犬と人の「暮らしやすい」を考えてみる【犬と暮らす住まい】

近年、人と犬の関りは大きく変わり、仕事のパートナーから新たに家族としての役割を持つようになりました。さらに番犬として家の外で生活し、散歩のときだけ触れ合うという関係から、家の中でほとんどの時間を一緒に過ごし、家族として生活を共にする関係へと変化してきました。新連載「犬と暮らす住まい」では、これから犬を飼おうとしている人、すでに飼っている人に、より楽しい愛犬ライフを送っていただきたいという思いから、「住まい」にフォーカスして、建築プランナー株式会社の池田が情報をお届けしていきます。

犬との生活

家族団らん

犬を飼おうと決めたとき、みんな思うことは同じです。「責任を持って飼うことができるか」「お世話やしつけはできるのか」「健康に育てたい」「長生きさせてあげたい」「ケガや病気にさせたくない」「社会に認められるよい子にしたい」「家族の一員として大切に育てたい」などなど……。その気持ちは人間の親がわが子に持つ愛情と同じものです。「自分が育てているのだから悪い犬になるはずがない」と思われる方も多くいらっしゃいます。よい子に育てるという気持ちは愛犬の存在自体に責任を持つということにもつながりますが、正しい知識を持って子育てを行う必要があります。

自分のライフスタイルや生活環境に合わせて犬種を選ぶこと、もしくは好きな犬種のために適切な環境を整えてあげることが大切です。

犬種の特徴を知って考える住環境

犬は昔から、人間の生活の中で活躍するために品種改良が繰り返されてきたという経緯から、犬種によって性格や行動面にそれぞれ特徴があります。例えば、牧羊犬は他の犬種よりもかなり多くの運動量を必要としますし、小型犬であっても活動性の高いジャックラッセルテリアミニチュアピンシャーなどは、高齢者だけの家庭には不向きです。
書い 犬種の特徴を把握しておくことは、将来の問題行動を予防するために大切なことです。

犬と暮らす上で人の住みやすい家とは

あくびをする犬
人も愛犬もストレスなく、快適に暮らすことができる環境を作ることが大切です。愛犬との生活の動線や収納などに配慮した住まいづくりを考え、お世話が楽にできて掃除もしやすい住まいなら人も愛犬も快適に暮らせます。

例えば、愛犬のためには床は滑りにくい柔らかいじゅうたんやカーペットの方が望ましいですが、メンテナンスは大変になります。レトリバー等のよだれが多い犬種を飼われる方には向きませんし、掃除をこまめにされない方にも不向きです。また、ストレスを感じポイントや負担に思うポイントは愛犬との暮らし方やスタイルによって、犬種・個性・頭数によっても変わってきます。その中での共通のポイントを紹介します。

Point1 人が集まるリビングは清潔に

家族が集うリビングで愛犬と一緒に暮らしたいと望む人が増えています。家族がいつもいる部屋でもあるので、汚れたらすぐ拭けるような仕上げ材を採用したり、匂いを吸着するような仕上げ材を使用するなど、清潔感への配慮をすることが大切です。

Point2 隠す収納で誤飲防止

愛犬の1日の行動と生活エリアを考えそれぞれの場所に収納を確保すれば、すっきり&快適です。物が外に出ていないすっきりと広々とした空間なら、誤飲やケガの危険回避もでき、愛犬ものびのび遊べます。

Point3 散歩用品は玄関にまとめて

散歩がスムーズにできるように、散歩用品をまとめて置ける収納が玄関周りにあると便利です。散歩帰りの汚れをさっと洗い流せる水洗設備や足を拭ける場所があると良いでしょう。

Point4 近隣対策で問題行動も予防

近隣への配慮も大切になってきますので、外部からのや動きに反応して吠えないように、防音や目隠しなどの工夫をしましょう。また、抜け毛やニオイの飛散などにも注意しましょう。



犬が住みやすい家とは

絨毯の上の犬

犬種や愛犬の個性を知り、ストレスを感じずに安心して、落ち着ける環境で、ケガをしにくい住まい環境づくりが大切です。

Point1 滑りにくい床と段差の少ない環境

滑りやすい床や段差は、滑って転んだり、足腰への負担が蓄積し、重大な疾患を招くこともあります。中には歩くことができなくなってしまう犬もいます。滑りにくい床にし、段差はなるべく解消し、人にも犬にもやさしい住まいにしましょう。


Point2 危険のないスペースで遊ばせてあげる

人のためにつくられた家には、犬にとって危険が伴う場所も数多くあります。高所からの転落や家具の転倒、物の落下、ドアに挟まれるといった危険な場所は少しの工夫でリスクを減らすことができます。

一方、家具の角や留め具など鋭利なもので切ってしまうことや、暖房機器具などによるヤケドなどは、犬を遊ばせる環境を整える必要があります。特に電気コードのいたずらは感電する危険もあります。大切なのは、危険な場所やものに近づかせないことと、危険なものは犬が届くところには置かないということです。

Point3 拾い食い対策

愛犬のいたずら心をそそるキッチンやごみ箱は要注意です。また、口に入れてしまう恐れのある小物などは、目に入る場所に出しておかないようにしましょう。誤飲を起こさないように、愛犬の立ち入りを制限する工夫をしたり、収納場所を決めた計画をしてしっかり収納しましょう。


Point4 暑さ寒さを選べる環境

皮膚のトラブルをはじめ、愛犬が健康に暮らすためには温度・湿度環境に注意してあげることが大切です。湿度の高い環境や乾燥し過ぎにも注意です。暑い時期には熱中症になる危険もあります。犬種によって適した温度湿度は違います。その犬種がもともと暮らしていた場所をイメージすることが一つの目安になります。空気環境は皮膚トラブルの元にもなるので気を付けましょう。



人のライフステージを考える

赤ちゃんがいる場所と犬がいる場所

私たちがペットを家族に迎えるタイミングはさまざまです。「一人暮らしで」「カップルで」「結婚して」「子どもが生まれて」「子どもが独立して」。犬を迎えるタイミングによって、「犬が迎える生活」にも変化が生まれます。

お父さんとお母さんとの2人と1匹という群れから、子どもが生まれ3人と1匹という群れになったとき、犬はどんな反応をするのでしょうか。生まれたばかりの赤ちゃんと愛犬との距離感というものは、飼い主さんが考えてあげなければなりません。また、子どもが独立してから子犬を飼った場合にはそれから約20年間、生活を共にするということです。飼い主さん自身も老いが始まりますし、犬にも老いは来ます。しっかりと最後まで面倒を見ることができるかどうか、先の生活の変化のことも視野に入れた住環境を考えてみることが大切です。

赤ちゃんと愛犬が一緒に住むとき

今まで赤ちゃんと触れ合う機会がなかった愛犬にとって、急に現れた赤ちゃんは今までの生活と違う違和感でしょうし、どう接して良いか分からず困惑することもあるでしょう。愛犬が新しい生活にストレスをためすぎないように配慮してあげることが大切ですし、免疫力の無い赤ちゃんにとって衛生環境は特に気を付けたいことです。

犬にとっても、赤ちゃんにとってもお互いのスペースを確保してあげることでストレスやケガなどトラブルのリスクを減らしてあげることができます。犬には安心できるケージや自由に遊べるプレイルーム用意してあげましょう。犬にとってケージは「誰にも干渉されない、安全な場所」という認識をさます。そうすることにより犬にストレスを与えず、少しずつ子供との距離感を理解させていくことができます。

また、子ども部屋には愛犬は入れないなど、犬を入れない部屋を作っておくことも大切です。赤ちゃんは寝ている時間が長いため床に落ちているペットの毛を吸いやすく、1歳から2歳には誤飲の危険性も高まります。犬と子どもを触れ合わせるときには、必ず大人が付いてあげることが前提ですが、住み分けといった家の工夫でトラブルのリスクを下げることができ、暮らしが楽になることもあります。


老後のことも考えた住まい

高齢化社会の進むことが懸念される現在の日本では、高齢者のみの世帯でペットを飼うという状況も増えていきます。飼い始めたときは自分も元気でしたが歳をとり愛犬の散歩をするのが大変になってしまったということも多く聞きます。まずは、飼う前に「どんな犬種であるか」「終生飼育ができるか」ということをしっかりと確認する必要があります。それでも、体の不調により散歩が長くできなくなってしまったり、ちょっとした段差でつまずいたりする場合には、住まいを見直すことでワンちゃんにとっても飼い主さんにとっても生活しやすくすることができます。

お散歩に長く行けないのであれば、お庭やリビングスペースで遊ばせてあげることで運動不足解消になりますし、飼い主さんとのコミュニケーションもしっかり取ることができます。小さな段差はコルクマットやジョイントマットを敷くことで段差を無くすことができますし、ワンちゃんにとっても滑りにくくなりヘルニアや関節炎の予防にもなります。大きな段差がある場所では、壁に手すりを付けることで転倒防止になります。とは言え、なんらかの理由によりペットの世話が困難になったときにどうするのか。家族や知人で変わりに面倒を見てくれる人がいるのか、誰に頼むのかという事も考えておきましょう。



犬のライフステージを考える

犬のいるスペース

愛犬を飼う上で知っておきたいのは、犬は社会を形成し、その中の自分のポジションがしっかり決まっていることを好む動物だということです。大げさなようですが、それを認識して犬を迎え世話をしてあげると、さまざまなトラブルを避けることができます。

リビングから見通せる場所にメンテナンスしやすい床材を使った愛犬スペースを作り、いつでも様子を伺えるようにするのも大切です。何かあった時にすぐに対応できる環境づくりを意識しましょうようにしましょう。

子犬期のポイント

子犬はそれまでいた母犬や兄弟犬とでできた世界から引き離され、不安と寂しい気持ちでいます。新しい飼い主の家でも自分が守られ、居場所が確保されていると確認できることが大切です。そのためにも子犬の居場所を決め、必要な食事や水を提供すること、いいことは褒め、いけないことは叱る。こうした飼い主の行動から、常に自分が見守られていることや、新しく参加した社会を確認できるようになるのです。

子犬期には「ケージでの生活」と「人に干渉されるされる生活」に慣れさせてあげる必要があります。「ケージを置く場所」「人と遊ぶスペース」「排泄の場所」は大切な環境設定です。

  • 人の出入りが激しい玄関や扉付近
  • 夜遅くまで明かりが付いているリビングやテレビの周り
  • エアコンの風を直接受ける位置

これらはケージを置く場所として適切とはいえません。適切な場所とは、飼い主さんを近くに感じられるが、時には静かで落ち着けるところです。犬は巣穴で暮らしていた歴史がありますので、その習性を生かして階段下や物置の下のデッドスペースを利用することもおすすめです。物置の下にケージを置けるのであれば、物置には犬用のグッズを閉まっておくことができ、掃除やケアもしやすくなります。

老犬の介護の問題と家での工夫

実は人間の老化と犬の老化現象は似ていて、消化機能や代謝量が低下し、体を維持するのに必要なカロリーや運動量、睡眠などが自然と変わってきます。愛犬がケガをしないように生活環境を安全に整え、安心して幸せな共同生活を続けていける環境をつくりましょう。

特に老犬の場合には、人と同じように視力や聴力の低下、足腰が弱くなり介護が必要になってきます。障害物の少ない動線作りや、つまずかないように家の中の段差をなるべくなくし、滑りやすいフローリングの床には毛足の短いカーペットやコルクマットを敷いたりしてあげることが大切です。カーペットでは、毛足が輪っか状になっている「ループパイル」と毛足が切りそろえられた「カットパイル」がありますが、ワンちゃんの爪が引っかからない毛足の短いカットパイルがおすすめです。

子犬や成犬時には、ハウストイレの位置が遠かったり、食事の場所が離れていたりしていたかもしれませんが、足腰が悪くなって来る前、目が見えているうちにある程度スペースを限定してあげることも大切な環境作りです。愛犬自身でできることをさせてあげられる工夫をすることで、粗相などで気持ちを乱すこともなくなりますし、介護も楽になります。階段などの大きな段差がある場所では転落、転倒の危険がありますので、ゲートを付けるなど近づかないための工夫をしてあげましょう。

また、老犬になると体の変化を感じて不安になり、家族がそばにいないと寂しがるようになります。愛犬のちょっとした変化を見逃さないためにも、お互いに気配を感じられる環境にしてあげることが大切です。体温の調節機能も低下しますので、室外犬も玄関やリビングなど室内での生活の時間を増やしてあげるようにしましょう。老犬と上手に暮らすためには、その時々の年齢や健康状態、運動量に合わせて、最適な生活環境を飼い主さんが整えてあげることが理想です。そして病気について知り、愛犬がいつもと異なる行動を取ったときには、いち早く気付いて動物病院に連れて行ってあげられることが大切です。


まずは見直すことから

犬のいるリビング

時代が変わり家族の一員として犬を飼う人が増えました。しかし、犬は人とは違う特性、習性を持ちその寿命も人よりも短いです。理想とする生活環境は同じとは言えません。愛犬の無駄吠えトイレが覚えられないなどの問題行動はもしかしたら、「しつけ」ではなく「環境」が大きく影響していることも考えられます。

まずは、「飼い主さんの生活の仕方」と「愛犬の生活の仕方」を意識して監察してみて、環境が適切かどうか見直すことから始めてみましょう。「犬だけが暮らしやすい家」「人だけが暮らしやすい家」ではなく、愛犬の個性や犬種の特徴を知り、飼い主さんのライフスタイルに合わせて快適な生活ができる家づくりを考えましょう。

ペット可賃貸をSUUMOで探す

マイホームをSUUMOで探す