犬のかさぶたの原因とは?皮膚炎で考えられる病気を獣医師が解説
愛犬の背中やお腹などをよく見ると「いつの間にかかさぶたができている」という経験はありませんか? カサカサとしたかさぶたもあれば膿も伴うかさぶたもあります。かさぶたは出血を防ぐ役割を持っており、犬の体にかさぶたができる原因は二つあります。一つは「皮膚炎」、もう一つは「外傷(怪我)」です。今回は特に皮膚炎にクローズアップして、犬のかさぶたの原因、犬がかさぶたを取ろうとするときの対処法などについて、ふくふく動物病院院長の平松が写真付きで解説します。
目次 [開く]
犬のかさぶたの原因として考えられる病気

では、犬のかさぶたができる原因について、特徴別に解説します。
- 黒いかさぶた
- フケのようなかさぶた
- 脱毛を伴うかさぶた
- ブツブツしたかさぶた
- 分厚くゴワゴワしたかさぶた
黒いかさぶた
「痒みがある部位を掻いたり咬んだりして出血が起きた」「けがをした部位から出血した」などが理由で、血を止めるためにできるのが黒いかさぶたです。黒いかさぶたができる原因になりやすい皮膚疾患として、「膿皮症」「アレルギー・アトピー」「疥癬(センコウヒゼンダニ)」など、痒みの強い皮膚疾患が考えられます。
<膿皮症>
膿皮症はブドウ球菌や連鎖球菌の感染症で、初期は赤い発疹ができ、次第に発疹の中心部に膿を持って白っぽくなります。この膿が破裂し、周囲に感染を広げていきます。破裂した後は中心部が黒っぽいかさぶたになり、その周辺が少し皮膚がめくれたような状態になります。
このような状態を表皮小環(ひょうひしょうかん)といって、最終的に黒く小さなシミができてしまいます。膿皮症は再発したり、一箇所が治ってもまた別の場所にできたりすることが多く、頭を悩ませることが多い皮膚疾患です。
痒みを伴いますので、掻くことでさらに感染を広げる結果になります。
<アレルギー、アトピー>
アレルギーもアトピーも痒みが激しく、「掻く」「噛む」「こすりつける」ことで出血が起こり、黒いかさぶたができることがあります。アレルギーやアトピーはアレルゲンに対して反応し、皮膚の痒みや下痢などの消化器症状が起こります。
<疥癬(センコウヒゼンダニ)>
疥癬はダニの一種で、皮膚にトンネルを掘って生活をします。トンネル内で産卵し、それがトンネル内で孵化します。痒みが非常に強く、噛んだり引っかいたりすることで出血し、黒いかさぶたができます。治療に時間がかかり、感染力が非常に強いダニです。
このダニは人にもうつることがあります。赤い発疹が出て、痒みが強烈な場合はこの病気の可能性があります。
フケのようなかさぶた

フケのようなかさぶたは、脱落した皮膚が固まったようになったり被毛の間を埋めるようにして広い範囲を覆うようにできたりします。原因として考えられるのは、「ツメダニ感染症」「真菌症」「膿皮症の過程」などが代表的です。
<ツメダニ感染症>
ツメダニは皮膚の表面を移動して生活しているダニで、俗名「フケダニ」ともいうほど感染するとフケが非常にたくさん出ます。軽い痒みがあり、掻いたり噛んだりすることで全身のあちこちに広がります。このダニは人にも感染しますので、異常なくらいフケが多い場合は早めに受診することをお勧めします。
シャンプーをしたりフケを落としたりせず、フケがついたままで受診してください。そのほうが診断が容易です。
<真菌症>
真菌症は円状に広い範囲の毛が抜けてしまうのが特徴です。脱毛した部分にはカサカサしたフケが積みあがったようなかさぶたができます。このかさぶたの周囲は赤くなっていることが多いのも真菌症の特徴です。真菌症の原因になる真菌は複数ありますが、中には人にうつるものもあります。
脱毛を伴うかさぶた

脱毛を伴うかさぶたの原因として、「皮膚糸状菌症」が考えられます。
<皮膚糸状菌症>
皮膚糸状菌症は、皮膚糸状菌という真菌の一種が感染することで起こる皮膚病です。真菌の種類は非常に多いのですが、犬に脱毛を引き起こす皮膚糸状菌の中には、人間に感染するものもあります。犬が皮膚糸状菌が感染すると、「円形に脱毛する」「フケが出る」「脱毛の中心部にかさぶたができる」「痒みがほぼない(細菌が二次感染するとかゆみを伴う)」などの症状が見られます。
脱毛は徐々に抜けるというよりも、広い範囲の被毛がまとめて抜けるのが特徴です。
ブツブツしたかさぶた
ブツブツしたかさぶたの原因には、「粟粒性皮膚炎」「膿皮症」などが考えられます。<粟粒性皮膚炎>
ノミアレルギーに伴い粟粒大の発疹が背中や腰のあたりを中心にできます。ノミの唾液に対して起こるアレルギー症状で、激しいかゆみを伴います。治療の際にはノミの予防を同時に行う必要があり、これを怠ると発症を繰り返します。<膿皮症>
前述した通り、膿皮症は皮膚の常在菌であるブドウ球菌や連鎖球菌の感染症です。表皮に感染が起こる「表在性膿皮症」と真皮層にまで感染が及ぶ「深在性膿皮症」が代表的です。非常によく見かける皮膚病で、症状がどんどん変わっていきます。最初は小さな赤い発疹ですが、やがてニキビのように見える中心に膿を持った発疹に変わります。
この膿がはじけると皮膚がめくれたような状態になり色素沈着が起こり黒ずんだように見えます(表皮小環)。一見治っていないように見えますがこの状態を経過したのちに良化していきます。
分厚くゴワゴワしたかさぶた
分厚くゴワゴワしたかさぶたの原因には、「急性湿疹」「天疱瘡(てんぽうそう)」などが考えられます。<急性湿疹>
急性湿疹は、まず赤く腫れた部分にブツブツとした丘疹ができ、水ぶくれになったりします。その部分が化膿したり、かさぶたができたりした状態を急性湿疹といいます。ピリピリとした痛みを伴います。<天疱瘡>
天疱瘡は自己免疫性疾患です。自己免疫性疾患とは、自分の体を自分が異物ととらえて攻撃してしまう病気のことです。天疱瘡の場合は、皮膚表層の角化細胞にある細胞間の接着している部分を攻撃するので、皮膚に水泡や膿疱、びらん(ただれ)が起こります。硬く、ごわごわしたかさぶたができます。
犬がかさぶたを取ろうとする場合の対処法

犬がかさぶたを取ろうとするのは、痒みが我慢できないことが原因です。エリザベスカラーを着けると「顔や頭部、耳などのかさぶた」は取れなくなり、かさぶたのある部分を噛むことも防げます。
最近、エリザベスウェアというものが発売されていて、袖が長く襟元も詰まっていますので、かいたりなめたりがしにくくなります。
皮膚をできるだけ隠すことで、皮膚症状が悪化することを少しでも防ぐことができます。また、靴下を履かせて爪を隠すと少しでも皮膚をかく勢いが弱まりますので、このような工夫も可能です。
とはいえ、かさぶたから悪臭がしていた場合、そのかさぶたの下が雑菌の温床になっている場合があります。その場合はかえって剥がしたほうが治りが早いので、獣医師に相談してみましょう。