犬の皮膚病|種類ごとの症状や治し方を獣医師が解説

犬の皮膚病|種類ごとの症状や治し方を獣医師が解説

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犬の皮膚病には、膿皮症やマラセチア、アレルギー性などさまざまな病気があり、中には飼い主さんにうつるものもあります。毛が抜ける、かさぶたができる、皮膚が赤い、体が臭いなど似た症状が多く、原因を探って薬やシャンプーなど適切な治し方をしないと簡単には治らないことが少なくありません。今回は犬でよく見られる皮膚病について、獣医師の佐藤が解説します。

犬の皮膚病の種類

背中が脱毛したチワワ

犬の皮膚病は真菌(カビ)やダニ、アレルギーなどが原因で起こります。代表的な病気とその症状と治療法についてまとめました。それぞれ詳しくは関連記事をご覧ください。

病名
症状
治し方
関連記事
膿皮症 皮膚の赤み、痒み、湿疹、脱毛、フケ 薬用シャンプー、抗真菌薬の外用、抗真菌薬の内服、基礎疾患の治療 関連記事
マラセチア皮膚炎 皮膚の赤み、痒み、脱毛、臭い、色素沈着、苔癬化、脂漏症 薬用シャンプー、抗真菌薬の外用、抗真菌薬の内服、基礎疾患の治療 関連記事
皮膚糸状菌症 フケ、脱毛、皮膚の赤み 被毛のカット、薬用シャンプー、抗真菌薬の外用、抗真菌薬の内服 関連記事
ニキビダニ(毛包虫) 皮膚の赤み、脱毛、フケ 薬用シャンプー、駆虫薬、基礎疾患の治療 関連記事
アトピー性皮膚炎 皮膚の赤み、湿疹、苔癬化 アレルゲンの除去、薬用シャンプー、ステロイド、減感作療法 関連記事
疥癬 かさぶた、湿疹、痒み、皮膚の赤み、フケ 駆虫薬、薬用シャンプー 関連記事
ノミアレルギー性皮膚炎 痒み、湿疹 駆虫薬、ステロイド
食物アレルギー 痒み、下痢 アレルゲンの除去
皮膚型リンパ腫 痒み、皮膚の赤み、フケ、湿疹、こぶ、びらん 抗がん剤
天疱瘡 皮膚の赤み、かさぶた、フケ ステロイド、免疫抑制剤

症状ごとに考えられる犬の皮膚病

フレブル

皮膚病では皮膚の赤みや湿疹などの症状が見られますが、病気ごとに痒みの有無や脱毛の有無などが異なります。目安として症状ごとに考えられる病気を紹介します。

皮膚に赤みがある場合に考えられる皮膚病

皮膚が赤くなる原因として、細菌や真菌などの感染症、アトピーや食事、ノミなどのアレルギー症状、腫瘍やストレス、免疫疾患などが考えられます。詳しくは関連記事をご覧ください。

  • 感染症(細菌、真菌、寄生虫)
  • アレルギー(食物、アトピー、ノミ)
  • 心因性(ストレス)
  • 内出血
  • 貧血
  • 腫瘍
  • 免疫疾患(天疱瘡)


痒みがある場合に考えられる皮膚病

痒みがある場合に考えられる原因として以下の原因が考えられます。痒みは犬のストレスになり、自分で掻いたり舐めたりしてしまうことで二次感染を引き起こします。原因を特定して痒みを適切にコントロールしていくことが重要になりますので、できるだけ早く病院に行き、獣医師と治療計画を相談するようにしてください。

  • 膿皮症
  • マラセチア皮膚炎
  • ノミアレルギー性皮膚炎
  • ニキビダニ(毛包虫)症
  • 疥癬
  • アトピー性皮膚炎
  • 食物アレルギー
  • 皮膚の腫瘍(皮膚リンパ腫)


湿疹がある場合に考えられる皮膚病

診察を受けるジャックラッセルテリア

湿疹(しっしん)は、皮膚にできる発疹(ほっしん)のうち痒みやヒリヒリ感を伴う炎症のことです。湿疹がある場合に考えられる原因として以下の原因が挙げられます。それぞれの治療法など詳しくは関連記事をご覧ください。

  • 膿皮症
  • アトピー性皮膚炎
  • 細菌以外の感染症(ウイルス、真菌)
  • 寄生虫感染(ノミ、ダニ)
  • 食事性アレルギー
  • 接触性アレルギー性皮膚炎(シャンプー剤や薬剤などの化学物質、植物や花粉、プラスチックなど)


毛が抜ける場合に考えられる皮膚病

犬の毛は換毛期になれば抜けますが、局所的に抜ける場合は病気の可能性があります。考えられる原因として以下の原因が挙げられます。それぞれの治療法など詳しくは関連記事をご覧ください。

  • 膿皮症
  • 感染症(皮膚糸状菌症、疥癬、ノミなど)
  • ホルモン異常(クッシング症候群、甲状腺機能低下症など)
  • アレルギー(食事、アトピー)
  • ニキビダニ症
  • ストレス
  • アロペシアX


指間炎で考えられる皮膚病

指間炎(指間皮膚炎)は、犬の指や肉球の間に炎症が起き、赤くなったり腫れたりする病気です。悪化すると血や膿が溜まってコブ状になる場合もあります。考えられる原因として以下の原因が挙げられます。詳しくは関連記事をご覧ください。

  • 感染症(真菌、細菌)
  • アレルギー(食事、アトピー)
  • 外傷
  • 免疫性疾患
  • 歩き方
  • 心因性


脂漏症で考えられる皮膚病

犬の脂漏症は脂漏性皮膚炎とも呼ばれ、皮膚が乾燥したり脂っぽくなったりして激しいかゆみや皮膚の赤み、ベタつき、赤み、フケ、体臭、かさぶた、脱毛、発疹などが生じた状態のことです。考えられる原因として以下の原因が挙げられます。それぞれの治療法など詳しくは関連記事をご覧ください。

  • 感染症(マラセチア、皮膚糸状菌症、細菌、寄生虫など)
  • ホルモン異常(クッシング症候群、甲状腺機能低下症など)
  • アレルギー(食事、アトピー)
  • 自己免疫疾患(天疱瘡、毛皮脂腺炎、エリテマトーデス)
  • 栄養不足(ビタミンA、亜鉛)


犬の皮膚病は人にうつる?

膝の上で仰向けになる犬

犬の皮膚糸状菌症や疥癬は、人にうつる人獣共通感染症として代表的です。皮膚糸状菌症は人では水虫と診断されます。疥癬(イヌヒゼンダニ)も人にうつる可能性があり、一時的に痒みが起こります。一方、マラセチアやニキビダニは犬と人で原因となる種類が異なるため、通常はうつりません。

ただし、通常は犬から人にうつらない病気でも免疫力が下がっている人にはうつる可能性があり、実際にマラセチアやニキビダニは人にうつった事例が非常にまれなケースとして報告されています。皮膚病に限らず、犬から人にうつる病気は少なくありません。

お互いに健康なときでもキスをするなど不衛生な接触は避けましょう。犬が皮膚病になっている場合や、人の免疫力が下がっている場合は、こまめに手指の消毒を行うことで感染リスクを下げることができます。


まとめ

ヨークシャーテリア
皮膚病はカビやダニ、アレルギーなどで起こる
痒みや皮膚の赤み、湿疹など似た症状が多い
基礎疾患が要因になっていることが多い
皮膚や被毛の衛生環境を保つことが重要
犬の皮膚病は動物病院でもよく見る病気です。特に痒みは犬にとってストレスとなり、自傷することで二次感染につながってしまいます。なかなか治らないことも少なくありませんので、早めにご相談いただき獣医師と適切な治療計画を立てていくことが大切です。