
犬も花粉症になる?症状や対策、予防方法について獣医師が解説
過ごしやすい気温に愛犬との外出が楽しみな季節になってきましたが、花粉症の人にとってはつらい季節かもしれません。私たちにとってはくしゃみや鼻水、目のかゆみなどを引き起こす花粉症は身近なアレルギー症状ですが、犬も花粉症になるのでしょうか? 今回は犬の花粉症の対策から、症状や治療薬などについて紹介いたします。なお、本稿は佐藤獣医師監修のもと、執筆しています。
犬の花粉症とは?
花粉症とは花粉などのアレルゲンが体内に入り、それを排除しようとしてくしゃみや鼻水、目のかゆみといった症状を引き起こす免疫反応のことをいいます。日本人はスギやヒノキの花粉にアレルギーを持っている方が多いといわれています。犬も花粉症になる?

結論からいうと、犬も花粉症になります。ただ、犬の花粉症は私たち人の症状とは少し違い、皮膚に症状が現れることが多いとされています。いわゆるアレルギー性皮膚炎となるわけです。ただ、くしゃみや目がかゆくなる、赤くなるといった症状が出ないかというとそうでもありません。犬種やアレルゲンにもよるということになります。
犬の場合だと、スギやヒノキといった花粉の中でもブタクサにアレルギー反応を起こしやすいと報告されています。そのため春夏秋冬、花粉症になる可能性はありますが、ブタクサは7月〜10月にかけて開花するため、秋に花粉症になる子が多いと考えられています。
花粉症になりやすい犬種・年齢
花粉症になりやすい年齢は明確には判明されていませんが、2013年に公表されたアニコム損害保険の調査によると、ウエストハイランドホワイトテリア、フレンチブルドッグ、ワイヤーフォックステリア、柴犬、シーズーでテリア系の犬種や短頭種に多い傾向があるようです。犬の花粉症の症状

人は鼻水やくしゃみといった呼吸器系の症状が出やすいですが、犬の症状は主に耳・脇・股・足先・口や目の周りに発疹・かゆみといった皮膚炎の症状が多くみられ、体を舐めたり噛んだりするしぐさがみられます。
なぜ人間のような症状ではなく、皮膚に症状が出やすいかは明確には分かってはいません。しかし皮膚炎を起こすのは、犬は人間よりも皮膚が薄くデリケートなため、外部からの刺激に過敏に反応しやすいとも考えられています。
犬の花粉症の検査・診断方法
血液検査で何の物質に反応しているか調べることができます。毎年同時期に、同様の症状が出ていた場合は花粉症の可能性もあるので、1度調べてみてもいいかもしれません。犬の花粉症の治療

花粉が原因であれば、症状を和らげる対症療法がとられることが多いです。症状がひどい場合、ステロイドなどでかゆみや炎症を抑えることもあります。
また、比較的軽症の場合は、人の花粉症と同様に抗ヒスタミン剤(※)を投与することもあります。しかし、基本的に発症してしまったアレルギーを完治させることはできません。
※ヒスタミンの作用を抑制する薬品のこと。
犬の花粉症の対策・予防

愛犬が花粉症と判断された場合でもされていない場合でも、以下の6つの対策をとることで、症状の悪化もしくは予防することができます。市販で犬用の花粉防止スプレーが販売されておりますが、そういったグッズを使いながら対策をとっていきましょう。
- 花粉の多い時間帯でのお散歩を避ける
- 花粉症の犬には洋服を着せる
- 草むらに入らせない
- 外からの帰宅時にはブラッシングをする
- シャンプーの回数を増やす
- 空気清浄機の設置
花粉の多い時間帯でのお散歩を避ける
花粉症の対策は人と一緒で、「花粉に接触しない・持ち込まない」ということが大前提です。花粉が多く飛沫している時間帯は避けたほうが無難でしょう。花粉の飛沫量や多い時間帯は地域や気象によって異なります。今ではインターネット(花粉Chなど)で簡単に花粉の飛沫量を調べることができますので、事前に調べ、その時間帯を避けて愛犬とのお散歩を楽しみましょう。花粉症の犬には洋服を着せる
人の場合は花粉症対策でマスクをすることが多いですが、犬の場合は洋服を着せて対策をとってください。犬の毛に花粉がつくことを防ぎ、さらに帰宅時に洋服を脱がせるだけで、家に花粉を持ち込むことを防止できます。しかし、いくら花粉対策になるからといって愛犬が洋服を嫌がった場合は無理に着せないようにしてください。草むらに入らせない
犬の花粉症の原因の1つであるブタクサは草むらに生えています。できる限り、草むらに入らせないようにすることが無難です。外からの帰宅時にはブラッシングをする
帰宅したら、愛犬についた花粉を早めに取り除いてあげましょう。ブラッシングすることで花粉を落とすことができますが、必ず乾いた状態ではなく少し濡らした状態でブラッシングをしてあげてください。乾いた状態でブラッシングを行うとそのまま花粉が部屋に飛散してしまう可能性があります。ブラッシングを嫌がる犬の場合は、濡れたふきんで優しく拭くだけでも効果がありますので、その子に合った方法で花粉を取り除いてあげましょう。
シャンプーの回数を増やす
シャンプーのしすぎは皮膚を乾燥させてしまうため、週に2回以上のシャンプーはしないでください(シャンプー素材にもよります)。愛犬の花粉対策でもありますが、シャンプーで皮膚の炎症を起こさぬことがないよう肌に優しい成分のシャンプー、また、肌の保湿もしてあげることが理想です。空気清浄機の設置
一度家に入ってきた花粉は取り除かない限り、ずっと家に残ってしまいます。犬が日常的に生活しているリビングや寝室、もしくは花粉の入り口になりそうな玄関などには空気清浄機を置いてあげることである程度の予防が期待できるでしょう。花粉症の犬に果物や野菜は注意?

花粉症の人は、果物や野菜に対してアレルギー反応を起こしやすくなっています。「交差反応」と呼ばれる花粉症の原因と同じ科の植物に反応することからそのように考えられています。
犬も同様で、実際、スギ花粉症の犬はトマトを摂取した後に口腔アレルギー症候群を示したという報告もあります。そのため犬が花粉症の場合は、果物や野菜は与えないほうが賢明かもしれません。どうしてもという場合は、かかりつけの獣医さんに相談してみましょう。
犬の花粉症でいつもと違うと感じたら動物病院へ
花粉症は人にとっても犬にとっても大変なアレルギー症状ですが、愛犬が症状に苦しんでいるのであれば、早めに動物病院に連れて行ってあげてください。花粉症ではない場合もありますが、いずれにせよ皮膚に炎症を起こしている可能性が高いです。早期発見・早期治療のために定期的な健康診断をおすすめします。参考文献
- 阪口 雅弘著『ワンヘルスにおけるヒトと動物のアレルギー疾患』1(1), 7-8, 2018
- 荒井延明、垰田高広、安田隼也、安田英巳、原康、多川政弘著『犬アトピー性皮膚炎における 犬アトピー性皮膚炎における 感作アレルゲンの秋季全国調査』p9
- 藤村正人、 大森敬太郎、増田健一、 辻本肇、 坂口著『スギ花粉症犬におけるトマト誘発口腔アレルギー症候群』
- アニコム損害保険会社『花粉にも注意!犬のアレルギー性皮膚炎は春先から増加』2013