【獣医師執筆】犬にカルシウムは必要?効果や必要量と過剰摂取・不足のリスクを解説
カルシウムは犬にとっても欠かせないミネラルですが、不足だけでなく過剰摂取でも病気の原因になる可能性があります。今回は必要量やシニア犬に与えがちなサプリメントのリスク、手作りごはんやおやつでオススメのカルシウムが多い果物や野菜などの食材について解説します。
犬に必要な栄養素「カルシウム」って何?
カルシウムは犬の体に最も多く含まれるミネラルで、その99%は骨と歯を形成しています。残る1%は細胞や血液に含まれ、筋肉の収縮や神経を安定させる作用があります。
犬に必要な栄養素「カルシウム」に必要量
犬のカルシウムの正常値の必要量として、AAFCO(米国飼料検査官協会)が策定する総合栄養食の栄養基準が参考になります。成犬では乾物1kg、代謝エネルギー4000kcalあたり0.5〜1.8%のカルシウムを含むことが推奨されています。
ただし、カルシウムは単体で推奨量を満たしてもビタミンDやリンの摂取量に大きく影響を受けて必要量より不足、もしくは過剰になる可能性がありますので注意が必要です。
AAFCOについて
AAFCOとは「米国飼料検査官協会」のことです。「The Association of American Feed Control Officials」の頭文字をとってAAFCO(日本では「アフコ」)と呼ばれています。米国飼料検査官協会は、ペットフードの栄養基準やラベル表示に関する基準を制定しているアメリカの団体です。AAFCOが定めたペットフードの栄養基準は世界的なスタンダードとなっており、日本のペットフード公正取引協議会もAAFCOの栄養基準を採用しています。一点、知っておいていただきたいのは、AAFCOというのはペットフードの認定や承認を行う検査機関ではないということです。そのため、ペットフードのパッケージなどでAAFCOの栄養基準を満たしていることを表現する場合、「AAFCO認定」「AAFCO承認」「AAFCO合格」というような表記は禁じられていますし、「AAFCOで認められたペットフードメーカー」というのもあり得ません。「AAFCO(米国飼料検査官協会)の基準をクリア」というのが、適切な表示例になります。
一方で、AAFCOの基準をクリアしているからと言って、安心できるとは限りません。人工添加物などを加えてAAFCOの基準をクリアしているペットフードも存在します。そのため、AAFCOだから安心ではなく、原材料や製法をしっかり確認したうえで購入することが大切です。
犬に必要なカルシウムとビタミンDの関係性
ビタミンDはカルシウムとリンの吸収を促進します。AAFCOは総合栄養食の基準としてビタミンDの摂取量を12.5-75μg(※)としており、過不足はカルシウムの過不足に直結します。※乾物1kg、代謝エネルギー4000kcal当たり
犬に必要なカルシウムとリンの関係性
カルシウムとリンの比率は1:1〜2:1が推奨されていますが、発育期は比率以上にカルシウムがどれだけ含まれているかが特に重要です。成長中の子犬(特に大型犬)は1.2%が推奨量とされています。リンが適切なのにカルシウムが不足すると、続発性副甲状腺機能亢進症や低カルシウム血症といった病気につながります。逆に過剰になると骨格異常を引き起こします。
※参照:『イヌ・ネコのライフステージと栄養』(ペット栄養学会誌)
犬のカルシウム不足と過剰摂取のリスク
犬にとってカルシウムは不足だけでなく過剰摂取でも病気の原因になるため、ビタミンDやリンの摂取量も考慮したバランスの良い摂取が重要です。
カルシウムが不足した場合
犬にとってカルシウムが不足すると骨折や低カルシウム血症、食欲低下や痙攣といった症状のほか、成長期では発育不良につながります。カルシウムを過剰摂取した場合
カルシウム不足は骨の異常を引き起こしますが、過剰でも骨軟骨症や股関節異形成といった骨の異常につながり、大型犬は特に発症リスクが高くなります。過剰なカルシウムは亜鉛の吸収を阻害するため、脱毛や皮膚異常、免疫不全といった亜鉛欠乏症のリスクも高めます。カルシウムを多く摂ることのメリットとして、腸内でシュウ酸と結び付くことによるシュウ酸カルシウム結石の予防が挙げられます。ただし、過剰になるとカルシウム結石につながる可能性もあるため、摂り過ぎにも注意が必要です。
※参照:『カルシウムの積極的な服用による腎臓結石予防法』(日本老年医学会雑誌)
犬にカルシウムサプリを与えても大丈夫?
総合栄養食を食べている犬の場合、カルシウムのサプリメントやカルシウムを含むおやつを与えると、カルシウムの過剰摂取につながります。特に大型犬の子犬は要注意で、発育期の整形外科疾患を発症する可能性が高まります。「与えないほうがいい」ではなく、与えてはいけません。
シニア犬(老犬)にカルシウムサプリは必要?
人では高齢になると骨粗しょう症が問題になるため、犬でも注意したほうがいいのではと心配になる飼い主さんもいると思います。犬の場合は総合栄養食を食べている限り、カルシウムが不足することはありませんので心配する必要はありません。サプリメントでカルシウムを与えてしまうと過剰になったり、リンとの比率が崩れたりします。カルシウムは摂れば摂るほど骨や歯が丈夫になるというものではありません。バランスの良い食事を続けることが長生きの秘訣です。
手作りごはんは摂取量に注意
私たちと同じく犬も栄養バランスが大切で、三大栄養素であるタンパク質や脂質、炭水化物だけでなく、五大栄養素に含まれるビタミン、ミネラルをバランス良く摂取することが大切です。どれかが不足したり、逆に過剰になると良くありません。一方で自然食材を通してAAFCOの栄養基準を満たすことは限りなく不可能に近いそうです。愛情を持って手作りごはんを与える結果、愛犬の健康を害するのは非常に悲しく、栄養管理面では手作りごはんはデメリットがあります。
※参照:『小動物の臨床栄養学 第5版』
犬に必要な「カルシウム」が多い食材
手作りごはんやトッピング、おやつを与える際の参考として、果物や野菜などカルシウムを多く含む食べ物を紹介します。実際に与える際は、各食材にどれくらいカルシウムが含まれるかを確認して、不足もしくは過剰にならないよう注意してください。カルシウムが多い果物
カルシウムはイチゴやキウイ、パイナップル、バナナなどのフルーツに多く含まれます。カルシウムが多い野菜
カルシウムはモロヘイヤやしそ(大葉)、小松菜、ほうれん草などの野菜に多く含まれます。カルシウムが多いその他の食材
カルシウムは果物や野菜以外では煮干しやごま、チーズ、ヨーグルトなどの食材に多く含まれます。犬に必要なカルシウムなど栄養成分が補完されたごはん
犬の食べ物は「エサ」と呼ばれていた時代から、家族の「ごはん」と呼ぶ時代へ変わりました。私たちと同じように、犬も栄養バランスの良いごはんを食べることで健康を維持することができます。ごはん選びをする際は、以下の2点を気を付けていただくといいでしょう。
1. 総合栄養食を適量与える
犬が必要とする栄養は人間と同じではありません。そこで生まれたのが「総合栄養食」と呼ばれるごはんです。おやつなど「一般食」や「副食」と呼ばれるごはんだけ食べていると体を壊してしまいますので、「総合栄養食」のごはんを選ぶようにしましょう。総合栄養食を食べていても与える量が少なければ痩せてしまいますし、多ければ太ってしまいます。パッケージに書かれた食事量は目安ですので、ボディ・コンディション・スコアで「3」の「理想体型」を維持できる量を与えるようにしてください。
2. 添加物の少ない新鮮なごはんを選ぶ
犬のごはんと聞いて「カリカリ」と呼ばれる茶色い豆粒を想像される方も多いと思いますが、正しくは「ドライフード」と呼ばれる加工食品です。保存しやすく食いつきも良いことから犬のごはんとして一般的になりましたが、高温加熱によって食材本来の栄養が失われ、添加物も多く含まれることから見直しが進んでいます。新鮮な野菜を犬や猫に与え続けることで、様々ながんに罹るリスクを軽減することが研究で判明していたり、市販のドライフードを製造する工程の1つである高温加熱処理が、タンパク質の品質劣化を招き、熱に弱いビタミンを破壊し、さらには発がん性物質を生成してしまうことが、研究により判明しています。そこで生まれたのが素材本来の旨味や香りが楽しめ、余計な添加物も入っていない「フレッシュフード」と呼ばれる新鮮なごはんです。ペトコトフーズもその一つで、子犬からシニア犬(老犬)まで毎日のごはんにすることができます。もちろん総合栄養食で、主食としても、トッピングとしてもご利用いただけます。
実際に従来のドライタイプのドッグフードよりも、水分がより多く含まれた手作り品質のごはんを食べている犬の方が寿命が3年も長くなることが研究により明らかになっています。新鮮で美味しく、健康なごはんを選ぶことが長生きできる秘訣です。
ペトコトフーズの公式HPを見る
まとめ
ミネラルの中でも重要度が高い栄養素
ビタミンDやリンの摂取で吸収率が変化
不足だけでなく過剰も病気の原因に
バランスの良い食事が大切