【専門医が解説】猫の呼吸が速い・息が荒い場合に考えられる病気と対処法
猫が急に呼吸が速くなったり、息が荒くなることがあります。飼い主さんとしては、心配ですよね。このような症状を、「頻呼吸(ひんこきゅう)」と言います。猫は1分間に安静時に平均で20〜30回程度の呼吸をします。普段よりも明らかに呼吸が早かったり息が荒い時にはケガや病気の可能性が考えられます。猫の呼吸が速い・息が荒い場合に考えられる原因と対処法に関して、白金高輪動物病院・中央アニマルクリニック顧問獣医師で獣医循環器認定医の佐藤が解説します。
猫の呼吸はどのくらいが正常なの?
猫は安静時、1分間に平均で20〜30回程度の呼吸をします。それぞれ個体差はありますが、普段と比べて明らかに呼吸が早かったり、息が荒く回数が多かったりする時には、ケガや病気の可能性が考えられます。
猫の呼吸が速い場合に考えられる原因(ケガなど)
熱中症
呼吸も荒くグッタリしている時は熱中症の可能性が高いです。また、ひどい場合は腰を抜かしてしまうこともあります。夏場の暑い時期だけでなく、冬でも暖房のつけすぎなどで熱中症になることもあるので、こまめに水を摂取させ、体温調節してあげましょう。ケガなどの痛み
外から帰ってきた猫の呼吸が荒い場合、他の猫とケンカして興奮していることがありますが、1時間もすれば元に戻ります。しかし、いつまで経っても呼吸が荒いときには、ケガをしてしまっているかもしれません。ケガの原因は、ケンカだけに限らず交通事故も考えられます。ケガをしていないか確認して、疑いがあるようであれば、動物病院で診てもらいましょう。猫の呼吸が速い場合に考えられる原因(病気)
猫ウイルス性鼻気管炎(猫カゼ)
頻呼吸が一番出やすい疾患です。原因としては猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルスによる感染症が考えられます。症状としては、鼻水、発熱、目やに、食欲不振、元気消失、よだれ、沈鬱(ちんうつ)など、いわゆる「猫カゼ」と言われるくらい人の風邪の症状と似ています。さらに、肺炎などを起こし重症に至るケースもあります。治療としては、抗生剤やインターフェロンを使用することで比較的治りやすいです。しかし鼻水などの鼻炎、目やになどの結膜炎の症状が慢性的に出ていた猫は後遺症が残ってしまうケースもあるので、できる限り早期に直してあげることがポイントです。また、子猫の時に感染を患うことで、生涯的に免疫力が落ちた際に症状が出ることもあります。
猫喘息
咳などの症状も出やすく、一生付き合っていかなければいけない病気が「猫喘息」です。ダニアレルゲンなどにより猫喘息が誘発された研究などはなされているが、確定的な原因は特定されていません。しかしながら、何かしらのアレルゲンの可能性は高いと考えらています。他の症状としては、開口呼吸、吐き気などを伴うことがあります。猫で開口呼吸がおこることは滅多にありません。しかし、口を開けて呼吸をしているのならば、必ず原因が隠されていて、さらに早急な治療が必要ということになります。治療としては、対症療法になります。いわゆる、呼吸状態の管理です。大概はステロイド療法、ネブライザーなどの組み合わせ管理を行っていきます。
先天性疾患などの心臓病
先天性疾患というくらいですので、子猫で症状が出ることがほとんどです。ただ、子猫はすぐに興奮しますし、呼吸がもともと早くわかりづらさもあります。ただ、通常は開口呼吸まですることはないため、見極め方は開口呼吸があるかないかということにもなります。また、成猫でも頻呼吸が見られることがあります。先天性心疾患が原因で、症状が大人になってから出ることもあるからです。原因としては、心室中隔欠損や心筋症など様々な心臓病があります。治療として、病態により様々ですが投薬もしくは手術により改善できるでしょう。
呼吸器感染症
気管支炎、肺炎などの呼吸器に異常がある場合が一番多いです。原因としてはウイルス、細菌、真菌、寄生虫、アレルギー、腫瘍の可能性があります。心臓病
猫は心筋症が多く、二次的に胸水や肺水腫といった危ない状態になっている可能性もあります。その他の感染症による発熱
子宮蓄膿症のような感染症が起こると体が熱っぽくなり、体から熱を逃がそうと呼吸が荒くなります。先天的疾患
横隔膜ヘルニアなど胸腔に胃や肝臓など臓器が入り込み呼吸が苦しくなることがあります。少しでも違和感を感じたら動物病院へ
このように、猫において頻呼吸の原因は必ずどこかにあります。そして、原因は多岐に渡り、特定することが難しいです。しかし、その原因を特定しなければ、息苦しい生活をさせることになり物言わぬ猫にとっては苦痛な毎日になってしまいます。いずれは治るだろうと様子を見ていてもいいことはありません。また、猫は痛みなど症状をあまり訴えません。症状を訴えているということは、かなり重症化していることを認識していただければと思います。少しでも違和感を感じたら、動物病院で診てもらうようにしましょう。