犬の発情期|落ち着かせる方法やオスとメスの特徴と注意点、遠吠えや噛む場合の対処を解説【獣医師監修】

犬の発情期|落ち着かせる方法やオスとメスの特徴と注意点、遠吠えや噛む場合の対処を解説【獣医師監修】

Share!

犬の発情は、犬が種を維持するために起こる自然な現象です。遠吠えや夜泣き、イライラして噛むなど、愛犬は心と体にストレスを感じています。不妊去勢手術で落ち着かせることができますが、タイミングが遅いとオスはマウンティングが続いてしまう場合もあります。今回は犬の発情期について、季節ごとの特徴や何歳まで続くか、食欲の変化、注意点などを佐藤獣医師(目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC)監修のもと解説します。

犬の発情期とは

マウンティングをする犬

発情期はオス(雄犬)とメス(雌犬)が交配することで妊娠が可能になる時期で、オスは季節に関係なく発情したメスのフェロモンに反応して発情し、メスは年に5~8カ月の間隔で年に約2回発情します。必ずしも季節が関係するわけではありませんが、春(3~5月)と秋(9~11月)に多くなる傾向があります。


メスの発情(ヒート・生理)の特徴

メスは発情期を迎えると、「落ち着かない」「食欲がない」「不安そうにする」「オスの近くへ行きたがる」といった普段と異なる様子を見せます。ホルモンバランスがいつもと異なるためストレスを感じやすく、神経質になって「イライラ」することもあります。

オスの発情の特徴

オスは発情すると自分がいる場所をメスに知らせるため、飼い主さんがうるさいと感じるほどの「遠吠え」や「夜泣き」をしたり、自分の存在をメスに知らせるために「マーキング」をしたりします。「マウンティング」はメスに限らず、オスやぬいぐるみ、クッション、飼い主さんや同居している猫が対象になる場合もあります。普段は温厚な性格の犬が「イライラ」して攻撃的になって「噛む」こともあります。


犬の発情周期

犬

メスの発情は「発情前期」「発情期」「発情休止期」「無発情期」の4つに分かれます。

発情前期

発情前期になると、受胎の準備として発情(ヒート・生理)が始まります。陰部から出血がみられることが普通ですが、出血しないこともあります。

発情前期の出血を「生理」と呼ぶこともありますが、人の生理が排卵後に子宮内膜がはがれ落ちることによって起こるのに対し、犬の生理は排卵を前に子宮内膜が充血することで起こります。

以下のように生理が始まってから10日前後が排卵日で受胎可能な状態となります。ただし、生理から排卵日までの期間は個体差や体調によって異なります。

犬の発情期の周期

発情期

発情期は10日ほどで、3日で排卵を迎え、5日間は受精可能な交配適期となります。見た目には陰部が赤くなって腫れがみられ、排卵後に縮小して発情後期となります。その後、発情休止期と無発情期が半年ほど続いて発情前期に戻ります。

犬の発情期は何歳から何歳まで?

マルポメ

小型犬は生後12~18カ月で成熟し、大型犬も24カ月くらいで成犬になりますが、性成熟はそれよりも早く小型犬で8〜10カ月、大型犬は10〜12カ月ほどです。成熟は個体差もあり、体格の小さな犬ほど遅い傾向があります。

メスは成熟の3~6カ月前になると最初の発情(ヒート・生理)を迎えます。最初の発情期はまだ十分な成熟が得られず母犬・子犬ともに死亡リスクが高まるため、交配は完全に成熟する2回目以降の発情期に行います。

オスもメスが最初の発情期を迎える頃からメスのフェロモンに反応するようになり、半径2km圏内にいるメスのフェロモンを感じ取れるようになります。


シニア犬(老犬)も発情期はある

メスは6歳を超えると出産適齢期を過ぎて交配が難しくなりますが、発情はシニア犬(老犬)になっても続きます。加齢によって出血などが見えにくくなることで人のように閉経したと勘違いされることもありますが、犬に閉経はありません。オスも同様で、シニア犬(老犬)になってもマーキングやマウンティングが続く可能性があります。

なお、出産は母体で胎児を育てるために相応の体力が必要になります。小型犬の場合は6歳で人間の40歳程度に相当しますので、高齢になると安全な出産が難しくなってきます。6歳を超えた出産は勧めません

発情期の犬を落ち着かせる方法

診察を受けるラブラドールレトリバー

発情は犬にとって体力的・精神的なストレスになりますので、子犬を産ませる予定がない限り不妊去勢手術を推奨します。不妊去勢手術をすることで発情は起こらなくなり、予期せぬ妊娠はもちろん、オスは精巣腫瘍や会陰ヘルニア、メスは子宮蓄膿症や乳腺腫瘍など生殖器関連の病気を避けることにもつながります

オスのマウンティングは性衝動が原因とは限らず、去勢手術で確実になくなるとは限りません。まれにメスがマウンティングをする場合もあります。詳しくは以下の関連記事を参考にしてください。


オスとメスが同居している場合

オスとメスが同居している場合は、メスの発情期が終わるまで部屋をわけるなどしてオスとの距離を離すようにしてください。メスの散歩は他のオスを刺激してしまったり、オスを追いかけて脱走したりする可能性があります。ドッグランや宿泊施設も利用を禁止しているところが少なくありません。オスの散歩は通常通りで問題ありません。

発情期のケアグッズ

発情中(ヒート・生理)のメスは出血で室内を汚してしまうことがありますので、マナーパンツ(サニタリーパンツ)を使用するといいでしょう。汚れを防ぐたけでなく、オスの反応を抑えたり、予期せぬ妊娠を避けることにもつながります。

期間は出血が始まってから終わる1週間後くらいまでが目安です。長時間つけていると、雑菌の繁殖によって感染症を起こす恐れもあるため、こまめに交換してあげましょう。マナーパンツを使っているとトイレがしにくい場合もあります。ケージに入れて脱がせてあげるなど工夫してあげてください。

小型犬用サニタリーパンツ
Amazonで見る

犬の発情期の注意点

散歩中の犬

犬の発情期の行動変化には個体差が大きく出ます。遠吠えや夜泣き、攻撃的になって噛むこともありますし、食欲が無くなったり、偏食になったりします。オヤツで気をそらしたり、おもちゃで遊んで疲れさせて気を紛らわせたりすることで、一時的に落ち着かせることができます。

感染症に注意

発情期は「ジェスタージェン」(プロゲステロン)や「コルチコステロイド」(副腎皮質ホルモン)と呼ばれるホルモンが分泌されます。これらのホルモンは免疫機能を抑制してしまうため感染症のリスクが高まります。発情期はトリミングサロンの利用や他の犬との接触に注意が必要です。

偽妊娠に注意

偽妊娠になると「乳汁の分泌」「食欲不振」「巣作り」「攻撃的になる」といった変化がみられます。発情期の4~6週間後にみられ、おおむね10~15日間で終了します。乳汁の分泌が収まらない場合は乳腺炎になっている可能性があります。偽妊娠は性ホルモンが影響していると考えられていますが、正常な生理反応ともホルモン異常とも言われており明確には解明されていません。


まとめ

眠る犬
発情期は季節に関係なく年に2回
メスが発情するとオスも発情する
発情期は他の犬との接触を避ける
出産予定がない限り不妊去勢手術を推奨
発情期はいつもと違う行動にびっくりする飼い主さんも多いと思います。犬にとっても体力的、精神的に負担が大きくなりますので、出産の予定がない限りは不妊去勢手術をお勧めします。ただし、マウンティングは手術後も続いてしまう場合があります。獣医師やドッグトレーナーに相談しながら、犬も人もストレスのない生活を送りましょう。