
犬も食中毒になることがあります。犬は人よりお腹が強いイメージがありますが、好奇心旺盛な動物ですので、いい匂いがしたら見知らぬものでも食べてしまうことも。今回は、夏だけでなく冬でも注意が必要な犬の食中毒について、獣医師の佐藤が解説します。
この記事のまとめ
- 犬の食中毒の原因は「病原体」「自然毒」「犬にとって毒になる食品」の3つ
- ネギ類・チョコレート・ぶどう・キシリトールは犬にとって毒になる代表的な食品
- 毒キノコは公園の芝生や花壇にも生えるため、散歩中に口にしないよう注意する
- フードは直射日光を避けて保存し、食べ残しは早めに片づける
- 食べてはいけないものを口にした可能性があれば、症状がなくてもまず動物病院へ連絡する
犬の食中毒とは
食中毒は「食品に起因する胃腸炎・神経障害などの中毒症の総称」と定義されています。食中毒は、原因となる「病原体」と「犬にとって毒になる食品」に気をつけることで防げる病気です。
ドッグフードだったとしても、高温多湿の環境に長時間放置した場合は品質や安全性が低下している恐れがあります。「与えてもいいのかな」と悩む場合は与えないほうが無難です。
犬の食中毒の原因
犬の食中毒の原因は、大きく次の3つに分けられます。
- 病原体に汚染されていた場合
- 自然毒を口にした場合
- 「毒」となるものを口にした場合
病原体に汚染されていた場合
食べ物が「細菌」「カビ」「ウイルス」「寄生虫」などの病原体に汚染されていた場合です。
湿気の多い梅雨から夏場は、細菌やカビが増えやすく、食品が傷みやすいといえます。しかし、現在は冬でも室内が暖房で暖かいため、油断はできません。
自然毒を口にした場合
「フグ」「毒キノコ」「ジャガイモの芽」など、食べ物がもともと持っている毒は自然毒といわれています。
山菜と有毒植物を間違えたり、食用キノコと毒キノコを間違えたりすることで発生します。散歩中に犬が誤って口にしないよう注意しましょう。
「毒」となるものを口にした場合
「人が食べられるから犬が食べても大丈夫」とは言えません。人と犬では体内に持っている酵素や物質の代謝経路が異なるためです。
犬にとって毒となるものとしては「ネギ類」「チョコレート」「ぶどう」「キシリトール」などが挙げられます。
そういったものは、犬が誤飲しないよう保管に気をつけましょう。
犬の食中毒の症状
原因ごとに、見られやすい症状を紹介します。
病原体に汚染されていた場合
多くは「下痢」や「嘔吐」「食欲不振」などの症状を引き起こします。
下痢や嘔吐があまりにも激しい場合、脱水症状などを引き起こすこともあります。症状には個体差があり、食中毒と気がつかないまま、自然に治る場合もあります。
下痢や嘔吐の原因は、食中毒ではない病気の可能性もあるため、いつもと違う嘔吐や下痢が見られたら早めに受診しましょう。
自然毒を口にした場合
自然毒には多くの種類があり、症状もさまざまです。
フグの卵巣などに含まれる「テトロドトキシン(運動麻痺、呼吸困難、心停止など)」や、テングタケに含まれる「イボテン酸(嘔吐、下痢、めまい、痙攣など)」、ジャガイモの芽や皮の緑色部分に含まれる「ソラニン(嘔吐、下痢、腹痛、重症な場合は痙攣や呼吸困難)」などが代表的です。
また、食品ではありませんが、観葉植物や散歩中に見かける植物にも中毒を起こすものが多くあります。
代表的なものとしては「ユリ」「スイセン」「ヒガンバナ」「スズラン」「アジサイ」「キョウチクトウ」「ポインセチア」「ソテツの実」などがあります。
「毒」となるものを口にした場合
代表的なものとしては以下のものが挙げられます。
- ネギ類
- カフェインやテオブロミンを含む食品
- ぶどう
- キシリトール入りのお菓子
ネギ類
玉ねぎ中毒が有名ですが、玉ねぎだけではなく「長ネギ」「小ネギ」「にんにく」「ニラ」「らっきょう」なども同様に中毒を起こします。
食べてからすぐに症状が出ることは少なく、半日以上たってから症状が出ることがあります。
主な症状としては「流涎(よだれ)」「下痢」「嘔吐」「発熱」などが見られ、重症だと「黄疸(皮膚や粘膜が黄色っぽくなること)」「貧血」「血尿」などを引き起こします。
カフェインやテオブロミンを含む食品
チョコレート、ココアなどに含まれるテオブロミンやコーヒーなどに含まれるカフェインは「メチルキサンチン誘導体」と呼ばれています。
これらは「興奮」「下痢」「嘔吐」「発熱」「不整脈」「痙攣」などの症状を引き起こします。
ぶどう
ぶどうの種類に関わらず、食中毒を起こすことが知られています。生の果実だけでなく、レーズン、ジュースなどのぶどうの加工品も要注意です。
原因となる物質はまだ特定されていませんが、急性腎不全を引き起こします。多くは、食べてから5〜6時間後に症状が見られます。
「嘔吐」から始まり「元気消失」「多飲多尿」などが見られます。
症状が進行し「乏尿・無尿(おしっこが少ない・出ない)」になると回復できない可能性が高くなり、実際に死亡例も報告されています。
キシリトールを含む食品
犬ではキシリトールの摂取によって、血糖値を下げる働きをするインスリンというホルモンが強力に分泌されます。
そのため、血糖値が急激に減少し低血糖症状が起こります。中毒を起こした場合、多くは30分以内に症状が見られます。
急激な低血糖により「元気消失」「意識の低下」「嘔吐」「虚脱(ぐったりする)」「痙攣発作」などが見られます。多く摂取した場合には、肝臓障害が見られることもあります。
犬の食中毒の治療
現状の症状に対しての治療(対症療法)を行います。
一般的に、下痢や嘔吐を起こしている場合は、脱水症状や電解質の異常を緩和させる治療を行います。もし、犬が何かを口にして食中毒の症状が出た場合、分かる範囲で問題ないので、口にしたものを動物病院に持っていきましょう。
できれば「いつ」「どれくらいの量」を食べたのかも伝えてください。食中毒の原因がわからなければ、獣医師も正確な治療ができないためです。
犬の食中毒の対策・予防
日常のごはんの管理と、散歩や外出時の注意で、食中毒の多くは防げます。
フードの保管と保存
細菌やカビを増やさないために、フードの衛生を保つことは重要です。
ドライフード、ウェットフード(缶詰やレトルト)ともに、直射日光が当たらない温度変化の少ない場所で保存し、賞味期限内に使い切ることを心がけましょう。
フード開封後は、封をしっかりして、なるべく早く使い切るようにします。小袋をこまめに買う方が新鮮なフードを愛犬に与えることができます。
食べ残しについて
ウェットフードや手作りフードは、フードボウルに出した後の「酸化」「腐敗」「細菌の増殖」などが、ドライフードに比べて早いため、食べ残しは早めに片づけましょう。
ドライフードも犬がいったん口をつけたものは唾液などがついているため、食べ残しを長時間放置することはやめましょう。
手作りフードについて
手作りフードを与える場合、食材をしっかりと加熱し、犬の食べてはいけない食品が入らないよう注意します。また、調理器具や手指の衛生にも気をつけます。
「犬は生肉が好き」「生肉を与える方が体に良い」などの情報もありますが、人でも、生肉や加熱不十分な肉を食べると食中毒を起こす可能性が高まります。
食中毒予防の観点から見ると肉の生食は避けるべきでしょう。
自然毒による食中毒について
毒キノコは山や林の中だけでなく、公園の芝生や花壇、庭など、身近な場所に生えることがあります。散歩中に犬が野生のキノコを口にしないよう注意しましょう。野生のキノコを食べた可能性がある場合の対応は、以下の犬ときのこに関する記事で詳しく紹介しています。
普段と違う環境に興奮して、いつもと違う行動をとる犬もいるかもしれません。周囲に危険な動植物がないか気をつけましょう。
人の食べ物による食中毒について
人の食べ物を与えないに限ります。
可愛いおねだりの仕草や、あげた時の喜びようを見ると、つい「少しだけなら」と与えてしまいそうになるかもしれませんが、食中毒だけでなく肥満や塩分の摂りすぎにも繋がるため、ぐっと堪えることが愛犬のためになります。
犬の食中毒ケアは飼い主次第
愛犬を守れるのは飼い主さんだけです。
愛犬が食べてはいけないものを口にした可能性があるときは、症状が見られなくても、まず動物病院へ連絡しましょう。
【動画解説】犬が食べてはいけないもの
YouTubeのPETOKOTOチャンネルでは、獣医師の佐藤先生が犬が食べてはいけないものについて解説した動画を公開しています。あわせてご覧ください。
