猫に与えてもいい水・与えてはいけない水を栄養管理士が解説

猫に与えてもいい水・与えてはいけない水を栄養管理士が解説

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猫が1日に飲むべき水の量は体重3kgで190ml、5kgで280ml、7kgで360mlが目安です。水は体の約7割を占め、6大栄養素の一つに数えられることもあります。水分不足が続くと腎機能が低下し、猫の死亡原因で一番多い泌尿器疾患につながってしまいます。猫が1日に必要な水の量や与えてもいい水・与えてはいけない水、飲まないときの対処法などをペット栄養管理士が解説します。

猫が1日に飲むべき水の量

水を飲もうとしている猫

猫は1日にどれくらいの水を飲まなければいけないのでしょうか。猫が1日に必要な水分量を体重ごとに紹介します。

猫が1日に必要な水分量
体重 水分量
2kg 140ml
3kg 190ml
4kg 240ml
5kg 280ml
6kg 320ml
7kg 360ml
8kg 400ml
9kg 440ml
10kg 470ml

成猫の平均体重が4kgとされていますので、猫は食べ物に含まれる水分も含めて1日に500mlのペットボトル半分くらいの水を摂取する必要があります。

水分不足は病気の原因になる

水分が不足すると尿が濃くなり、排出すべき老廃物が猫の体に留まり続けることになります。その結果、腎臓病や膀胱炎、結石など泌尿器疾患のリスクが高まります。実際、アニコム損害保険の『家庭どうぶつ白書』によると、消化器疾患と並んで泌尿器疾患は猫で特に多い疾患となっています。

猫も長寿化が進んでいますが、高齢になればなるほど喉の渇きに気付きにくくなり、体を動かさなくなることで飲む機会も少なくなります。愛猫に長生きしてもらうためにも、水分摂取は非常に重要です。

水の飲み過ぎにも注意

水を飲まないのも問題ですが、逆に飲みすぎも膀胱炎や慢性腎臓病、糖尿病などの病気が疑われます。いつもより飲む水の量が増えたときは注意してください。詳しくは以下の関連記事をご覧ください。


水を飲まない猫の対処法

水を飲もうとしている猫

愛猫が積極的に水を飲んでくれないとお悩みの飼い主さんは少なくありません。しかし、飲まない猫に「ちゃんと飲まないと」と言ったところで簡単には飲んでくれないでしょう。猫が水分摂取するために気をつけてほしいポイントは以下の3点です。

  1. ごはんをウェットフードにする
  2. 水飲み皿を工夫する
  3. 猫が好きそうな場所に置いてあげる

1. ごはんをウェットフードにする

飼い主さんの中には「猫のごはんと言えばカリカリ(ドライフード)」と思い込んでいる方も少なくないと思います。しかし、猫がドライフードを毎日のごはんにするようになったのは最近のことです。保存性が良く、与えるのも楽という飼い主さんの利便性で選ばれるようになりました。

野生の猫は捕まえた獲物を食べることで同時に水分も摂りますが、ドライフードを主食にしている猫は水分を別に摂らなければいけません。そこでウェットフードを食べることで、家猫も食事から水分を摂れるようになります。水分の吸収率も水飲み皿から飲むより食事から摂取したほうが高いことがわかっています。


2. 水飲み皿を工夫する

水飲み皿や給水器はさまざまなタイプがあり、それぞれ長所・短所があります。うまく組み合わせながら猫の気分次第で水が飲めるようにしてあげるといいでしょう。以下のような点に注意してみてください

  • 水を定期的に交換して新鮮さを保つ
  • 水飲み皿を複数用意する
  • 部屋ごとに水飲み皿を置く
  • 噴水式の水飲み機を使う(予期せぬ停止に要注意)

電気で動く噴水式の水飲み機は循環が止まってしまうと水が飲めなくなるものもありますので、使用する場合は必ず水飲み皿と併用するようにしましょう。


3. 猫が好きそうな場所に置いてあげる

猫は好奇心旺盛な一方で繊細な性格も持ちます。嫌なことがあった場所や警戒するものがある場所では水を飲みたがらないかもしれません。そんな猫ちゃんのために、水場は1箇所に絞らず、できるだけ多く用意してあげましょう。トイレなど不衛生になりやすい場所や人通りの多い場所は避け、部屋ごとに置いてあげることが理想です。

水以外で猫に飲ませていい飲み物と飲ませてはいけない飲み物

水を飲む猫

水やウェットフードだけでなく、牛乳などで水分を摂らせてあげようと思う飼い主さんもいると思います。飲ませてはいけないものもありますので、必ず確認してからあげるようにしてください。

猫に与えていい水(飲み物) 水道水、浄水、ミネラルウォーター、甘酒(無添加のもの)、水素水、スポーツドリンク麦茶(無添加のもの)、ヤギミルク
猫に与えてはいけない水(飲み物) アルコールを含む飲み物、カフェインを含む飲み物(紅茶コーヒー緑茶)、牛乳

水道水

日本の水道水は配水時に水質チェックが行われているため、猫にも安心して飲ませてあげることができます。ただし、水道水の成分は地域によって異なるため、結石などの不安がある飼い主さんは日本水道協会の「水道水質データベース」や地域の水道局などで調べてみるといいでしょう。

ミネラルウォーター

猫はミネラルウォーターを飲んでも問題ありません。ただし、一般的には結石など泌尿器疾患のリスクを避けるため、カルシウムやマグネシウムが多く含まれる硬水ではなく軟水(硬度60mg/L未満)を選んだほうがいいとされています。

食事から摂取するミネラル分に比べれば水から摂取するミネラル分は微量であるため、硬度の差はそれほど大きな影響を与えないとも考えられていますが(※)、ミネラルウォーターの種類によっては硬度1000mg/Lを超える超硬水と呼ばれるものもあるため注意が必要です。

※参照︰「小動物の臨床栄養学 第5版」

牛乳

猫に牛乳はNGです。猫は乳糖を分解する酵素を十分に持っていない「乳糖不耐症」であることが多く、下痢や嘔吐につながる可能性があります。お腹を壊さなかったとしても、牛乳は猫の乳に比べてタンパク質や脂肪の量が少なく、猫の成長に必要な栄養源としては不十分です。猫には猫用のミルクを与えるようにしましょう。

乳組成
ネコ乳 イヌ乳 牛乳
乾物(%) 21.0 22.7 12.3
粗タンパク質(%) 7.5 7.5 3.3
粗脂肪(%) 9.5 8.5 3.6
乳糖(%) 3.3 4.0 4.7
総エネルギー(kcal/100g) 14.5 19.0 38.2
乾物中乳糖(%) 14.5 19.0 38.2

参照:日本ペット栄養学会(2014)『ペット栄養管理学テキストブック』

猫が水を飲まない・嫌いな理由

リビアヤマネコ
Photo by yoospicsさん Thanks!

猫の祖先は砂漠に生息するリビアヤマネコだと考えられています。水が手に入りにくい環境で生活していたことから、猫は食事からしか水分が摂取できなかったとしても問題なく活動できる体のつくりをしています。その名残りから、水飲み皿から飲まなかったり、飲むのを嫌ったりする猫が多いようです。

猫は多少の脱水状態でも問題なく活動することができますが、尿は水分の排泄を抑えて濃くなり、老廃物を溜め続けてしまうため体に大きな負担をかけます。それが猫に泌尿器疾患が多い理由の一つと考えられています。健康を維持するためにも食事はウェットフードにして、水を飲む機会を増やす工夫もしてあげるのがいいでしょう。


猫が水をこぼす理由

手で水をすくう猫

水を飲むことに興味がなくても、水飲み皿をバチャバチャとかいてこぼす猫は少なくありません。単に遊んでいるだけの場合もありますが、器がヒゲに当たるのが嫌で抗議をしている可能性も考えられます。特定の器だけでするようであれば、材質や高さを変えてみると満足しておさまるかもしれません。

水が大好きな猫も

猫は基本的に水に濡れることを嫌いますが、中には水浴びを好む「ターキッシュバン」という猫種もいます。トルコにあるバン湖周辺で発見されたことから名付けられた猫で、毛には高い防水性が備わっており、皮膚が直接水に触れにくくなっています。


まとめ

水を飲む猫
水道水を与えることは問題ない
ミネラルウォーターは軟水を選ぶ
水分摂取の基本は食事から
水を飲まない・飲みすぎる場合は病院へ
猫の長生きに水分管理は欠かせないと言われています。ドライフードばかりあげている飼い主さんは、ウェットフードへの切り替えも検討するとともに、清潔な水道水をお家の複数個所に置いて、どのくらい飲んでいるか毎日確認するなど常に注意を払ってあげてください。


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