
犬が石や砂を食べてしまったら?原因や対策を獣医師が解説
ときどき「愛犬が石を食べて困ります」「砂を食べるんですけど大丈夫ですか?」というような質問を受けます。本来、食べるものではない石や砂をどうして犬は口に入れてしまうのでしょうか?自分の家の犬が、石や砂を食べるようになったらどうしたらいいでしょうか?多くの場合、子犬が多いと思いますが、成犬・老犬になった場合も、石や砂を食べる場合があります。今回は犬が石や砂を食べてしまう理由や対策について、犬の家庭教師みつの塾塾長獣医師の光野京子が解説します。
犬が石や砂を食べる理由
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どうして犬が石や砂を食べるのか。その理由は以下が考えられます。
- 美味しそうな匂いがするため
- 自然行動の一種
- ミネラル不足
- お腹に寄生虫がいる
- 異食症(異嗜)
- 飼い主の関心を求める行動(注目獲得)
美味しそうな匂いがするため
石や砂にバーベキューのタレが付着していて、美味しそうな匂いがした場合、「食べられるもの」と勘違いして口に含んでしまうことがあります。河原やバーベキュー場に愛犬と行く際は特に気をつけましょう。
自然行動の一種
自然行動としては、子犬に多くみられます。子犬は生まれてしばらくすると、とても好奇心旺盛な時期になります。口でいろいろなものを確認していきます。「これは何だろう?」と口に入れる。それがたまたま石だったり砂だったりするだけです。
多少の砂や石を食べたとしても、便と一緒に排泄されるので、あまり気にしないようにしましょう。ここで大騒ぎすると「注目獲得」という問題行動につながることがあります。
また、シニア犬(老犬)になり認知症になってしまって、石や砂を食べるようになることも考えられます。
ミネラル不足
ミネラルが不足した場合も、石や砂を食べることがあります。手作り食を与えている場合は、ビタミンやミネラルが不足しがちになるため、サプリメントで補うか、栄養士監修の手作り食に切り替えると良いでしょう。
お腹に寄生虫がいる
成犬になってから石や砂を食べるようになった場合は、お腹に寄生虫がいる可能性もあります。気になる症状があるときは、早めに動物病院で相談しましょう。
異食症(異嗜)
「異食症(異嗜)」という異常行動の可能性も考えられます。これは食べ物ではないものを口にする行動で、原因は以下のようなものが挙げられます。
- 糖尿病や甲状腺機能亢進症などの病気による多食
- 不安からくる噛み行動の増加
- 飼い主の関心を引きたいという思い
- 常同障害など精神的な要因
このような症状が見られる場合は、問題行動を専門とする獣医師に相談するのが適切です。
飼い主の関心を求める行動(注目獲得)
特に子犬の時期は、石や砂を口にしたときに飼い主さんが大げさに反応すると、その反応が面白くて繰り返すようになることがあります。
このような様子が見られる場合は、騒がず冷静に対応することが大切です。
犬が石や砂を食べる場合のしつけや対策

- 健康であるか確認する
- 環境を整える
- 普段からおもちゃを返してもらう練習をする
1. 健康であるか確認する
まず確認したいのは「健康状態」です。病気による行動なのか、それとも病気以外の原因なのかを見極めることが大切です。健康であるとわかれば、次に行動の背景を探ることができます。
2. 環境を整える
続いて重要なのは、誤飲が起こらない環境づくりです。ただし、散歩中に出会う「石」や「砂」は完全に避けるのが難しいため、愛犬が口にしないように注意を払う必要があります。
たとえば、地面を嗅いでいるうちに鼻に砂がつき、それを舐めてしまった程度であれば、 便と一緒に排出される可能性が高いため、あえて過剰に反応しないことも大切です。
3. 普段からおもちゃを返す練習をする
石や異物を口にしたとき、慌てずに静かに取り上げるには、普段からおもちゃを返す練習をしておくのが効果的です。
「ちょうだい」の合図で安全に口から出してもらうことができれば、万が一の誤飲リスクを減らすことができます。
なお、無理に奪おうとするとかえって飲み込んでしまうこともあるため、絶対に避けましょう。
愛犬が石を食べてしまった場合

間違って石を食べて飲みこんでしまった場合、犬の大きさと飲み込んでしまった石の大きさや量によって対処方法が異なります。
小さな砂のようなものであれば、ほとんどの場合は便と一緒に排泄されるため、過度に心配しなくても大丈夫です。
動物病院での診察を推奨する場合
「いつ食べたか分からない」「どんなものを食べたか分からない」「大量の砂を食べた」「5mm以上の石を食べた」という状況であれば、 迷わず動物病院に連れていきましょう。
飲み込んだものが石であればレントゲンで確認できるため、石の大きさや腸の状態を把握できます。 放置して様子を見ていると、その間に胃から腸へと移動してしまい、腸閉塞を引き起こすリスクがあります。
腸閉塞の主な症状
以下のような症状が見られた場合は、すぐに動物病院を受診してください。
- 元気がなくなる
- 腹痛
- 嘔吐
- 下痢
- 血便
まとめ

成犬になってから石を食べるようになった場合は、健康上の理由が疑われます。まずは動物病院でしっかり健康チェックをしてもらいましょう。
大型犬であれば7歳、小型犬では10歳を過ぎたら、年に1度は詳細な血液検査を受けることをおすすめします。
また、健康なうちにレントゲンやエコー検査を受けておくと、体内の状態を記録として残せます。将来的に病気の兆候が見られた際に、過去のデータと比較できるのでとても有効です。
参考文献
- 獣医学教育モデル・コア・カリキュラム準拠 臨床行動学 インターズー
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