犬の栄養学をペット栄養管理士が解説|年齢別の注意点からオススメの食べ物まで

犬の栄養学をペット栄養管理士が解説|年齢別の注意点からオススメの食べ物まで

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愛犬のごはん選びに悩んでいたり、市販のドッグフードに不安があったり、手作りごはんを考えている飼い主さんは多いと思います。しかし、犬に必要な栄養素は人と異なるため、犬の栄養学をしっかり学ばないと偏った栄養バランスになってしまいます。今回は犬に大切な栄養素の解説や必要量、トッピングやおやつに最適な野菜や果物、栄養学を勉強するのにオススメの資格について、ペット栄養学の権威であるニック獣医師監修のもとペット栄養管理士が解説します。#犬の食育

犬の三大栄養素

PETOKOTO FOODSの匂いを嗅ぐ2匹の犬

犬が健康に生きていくためには、食事からバランスの良い栄養を摂取する必要があります。摂るべき栄養素は基本的に私たちと変わりませんが、犬が不足してはいけない栄養、過剰に摂取してはいけない栄養があります。手作りごはんをする飼い主さんは、特に注意が必要です。

犬が摂るべき栄養素の中でも、最も重要な栄養素が「タンパク質」「脂質」「炭水化物」です。それらは体の組織を作り、体を動かすエネルギー源となることから、まとめて「三大栄養素」と呼ばれます。

三大栄養素
タンパク質
脂質
炭水化物
糖質
食物繊維

タンパク質の主な働きと犬の必要量

牛肉

タンパク質は犬の体の50%を占め(水を除く)、筋肉や内臓、皮膚、骨などあらゆる組織・細胞の源になっています。ペットフードの栄養基準を決めている世界的な団体「AAFCO」(全米飼料検査官協会)によると、水分を抜いた状態のフードに対し、成犬の場合は18%以上、子犬は22%以上のタンパク質が含まれるべきとされています。

例えばPETOKOTOのオリジナルドッグフード「PETOKOTO FOODS」でも、AAFCOの基準に沿ってビーフが30%、チキンが44%、ポークが31%、フィッシュが36%含まれているため、子犬からシニアまでオールステージで食べられる総合栄養食になっています。

タンパク質は多ければ多いほど良いというわけでもありません。タンパク質について詳しく知りたい方は、関連記事もご覧ください。


Dr. Nick's Comment 犬はタンパク質の多いフードを美味しいと感じます(※)
※参照:Roberts MT, Bermingham EN, Cave NJ, et al. Macronutrient intake of dogs, self-selecting diets varying in composition offered ad libitum. J Anim Physiol Anim Nutr (Berl) 2018;102:568-575.

脂質の主な働き

2匹の柴犬

犬の脂肪は水分を除くと体の25%を占め、それによって数週間は何も食べずに生きることができます。必要以上のエネルギーを摂取すると脂肪として体内に蓄えられ、肥満になります。肥満の犬は寿命が短くなるため注意が必要です(※)

逆に不足しても病気のリスクを高めます。特に体内で合成できないオメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸などの「必須脂肪酸」は、食事から摂取する必要があります。必須脂肪酸が不足すると免疫不全や生殖問題、肝疾患、ガンなどのリスクが上がります。

PETOKOTO FOODSにもオメガ3脂肪酸を含むフィッシュオイル、亜麻仁オイルが配合されています。

Dr. Nick's Comment オメガ6脂肪酸の代表例であるリノール酸は植物のみが合成でき、犬の体内では合成できません。リノール酸が不足すると毛にツヤが無くなり、細菌やカビが増えて臭いがするようになります。
※参照:「Diet restriction and ageing in the dog: major observations over two decades」(British Journal of Nutrition)

炭水化物の主な働き

小麦畑にいる犬

犬はもともと肉を中心とした食事をしていましたが、人との共生で雑食動物へと進化し、炭水化物を効率的に消化、吸収して利用することができるようになりました(※1)。タンパク質よりも炭水化物を多く含む食事を好む犬もいます(※2)

犬は肝臓でタンパク質や脂肪を分解してエネルギーを合成していますが、炭水化物を利用することでその負担が軽減されます。また尿素窒素の生成も減るため、腎臓の負担も軽減します。

炭水化物のうち食物繊維は犬の小腸では消化することができませんが、腸内細菌の餌になって腸内環境を整え、下痢や便秘、アレルギー疾患のリスクを軽減してくれます。炭水化物や食物繊維について詳しく知りたい方は、関連記事もご覧ください。


Dr. Nick's Comment お米は炊くことで犬も消化できるようになります。サツマイモやかぼちゃ、にんじんは食物繊維を多く含み、犬の腸内環境を整えてくれます。
※参照1:Axelsson E, Ratnakumar A, Arendt ML, et al. The genomic signature of dog domestication reveals adaptation to a starch-rich diet. Nature 2013;495:360-364.
※参照2:Roberts MT, Bermingham EN, Cave NJ, et al. Macronutrient intake of dogs, self-selecting diets varying in composition offered ad libitum. J Anim Physiol Anim Nutr (Berl) 2018;102:568-575.


犬の五大栄養素と六大栄養素

果物

三大栄養素に加えて「ビタミン」「ミネラル」も生きるために欠かせないもの。それらを加えて「五大栄養素」、さらに「」を加えて「六大栄養素」と呼ばれることもあります。

ビタミンの主な働きと犬の必要量

ビタミンは視覚や神経伝達、エネルギーを生み出し、骨や細胞を作る機能を正常に働かせるために欠かせない存在です。ビタミンは脂溶性と水溶性の2種類わけられ、脂溶性は体内に蓄積しやすいため過剰摂取に注意が必要です。

種類
主な働き
必要量
ビタミンA 心臓や肺、腎臓、皮膚の正常な形成や維持に関わり、視覚機能や免疫機能をサポート 1650-82500μg
ビタミンD カルシウムとリンの吸収を促進。骨と歯をつくる 12.5-75μg
ビタミンE 抗酸化作用、紫外線障害からの保護、細胞の老化予防 33.5mg以上
ビタミンK 血液凝固、骨と歯の形成、糖尿病や認知症の予防
ビタミンB1(チアミン) 糖質からエネルギーを作り出す際の補酵素。神経の機能維持 2.25mg以上
ビタミンB2(リボフラビン) 脂質の代謝。過酸化脂質の分解。皮膚、爪、被毛の健康な発育 5.2mg以上
ナイアシン 皮膚を健康に保つ。糖質、脂質タンパク質の代謝 13.6mg以上
パントテン酸 糖質、脂質タンパク質の代謝。傷の治りを早くする 12mg以上
ビタミンB6 タンパク質の代謝、免疫、神経伝達の機能維持、皮膚を健康に保つ 1.5mg以上
ビオチン 疲労回復、糖尿病・肥満の予防、皮膚を健康に保つ
葉酸 タンパク質をつくるのをサポート。正常な赤血球の生成 0.216mg以上
ビタミンB12 造血作用。神経の健康維持 0.028mg以上
ビタミンC 抗酸化作用、エネルギー生成、鉄の吸収促進
※乾物1kg、代謝エネルギー4000kcal当たり、AAFCO栄養素基準(2016年版)の成犬維持期を参照、ビタミンA、D、Eは日本食品標準成分表の値に変換

ビタミンについて詳しく知りたい方は、関連記事もご覧ください。


ミネラルの主な働きと犬の必要量

PETOKOTO FOODSを食べるボストンテリア

ミネラルは118種類ある元素のうち、炭素・水素・窒素・酸素を除いた元素の総称で、無機質や灰分(かいぶん)と呼ばれることもあります。ミネラルはエネルギー源になりませんが、犬にとっても必要不可欠なもので食事から摂取しなければいけません。不足すれば体に不調が起きますし、摂り過ぎれば中毒症状が出る場合があります。

種類
主な働き
必要量
カルシウム 骨と歯を形成。血液や筋肉、神経の働きに関与 0.5〜1.8%
リン 骨と歯を形成。エネルギーの産生をサポートし、心臓や腎臓、神経の働きに関与 0.4〜1.6%
カリウム 細胞の浸透圧維持。血圧低下。神経や筋肉の働きに関与 0.6%以上
ナトリウム 細胞の浸透圧維持。糖質とアミノ酸の吸収、神経や筋肉の働きに関与 0.08%以上
塩素 胃酸に含まれタンパク質の消化をサポート。血液のpH調節。肝機能をサポート 0.12%以上
マグネシウム 酵素の活性化、炭水化物と脂質の代謝に関与 0.06%以上
血液中で酸素を運搬 40mg/kg以上
亜鉛 200種の酵素を構成。タンパク質合成や炭水化物代謝、発育、傷の治癒に関与 80mg/kg以上
貧血予防、免疫力向上。心臓機能、エネルギー産生に関与 7.3mg/kg以上
マンガン 窒素を尿素に変えて排泄。骨の発育に関与 5.0mg/kg以上
セレン 抗酸化酵素として過酸化物質を分解、免疫機能に関与 0.35〜2mg/kg以上
ヨウ素 甲状腺ホルモンの原料、成長促進 1.0〜11mg/kg以上
※乾物1kg、代謝エネルギー4000kcalあたり、AAFCO栄養素基準(2016年版)より成犬用を参照

ミネラルについて詳しく知りたい方は、関連記事もご覧ください。


水を飲む犬

動物の体の約60〜70%は水分で占められ、20%失うだけで死んでしまいます。体の外から摂らなければいけないという意味で、水は非常に重要な栄養素と言えます。

犬は水分を飲み水だけでなく食べ物から摂っています。体内の水分量が減ると脱水症や熱中症だけでなく、泌尿器の病気にもつながります。水を飲むのが苦手だったり寝ていることが多くなったりするシニア犬(老犬)は、水分量の多いウェットフードがオススメです。


犬にもオススメの栄養豊富な食べ物

野菜

栄養が豊富で手作りごはんの材料やおやつとして与えるのにオススメの食べ物を、野菜・果物・その他にわけて紹介します。食べ過ぎれば肥満になってしまいますので、毎日のごはんにトッピングしたりおやつとして与えたりする際は、1日の最適カロリー量の10%を超えないように注意してください。

1日の最適カロリー量は「PETOKOTO FOODS」の「フード診断(無料)で簡単に計算することができます。

無料フード診断を受ける


野菜

さつまいも
にんじん
小松菜
モロヘイヤ
さつまいも
与え方
にんじん
与え方
レシピ
小松菜
与え方
レシピ
モロヘイヤ
与え方
さつまいもは食物繊維やカリウムが豊富に含まれます。皮は食物繊維や抗酸化作用のあるポリフェノール「アントシアニン」が含まれるため、柔らかくして一緒に与えるといいでしょう。にんじんや小松菜、モロヘイヤはβカロテンを豊富に含み、犬は体内でビタミンAに変換することができます。

果物

キウイ
バナナ
いちご
キウイ
与え方
バナナ
与え方
レシピ
柿
与え方
イチゴ
与え方
キウイはカリウムやビタミンCを豊富に含み、バナナはカリウム、柿やいちごはビタミンCを豊富に含みます。

その他

うなぎ
納豆
ヨーグルト
きのこ
うなぎ
与え方

納豆
与え方
ヨーグルト
与え方
レシピ
舞茸
与え方
うなぎはビタミンAやカリウム、カルシウムを豊富に含みます。白焼きにして、小骨に注意しましょう。納豆やヨーグルトは納豆菌、乳酸菌が腸内環境を整えてくれます。納豆は食物繊維も豊富に含みます。きのこは食物繊維やビタミン、ミネラルを豊富に含み、品種ごとに特徴が異なります。

犬の年齢ごとに摂るべき栄養

犬が摂るべき栄養は年齢ごと、ライフステージごとに異なります。健康的に成長し、長生きできるように、正しい食事管理が欠かせません。犬の食事について詳しく知りたい方は、関連記事もご覧ください。


子犬期の栄養

PETOKOTOFOODSを見つめる犬と母娘

子犬期は成長や豊富な活動量のために多くのエネルギー、カロリーが必要です。タンパク質はAAFCOが成犬の18%以上より多い22%以上と規定しています。カルシウムは逆に与え過ぎも良くありません。詳しくは、カルシウムについて解説した記事もご覧ください。

適正なカロリー量は成長とともにどんどん変化します。ペットショップなどで最初に教えてもらった量を守っていると不足する場合がありますので、2週に1回を目安に「フード診断をして適正カロリーを確認するようにしてください。

なお、食糞は空腹が原因の場合もあります。成長期だから無制限に食べさせていいというわけではありませんが、子犬期は食べ過ぎよりも栄養不足に注意してください。


成犬期の栄養

成犬期になると、子犬のときのような食事への執着は少くなっていきます。選り好みする子も出てきますので、ドッグフード選びに苦労する飼い主さんも多くなるでしょう。「何も食べないよりマシ」とおやつをあげてしまう飼い主さんは注意が必要です。

おやつばかり食べていれば栄養不足になりますし、痩せ過ぎたり、太り過ぎたりもしてしまうでしょう。獣医師やドッグトレーナーにも相談して、何を食べさせるかだけでなく、どう食べさせるかも含めた食生活を考えるようにしてください。


シニア(老犬)期の栄養

シニア期の初期は、食欲が変わらないまま活動量が減ることで肥満になりがちです。さらに年を重ねると、今度は食欲が落ちて体重が減っていきます。ドライフードがだんだん食べにくくなり、水分の摂取量も減っていきます。食べやすく水分も一緒に摂れるウェットフードを中心にすることをオススメします。


犬の手作りごはんは栄養バランスが重要

犬の手作りごはん

愛犬がドッグフードを食べてくれなかったり、市販のドッグフードに不安があったりして手作りごはんを始める方は少なくありません。市販のドッグフードを食べていた犬より手作りごはんを食べていた犬のほうが長生きしたという調査もあります(※)

ただし、特別な日のごはんやちょっとしたトッピング程度であれば、手作りで問題ありませんが、PETOKOTOでは手作りごはんを毎日の食事にすることは推奨していません。犬のごはんをつくるためには「犬の栄養」を学ばなければいけないからです。

健康のために始めたことで健康を損ねては本末転倒ですから、基本は犬に必要な栄養がバランス良く配合された「総合栄養食」を選ぶようにしてください。PETOKOTO FOODSのようなフレッシュフードは、総合栄養食でありながら手作りのような新鮮さも兼ね備えています。


犬の栄養学の学び方や資格

犬の栄養学を学ぶためにオススメなのが「ペット栄養管理士」の資格を取ることです。日本ペット栄養学会が認定する民間資格で、1年かけてペットの栄養を学び、認定試験を経て資格取得となります。

資格自体は必要なくても、資格を取るための勉強が犬の栄養学を理解するための手助けになります。例年であれば日本獣医生命科学大学(東京都武蔵野市)で年3回の受講が必要でしたが、現在はコロナ禍でオンライン受講ができ、遠方にお住まいの方も参加しやすくなっています。

また、PETOKOTO FOODSのInstagramアカウント「@petokotofoods」では、獣医師とペット栄養管理士が飼い主さんからの質問にお答えするインスタライブを不定期で実施しています。ぜひフォローしてご参加ください。

まとめ

PETOKOTO FOODSとチワワ
栄養は過不足のない「バランス」が重要
ライフステージごとに必要量は異なる
手作りごはんをするなら勉強してから
犬の栄養はまだまだわかっていないことが多く、良かれと思って始めた手作りごはんが愛犬の健康を損ねてしまう可能性があります。毎日の食事は栄養バランスがしっかり計算された総合栄養食を与えるようにしてください。手作りする場合は、犬の栄養についてしっかり学んでからにしましょう。

【動画解説】ドッグフードの選び方

YouTubeのPETOKOTOチャンネルでは、獣医師の佐藤先生がドッグフードの選び方について解説した動画を公開しています。あわせてご覧ください。




気になることがあれば専門家に聞いてみよう!

食のお悩み相談会

InstagramのPETOKOTO FOODSアカウント(@petokotofoods)では、獣医師やペット栄養管理士が出演する「食のお悩み相談会」を定期開催しています。愛犬のごはんについて気になることがある方は、ぜひご参加ください。

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