て、痒みが強烈な場合はこの病気の可能性があります。

2.フケのようなかさぶた

脱毛を伴うかさぶた

フケのようなかさぶたは、脱落した皮膚が固まったようになったり被毛の間を埋めるようにして広い範囲を覆うようにできたりします。以下のような原因が考えられます。

  1. シャンプーやトリミング・ブラッシングによるもの
  2. ツメダニ感染症
  3. 真菌症
  4. 膿皮症の過程

2-1. シャンプーやブラッシングによるもの

シャンプーが合わない場合やブラッシングで抜け毛の箇所にかさぶたができる場合があります。トリマーに相談してシャンプーの変更を検討しましょう。

2-2. ツメダニ感染症

ツメダニは皮膚の表面を移動して生活しているダニで、「フケダニ」とも呼ばれるほどフケがたくさん出ます。軽い痒みがあり、掻いたり噛んだりすることで全身のあちこちに広がります。人にも感染しますので、フケが異常に多い場合は早めに病院へ行きましょう。その際、フケが付いたまま受診していただくと診断しやすくなります。

2-3. 真菌症

真菌症は円状に広い範囲の毛が抜けてしまうのが特徴です。脱毛した部分にはカサカサしたフケが積みあがったようなかさぶたができます。このかさぶたの周囲は赤くなっていることが多いのも真菌症の特徴です。真菌症の原因になる真菌は複数ありますが、中には人にうつるものもあります。

3. ブツブツしたかさぶた

ブツブツしたかさぶたの原因には、「粟粒性皮膚炎」や「膿皮症」などが考えられます。

3-1. 粟粒性皮膚炎

ノミアレルギーに伴い粟粒大の発疹が背中や腰のあたりを中心にできます。ノミの唾液に対して起こるアレルギー症状で、激しいかゆみを伴います。治療の際にはノミの予防を同時に行う必要があり、これを怠ると発症を繰り返します。

3-2. 膿皮症

前述した通り、膿皮症は皮膚の常在菌であるブドウ球菌や連鎖球菌の感染症です。表皮に感染が起こる「表在性膿皮症」と真皮層にまで感染が及ぶ「深在性膿皮症」が代表的です。非常によく見かける皮膚病で、症状がどんどん変わっていきます。

最初は小さな赤い発疹ですが、やがてニキビのように見える中心に膿を持った発疹に変わります。この膿がはじけると皮膚がめくれたような状態になり色素沈着が起こり黒ずんだように見えます(表皮小環)。一見治っていないように見えますがこの状態を経過したのちに良化していきます。

4. 分厚くゴワゴワしたかさぶた

分厚くゴワゴワしたかさぶたの原因には、「急性湿疹」や「天疱瘡(てんぽうそう)」などが考えられます。

4-1. 急性湿疹

急性湿疹は、まず赤く腫れた部分にブツブツとした丘疹ができ、水ぶくれになったりします。その部分が化膿したり、かさぶたができたりした状態を急性湿疹といいます。ピリピリとした痛みを伴います。

4-2. 天疱瘡

天疱瘡は自己免疫性疾患です。自己免疫性疾患とは、自分の体を自分が異物ととらえて攻撃してしまう病気のことです。

天疱瘡の場合は、皮膚表層の角化細胞にある細胞間の接着している部分を攻撃するので、皮膚に水泡や膿疱、びらん(ただれ)が起こります。硬く、ごわごわしたかさぶたができます。

5. 脱毛を伴うかさぶた

脱毛を伴うかさぶた

脱毛を伴うかさぶたの原因として、「皮膚糸状菌症」や「腫瘍性皮膚疾患(皮膚リンパ腫)」が考えられます。

5-1. 皮膚糸状菌症

皮膚糸状菌症は、皮膚糸状菌という真菌の一種が感染することで起こる皮膚病です。真菌の種類は非常に多いのですが、犬に脱毛を引き起こす皮膚糸状菌の中には、人間に感染するものもあります。

犬が皮膚糸状菌が感染すると、「円形に脱毛する」「フケが出る」「脱毛の中心部にかさぶたができる」「痒みがほぼない(細菌が二次感染するとかゆみを伴う)」などの症状が見られます。脱毛は徐々に抜けるというよりも、広い範囲の被毛がまとめて抜けるのが特徴です。

5-2. 腫瘍性皮膚疾患(皮膚リンパ腫)

皮膚リンパ腫では赤みや脱毛を伴うかさぶたになりますが、かさぶたの種類としては「黒いかさぶた」「フケのようなかさぶた」「ブツブツしたかさぶた」「分厚くゴワゴワしたかさぶた」など、どれもなり得る可能性があります。

犬にかさぶたができているときのケア・対処法

犬

ワセリンを塗る場合は獣医師の指示で

肉球や鼻の上が乾燥している場合の保湿としてワセリンを塗るのは有効ですが、かさぶたはそれ自体が保湿のために存在しています ので重ねてワセリンを塗る必要はありません。動物病院で殺菌成分を含むワセリンが処方されることはありますので、その場合は獣医師の指示に従って塗るようにしてください。

かさぶたは取る?取らない?

犬は痒みが我慢できずにかさぶたを取ろうとするかもしれません。頭のかさぶたは掻いたり、体や足を舐めたり噛んだりすると皮膚症状が悪化してしまいますのでエリザベスカラーをつけるようにしましょう。最近はエリザベスウェアという着るタイプも市販されています。また、靴下を履かせて爪を隠すと皮膚を掻く勢いが弱まります。

ただし、かさぶたから悪臭がしている時はかさぶたの下が雑菌の温床になっているかもしれません。かえって剥がしたほうが治りが早い場合もありますが飼い主さんの判断で取ることはせず、まずは獣医師に相談してください。

かさぶたが剥がれても毛が生えない?

かさぶたによって毛が生えなくなることはありませんが、かさぶたができる原因になった傷ができた際に毛根まで破壊されてしまった場合は、傷が治ってかさぶたが剥がれても毛は生えてきません。

まとめ

シャボン玉と犬
かさぶたは皮膚炎や外傷で起こる
掻く・舐める場合はカラーをつける
原因を調べて適切な治療を行う
早期発見・早期治療が大切
かさぶたと一口にいってもサイズ、性状、色などさまざまです。しかし、その原因になる皮膚病の種類によってかさぶたに特徴があります。かさぶたの原因を調べ、それに適した治療を行わないとなかなか症状が治まりません。症状が軽いうちに動物病院で診察を受け、適切な治療を行いましょう。

参考文献

  • Small Animal Dermatology Vol.14 No.3
  • Small Animal Dermatology Vol.14 No.4
  • 犬と猫の臨床薬理ハンドブック

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