犬の関節炎|種類や症状、治療法を獣医師が解説
犬の関節炎を起こす原因にはさまざまあり、散歩で歩くのが遅くなったり運動を嫌がったりといった症状が出ます。治療は原因の種類ごとに異なりますが、シニア犬(老犬)の加齢では治療薬として痛み止めを使った対症療法を行います。マッサージやサプリメントなど自宅でできるケアもあります。関節炎について、獣医師の佐藤が解説します。
犬の関節炎とは
関節は骨と骨をつなぐ部分のことで、軟骨がクッションになって衝撃を吸収し、骨と骨がぶつからないような構造になっています。関節炎は、過度な運動や肥満、加齢(老化)、病気などが原因となって関節に炎症が起こり、痛みや腫れが生じる状態のことを指します。
炎症が起きる原因はさまざまありますが、シニア犬(老犬)で多く見られます。加齢が原因の場合は治すことが難しくなりますので、痛みを和らげ、生活しやすい環境をつくってあげることが大切です。
関節炎に注意したい犬種
年を取ればどんな犬種でも関節炎になる可能性がありますが、股関節や膝関節に問題が起きやすい犬種として、トイプードルやチワワ、パグ、ヨークシャーテリア、ボストンテリア、レトリーバー種、ブルドッグ、ジャーマンシェパード、マスティフ、 グレートデーン、セントバーナード、コーギー、ダックスフンドなどが挙げられます。犬の関節炎の症状
関節炎になると股関節や膝関節など全身の関節が痛むことから以下のような症状、普段の行動とは異なる変化が見られるようになります。
- 普段の散歩で歩く速度が遅くなる
- 階段の上り下りができなくなる
- 横になっている時間が増える
- 積極的に動かなくなる
- 足を引きずる(跛行)
- 食欲不振
- 発熱
- 動かなくなることによる体重増加
- 触られるのを嫌がる(攻撃的になる)
これらは関節炎に特有な症状ではありませんが、何かしら問題が起きている可能性があります。緊急性の高い病気の可能性もありますので、気になる変化が見られた場合は動物病院で診てもらうようにしてください。
犬の関節炎の原因・種類
犬の関節炎は、さまざまな種類の病気や外傷、体の変化などによって起こります。以下に考えられる主な原因をまとめました。
膝蓋骨脱臼(パテラ) | 外傷や遺伝など(小型犬に多い) | 関連記事 |
---|---|---|
股関節形成不全症 | 遺伝や肥満、発育不良、犬種など | 関連記事 |
椎間板ヘルニア | 遺伝や加齢、犬種など | 関連記事 |
免疫介在性多発性関節炎 | 関節リウマチ、多発性関節炎、全身性エリテマトーデスなど | 関連記事 |
肥満 | 運動不足、食べすぎ、ホルモン異常など | 関連記事 |
前十字靭帯断裂 | 前十字靭帯の変性(遺伝や加齢、膝関節の脱臼など) | |
肘関節異形成症 | 遺伝など(大型犬に多い) | |
変形性関節症 | 遺伝や肥満、加齢など | |
骨軟骨症(離断性骨軟骨炎) | 遺伝や栄養不良など(大型犬に多い) | |
感染性関節炎 | 細菌、真菌、ウイルス、ダニなど | |
レッグペルテス病 | 遺伝や落下事故、ホルモン異常など(小型犬に多い) | |
外傷性関節炎 | 過度な運動、衝突、転倒など | |
加齢 | 正常な変化 |
犬の関節炎の治療・予防
すべての関節炎に効く治療薬はなく、炎症を起こしている原因疾患の治療が基本になります。まずは関節の状態を調べるため触診や血液検査、X線検査、CT検査などの検査を行います。また関節液の採取を行います。加齢の場合は治すことが難しく、痛み止めとして非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を用いる対症療法などを行います。
体重管理
肥満は関節への負担となり痛みを悪化させますので、体重管理が重要です。特にシニア期が始まる7〜9歳は食欲が変わらないまま運動量が減るため肥満になりがちです。定期的に体重測定やボディコンディションスコアの確認を行い、食事量を調整するようにしてください。体重の測り方やボディコンディションスコアの確認方法は以下の動画でも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
参照:『飼い主のためのペットフード・ガイドライン』(環境省)
散歩の時間を増やすなど運動はダイエットに欠かせませんが、シニア期では無理をすると関節の負担になってしまう場合もありますので注意が必要です。犬用プールは負担を抑えながら運動することができるためお勧めです。
犬の関節炎のケア
特に加齢が原因の関節炎は日々のケアが重要になってきます。関節に負担をかけないように、床をより滑りにくくするマットやラグを敷いてあげるといいでしょう。階段は自力で上り下りできたとしても足腰への負担が大きくなります。シニア期に入ったらペット用のゲートを設置して制限するといいでしょう。
鍼治療とマッサージ
鍼治療やマッサージは人間と同様に犬の慢性的な痛みを軽減できる可能性があります。正しく行わないと悪化させてしまうこともありますので、専門の獣医師に相談して行うようにしてください。サプリメント
人向けのサプリメントでも使われるコンドロイチンやSAM-e(S-アデノシルメチオニン)、コラーゲンには関節保護作用があることがわかっています。また、魚油などに含まれるEPA(オメガ3脂肪酸)には抗炎症作用があり、関節炎に良い効果が見込めます。それらが劇的に症状を改善することはありませんが、ご家庭でできるケアの一つとしてサプリメントを取り入れるのはお勧めできます。
まとめ
関節に炎症が起こると痛みや腫れが生じる
シニア犬(老犬)で多く見られる
肥満は関節の負担になるため体重管理が重要
サプリメントは一定の効果が見込める