【犬の食育 Vol.3】ウェットフードが歯に悪いって本当?
こんにちは!PETOKOTO代表の大久保です。連載「犬の食育」ではホンモノの食事を愛犬に与えていただくため、これから食に関する悩みや疑問にお答えしていきます。今回は「ウェットフードはドライフードより歯垢や歯石がつきやすいの?」という疑問についてお話しします。
私たちが食育で頼りにしているのが、ペトコトフーズのレシピを作成してもらったニック先生です。ニック先生はニュージーランドの獣医師で、小動物の栄養学博士であるとともに、米国獣医栄養学専門医でもあります。
ウェットフードはドライフードより歯垢や歯石がつきやすいと聞いたことがありませんか?
最新の栄養学を基に、食と密接的に関係する歯、口内環境についてお話ししたいと思います。
私たち人間は雑食動物であり、肉以外にも穀物なども食べるため、奥歯は平らな形をしています。
顎関節も上下に開閉するだけでなく水平方向に動くことで、すり潰すような動きをすることができます。これにより奥歯でしっかりと嚙み砕いてすり潰し、消化しやすくしてから飲み込むことが可能になっています。
一方、犬は基本的に肉食動物ですので、歯の形や顎の動きが人間とは大きく異なります。
野生の犬は食べ物を狩猟で獲得してきましたので、獲物を倒すための犬歯が大きく発達しています(犬歯は、威嚇のためにも用いられます)。
倒した獲物は「裂肉歯(れつにくし)」という鋏状(はさみじょう)に噛み合わさる奥歯で丸呑みできる大きさに噛み切り、人間のように咀嚼はせずにそのまま丸呑みします。
裂肉歯は、その噛み合わさり方が「シザーバイト」とも呼ばれ、上下顎とも奥歯の中で一番大きな歯で、犬歯とともに犬の食事に最も重要な歯の一つになります。
前歯(切歯)、前臼歯のほとんどは物の運搬などにしか使われません。食事にほとんどすべての歯を用いる人間との違いを理解していただけると思います。
そのため極端なことをいえば、人間と生活してドッグフードを食べる生活をしている限りは、歯が一本も無かったとしても困らないのです。
また、人間は常に上下の歯が面と面でかみ合わさって顎に力がかかっているため歯が無くなると顎の筋肉や骨がやせ細ってしまいますが、犬は歯が無くなっても人間のような弊害が起こりません。そのため、「犬は歯が悪くなってしまったら無理に残さず抜いてしまった方が良い」と言われるのです。
虫歯になりづらい一方で、ミネラルが多いアルカリ性の唾液は歯垢(プラーク)と結び付いて歯石になりやすく、歯垢を放っておくと3~5日で歯石になってしまいます。
人はそれが約20日ほどかかりますので、犬の歯石化はかなりスピードが速いといえます。
犬は歯磨きをしないと口臭が酷くなるだけでなく、歯石ができて歯垢がたまり歯周病になったり、歯周病からさまざまな内臓疾患につながる可能性があります。
歯磨きをすることで、それらの病気のリスクを予防することができるのです。
歯垢は食べかすを餌にしている細菌とその代謝物の塊で、人の歯の表面にも見られる白いネバネバした物質です。
歯垢に唾液の中のカルシウムを含むミネラルが沈着することで石灰化が起こり、鍾乳洞のように硬い石の層ができていくのです。そうやってできたものが歯石です。
人の場合は、歯周病に伴って細菌性心内膜炎や動脈硬化、皮膚病、肥満、糖尿病、呼吸器感染症、関節炎、骨粗鬆症、腎臓病を引き起こす可能性がありますが、犬に関してまだ正確には分かっていません。
しかし、歯根膿瘍、下顎骨折などの重症化だけでなく、心筋症や心内膜炎、慢性気管支炎、肺線維症、心内膜炎、腎炎などの関連が報告されています。
もし歯石がついた場合は、かかりつけの獣医師に相談しましょう。
無麻酔での歯石取りはシニアのワンちゃんを除き、できるだけ避けてください。
答えは、NOです。
前述の通り、犬は歯で食べるのではなく、飲み込んで食事を楽しみます。そのため、フードが歯に直接的に関係することは少ないです。
しかし、ウェットフードには水分量が多く「飲み込む前に歯の周りにフードが残りやすい」ということで歯石や歯垢がつきやすくなると伝えられているのです。
確かにドライフードの方が乾燥された状態のため、歯石や歯垢がつきづらいこともありますが、フードがどのタイプであろうと、日頃からの歯磨きケアが大切ということに変わりはありません。
ニック・ケイブ(Nick Cave)獣医師
ニュージーランド・マッセー大学獣医学部准教授、米国獣医栄養学専門医
マッセー大学獣医学部小動物内科にて一般診療に従事した後、2000年に獣医学修士を取得(卒業論文は『食物アレルギーの犬と猫の栄養管理』)。2004年よりカリフォルニア大学デービス校で栄養学と免疫学の博士号を取得し、小動物学臨床栄養の研修を修了。同年、米国獣医師栄養学会より米国獣医栄養学専門医に認定。2005年より小動物医学および栄養学の准教授、獣医栄養学の専門医としてマッセー大学に戻る。家族、2匹の犬、猫、そしてヤモリと暮らしている。
今回のテーマは「歯」。ニュージーランド・マッセー大学獣医学部准教授、米国獣医栄養学専門医
マッセー大学獣医学部小動物内科にて一般診療に従事した後、2000年に獣医学修士を取得(卒業論文は『食物アレルギーの犬と猫の栄養管理』)。2004年よりカリフォルニア大学デービス校で栄養学と免疫学の博士号を取得し、小動物学臨床栄養の研修を修了。同年、米国獣医師栄養学会より米国獣医栄養学専門医に認定。2005年より小動物医学および栄養学の准教授、獣医栄養学の専門医としてマッセー大学に戻る。家族、2匹の犬、猫、そしてヤモリと暮らしている。
ウェットフードはドライフードより歯垢や歯石がつきやすいと聞いたことがありませんか?
最新の栄養学を基に、食と密接的に関係する歯、口内環境についてお話ししたいと思います。
犬の歯について勉強しましょう
動物はそれぞれ口の作りや歯の形が異なります。皆さんは、なぜ動物ごとに違いが出るのかご存じでしょうか? その答えは、食生活が深く関係しているといわれています。私たち人間は雑食動物であり、肉以外にも穀物なども食べるため、奥歯は平らな形をしています。
顎関節も上下に開閉するだけでなく水平方向に動くことで、すり潰すような動きをすることができます。これにより奥歯でしっかりと嚙み砕いてすり潰し、消化しやすくしてから飲み込むことが可能になっています。
一方、犬は基本的に肉食動物ですので、歯の形や顎の動きが人間とは大きく異なります。
野生の犬は食べ物を狩猟で獲得してきましたので、獲物を倒すための犬歯が大きく発達しています(犬歯は、威嚇のためにも用いられます)。
人と犬の食べ方の違い
犬の歯は全部で永久歯が42本あります。乳歯は28本です。生えている場所によってさまざまな形をしていて、前から「前歯(切歯)」「犬歯」「前臼歯」「後臼歯」に大きくわけられます。倒した獲物は「裂肉歯(れつにくし)」という鋏状(はさみじょう)に噛み合わさる奥歯で丸呑みできる大きさに噛み切り、人間のように咀嚼はせずにそのまま丸呑みします。
裂肉歯は、その噛み合わさり方が「シザーバイト」とも呼ばれ、上下顎とも奥歯の中で一番大きな歯で、犬歯とともに犬の食事に最も重要な歯の一つになります。
前歯(切歯)、前臼歯のほとんどは物の運搬などにしか使われません。食事にほとんどすべての歯を用いる人間との違いを理解していただけると思います。
犬は歯が無くても大丈夫?
野生の犬は裂肉歯で獲物をかみ切り、あとは「丸のみ」する食生活を送っています。そのため、かみ切る必要のないドッグフードであれば、かみ砕くこともなく飲み込んでいるはずです(食事後すぐに吐いたのをご覧になったことがある方は、食べたご飯がそのまま吐き出されていることに気付くと思います)。そのため極端なことをいえば、人間と生活してドッグフードを食べる生活をしている限りは、歯が一本も無かったとしても困らないのです。
また、人間は常に上下の歯が面と面でかみ合わさって顎に力がかかっているため歯が無くなると顎の筋肉や骨がやせ細ってしまいますが、犬は歯が無くなっても人間のような弊害が起こりません。そのため、「犬は歯が悪くなってしまったら無理に残さず抜いてしまった方が良い」と言われるのです。
犬の歯でケアしたいことは?
犬の虫歯
まず、人と違い犬は虫歯になりづらいとされています。犬が虫歯になりづらい理由は、主に3つ挙げられます。- 人の唾液は弱酸性(pH約6.5)であるのに対し、犬の唾液はアルカリ性(pH約8.5)であるため、犬の口の中は虫歯菌が繁殖しづらい環境です。
- 人の歯は平らで歯と歯の隙間が空いていないので歯垢がたまりやすいのに対し、犬は歯と歯の隙間が広く歯がとがっているため、歯垢が溜まりにくい作りになっています(そのため虫歯になるなら平らな奥歯が多いです)。
- 虫歯菌は糖質をエサとし、粘り気のあるグルカンを生成して歯にごびりつきます。人は唾液にアミラーゼという消化酵素を含み、口腔内で炭水化物を分解して虫歯菌のエサにもなる糖分を作るのに対し、犬は唾液にアミラーゼを含まないため、口腔内で糖分が作られることはありません。
虫歯ではなく、歯垢や歯石に注意
犬は虫歯になりづらいと書きましたが、だからといって歯磨きをしなくていいということにはなりません。虫歯になりづらい一方で、ミネラルが多いアルカリ性の唾液は歯垢(プラーク)と結び付いて歯石になりやすく、歯垢を放っておくと3~5日で歯石になってしまいます。
人はそれが約20日ほどかかりますので、犬の歯石化はかなりスピードが速いといえます。
犬は歯磨きをしないと口臭が酷くなるだけでなく、歯石ができて歯垢がたまり歯周病になったり、歯周病からさまざまな内臓疾患につながる可能性があります。
歯磨きをすることで、それらの病気のリスクを予防することができるのです。
歯石ってそもそも何?
歯石は食べかすが固まってできたものと思われがちですが、正しくは「歯垢とミネラルが結び付いて石のようになったもの」です。歯垢は食べかすを餌にしている細菌とその代謝物の塊で、人の歯の表面にも見られる白いネバネバした物質です。
歯垢に唾液の中のカルシウムを含むミネラルが沈着することで石灰化が起こり、鍾乳洞のように硬い石の層ができていくのです。そうやってできたものが歯石です。
犬の歯周病について
近年、ペットの小型化や高齢化によって歯周病の数が増えています。2歳以上の犬猫の8割以上に歯周病がみられると言われているほどです。人の場合は、歯周病に伴って細菌性心内膜炎や動脈硬化、皮膚病、肥満、糖尿病、呼吸器感染症、関節炎、骨粗鬆症、腎臓病を引き起こす可能性がありますが、犬に関してまだ正確には分かっていません。
しかし、歯根膿瘍、下顎骨折などの重症化だけでなく、心筋症や心内膜炎、慢性気管支炎、肺線維症、心内膜炎、腎炎などの関連が報告されています。
日頃からの歯磨きが大切
歯垢や歯石がつかないように、日頃から歯ブラシを使った歯磨きやデンタルガムでのケアが大切です。もし歯石がついた場合は、かかりつけの獣医師に相談しましょう。
無麻酔での歯石取りはシニアのワンちゃんを除き、できるだけ避けてください。
フードによって歯石や歯垢は異なる?
さて、歯のケアが大切だということを理解できたところで、ではドライフード、ウェットフードによって歯石がつきやすくなるのでしょうか?答えは、NOです。
前述の通り、犬は歯で食べるのではなく、飲み込んで食事を楽しみます。そのため、フードが歯に直接的に関係することは少ないです。
しかし、ウェットフードには水分量が多く「飲み込む前に歯の周りにフードが残りやすい」ということで歯石や歯垢がつきやすくなると伝えられているのです。
確かにドライフードの方が乾燥された状態のため、歯石や歯垢がつきづらいこともありますが、フードがどのタイプであろうと、日頃からの歯磨きケアが大切ということに変わりはありません。
ペトコトフーズについて
ペトコトフーズは、獣医師・動物栄養学博士のニック先生が作ったレシピで、国産食材にこだわった総合栄養食です。ぜひ新鮮な食事を愛するワンちゃんにお試しください。>> 詳しくはこちら <<