犬がぐったりして動かない場合の対処法を獣医師が解説
いつも元気な愛犬が急にぐったりして元気がなく寝てばかりいたら、飼い主さんは心配になってしまうと思います。単に疲れておとなしいだけかもしれませんが、病気によるだるさや痛みで体が動かない可能性もあります。緊急性が高い場合は下痢や嘔吐・食欲の有無など他にも変化があるはずです。獣医師の佐藤がぐったりして動かない場合の対処法を解説します。
犬がぐったりしているときに考えられる病気
愛犬がぐったしている時、様子見をしていいのか病院に連れていくべきなのか迷うと思います。まずは大好きなおやつやおもちゃに反応するか確かめてみてください。いつも通り立ち上がって近寄るのであれば、問題はないか、あっても軽度の問題かもしれません。
目で追ったり起き上がろうとしたりするものの近づこうとしない場合は、体に問題が起きて動くのがつらい可能性があります。全く興味を示さない場合は重度の問題が起きている可能性がありますので要注意です。
犬がぐったりしている場合に考えられる病気として、全身への負担がある感染症、貧血、心臓病などから単一臓器による強い炎症(膵炎、肝臓病、腫瘍、心臓病、感染症、糖尿病、低血糖症など)などが挙げられます。
ただし、「ぐったりしている」「元気がない」「ずっと寝ている」「無気力/無関心」といった反応はあらゆる病気で見られる可能性があります。とにかく急を要すること、重症度が高い可能性があることをご理解いただく必要があります。
緊急性の高い「ぐったり」以外の症状
緊急性が高い場合はぐったり以外にもいつもと違う様子が見られるはずです。以下の表に主な症状の緊急度と対処法をまとめましたので、確認してください。症状 | 緊急性 | 対処 | 関連記事 |
---|---|---|---|
呼吸が速い/息が荒い | 高 | すぐに病院へ | 関連記事 |
体温が低い | 高・中 | 体温が上がらない場合はすぐに病院へ | 関連記事 |
発作/痙攣 | 高・中 | 初めての場合は早めに病院へ | 関連記事 |
食欲不振 | 高・中 | 2日食べない/水も飲まない場合は早めに病院へ | 関連記事 |
血尿 | 高・中・低 | 早めに病院へ | 関連記事 |
血便 | 高・中・低 | 早めに病院へ | |
下痢 | 高・中・低 | 繰り返す場合は病院へ | 関連記事 |
嘔吐/よだれ | 高・中・低 | 繰り返す場合は病院へ | 関連記事 |
熱がある | 中・低 | 他にも異変がある場合は病院へ | 関連記事 |
震え | 中・低 | 他にも異変がある場合は病院へ | 関連記事 |
他にも前足を伸ばして胸を床につけ、お尻を突き上げる「お祈りポーズ」は膵炎の犬が具合が悪い時にする寝方です。表で挙げた症状に限らず、いつもと違う様子が継続して見られる場合や事故、誤飲・誤食など原因に心当たりがある場合はなるべく早く動物病院へ行くようにしてください。
緊急性の高い「犬がぐったりする原因」
犬がぐったりしている場合に考えられる原因のうち、緊急性の高いものを5つ解説します。緊急性の高い原因はこれだけではありませんので、あくまで代表例と考えてください。
1. 低血糖
犬の低血糖は血液中のブドウ糖が減少して起こる症状です。子犬やトイプードルなどの小型犬に起こりやすく、シニア犬(老犬)の場合は腫瘍や臓器の疾患などの病気が原因になっている場合もあります。放っておくと震えや痙攣を起こし、危険な状態になる可能性があります。詳しくは以下の関連記事をご覧ください。関連記事
2. 中毒
急に嘔吐や下痢を繰り返す場合は、有毒なものを食べた可能性があります。代表的なものとしてブドウやタマネギ、チョコレート、ニンニクなどが挙げられます。他にも人間の薬や洗剤などの薬品、散歩中に蜂に刺されたりヘビに噛まれたりして中毒症状が起きます。疑いがある場合はすぐに動物病院へ行くようにしてください。3. 熱中症
熱中症は6月から増え始めて7月、8月に多くなります。外出時になりやすいと思われがちですが、室内や車内でも起こる可能性があります。重度になると死に至る可能性があり、体温が40〜43℃になると非常に危険な状態と言えます。すぐに動物病院へ行くようにしてください。【動画解説】犬の熱中症
YouTubeのPETOKOTOチャンネルでは、獣医師の佐藤先生が熱中症について解説した動画を公開しています。あわせてご覧ください。PETOKOTOチャンネルを見る
4. 骨折
骨折はトイプードルやチワワなどの小型犬、ミニピンやイタグレなど足が細い犬種でよく見られ、特にシニア犬(老犬)が痛みで動けない可能性があり注意が必要です。子犬や成犬でも交通事故や落下で肋骨や骨盤を骨折し、内臓にダメージを受けてぐったりしている場合は非常に危険な状態です。5. アナフィラキシーショック
狂犬病や混合ワクチンを摂取した直後、数分から数十分で見られる副反応として、まれにアナフィラキシーショックが起きる可能性があります。動物病院でも摂取後に様子を見ますが、帰宅後に急変したときのため午前中に打つことが推奨されています。アナフィラキシーショックは蜂やヘビの毒で起こる場合もあります。年齢別に考えられる犬がぐったりしている原因
犬がぐったりする原因は年齢によっても異なります。大きく子犬期、成犬期、シニア犬(老犬)の3つにわけて考えられる原因を解説します。
子犬期
子犬で多いのは低血糖や感染症、誤飲・誤食です。特に生後3カ月までの子犬はブドウ糖を体内に貯蔵する機能が不十分なため低血糖になりやすく、ごはんが足りないことで低血糖に陥るケースもあります。子犬期は2週に1度は体重を量るようにして、常に最適な食事量を確認しておく必要があります。関連記事
成犬
成犬で多いのは誤飲・誤食や肥満です。肥満の犬は膵炎や糖尿病になりやすくなり、心臓病の悪化を招いたり、体重の増加により変形性関節症の症状が出たりします。病気や体の痛み、疲れやすくなることでぐったりしてしまいます。適切な運動と正しい食事管理を心がけましょう。詳しくは以下の関連記事をご覧ください。シニア犬(老犬)
シニア犬(老犬)で多いのは誤飲・誤食や肥満、老化による関節痛などです。犬も認知症になり、誤飲・誤食のリスクが高まりますし、食事量が変わらずに運動量が減ると肥満になりやすくなります。筋肉が衰えることで関節への負担が大きくなりますので、日々の変化をよく観察して早め早めのケアを心がけてください。まとめ
さまざまな病気でぐったりする可能性がある
病気の場合はぐったり以外の症状も見られる
年齢ごとに原因の傾向が変わってくる
普段から愛犬を観察することが大切