犬の脳梗塞|症状・原因・治療法を獣医師が解説

犬の脳梗塞|症状・原因・治療法を獣医師が解説

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脳梗塞は、脳に血液を供給している動脈が閉塞することによって起こる脳の病気です。犬は人間のように検査、診断、治療を行うことが難しいため対症療法が基本になりますが、多くは数週間で自然回復します。症状や原因、治療法について、獣医師の佐藤が解説します。

犬の脳梗塞とは

チワワ

脳梗塞は脳卒中の一種で、脳に血液を供給している動脈が閉塞することによって起こる脳の病気です。人間では三大死因(悪性新生物、心疾患、脳血管疾患)の一つに数えられる病気ですが、犬では多くないと考えられてきました。しかし、獣医画像診断の進歩に伴って犬の報告例は増加しています。

脳梗塞と脳卒中の違い

脳卒中は脳の血管に障害が起こって体が麻痺したり意識を失ったりする病気を総称したもので、「脳血管障害」とも呼ばれます。脳卒中は障害が起きた原因によって、以下のように分けられます。

  • 脳梗塞︰脳の血管が詰まる(狭くなる)
  • 脳出血︰脳の血管が破れる
  • くも膜下出血︰脳の血管にできたこぶ(脳動脈瘤)が破裂する

犬では脳出血やくも膜下出血などの出血性脳卒中より、血管が詰まって起こる「虚血性脳卒中」が多いとされています。

脳梗塞の種類

脳梗塞は血管が詰まる原因によって「脳血栓症」と「脳塞栓(のうそくせん)症」の2つにわかれます。

脳血栓症は、血液中の悪玉コレステロールが増加して血栓ができる「動脈硬化」の進行によって起こります。脳塞栓症は、主に心臓でできた血栓が脳に流れて詰まることで起こります。

脳梗塞になりやすい犬種

脳梗塞は年齢や犬種に関係なく、どの犬でも起こる可能性がありますが、シニア犬(老犬)に多く見られる傾向があります。甲状腺機能低下症や敗血症、寄生虫感染などの基礎疾患によっても脳梗塞のリスクは上がります。

犬種では遺伝的に特発性高リポ蛋白血症を起こしやすいミニチュアシュナウザー、僧帽弁閉鎖不全症を起こしやすいキャバリアは発症リスクが高いとされています。


犬の脳梗塞の症状

犬

人間では言語障害や手足のしびれが脳梗塞の特徴的な症状の一つですが、私たちが犬の言語障害や手足のしびれを容易に認識することはできませんので、行動の変化が主な症状となります。脳梗塞では、以下のような症状が急に現れます。

  • 歩行障害
  • 立てない
  • 斜頸
  • 眼振(がんしん)
  • 元気がない
  • 意識がない
  • 半身麻痺
  • 震え
  • 視力の低下
  • 味覚の麻痺
  • 旋回、まっすぐ歩けない

これらの症状が24時間以内に消えた場合は「一過性脳虚血発作」と呼びますが、数日から数カ月以内に脳梗塞を起こすケースは少なくありません。

なお、上記の症状は脳梗塞に限らずシニア犬(老犬)に多い特発性前庭疾患脳炎(髄膜脳炎)椎間板ヘルニアなどの病気でも見られます。

犬の脳梗塞の原因

犬

犬の脳梗塞の原因は明確になっていませんが、以下のような病気が原因(基礎疾患)となって起こる可能性があります。


犬の脳梗塞の治療法

犬

犬の脳梗塞はMRI検査を行って診断します。しかし、犬では数時間で検査、診断に至ることがないため虚血性、出血性ともにステロイドや利尿剤の投与、酸素吸入などの対症療法で自然回復を待つことになります。

人間の虚血性脳卒中では数時間以内に血栓溶解剤を投与することで閉塞した動脈を再開通させることができますが、犬でも血栓溶解剤が有効かは確認されていません。

犬の脳梗塞は、原因となった基礎疾患にもよりますが数週間程度で自然回復するケースが少なくありません。ただし、麻痺などの後遺症が残る可能性はあります。

まとめ

犬
脳梗塞は脳の動脈が閉塞する病気
画像診断の進歩で犬の報告例も増えている
対症療法が基本だが自然回復する可能性は高い
脳梗塞は人間の三大死因の一つで、犬でも画像診断の進歩によって報告例が増えています。治療は対症療法が基本になりますが、数週間で自然回復するケースは少なくありません。早期発見・早期治療が予後を良くしますので、愛犬の体に異変を感じたらなるべく早く動物病院へ行くようにしてください。

参考文献