【獣医師執筆】子犬期(パピー)の食事|正しい量や回数、食べない場合の対処法を解説
子犬の食事は低血糖を避けるため食事回数を1日3回以上にして、子犬用の総合栄養食を与えましょう。手作りはお勧めしません。ドライフードの場合はふやかすと食べやすいです。食べない場合や食事量の注意点などもあわせて、獣医師の佐藤が解説します。
子犬の食事の基本
子犬は生後3〜4週間で母乳から離乳食や子犬用(オールステージ対応)のドッグフードへ切り替え、大人になるための栄養をしっかり摂っていく必要があります。しかし、子犬の成長は飼い主さんが思っているよりも早いことが多く、病院で「与える量の不足による痩せすぎ」を指摘する機会は少なくありません。
まずは新生児期から離乳期以降まで、フードの選び方や与え方など子犬の食事の基本を解説します。
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母乳について
哺乳期の犬にとって大切な栄養源である母乳は、高エネルギーで栄養価も高く、消化率も高い完全食品です。特に分娩直後約72時間に分泌される母乳は初乳と呼ばれます。この初乳を介して病気に対する免疫が母犬から子犬へと受け継がれます。また、初乳には子犬の腸内細菌叢(さいきんそう:腸内に生きている細菌の集団)を正常に保つ働きもあります。
したがって、初乳をこの時期に可能な限り与えることは、子犬の成長に大変重要です。初乳は、生後1週間ほどすると成熟乳になります。この成熟乳に比べて初乳に含まれるたんぱく質(ほとんどが免疫グロブリン)は約2倍でビタミンAも多く含んでいます。なお、初乳と成熟乳ともに、鉄分は不十分ですが、離乳食を摂取するようになると必要な鉄分を蓄えるようになります。
代用乳について
小型犬は平均2〜3頭の赤ちゃんを、中型犬や大型犬ですと6〜10頭の子犬を出産します。母犬が産んだ子犬の数が多いと、弱い子犬に母乳が渡らず衰弱してしまったり、低血糖症になってしまったりすることもあります。全部の子犬に母乳が行渡っているかを確認するためには、体重が適度に増加しているかを毎日確認する必要があります。その結果をみながら「新生児用代用乳で補充する」などの対応をしましょう。特定の子犬だけに代用乳を与えるのではなく、同腹犬をグループに分けて、一方のグループが母乳を飲んでいるときに、もう一方のグループには代用乳を与えるようにすると良いでしょう。
体重の増加率によっても哺乳回数は異なりますが、最初の1週間はできるだけ頻繁に与えるようにします。具体的には、「1日に10回前後」が目安になるでしょう。2週以降では1日5回ほど与えましょう。なお、新生児期は下痢をしやすいため、母乳や代用乳以外の飲み物を与えることは控えます。
離乳期の子犬(生後5週目頃〜生後2か月頃)の犬の食事
生後3〜4週ほど経つと乳歯が生えてきます。この頃になると、子犬は母犬の食べていたフードなどに興味をもつようになりますので、様子を見ながら成長期用のフードまたはオールステージ対応のフードにぬるま湯を加え、お粥状にして食べさせましょう。子犬用のフードを粥状にするにはミキサーを利用するのも良いでしょう。
離乳食を作る際、ドライフードをふやかすために熱湯を使うと、フードの栄養まで壊してしまうことがあります。使用するお湯の温度には注意をしましょう。フードを選ぶ際には必ずAAFCO基準を満たした総合栄養食と表示されているものにしましょう。
離乳後から成犬期の子犬(生後3か月頃〜1歳頃)の犬の食事
離乳後の子犬はまだまだ赤ちゃんですが、その後ぐんぐんと成長を遂げ、生後半年すると性成熟を迎える子もでてきます。幼い中にも大人びた表情を見せ、飼い主さんを驚かせる頃です。離乳後から1歳頃までは、同じ成長期のうちでも成長のスピードが異なりますので、成長過程に見合った食事内容と量を与える必要があります。
食事量
成長段階に要求される食事内容は、ドッグフードを包装してある袋に印刷してありますので必ず確認しながら与えましょう。離乳期ごろの犬が摂取するカロリー・栄養は、全体の約半分は健康維持のために、約半分は成長のために使われます。生後6か月を過ぎるころになると成長のスピードはぐっと落ちてきます。このころを過ぎると、成長のために使われるカロリー・栄養の比率が下がり、健康維持のために利用する比率が上がってきます。このような変化にあわせて、生後6か月ごろを過ぎると給与量を減らすフードもありますが、エネルギー密度は各フードによっては異なりますので、必ず与えているフードについて確認しましょう。
一方でフードの裏面に書いてある給与用は目安です。年齢や体型、行動量によって犬ごとに必要なカロリー量は異なります。毎月必ず体重を測り、カロリー量を増減するようにしましょう。1日の最適なカロリー量は、ペトコトフーズの「カロリー計算機」(無料)をご利用ください。質問に答えていただくことで、その子に最適なカロリー量を知ることができます。また、おやつを与える場合は、1日に必要なカロリー量の10%以内にしましょう。
愛犬のカロリー計算をする
食事の回数
成長が著しい時期には、たくさんの栄養素やエネルギーが必要ですが、子犬の胃は小さくまた消化機能の成長もまだ不十分です。そのため、栄養価が高く消化性の高い食事を、一日に数回に分けて与えてあげたほうが望ましいでしょう。離乳直後は犬は日に5回〜6回程度、生後5か月位までは3回くらいが理想ですが、忙しい生活を過ごす飼い主さんの場合は難しいこともあります。可能な範囲で工夫していただければ良いでしょう。食事内容の移行方法
歯がしっかりと生えてきて、だんだん犬の消化能力が整ってきますが、3か月ごろになると、ウンチの状態や目の輝き、身体の動きなど、犬の様子を見ながら、粥状から少しずつ固いものを与えるようにします。移行する際の注意点は、「ゆっくり、少しずつ」です。ふやかすお湯の量や時間を10日ほどかけて少しずつ減らすことで、犬の消化器官に負担をかけないようにします。「そろそろ一歳だな」という頃になると幼犬用のお食事から成犬用の食事に切替えるか、全年齢のオールステージ対応のフードにしましょう。
子犬に食事を与える際の注意点
低血糖
子犬は体に糖分を蓄える機能が十分に備わっていないため、食事から摂取した糖分を使い切って低血糖になることが少なくありません。低血糖になると神経症状が起こり、放置すると死に至る可能性もあります。生後3カ月までの子犬は特に要注意です。詳しくは以下の関連記事も参考にしてください。関連記事
下痢・嘔吐
下痢や嘔吐は犬でよく見られる症状ですが、成犬では一時的な不調も子犬では短時間に深刻な問題へ発展してしまう可能性があります。消化器が未発達なためちょっとしたストレスで下痢や嘔吐をすることもありますが、子犬で注意したいのは寄生虫や細菌、ウイルスなどの感染症です。以下の関連記事も参考にしてください。子犬のドッグフードはどれを選べば良い?
犬のごはんは一般的に「カリカリ」と呼ばれるドライフードが選ばれがちですが、超高温加熱で食材本来の栄養や旨味が失われてしまったり、保存性を高めるために酸化防止剤が添加されたりしています。何より、食事から水分を摂れないことは脱水によって引き起こされる病気のリスクを高めます。そのため食べるだけで水分補給になるウェットタイプのごはんがお薦めです。ただし、ウェットフードには保存料が添加されているものが多くありますので、ウェットの中でも冷凍フレッシュフードを選んでいただくのが理想的です。
よく「ウェットフードは歯周病になりやすい」と言われることもありますが、明確なエビデンスはありません。ドライフードでも歯周病になる犬はたくさんいますので、歯磨きを頑張っていただくほうがよっぽど重要です。歯磨きのやり方は以下の動画で解説していますので、参考にしてください。
食事を食べない・偏食の悩み
犬にとって食事は楽しみで待ちきれない一大イベントです。しかし、それが食べないとなると飼い主さんとしては心配してしまいますし、実際に食べずに低血糖になれば命にも関わってきます。詳しくは関連記事で解説しますが、以下のような理由が考えられます。病気で食欲が無い | 1. 病気 |
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食欲はあるが食べない | 2. 食事量が多すぎる |
3. 運動量が少ない | |
4. ごはんが美味しくない | |
5. 食事に集中できない |
どれか該当するものがないか確認してみてください。病気が関わる可能性もありますし、食べない理由が多岐にわたる場合もあります。一人で悩まず、獣医師やドッグトレーナーに相談していただければと思います。
アレルギーが心配
犬も食事でアレルギーを発症します。心配して症状がないうちからアレルギー検査をされる飼い主さんもいらっしゃいますが、検査はたくさんの食材の中から可能性の高いものを絞るために行います。陽性が出た食材を食べたからといって必ず症状が出るわけではありません。
犬のアレルギー症状は多くが顔やお腹、足などの痒み、下痢や嘔吐です。何かしら疑わしい症状が出ていない限り、積極的に検査を受ける必要はありません。陽性が出ただけで食材を避けてしまうと愛犬の食の選択肢を狭め、飼い主さんも余計な負担を増やしてしまいます。
手作りごはんを食べさせたい
近年、愛犬のために新鮮な手作りごはんを食べさせてあげたいと思う飼い主さんが増えてきました。しかし、毎日にのごはんを手作りにすることは犬の栄養学をしっかり学んだ方でないと難しく、リスクを伴うため推奨しません。愛犬のために作ったごはんで体を壊してしまっては本末転倒ですので、基本のごはんは総合栄養食にしてください。おやつであればそれほど栄養の過不足を気にしなくても大丈夫です。1日の最適カロリー量の10%以内にして食べさせてあげるといいでしょう。
もちろん犬が食べても大丈夫な食材か、調理方法に注意点がないかなどは必ず調べるようにしてください。
離乳期以降の子犬におすすめの食事
犬の食べ物は「エサ」と呼ばれていた時代から、家族の「ごはん」と呼ぶ時代へ変わりました。私たちと同じように、犬も栄養バランスの良いごはんを食べることで健康を維持することができます。ごはん選びをする際は、以下の2点を気を付けていただくといいでしょう。
1. 総合栄養食を適量与える
犬が必要とする栄養は人間と同じではありません。そこで生まれたのが「総合栄養食」と呼ばれるごはんです。おやつなど「一般食」や「副食」と呼ばれるごはんだけ食べていると体を壊してしまいますので、「総合栄養食」のごはんを選ぶようにしましょう。総合栄養食を食べていても与える量が少なければ痩せてしまいますし、多ければ太ってしまいます。パッケージに書かれた食事量は目安ですので、ボディ・コンディション・スコアで「3」の「理想体型」を維持できる量を与えるようにしてください。
2. 添加物の少ない新鮮なごはんを選ぶ
犬のごはんと聞いて「カリカリ」と呼ばれる茶色い豆粒を想像される方も多いと思いますが、正しくは「ドライフード」と呼ばれる加工食品です。保存しやすく食いつきも良いことから犬のごはんとして一般的になりましたが、高温加熱によって食材本来の栄養が失われ、添加物も多く含まれることから見直しが進んでいます。新鮮な野菜を犬や猫に与え続けることで、様々ながんに罹るリスクを軽減することが研究で判明していたり、市販のドライフードを製造する工程の1つである高温加熱処理が、タンパク質の品質劣化を招き、熱に弱いビタミンを破壊し、さらには発がん性物質を生成してしまうことが、研究により判明しています。そこで生まれたのが素材本来の旨味や香りが楽しめ、余計な添加物も入っていない「フレッシュフード」と呼ばれる新鮮なごはんです。ペトコトフーズもその一つで、子犬からシニア犬(老犬)まで毎日のごはんにすることができます。もちろん総合栄養食で、主食としても、トッピングとしてもご利用いただけます。
実際に従来のドライタイプのドッグフードよりも、水分がより多く含まれた手作り品質のごはんを食べている犬の方が寿命が3年も長くなることが研究により明らかになっています。新鮮で美味しく、健康なごはんを選ぶことが長生きできる秘訣です。
ペトコトフーズの公式HPを見る
まとめ
子犬は低血糖のリスクが高い
こまめに体重を量り食事量の不足に注意
ドライフードよウェットフードがお薦め
手作りごはんは犬の栄養学を学んでから
専門家相談のインスタライブ開催中!
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