使役犬ってどんな犬? 人のために働く犬の種類や仕事について紹介
身近によく見かける犬はほとんどがペットとして飼われている犬であり、人間のために働く使役犬を直接見る機会はあまりないかもしれません。日本では盲導犬をたまに見かけるくらいでしょう。人間にはない優れた能力を使って人間を助けてくれている使役犬たちは人間の命を救ってくれることさえあります。使役犬はどんな犬がいるのか、どんな仕事をしているのか、寿命についてなど、使役犬についてご紹介します。
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使役犬(しえきけん)とは

使役犬とは、人間のためには働く犬のことをいいます。高度な訓練を受けてさまざまな現場で働いています。日本では使役犬を見かけることは少なく、実際の数も欧米に比べれば少ないですが、世界には色々な場所で人間のために働く犬がたくさんいます。
英語では何ていう?
英語では使役犬のことを「working dog(ワーキング・ドッグ」といいます。意味は「働く犬」です。盲導犬は「guide dog(ガイド・ドッグ)」、警察犬は「police dog(ポリス・ドッグ」など、仕事をする内容によって呼び方も変わってきます。警察犬は「K-9(ケーナイン)」とも呼ばれます。元々は「canine 」(犬科の)で、発音が「ケーナイン」であるため、K-9と表記するようになったようです。犬と人間の歴史は使役犬から始まった

人間に忠実で高度な訓練が可能という特性があり、人間と密接な関係を築いてきた犬は古くから使役犬として活躍してきました。犬が人間と暮らすようになったのは、人間が犬の能力を利用するようになったからです。
犬の祖先は狼、もしくは狼の亜種とされています。犬は狩りをして暮らしていましたが、人間もまた狩猟をして食料を得ていました。どちらも狩猟をして生きており、犬となった狼の祖先と人間の生活圏は近かったので、犬の祖先が人間と出会うことも少なくなかったと考えられます。犬の祖先たちが人間に近づいた理由は、人間が狩った獲物から出る残飯が目的でした。
このようにして人間との距離が近くなった犬の祖先たちを人間が手懐けて飼いならすようになったのです。それが犬の祖先が人間に飼われるようになったきっかけだといわれています。人間が犬を手懐けた主な理由は、狩猟の役に立つからです。特に人間が飛び道具を使って獲物を狩るようになると、獲物を追うとともに回収する役割をする犬は重宝されるようになりました。このように人間と犬との歴史は使役犬から始まったのです。
使役犬はどんな仕事をする?

盲導犬
日本で一番よく見かけることができる使役犬は盲導犬でしょう。盲導犬は目の不自由な方の外出などを助ける犬のことです。人のたくさんいる街中も支援しながら歩かなければならないため、高度な訓練が必要です。盲導犬として訓練される犬はラブラドールレトリーバーが多いです。警察犬
盲導犬以外で日本でも見かけることができる使役犬といえば警察犬です。警察犬の仕事は犯人の遺留物から匂いをたどり、犯人逮捕の支援をするというものです。近年では犯人逮捕だけではなく、老人や子供などの行方不明者の捜索にも活躍しています。何人もの行方不明になった高齢者の方を見つけた犬が表彰されたりしています。警察犬として使われる犬の代表は、ジャーマンシェパードですが、その他にもドーベルマン、ラブラドールレトリーバーなどが使用されます。嘱託警察犬の中にはこれらの犬種の他に柴犬なども合格しています。
麻薬探知犬
麻薬の匂いをかぎつけて発見する仕事をしています。空港など海外からの荷物が多く届く場所で活躍しています。麻薬探知犬にはビーグルが使われることが多いようですが、ジャーマンシェパードやラブラドールレトリーバーもいます。牧畜犬・牧羊犬
日本で牧羊犬を見かける事はあまりありませんが、海外の遊牧が盛んな地域では現在でも活躍しています。牧羊犬として有名なのはボーダーコリーです。ウェルシュコーギーやシェットランドシープドッグなども、元々は牧畜犬です。猟犬
現在ではペットとなっている多くの犬が元々は猟犬でした。猟犬の代表格としては、アイリッシュ・セッターやイングリッシュ・ポインター、ラブラドールレトリーバー、ジャック・ラッセル・テリア、プードル、ダックスフンドなどが挙げられます。日本犬の柴犬や甲斐犬も猟犬です。セラピードッグ
病院や老人介護施設などを訪問して、入所者を癒す仕事をするのがセラピードッグです。セラピードッグの犬種は限定されていませんが、穏やかで人懐っこい犬が選ばれるようです。ファシリティドック
ファシリティドックとは病院などに長期間常駐し、入院患者の心を癒す働きをする犬のことです。セラピードッグと違うところは病院などに常駐していることと、一緒に寝たりするなど密接度がかなり高いところです。子供に抱きつかれても動じない態度が必要であり、病院で働くという観点から高度な訓練を受けなければならず、日本では数頭のみしかいません。聴導犬
聴覚障害の方の日常生活をサポートする役割を果たす犬です。聴導犬になる犬種は限定されていません。介助犬
体の不自由な方の日常生活の介助をする仕事をするのが介助犬です。介助犬は車椅子を引っ張ったり、物を持ってきたりするなど、ある程度力が必要になるので大型犬が多く、一番多く使用されるのはラブラドールレトリーバーです。災害救助犬
災害が起こった際にがれきの下などから行方不明者を探し出す仕事をします。日本では災害が多いので、活躍する場も多く、海外にも派遣されています。日本では殺処分寸前から救われ、災害救助犬になった「夢之丞(ゆめのすけ)」が有名ですね。使役犬になるのはどんな犬?

人間のために働いてくれる犬たちの多くは、大型犬が多いです。力が必要であったり、困難な現場での厳しい環境に耐えたりできるためには、力強さと体の丈夫さも必要です。さらに、賢く、従順であることも必要です。それらの条件を備えているジャーマンシェパードやラブラドールレトリーバーが使役犬として使用されることが多いです。
盲導犬やファシリティドッグは、ほぼラブラドールレトリーバーですが、必ずしも純血種の犬のみが人間のために働いているというわけではなく、夢の丞のように殺処分から救われた保護犬が使役犬となることもあります。
使役犬の寿命

働く犬たちの寿命については実ははっきりしたことは分かっていません。働く犬たちが過酷な仕事に従事することによって寿命が短くなるのではないかと案じる犬好きの人も少なくはありません。日本では一番身近な使役犬である盲導犬に対して、この疑問を感じる方が多いようです。
使役犬の中には非常に危険な現場で働いている犬たちもいます。海外のニュースなどを見ると、犯人に攻撃され警察犬が死んでしまったという悲しい事件も時折見られます。
広い原野で大規模な牧畜が行われている地域で働いている牧羊犬たちは、夜間も狼などの外敵から牧畜たちを守るために年中戸外で暮らしていることも。犬の寿命は伸びてきていますが、それは高品質の食事と過ごしやすい環境があるからこそであり、ほとんど野生に近いような暮らしをしている犬たちの寿命は長くはないかもしれません。
使役犬はかわいそう?

使役犬について、厳しい訓練や過酷な現場で働く姿にかわいそうと思う方も少なくないようです。
命を落とす犬もいる
犬の優れた嗅覚や聴覚を使って人間のために働いている使役犬は、危険な現場で働くことも少なくはありません。警察犬、爆弾探知犬、災害救助犬などは犬にとっても危険な現場です。もちろんそれらの現場で犬を働かせる場合には十分な注意が払われているはずですが、命を落としている犬たちがいるのも現実です。捨てられる猟犬
盲導犬の他に身近な使役犬といえば、猟犬です。猟犬も狩猟の際に使われる使役犬であり、ペットではありません。猟の際に山に連れて行った犬をそのまま捨ててしまったり、迷ってしまった犬を探しもせず放置したりして帰ってしまうハンターもいます。働くことに喜びと責務を感じる犬
使役犬を訓練する際は体罰を与えて訓練するようなところもいまだにあるようですが、基本は褒めて訓練します。犬がその仕事を行うのはご褒美がもらえるから、そしてハンドラーが喜んでくれるからです。そのため使役犬たちは働くことに対して喜びを感じているのです。ハンドラーとの間に確固たる信頼関係があり、喜びと自信に溢れた姿で仕事に取り組む働く犬たちの姿にはとても感動するものがあります。
まとめ

使役犬は人間の生活を支え豊かにしてくれる
使役犬になるのは大型犬が多いが、保護犬が使役犬になることもある
使役犬だから寿命が短いということは実証されていない