
犬が太る・肥満の原因は?肥満度チェックやダイエット方法、病気のリスクを獣医師が解説
犬も肥満になると病気のリスクを高め、寿命を縮めてしまいます。早めのダイエットをおすすめしますが、病気が原因のケースもあり注意が必要です。今回は肥満の見分け方からフードの与え方、子犬期やシニア(老犬)期の考え方まで、目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC院長の佐藤が解説します。#犬の食育
肥満の犬は寿命が短い

肥満の犬ほど寿命が短いという事実は、これまで数々の調査研究からも明らかになっています。例えばイギリス・リバプール大学ら研究チームの報告によると、調査の結果ヨークシャーテリアやチワワで2年ほど、12犬種全てで肥満の犬ほど寿命が短くなる傾向が見られたそうです(※1)。
アメリカ・ネスレリサーチセンターも同様に、ラブラドールレトリーバーを対象にした調査で、肥満の犬と正常な犬で寿命に2年近い差が出たことを報告しています(※2)。
肥満は見た目の問題だと楽観的に考える飼い主さんが少なくありません。しかし、見た目以上に体に悪影響を与えているということを理解していただければと思います。
※参照1:『Association between life span and body condition in neutered client‐owned dogs』(Journal of Veterinary Internal Medicine)、参照2:『Diet restriction and ageing in the dog: major observations over two decades』(British Journal of Nutrition)
犬が肥満になる原因

1. 飼い主さんが原因の肥満
残念ながら飼い主さんが肥満の原因を作っている場合もあります。ごはんの量が多い
いつもごはんの量を正確に量っていますか? 知らず知らずのうちに、量が増えている場合があります。私たちからすればちょっとした誤差でも、体が小さい犬には大きな誤差になっているかもしれません。よく太ったらドッグフードのせいと考えがちですが、一番重要なことはカロリー管理です。ごはんは適切な量でも、おやつを与え過ぎているケースもよくあります。ご家族の中にこっそりあげている人がいる場合もありますので、家族全員がしっかり肥満のリスクを理解する必要があります。
運動量が少ない
毎日しっかり散歩できているでしょうか? 「小型犬で家の中を走り回ってるから毎日じゃなくても大丈夫」と言う飼い主さんがいるかもしれませんが、散歩は全ての犬に必要です。何か問題があってうまくできない場合は、ドッグトレーナーを頼るようにしましょう。外に出るといろいろな匂いがして、いろいろな出会いがあって、散歩は犬にとって毎回が大冒険です。刺激を受けることはストレス発散にもなりますので、散歩は欠かさないようにしてください。
2. 病気が原因の肥満
太る病気として、「甲状腺機能低下症」と「副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)」という2つのホルモンの病気(内分泌疾患)が挙げられます。甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症になった場合、基礎代謝エネルギーが低下することで体重が増加していきます。これといった気付きやすい症状はありません。「なんとなく元気が無い」「なんとなく顔に覇気が無い」などがサインとなります。副腎皮質機能亢進症
クッシング症候群とも呼ばれる副腎皮質機能亢進症は、腎臓の近くにある副腎と呼ばれる内分泌腺が過剰に働いている状態です。食事量が増えることで体重が増加したり、飲水量や尿量が増加したり、腹筋の筋肉が薄くなることで落ちてお腹がぽっこり出てきたりします。他にもお腹に水が溜まってしまう病気で太って見えることがあります。さらに、肝臓が腫大(膨張)することで太ったように見えることもあります。
3. 体調の変化が原因の肥満
運動量が低下すれば体重が増えますが、その原因は散歩やドッグランに行く回数が減ったということだけではありません。体が痛くて散歩に行けない、体がしんどくて動けないといった隠れた病気が原因の場合があります。普段と違いがないか注意して見てあげてください。日頃から体を触るようにすることで、腫瘍や痛みのある場所に気づきやすくなります。
去勢・不妊手術
去勢や不妊手術を行うと基礎代謝エネルギーが低下します。術後は食事量を30%減にすべきだといわれています。ただ、個体差があり太ってしまうケースもありますので、獣医師に相談しながらコントロールしてあげてください。肥満が原因で起こる犬の病気

肥満だとなぜ寿命が短くなるのか。それは、病気にかかりやすくなるからです。人では脂肪が体内で炎症を起こすことがわかっており、おそらく犬でも同じことが起きていると考えられます。
さらに、「免疫力を下げる」「臓器に脂肪が沈着して機能が弱る」「体重が増えてその重みが関節に負担をかける」など、肥満になると体中で良くないことが起こります。
具体的な病気としては、皮膚病や膵炎、糖尿病になることがわかっています。そして心臓病の悪化を招いたり、体重の増加により変形性関節症の症状が酷くなるなどが挙げられます。
愛犬が太っていると思ったら早めに動物病院へ行き、太る原因を突き止め、ダイエットさせることをオススメします。
犬の肥満の見分け方

犬の体重は犬種によってもばらつきが大きいため、「太っている」「ちょうど良い」「痩せている」の区別は体重ではなく体型で確認します。この体型をスコア化して評価できるようにしたものをBCS(ボディコンディションスコア)といいます。
5段階評価の3が理想の体型で、飼い主さん自身で確認することができますので、ぜひ愛犬の体型をチェックしてみてください。

参照:『飼い主のためのペットフード・ガイドライン』(環境省)
BCS1 | 痩せ | 助骨、腰椎、骨盤が容易に見え、触っても脂肪がわからない状態。腰のくびれと横から見た際の腹部の吊り上がりが顕著です。背骨がゴツゴツと見える場合もあります。 |
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BCS2 | やや痩せ | 助骨が容易に触れます。上から見て腰のくびれが顕著、横から見て腹部の吊り上がりも明瞭な状態です。 |
BCS3 | 理想体型 | 過剰な脂肪の沈着がなく助骨を触れます。上から見て肋骨の後ろに腰のくびれが見られ、横から見た際は腹部の釣り上がりも見られます。 |
BCS4 | やや肥満 | 脂肪の沈着はやや多いものの、肋骨は触れます。上から見て腰のくびれはありますが顕著ではなく、腹部の釣り上がりはやや見られる程度の状態です。 |
BCS5 | 肥満 | 助骨は厚い脂肪に覆われて容易に触れません。腰椎や尾根部にも脂肪が沈着しています。腰のくびれはないか、ほとんど見られません。横から見て腹部の吊り上がりはないか、むしろ垂れ下がっている状態です。 |
体重の測り方やボディコンディションスコアの確認方法は、以下のYouTube動画でも解説しました。ぜひ参考にしてください。
年齢別の見分け方
ボディコンディションスコアは成犬を基準にしていますので、年齢によって少し見方を変える必要があります。幼犬の場合
幼犬は成長期ですから、栄養をたくさん摂る必要があります。しかし、肥満よりも栄養不足で痩せている子を見ることが少なくありません。その原因の一つとして、ペットショップなどで最初に教えてもらった量や与え方を変えずに続けていることが挙げられます。与えるごはんの量は、その子の成長に合わせて変えていかなければいけません。幼犬の頃は体重もどんどん変わります。1週間に1回は体重測定をして、その時その時で適切な量のごはんを食べさせるようにしましょう。
※1日の最適カロリー量は、PETOKOTO FOODSの「フード診断」(無料)で簡単に計算することができます。
シニア犬(老犬)の場合
シニア犬(老犬)は加齢によって正常な変化として体重が減少します。BCS3が理想であることに変わりはありませんが、少し痩せ気味だとしても許容範囲と考えて問題ないでしょう。ただし、急激に体重が増えたり減ったりする場合は病気の可能性がありますので、様子見をせずに病院に行くようにしてください。
肥満犬のダイエット方法

病気や手術以外の理由で犬が肥満になる場合、原因は飼い主さんにあることが少なくありません。逆に言えば、飼い主さんが管理できれば犬は適正体重を維持できます。適切な体重管理のためにやっていただきたいことを、順番に説明します。
1. 体重を量る
体重の増減を判断するためにも、まずはご自宅で体重測定をしましょう。見た目で太ったと感じても、実際は体重に変化が無い場合もあります。先ほど紹介したBCSも参考にしてください。2. 食事量を量る
だいたいで「器にこのぐらい」といった量り方はやめましょう。何グラムかキッチンスケールなどを使って量り、適正量を食べさせるようにしてください。おやつは1日の最適カロリー量の10%以下にしましょう。※1日の最適カロリー量は、PETOKOTO FOODSの「フード診断」(無料)で簡単に計算することができます。
3. 運動量を増やす
運動量は小型犬が30〜60分を1日2回。中〜大型犬は60分以上を1日2回が目安です。犬種や年齢、体格によっても違いますし、走る歩くなどの状況によっても変わります。1回の散歩で疲れている様子が見られれば、運動量は確保できています。どうしても散歩の時間が取れない場合は、週末のドッグランやお出かけなどでカバーしてあげましょう。シニア犬の場合は無理をすると関節に負担がかかりますので、犬用プールを活用するといいでしょう。
4. 食事量を減らす
すでに太っている場合、その体重を基準にして食事量を決めてしまうと痩せるのが難しくなります。どれくらいまで減らしたいのか理想体重を想定して、通常の80%くらいの食事量で経過を見るようにしてください。空腹を訴えてくる場合は、トータルの食事量は変えずに食事回数を増やすことで満足感が得られる場合もあります。
以上を行なっても体重に変動がない場合は、病気の可能性があります。また、妊娠している場合は乳腺が張ってきたり、食欲が増減したりといった体調の変化も見られますので、獣医師に相談してください。
まとめ

肥満は確実に寿命を縮める
原因が病気か飼い方かを確かめる
ダイエットの基本は、適切な食事と運動
私たち人間の話ではありますが、犬も同様です。肥満は、恐ろしい病気へと続く最初のドミノと言えます。「ふっくらして可愛い」と油断するのではなく、愛犬の将来を考えて飼い主さんがしっかり対処してあげてください。