【獣医師執筆】ヒューマングレードって?ドッグフードの安全性と選び方を解説
ドッグフードでよく見る「ヒューマングレード」は犬にとって良いものなのでしょうか?本当に良いドッグフードを選んでいただくために、安いフードとの違いや「国産」「グレインフリー」といった表記についての考え方などを解説します。
なぜヒューマングレードが生まれたのか
最近になって「ヒューマングレード」という言葉が使われるようになった理由を知るためには、少し歴史をさかのぼる必要があります。1960年、飼料メーカーだった協同飼料(現:日本ペットフード)は国産として初となるドッグフードを発売しました。
当時は今のように「ペットは家族」という考え方が一般的ではなかったため、犬には「人の残飯」が与えられていました。それが飼料(家畜の餌)と同等のレベルになったことで、数年程度だった犬の平均寿命が伸びるきっかけの一つになりました。
発売当初は富裕層向けだったドッグフードも少しずつ普及し、犬が食べるものとして当たり前の存在になっていきました。しかし2007年、世界中の愛犬家を震撼させる事件が起きます。アメリカでドッグフードを食べた犬が相次いで死亡したのです。原因は、中国製のフードに含まれていたメラミンという有害物質でした。
これを契機に日本でもペットフードの安全性に注目が集まり、翌2008年に世界に先駆けて「ペットフード安全法」が成立しました。ちょうど「ペットは家族」と考える人が一般的になった時期でもあり、その需要に応えるように生まれたのが「ヒューマングレード」や「グレインフリー」という言葉だったのです。
ヒューマングレードと飼料グレードの違い
新たに生まれたヒューマングレードのドッグフードは、飼料メーカーから生まれた昔ながらのドッグフードと何が違うのでしょうか。昔ながらのドッグフードを仮に「飼料グレード」と呼び、以下に項目ごとの比較表を作りました(※)。
原材料の産地 | 材料ごとに記載し、国産がメイン | 不明 |
---|---|---|
肉 | 人が食べるのと同じ部位を使用 | 頭、骨、内臓、皮、羽毛などの畜産副産物を使用 |
添加物 | ビタミン、ミネラルなど必要最低限 | 保存料、酸化防止剤、着色料、香料などを必要に応じて添加 |
加工方法 | 低温調理 | 高温調理 |
工場 | 人と同等の品質管理 | 飼料と同等の品質管理 |
味 | 食材本来のうま味 | 動物性油脂や香料などジャンクなうま味 |
見た目 | 食材本来の色と形 | 茶色の粒状 |
価格 | 1kg当たり3000円〜 | 1kg当たり200円〜 |
原材料の産地
ペットフード安全法で「原材料名」の表示は義務付けられていますが、原産地の表示は義務付けられていません。そのため飼料グレードで産地が書かれていることはほとんどありませんが、ヒューマングレードでは肉や野菜など材料ごとに産地を表示するのが一般的です。なお、ペットフード安全法では「原産国名」を表示することも義務付けられていますが、原産国名は最終加工した場所を意味します。極端な話、すべての食材が輸入品でも国内で加工すれば「国産ドッグフード」と表示できてしまいます。
使われる肉の部位
飼料グレードでは鶏や牛、豚、魚など何の肉を使っているかは表示されますが、どの部位を使っているかまでは表示されないことが一般的です。その代表例がチキンミールなどの「◯◯ミール」です。
ミールとはいろいろな部位をごちゃまぜにして粉末にしたもので、食肉にならなかった頭、骨、内臓、皮、羽毛などの部位(畜産副産物)が使われます。それは食材の有効活用と言えますし、余り物だから犬の体に良くないものと一概には言えません。
しかし、「ミール」ではどんな肉のどの部位が使われているかわからないことが問題で、4Dミート(※)が使われているのではないかと疑われることもあります。そのためヒューマングレードは人が食べるのと同じ部位を使うことで、安心や信頼につなげています。
添加物
添加物は体に良くないものと思われがちですが、無添加で悪くなったものを食べて食中毒になれば本末転倒ですよね。大事なのはどんな目的で使うかです。
保存料・酸化防止剤 | 無添加 | 長期保存できるように添加 |
---|---|---|
動物性油脂 | 無添加 | 食いつきを良くするために添加 |
香料(フレーバー) | 無添加 | 食いつきを良くするために添加 |
着色料 | 無添加 | 購買意欲を向上させるために添加 |
ビタミン・ミネラル | 栄養バランスを整えるために添加 | 栄養バランスを整えるために添加 |
飼料グレードでは保存性を高めたり見た目を良くしたり、飼い主さん目線で売るために添加物を使いがちです。ヒューマングレードではそういったものを除き、犬のために必要なビタミンやミネラルだけが添加されています(※)。
工場・加工方法
ドッグフードは法律上、「食品」ではなく「雑貨」として扱われるため、人の食べ物ほど厳しい基準では作られていませんでした。ヒューマングレードではより質の高いフードを作るため、人と同じ食品工場、品質管理のもとで作られます。
加工方法も異なり、例えばドライフードが約200℃の超高温で加熱調理されているのに対して、ヒューマングレードでは栄養をできるだけ減らさないように低温で調理されます。実際、新鮮なごはんを食べている犬のほうが3年長生きしたという調査結果もあります。
見た目・味
ドライフードは高温調理によって水分を飛ばし、携帯性や保存性を高めた乾パンのような非常食です。それでは犬も食材本来のうま味を感じることができず、動物性油脂を使ったオイルコーティングによって嗜好性を高めています。
ヒューマングレードでは私たちが食べる食事と同じように、見た目で何が使われているかわかりますし、食材本来のうま味を感じることができます。ただ、味の好き嫌いは犬それぞれですので新鮮さを好む子もいれば、ジャンクな味を好む子もいます。
価格
残飯に比べれば高級品だったドッグフードも普及とともに値段が下がり、今では1kg当たり200円台のものも販売されています。高いから良いとは限りませんし、安さは企業努力の賜物とも言えます。ただ、あまりに安いのは何かを妥協した結果と疑わざるを得ないでしょう。
ヒューマングレードのフードには犬の健康を考えたこだわりがあり、その結果として価格も飼料グレードより高くなりがちです。ドライフードでも食材にこだわったフードは2000円/kgを超えますが、手作りの美味しさ・新鮮さを詰めたフレッシュフードタイプでは3000円/kgを超えるものが少なくありません。
200円台のものと比べて10倍以上もするなんて高いと思いますか?もしそう思われた方は、フレッシュフードタイプのペトコトフーズが高いと感じる理由を解説した記事も併せてご覧ください。
本当に良いドッグフードの選び方
ヒューマングレードと言っても先ほど紹介した項目の一部を指すものから、すべてにこだわって人も食べられるものまでさまざまです。そこでヒューマングレードの中からさらに良いフードの選び方について、ポイントを3つに絞って解説します。
Point 1. 「生産者さんの顔が見える」
2022年4月から私たちが食べる加工食品の原産地表示が義務化されるのをご存じでしょうか。これからは材料ごとにどこの国で作られたものかがわかるようになります。ヒューマングレードと言うからには、ドッグフードも同じように原産地を明らかにするべきでしょう。
ただ、「国産なら安心」と決めつけてしまうのも危険です。誰がどのように作ったものなのか、生産者さんの顔は見えるか、情報をきちんとオープンにしているかも大切なポイントです。
Point 2. 「作り手の想いに共感できる」
添加物の使い方が「売るため」なのか「犬のため」なのかで違ったように、メーカーが「ヒューマングレード」という言葉をどのような想いで使っているのかを知ることも重要です。公式サイトに書かれていることやSNSで発信されているメッセージを読んで、その想いに共感できるかを確認してみましょう。
Point 3. 「専門家が作っている」
どれだけ想いがあっても、知識が無ければ良いフードを作ることはできません。犬の栄養学は発展途上。人でも「◯◯を食べると痩せる/がんにならない」といった真偽不明の情報が出ては消えていくように、犬のごはんも流行り廃りがあります。最近では「グレインフリー」が良い例でしょう。
グレインフリーのドッグフードが犬の体に良いという科学的な根拠は一切なく、健康になるどころか心臓病との関連が疑われています。犬の栄養学について正しい知識を持った専門家がいれば、そういった非科学的なフードが作られることはありません。
ヒューマングレードのおすすめご飯
犬の食べ物は「エサ」と呼ばれていた時代から、家族の「ごはん」と呼ぶ時代へ変わりました。私たちと同じように、犬も栄養バランスの良いごはんを食べることで健康を維持することができます。ごはん選びをする際は、以下の2点を気を付けていただくといいでしょう。
1. 総合栄養食を適量与える
犬が必要とする栄養は人間と同じではありません。そこで生まれたのが「総合栄養食」と呼ばれるごはんです。おやつなど「一般食」や「副食」と呼ばれるごはんだけ食べていると体を壊してしまいますので、「総合栄養食」のごはんを選ぶようにしましょう。総合栄養食を食べていても与える量が少なければ痩せてしまいますし、多ければ太ってしまいます。パッケージに書かれた食事量は目安ですので、ボディ・コンディション・スコアで「3」の「理想体型」を維持できる量を与えるようにしてください。
2. 添加物の少ない新鮮なごはんを選ぶ
犬のごはんと聞いて「カリカリ」と呼ばれる茶色い豆粒を想像される方も多いと思いますが、正しくは「ドライフード」と呼ばれる加工食品です。保存しやすく食いつきも良いことから犬のごはんとして一般的になりましたが、高温加熱によって食材本来の栄養が失われ、添加物も多く含まれることから見直しが進んでいます。新鮮な野菜を犬や猫に与え続けることで、様々ながんに罹るリスクを軽減することが研究で判明していたり、市販のドライフードを製造する工程の1つである高温加熱処理が、タンパク質の品質劣化を招き、熱に弱いビタミンを破壊し、さらには発がん性物質を生成してしまうことが、研究により判明しています。そこで生まれたのが素材本来の旨味や香りが楽しめ、余計な添加物も入っていない「フレッシュフード」と呼ばれる新鮮なごはんです。ペトコトフーズもその一つで、子犬からシニア犬(老犬)まで毎日のごはんにすることができます。もちろん総合栄養食で、主食としても、トッピングとしてもご利用いただけます。
実際に従来のドライタイプのドッグフードよりも、水分がより多く含まれた手作り品質のごはんを食べている犬の方が寿命が3年も長くなることが研究により明らかになっています。新鮮で美味しく、健康なごはんを選ぶことが長生きできる秘訣です。