【獣医師執筆】犬にはミネラルが必要!ミネラルを多く含む食材や必要量、不足症状などを解説
五大栄養素の一つであるミネラルは、犬にも欠かせない栄養素。ただ、ミネラル不足・過多にも注意が必要です。ごはんやおやつでバランスよく栄養を補給し、愛犬の健康維持につなげましょう。今回は、各ミネラルの主な働きや必要量、過不足で起こる症状、ミネラルを多く含む食材やおすすめおやつなどについて解説します。
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犬にミネラルが必要な理由
犬はミネラルを体内で作ることができないため、ミネラルは食事から摂取しなければいけない必須栄養素です。不足すれば体に不調が起きますが、過多になっても中毒症状が出てしまいます。
ミネラルとは118種類ある元素のうち、炭素・水素・窒素・酸素を除いた元素の総称で、「無機質」や「灰分」(かいぶん)と呼ばれることもあります。タンパク質や炭水化物、脂質と違ってエネルギー源にはなりませんが、体を動かすために欠かせない存在として5大栄養素に数えられます。
ミネラルは必要量によって「多量ミネラル」と「微量ミネラル」に分けることができます。
多量ミネラル | カルシウム、リン、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、塩素、硫黄 |
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微量ミネラル | 鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレン、マンガン、コバルト、モリブデン、フッ素、ホウ素、クロム |
ミネラルの主な機能として、「組織の構成成分」「体液の浸透圧調節/神経伝達」「補酵素」の3つに分けることもできます。
1. 組織の構成成分 | カルシウム、リン、マグネシウムなど |
2-1. 体液の浸透圧調節 | ナトリウム、カリウム、塩素など |
2-2. 神経伝達 | カルシウム、ナトリウム、カリウム、塩素など |
3. 補酵素 | 微量ミネラルやカルシウム、マグネシウムなど |
※参照:『ミネラルの役割と要求量』(ペット栄養学会誌)
犬に必要なミネラルは自然食材から摂取が難しい
ミネラルは他のミネラルやビタミンと相互に作用するため、バランスが崩れたときの体への影響が少なくありません。そのため特定のサプリメントを偏って摂ることはお勧めできません。ミネラルの推奨摂取量はAAFCO(米国飼料検査官協会)やFEDIAF(欧州ペットフード工業連合会)によって定められています。食材だけでミネラルバランスを保つことは難しいため、総合栄養食のドッグフードではミネラルを添加することが一般的です。
犬にとってミネラルがもたらす効果
ミネラルにはそれぞれ犬にとってどのような働きがあるのでしょうか。主要なミネラルを犬の必要量とともに一覧で紹介します。
カルシウム | 骨と歯を形成。血液や筋肉、神経の働きに関与 | 0.5〜1.8% |
リン | 骨と歯を形成。エネルギーの産生をサポートし、心臓や腎臓、神経の働きに関与 | 0.4〜1.6% |
カリウム | 細胞の浸透圧維持。血圧低下。神経や筋肉の働きに関与 | 0.6%以上 |
ナトリウム | 細胞の浸透圧維持。糖質とアミノ酸の吸収、神経や筋肉の働きに関与 | 0.08%以上 |
塩素 | 胃酸に含まれタンパク質の消化をサポート。血液のpH調節。肝機能をサポート | 0.12%以上 |
マグネシウム | 酵素の活性化、炭水化物と脂質の代謝に関与 | 0.06%以上 |
鉄 | 血液中で酸素を運搬 | 40mg/kg以上 |
亜鉛 | 200種の酵素を構成。タンパク質合成や炭水化物代謝、発育、傷の治癒に関与 | 80mg/kg以上 |
銅 | 貧血予防、免疫力向上。心臓機能、エネルギー産生に関与 | 7.3mg/kg以上 |
マンガン | 窒素を尿素に変えて排泄。骨の発育に関与 | 5.0mg/kg以上 |
セレン | 抗酸化酵素として過酸化物質を分解、免疫機能に関与 | 0.35〜2mg/kg以上 |
ヨウ素 | 甲状腺ホルモンの原料、成長促進 | 1.0〜11mg/kg以上 |
※乾物1kg、代謝エネルギー4000kcalあたり、AAFCO栄養素基準(2016年版)より成犬用を参照
犬のミネラル不足と摂取過多のリスク
AAFCOは各ビタミンの犬が摂るべき最小値と最大値を設定していますが、リスクが低く設定されていないものもあります。特にビタミンB群、ビタミンCは水溶性で過剰分が尿から排出されるため、最大値は設定されていません。
ただし、サプリメントによる過剰摂取には注意が必要です。特に人間と同等量のビタミン剤を与えてしまうと、犬とっては過剰摂取になってしまう場合があります。
カルシウム | 骨粗鬆症、痙攣、くる病、低カルシウム血症 | 高カルシウム血症、尿路結石、発育不良、骨軟骨症、股関節異形成 |
リン | 食欲低下、筋力低下、毛並みの悪化 | 尿結石、腎機能障害、カルシウムの吸収阻害、体重減少 |
カリウム | 食欲不振、筋力低下、低カリウム血症、心臓と腎臓の障害、衰弱 | 高カリウム血症、四肢のしびれ |
ナトリウムと塩素 | 食欲不振、疲労、脱毛 | 喉の乾き、便秘、高血圧、てんかん、死亡 |
マグネシウム | 食欲不振、筋力低下、痙攣、体重減少、成長抑制 | ストルバイト結石、高マグネシウム血症、嘔吐、下痢 |
鉄 | 貧血、成長抑制 | 食欲不振、体重減少、肝機能不全 |
亜鉛 | 食欲不振、成長抑制、脱毛、皮膚異常、免疫不全、結膜炎 | 鉄や銅の吸収阻害、嘔吐、下痢 |
銅 | 貧血、成長抑制、被毛脱色、骨格系疾患 | 肝炎、神経障害、心不全、腎不全 |
マンガン | 骨の成長不良、生殖能力の低下、脂肪肝 | |
セレン | 食欲不振、繁殖障害 | 嘔吐、よだれ、爪の変形、脱毛、口臭悪化 |
ヨウ素 | 甲状腺機能低下、発育不全、甲状腺腫、脱毛、元気消沈 | 甲状腺腫、発熱、免疫力低下、体重減少 |
カルシウムとリン
ビタミンDはカルシウムとリンの吸収を促進し、カルシウムとマグネシウムはリンの吸収を抑制します。カルシウムは尿結石の原因にもなりますが、過剰でなければシュウ酸と結合してシュウ酸カルシウム結石を予防します。カルシウム:リン比は1:1〜2:1が理想とされていますが、発育期はカルシウム含量が特に重要です。子犬(特に大型犬)は1.2%(乾物1kg、代謝エネルギー4000kcal当たり)がカルシウム推奨量とされ、サプリメントなど過剰摂取は整形外科疾患の原因になります。
カリウム
カリウムは体内で蓄積されにくいため、毎日の食事から摂取する必要があります。マグネシウム
ビタミンDはマグネシウムの吸収を促進し、カルシウムとリンはマグネシウムの吸収を抑制します。銅
銅の過剰症が問題になることはまれですが、ベドリントンテリア、ウエストハイランドホワイトテリア、スカイテリアは銅の蓄積を原因とした遺伝性の慢性肝炎「銅蓄積肝障害」に注意が必要です。※参照:「消化器疾患と食事に関する最近の話題」(ペット栄養学会誌)
犬に必要なミネラルを多く含む食材
各ミネラルを多く含む食材を紹介します。なお、多量ミネラルの「塩素」は塩化ナトリウム(食塩)として、「硫黄」はアミノ酸として摂取するため本項目では割愛します。
カルシウム
カルシウムは小松菜やほうれん草、モロヘイヤ、うなぎ、大豆、ヨーグルトに多く含まれます。シュウ酸はカルシウムの吸収を阻害するため、シュウ酸を含むほうれん草のカルシウム吸収率は高くありません。・レシピ |
・レシピ |
リン
リンは海苔やホタテの貝柱、タラ、アジ、サケ、大豆、卵黄などに多く含まれます。植物性食品のリンは動物性食品に比べて利用率が劣ります。・レシピ |
カリウム
カリウムは昆布や海苔、大豆、ほうれん草、ブロッコリー、バナナ、タラ、マグロ、鶏肉などに多く含まれます。水溶性のため茹でると水に溶け出してしまいます。・レシピ |
・レシピ |
ナトリウム
ナトリウムはホタテやカニ、イカ、甘えびなどの魚介類、わかめ、あおさ、海苔などの海藻類に多く含まれます。マグネシウム
マグネシウムはあおさやひじき、ゴマ、そば、納豆などに多く含まれます。鉄
鉄は豚レバーや鶏レバー、カツオ、ゴマ、小松菜、ほうれん草、豆乳などに多く含まれます。不足している場合は同時にタンパク質や赤血球の合成に必要な葉酸、ビタミンB12を取ることが重要です。鉄はタンパク質と結合したヘム鉄とそれ以外の非ヘム鉄に分けられ、非ヘム鉄はヘム鉄に比べて吸収率で劣ります。ヘム鉄は動物性食品、非ヘム鉄は植物性食品に多く含まれます。
・レシピ |
亜鉛
亜鉛は牡蠣や牛肉、ゴマ、大豆、海苔、カニ、鶏卵などに多く含まれます。・レシピ |
銅
銅は牛レバーやゴマ、大豆、そば、枝豆などに多く含まれます。豚レバーにも含まれますが、利用性は低いとされています。なお、酸化銅も利用性が低いことからAAFCOはペットフードでの利用を非推奨としています。マンガン
マンガンはあおさや海苔、大豆、ゴマ、そば、パイナップル、柿、しそ(大葉)、バジル、モロヘイヤ、枝豆などに多く含まれます。セレン
セレンはマグロ、カツオ、アジ、豚レバー、パスタ、鶏卵、サバなどに多く含まれます。・レシピ |
ヨウ素
ヨウ素は昆布やひじき、あおさ、海苔、わかめ、タラ、サバ、マグロ、アジなどに多く含まれます。・レシピ |
クロム
クロムはあおさやひじき、昆布、ほうれん草、サバに多く含まれます。・レシピ |
犬のミネラル補給におすすめのおやつは?
犬のミネラル補給におすすめのおやつは、ミネラルが豊富な天然素材を使った製品や、ミネラルバランスを考慮して作られたおやつです。魚系おやつ
ペットのおやつにぼし
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魚は、カルシウム、リン、セレン、ヨウ素、オメガ3脂肪酸など、ミネラルや栄養素が豊富に含まれています。特に、小魚やフィッシュスキンはカルシウムとリンのバランスが良いおやつです。
骨系のおやつ
エゾシカ あばら骨ジャーキー
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犬にとって、骨はカルシウムとリンの優れた供給源です。特に、低温乾燥や焼き上げた骨のおやつは、ミネラルを豊富に含んでいます。鶏や牛の天然の骨はカルシウム、リン、マグネシウムが豊富です。
チーズ系おやつ
ペトコトフーズ フリーズドライ 国産チーズキューブ
チーズにはカルシウムが豊富に含まれており、犬用に加工されたチーズのおやつは、ミネラル補給に役立ちます。
ペトコトフーズでもチーズのおやつを販売中!「フリーズドライ 国産チーズキューブ」は、国産チーズを使用した犬用おやつで、オールステージに対応しています。ナチュラルチーズを特許製法で加工し、フリーズドライに仕上げることで、コクのあるクリーミーな味わいを実現。サクサクとした食感と、素材本来の味と香りが楽しめるので、愛犬もきっと夢中になるはず。
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犬にミネラルウォーターを与えても大丈夫?
犬はミネラルウォーターを飲んでも問題ありません。ただし、一般的には結石など泌尿器疾患のリスクを避けるため、カルシウムやマグネシウムが多く含まれる硬水ではなく軟水(硬度60mg/L未満)を選んだほうがいいとされています。
食事から摂取するミネラル分に比べれば水から摂取するミネラル分は微量であるため、硬度の差はそれほど大きな影響を与えないとも考えられていますが(※)、ミネラルウォーターの種類によっては硬度1000mg/Lを超える超硬水と呼ばれるものもあるため注意が必要です。
※参照︰「小動物の臨床栄養学 第5版」
犬に必要なミネラルなどが含まれる総合栄養食のおすすめごはん
犬の食べ物は「エサ」と呼ばれていた時代から、家族の「ごはん」と呼ぶ時代へ変わりました。私たちと同じように、犬も栄養バランスの良いごはんを食べることで健康を維持することができます。ごはん選びをする際は、以下の2点を気を付けていただくといいでしょう。
1. 総合栄養食を適量与える
犬が必要とする栄養は人間と同じではありません。そこで生まれたのが「総合栄養食」と呼ばれるごはんです。おやつなど「一般食」や「副食」と呼ばれるごはんだけ食べていると体を壊してしまいますので、「総合栄養食」のごはんを選ぶようにしましょう。総合栄養食を食べていても与える量が少なければ痩せてしまいますし、多ければ太ってしまいます。パッケージに書かれた食事量は目安ですので、ボディ・コンディション・スコアで「3」の「理想体型」を維持できる量を与えるようにしてください。
2. 添加物の少ない新鮮なごはんを選ぶ
犬のごはんと聞いて「カリカリ」と呼ばれる茶色い豆粒を想像される方も多いと思いますが、正しくは「ドライフード」と呼ばれる加工食品です。保存しやすく食いつきも良いことから犬のごはんとして一般的になりましたが、高温加熱によって食材本来の栄養が失われ、添加物も多く含まれることから見直しが進んでいます。新鮮な野菜を犬や猫に与え続けることで、様々ながんに罹るリスクを軽減することが研究で判明していたり、市販のドライフードを製造する工程の1つである高温加熱処理が、タンパク質の品質劣化を招き、熱に弱いビタミンを破壊し、さらには発がん性物質を生成してしまうことが、研究により判明しています。そこで生まれたのが素材本来の旨味や香りが楽しめ、余計な添加物も入っていない「フレッシュフード」と呼ばれる新鮮なごはんです。ペトコトフーズもその一つで、子犬からシニア犬(老犬)まで毎日のごはんにすることができます。もちろん総合栄養食で、主食としても、トッピングとしてもご利用いただけます。
実際に従来のドライタイプのドッグフードよりも、水分がより多く含まれた手作り品質のごはんを食べている犬の方が寿命が3年も長くなることが研究により明らかになっています。新鮮で美味しく、健康なごはんを選ぶことが長生きできる秘訣です。
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まとめ
ミネラルは過不足のないように摂取する
サプリメントによる摂取過多に注意
総合栄養食ならバランス良く摂れる
特にサプリメントによるミネラル補給はバランスが崩れる原因となります。また、食材では摂ることが難しいミネラルもありますので、手作りごはん特に注意が必要です。ワンちゃんのごはんには、栄養素が過不足なく配合された総合栄養食のドッグフードがオススメです。
参考文献
- 「小動物の臨床栄養学 第5版」
- 「健康長寿ネット」(長寿科学振興財団)
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