【獣医師執筆】犬は小麦粉を食べても大丈夫!栄養成分や与える際の注意点を解説

【獣医師執筆】犬は小麦粉を食べても大丈夫!栄養成分や与える際の注意点を解説

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小麦粉は犬が食べても大丈夫な食材で、ドッグフードや犬用おやつのクッキーやパンに使われていることもあり、消化に問題はありません。アレルギーで下痢になる犬もいますが、飛び抜けてリスクが高い食材ではありません。犬が小麦粉を食べるメリットやデメリット、米粉など代用食材について解説します。

犬は小麦粉を食べても大丈夫

小麦

小麦粉は穀物(グレイン)の一種である小麦を製粉したもので、犬が食べても大丈夫な食材です。最近はグレインを含まない「グレインフリー」をうたったドッグフードが流行っていますが、アレルギー症状やグルテン過敏症を起こす犬でなければ、避けなければいけない科学的根拠はありません

一方で、犬は総合栄養食のごはんを食べていれば、それ以外は何も食べる必要はありません。そのため、おやつとして与える前提での話となります。

小麦アレルギーの誤解

グレインフリーのドッグフードが注目されるようになった理由の一つに小麦アレルギーへの不安があるようです。小麦はアレルギーを起こしやすいと誤解してしまう主な理由として、以下の2つが挙げられます。

  • 誤解1. 陽性=食べてはいけない
  • 誤解2. 犬の小麦アレルギーは多い

誤解1. 陽性=食べてはいけない

よく「アレルギー検査で陽性だったから◯◯は食べさせられない」と考える飼い主さんがいますが、「陽性=アレルゲン」ではありませんので、実際にアレルギー症状が出ていなければ避ける必要はありません。食の選択肢を狭めることは飼い主さんにも犬にもストレスになりますし、不必要な除去はアレルギー症状を悪化させる可能性があります。

アレルギー検査について、詳しくは関連記事もご覧ください。



※参照:「Does my pet have a food allergy?」(American College of Veterinary Nutrition)


誤解2. 犬の小麦アレルギーは多い

小麦はアレルギーを起こしやすいイメージを持つ飼い主さんも少なくありませんが、それも誤解です。ドイツ・ミュンヘン大学の調査では、犬のアレルゲン食材として報告が多かったのは牛肉、乳製品、鶏肉と続きました。小麦は4番目です。

犬のアレルゲン食材として報告が多かった食材

小麦アレルギーは少ないとまでは言えませんが、アレルギー症状が出ていない小麦アレルギーを気にするのなら牛肉、乳製品、鶏肉も同様に避けなければいけなくなってしまいます。グレインフリーのドッグフードは、穀物を食べるとアレルギー症状が出る犬のためのフードなのです。




グルテン過敏症とは

グレインと似た言葉に「グルテン」(gluten)がありますが、グルテンは小麦に含まれる「グルテニン」と「グリアジン」というタンパク質が絡み合ってできたものです。パンやうどんをこねるとモチモチした生地ができるのは、グルテンができているためです。

人では「セリアック病」という遺伝性のグルテン不耐症を起こすことがあり、犬でもアイリッシュセッターがセリアック病と似た「グルテン過敏症」を起こすことが知られています。アイリッシュセッターの飼い主さんは注意してください。

犬は小麦粉を消化できる?

グレインフリーのドッグフードが流行ったもう一つの理由として、「犬は肉食だったから小麦粉を消化するのが苦手」という誤解があります。確かにオオカミを祖先に持つ犬はもともと肉食でしたから(※)、同じ雑食でも人と比べれば「小麦粉を消化するのが苦手」です。

しかし、犬は進化の過程で小麦粉を消化する能力を獲得しました。進化ですから、犬にとって小麦粉の消化はメリットがあることでした。

※ 最近の研究で、犬の祖先であるオオカミは肉だけでなく植物を主食にすることもあることがわかってきました。参照:「オオカミの多彩な食生活、研究者も驚く」(National Geographic)

犬が小麦粉を食べるメリット

犬は肉を食べると体内でタンパク質をアミノ酸に分解し、肝臓でグルコース、尿素窒素、そしてエネルギーに変換します。尿素窒素はタンパク質の老廃物で、腎臓でろ過して排出されます。つまり、肉を食べれば食べるほど肝臓や腎臓に負担がかかります。

一方、犬が小麦粉を食べると体内でデンプン炭水化物が麦芽糖に分解され、腸で麦芽糖がブドウ糖にされてエネルギーとして利用されます。タンパク質とは異なる経路でエネルギーになるため、炭水化物を摂ることで肝臓や腎臓の負担を軽減することにつながったのです。


犬が小麦粉を食べるデメリット

ドッグフードに含まれる小麦粉のイメージがあまり良くない原因の一つに、「安いドッグフードにかさ増し食材として使われている」ということが挙げられます。特にドライフードはクッキーのように成形する過程でツナギとして小麦粉を利用することがありますが、その割合を多くすることで材料費を安くしているのです。

安いから悪いフード、高いから良いフードとは言えませんが、安いフードには必ず「安い理由」があります。例えばパッケージの原材料表示の最初に小麦粉と書かれているようなドッグフードはお薦めしません。いくら「犬は雑食で小麦粉を消化できる」と言っても、肉食寄りの雑食です。必ず肉類から始まるフードを選びましょう。

その他、デメリットではありませんが犬が小麦粉を食べる際の注意点を次項で解説します。


パンやうどんなど加工品は食べても大丈夫?

パン

パン

大好きな食パンや菓子パンを一切れ、愛犬にもおすそわけ、といいたいところですが、市販されている人間用のパンを犬に与えることはやめておきましょう。私たちが口にするパンは、小麦粉のほか、添加物や食塩などが含まれています。中には、玉ねぎやスパイスなど犬が食べると危険な食材が使われていることもあります。犬にパンを与えるなら、犬用のパンを用意しましょう。


うどん

アレルギーや与え方に気を付ければ、犬にうどんを食べさせても大丈夫です。しかし、うどんの原材料は、小麦粉(薄力粉)、水、塩とシンプルで、犬に必要な栄養素がほとんど含まれていません。犬にうどんを与えるときは主食としてではなく、あくまでもおやつ程度に味付けしていないものを少量だけにしておきましょう。


クッキー

私たちが口にするクッキーには、小麦粉のほか、卵やバター、塩、砂糖などさまざまな食材が使われています。卵やバターは小麦粉同様、アレルギーに注意する必要があり、またバターや砂糖は肥満の原因になるため、人用のクッキーを犬に与えることはやめておきましょう。クッキーを犬に与えるときは、犬用のクッキーを用意しましょう。


片栗粉や米粉も少量ならOK

同じ粉でも、片栗粉や米粉は犬に与えても良いのでしょうか。片栗粉はジャガイモのでんぷんから、米粉はその名の通り米を製粉したものです。もちろん、どちらもアレルギーなどの心配はあり、与え過ぎはNGですが、少量であれば犬が食べても問題ありません。小麦粉にアレルギーがある犬に手作りおやつを作りたいとき、小麦粉の代わりに片栗粉や米粉を使うのも一つの手です。


まとめ

小麦粉
アレルギー・肥満の原因となるため、犬に与えるのはおすすめできない
犬用のパンやクッキーなどを、少量与える程度にして
ドッグフードの材料にも使われる小麦粉は、少量であれば犬が食べても問題ない食材です。とはいえ、小麦粉は本来、犬が必要な食べ物ではなく、またアレルギーなどの危険もあるため、積極的に犬に食べさせる必要はありません。

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