犬が突然死(急死)したときに考えられる原因を獣医師が解説

犬が突然死(急死)したときに考えられる原因を獣医師が解説

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突然死とは「瞬間死あるいは発病後24時間以内に死亡する内因死」のことで、直前の状態を考慮せず事故や中毒で死亡した場合は急死と言います。元気だったのに突然死んだり、前兆もなく朝になったら死んでいたりした場合、飼い主さんにつらい気持ちや後悔の念が残ってしまうケースが少なくありません。今回は、犬が突然死(急死)する原因について、野坂獣医科院長の野坂が解説します。

犬の突然死(急死)で考えられる原因

トイプードル

突然死とは、WHOが「瞬間死あるいは発病後24時間以内の内因死」と定義しています。事故や中毒、外傷など外因死の場合は突然死と言いません。似たような言葉に「急死」があり、こちらは直前の状態を考慮せず、事故や中毒も含んで急変して死亡したことをいいます。本稿では「突然死(急死)」として、突然死と急死について解説します。

まず、人の突然死の原因で一番多いのは「心臓病」で、全体の6割を占めます。その他には「脳血管障害」「消化器疾患」などがあります。犬の場合、カナダ・サスカチュワン大学のオルセンら研究チームの調査結果によると、人と同様に「心臓病」が最も多いことがわかりました。

日本とカナダで犬の生活環境が異なるため一概に同じとは言えませんが、発生率が多い順に突然死の原因は以下のように示されています。

  1. 心臓病
  2. 中毒
  3. 消化器疾患
  4. 外傷
  5. 出血死(外傷を除く)
  6. 栄養不足または脱水
  7. 気管疾患
  8. 泌尿器疾患

心臓病の次に多い「中毒」は、人の場合と特に異なる点と言えます。犬が中毒を起こす食べ物を与えてしまったり、犬が誤ってつまみ食いしたりして起こります。飼い主さんの知識不足・注意不足では悔やんでも悔やみきれません。以下のような記事を読んでおくことをお勧めします。


各原因ごとに考えられる病気

心臓病や消化器疾患などはさまざまな病気をまとめた総称ですので、それぞれ代表的な病気についても紹介します。

心臓病

犬の心臓病で最も多いのは「僧帽弁閉鎖不全症」です。7歳頃から増え始めて8歳以上は約30%、10歳以上では約50%以上というデータがあり、好発犬種としてキャバリア、マルチーズ、チワワ、ポメラニアン、シーズー、パピヨン、トイプードルが挙げられます。そのほか、動脈狭窄や不整脈、心筋症、腫瘍などがあります。

心臓病はフィラリア予防薬を投与したり定期的な健康診断をしたりすることである程度は予防できます。ただ「この症状が出たら心臓病だ」と言い切れないものも多く、咳や呼吸の異常、失神、運動を嫌がるなど少しでも異常を感じたら動物病院で診てもらうことをお勧めします。

※参照:「みんなで学ぼうシリーズ 第2回」(アニコム損害保険)


消化器疾患

消化器疾患では胃拡張・胃捻転症候群や胃がん、犬パルボウイルス感染症を原因としたものが挙げられます。嘔吐や下痢などの消化器症状はさまざまな原因で起こり、重篤な疾患が隠れている場合もあります。長く続く場合や他にもいつもと違う様子が見られる場合は動物病院へ行くようにしてください。


出血死(外傷を除く)

悪性のがんに関連した出血で突然死を起こす犬も少なくありません。早期のがんは症状が分かりづらく、発見が遅れることもあります。愛犬を毎日よく観察することが重要です。少しでも異常を感じたら、動物病院へ行くようにしてください。


その他に考えられる突然死(急死)の原因

発生率はそれほど多くありませんが、子犬や小型犬に多い「低血糖」や「脳疾患」、心臓発作による「ショック死」なども突然死(急死)の原因になります。


突然死(急死)した原因の調べ方

ミニチュアシュナウザー

突然死(急死)の原因を調べる検査として血液検査やレントゲン検査、CT検査を行うこともありますが、詳しく検査するために「剖検」が行われます。剖検は解剖のことで、動物病院で行われることは少なく、大学や検査所などで行われます。基本的にご家族の承諾が必要となり、輸送や検査のために費用がかかります。

愛犬の死に直面した直後に剖検を承諾することはとても勇気のいることだと思いますが、検査をすることで死亡時の病態の把握や死因の究明などを行うことができます。解剖して目視で臓器の異常を確認した後、臓器の一部を採材して病理標本を作製し、顕微鏡で臓器に異常がないか検査します。


まとめ

シェルティ2匹
犬の突然死で最も多いのは心臓病
他にもさまざまな原因で起こる
予防できる原因もある
愛犬をよく観察することが大切
犬は人間の言葉を話せませんので、飼い主さんと愛犬の間で言葉を交わすことはできません。そのため、言葉以外の心のコミュニケーションが生まれ、それが深い絆の源になります。その深さゆえに、愛犬を亡くした時のつらい気持ちや喪失感が強く現れることも少なくありません。

特に、急な愛犬の死は闘病を経た場合と違って飼い主さんに「何もしてあげられなかった」「何かできることがあったのではないか」という後悔の念を生みがちです。命あるものには必ず死が訪れますが、愛犬が突然死を迎えないよう、予防できることは予防していきましょう。

そのためには飼い主さんがいち早く愛犬の異変に気づいてあげることが大切です。愛犬との遊びや散歩、食事の時に触れ合う時間を作り、体をよく触り、変化が起きていないかよく見てあげてください。


参考文献

  • 廣渡ら, 身体活動中心臓突然死防止に向けての法医学的検討―身体活動中突然死剖検例と安静時突然死剖検例との比較をもとに―,昭和学士会雑誌 / 74 巻 (2014) 4 号
  • 木村, ペットロスに伴う悲嘆反応とその支援のあり方,心身医学 49(5), 357-362, 2009
  • 三原ら,突然死の原因研究, 日職災医誌,51:39─44,2003
  • Olsenら, Causes of sudden and unexpected death in dogs: a 10-year retrospective study., Can Vet J. 2000 Nov; 41(11): 873–875.
  • 豊田, 全国労災病院データからみた急死例の検討, 日職災医誌,62:57─64,2014