犬の平均体重とは?測り方や体重が増える・増えない場合の原因など獣医師が解説

犬の平均体重とは?測り方や体重が増える・増えない場合の原因など獣医師が解説

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犬の体重変動は、健康のバロメーターであり、適正体重を保つ必要があります。犬種ごとで推奨される体重や体高はありますが個体差があり、実は決まった適正体重は明確にはありません。大切なのは「体格(骨格)に合った体重であるか」と、「成犬になってからの体重から、いかに増減が少なく維持できるか」ということです。今回は犬の平均体重や体重が増える、増えない理由などについて、獣医師の飯塚が解説します。

犬の適正体重の基準

ボディコンディションスコア(BCS)

一般的には、愛犬が1~3歳齢時の体重がその子の「理想体重」となります(※)。もう1つの基準として、BCS(ボディコンディションスコア)というものがあります。

これは、体格に見合った体型なのかを見極めるための指標で、脂肪のつき具合と筋肉のバランスを基に、5段階に分けて判別します。全犬種に共通で、体重は関わらない指標になります。

※参照:スモールアニマル・インターナルメディスン 第2版

太りやすい・痩せやすい犬とは

ビーグル

犬種による違い

体質=犬種の違いが関与し、ビーグル、ダックスフンド、ゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリーバーなどは太りやすいといわれています。

性別による違い

犬種に関係なく、オスよりメスの方が太りやすく、またオス・メス関係なく、避妊・去勢をすると太りやすくなります。これは性ホルモンの変化により、性欲が食欲に向きやすくなると同時に、代謝量が変わるためです。

加齢による違い

加齢によっても、体重が変動しやすくなります。8歳齢以上の犬では6歳齢未満の犬と比べて、1日に必要なエネルギー量は約20%低下すると言われています。これは、若い頃と比べて基礎代謝量や運動量が落ちるからです。つまり、若い頃と同じフードを同じ量で食べさせ続けていると太る可能性が高いということです。

多くの高齢期(シニア期)用のフードは、成犬用のものと比べてカロリーが低く作られていますので、愛犬が高齢期にさしかかったら、フードを年齢に合ったものに変えるようにしましょう。

参照:『スモールアニマル・インターナルメディスン 第2版』『MVM vol.25 No.161 高齢犬・高齢猫とフード』


愛犬の体重が増える、増えない場合の理由

見上げる犬

摂取と消費のカロリーバランス

摂取カロリーと消費カロリーのバランスが合っていない場合が考えられます。単純に食事量が多い、あるいは運動量が少なければ太ります。食事量は適正でも、おやつやごほうびによる間食が多くて、1日の摂取カロリー量が多くなっているパターンもあります。

逆に、食事量が少ない、あるいは日常的に活発で運動量が多い犬だと、消費カロリーが多くて痩せてきます。その他、手作り食をメインに与えていて痩せてくる場合は、栄養バランスが良くない可能性があるため、食事内容を見直すようにしましょう。

※1日の最適カロリー量の10%以内にしてください。1日の最適カロリー量はペトことオリジナルのドッグフード「PETOKOTO FOODS」の「フード診断(無料)で簡単に計算することができます。

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病気の一症状としての体重増減

病気の一症状として体重が増減している場合があります。体重減少が一症状である病気は多く、寄生虫に感染していたり、消化器疾患があれば、痩せてきます。糖尿病や腫瘍においても体重減少が症状として認められます。

また慢性的な心疾患や皮膚疾患でも、代謝が増えて消費カロリー量が増えるため、痩せやすくなります。内分泌(ホルモン)疾患がある場合は、疾患により体重が減ったり逆に増えたりします。

病気の一症状で体重が変わる場合、多くは体重の変動以外の症状が現れます。また変動の仕方が急激であることも多いです。食事量や運動量を変えていないのに、急に体重が変わった場合は動物病院を受診することをお勧めします。


犬が体重増加で肥満により引き起こされる病気

パグ

体重減少は病気の結果であることが多いですが、体重増加、つまり肥満は病気の原因となります。

肥満状態にある脂肪細胞からは、さまざまな炎症を引き起こす物質が分泌され、糖尿病や呼吸器疾患・関節炎・泌尿器疾患などを引き起こす原因となります。犬では特に「呼吸器疾患」「骨関節炎」を悪化させる要因となります。

呼吸器疾患

お腹の脂肪が増えると、胸の内部を圧迫するため呼吸しづらくなり、酸素不足に陥りやすくなります。また気管虚脱や気管支炎など、根底に呼吸しづらくなる病気がある場合、酸素不足が、より症状を悪化させる可能性があります。

関節炎

体重が重いと、関節に対して物理的負荷が大きくなります。若い時は筋肉などが負荷をカバーしますが、年齢が上がるにつれてカバーしきれなくなり、軟骨面がすり減って変性することが、関節炎を引き起こす一因となります。また子犬では、肥満が特に股関節形成不全の発症と関係するといわれています。

参考︰『vets tech 太った犬が減量すると呼吸機能が改善する?』(journal of animal physiology and animal nutrition volume102)、『MVM vol.25 No.161 肥満の高齢犬・高齢猫と病気の関係』『MVM vol.25 No.161 高齢犬・高齢猫の呼吸器』『focus 2007#17.3 犬の変形性関節症に対する栄養学的管理』

愛犬の体重管理方法

笑うボーダーコリー

ごはんの適正量

体重を増やすにも減らすにも、今、愛犬が食べているフードが、理想の体重に見合った適正な量なのかを確認しましょう。治療食を食べていないなら、減量用の食事を選ぶと、より効果的です。

ペットフード安全法に基づいて作られたフードであれば、ペットフードの表示に関する公正競争規約により、体重に対して食べさせるべき量が、袋に記載されています。

袋を確認して、目標としたい体重で与えるべき量を守りましょう。その他、嗜好性がよく作られているフードは、脂肪分が多い傾向があり、太りやすいです。適正量の食事を与えて、適度な運動もしているのに太る場合は、フード自体の変更も考えましょう。

※1日の最適カロリー量はペトことオリジナルのドッグフード「PETOKOTO FOODS」の「フード診断」で簡単に計算することができます。

参考:環境省HP、パンフレット「知って納得!ペットフードの表示」


間食は避け、運動する

心臓病や関節炎などの病気がなければ、適度な運動をし、間食はさせないようにしましょう。愛犬が、飼い主さんの食事中などに、おすそわけをねだってしまってどうしても困る場合は、減量用のドライフードを数粒与えたり、セロリやにんじんなどの野菜を与えるようにしましょう。

参考:スモールアニマル・インターナルメディスン 第2版


犬の体重の測り方

体重計に乗る犬

ペット用の体重計も市販されていますが、抱っこができるのであれば、おうちで愛犬の体重を測定してみましょう。愛犬を抱っこして、人用の体重計に乗って測定した後、飼い主の体重を引いてください。その際、リードなどは外して測りましょう。

ダイエットを目的としての計測なら、1日のうちでも、なるべく同じ時間(タイミング)で測るようにしましょう。その他、10kgくらいまでの小さい犬であれば、人の新生児用の体重計に、直接乗せて測る方法もあります。

抱っこができない犬や、大型犬は動物病院で測定してもらいましょう。体重測定も大事な健康管理ですので、測定するためだけでも、ぜひ動物病院に足を運んでください。体重は、毎日測る必要はありません。食事量や運動量を変えても、すぐには体重には反映されません。2週間~1カ月の間隔で測りましょう



まとめ

じゃれる犬
適正体重には個体差がある
急激な体重変動がある場合は病気の可能性あり
肥満は病気を引き起こす恐れがあります
愛犬の適正体重を把握し、維持しましょう
病気の症状などがないと、体重の変化は見過ごされがちです。愛犬の体重を管理できるのは飼い主だけですので、まずは愛犬の体重が適正なのかを把握しましょう。そして見合った食事量や運動量を確認し、より健康な生活を送ることができるといいですね。

参考文献



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